辺りは暗くなり部活動で騒がしかった校内に一切の音は消えた。携帯を操作して電池をかける。澪ちゃんとは違い相手はすぐに出た

紬「斉藤、お父様とお母様は御在宅?」

斉藤『いえ、お二人とも海外へ…なにか至急お伝えしたいことでも?』

紬「いいの…斉藤、今日は迎えに来てちょうだい。でもね出来るだけ目立たない車で来てほしいの、うん。任せるわ。急いでね」

目を覚ます心配はないだろう。澪ちゃんを縛る布を外し担ぎ上げ廊下に出す。鍵をかけて誰もいない職員室に返す。部室に戻り澪ちゃんを背負って裏口から校舎の外に出る…さすがに校内には生徒は残っていないようだ…誰にも見つかってはいないはず…

人を一人背負っていても重くは感じなかった、なにか頭の中で興奮物質でも垂れ流しているのかしら?

自分が自分でないような…これだけのことをしているのに妙に冷静な、まるで他人のことのような…携帯電話が震えハッと我に返る。

紬「裏口から出るわ。すぐに着くからエンジンはそのままでいいわ」

斉藤「おや、その方は?」

紬「友達よ…家に泊めるわ。早く出しなさい」

スムーズに車は走り出し夜の街の風景が流れてゆく…時折街灯の灯が澪ちゃんの頬を、髪を、脚を照らして堪らなく綺麗だった。押さえ切れない興奮と躍動感、達成感…様々な感情が込み上げ訳がわからなくなりそう…正しくないことはわかっている

与えられるのではなく自分で手に入れた…その達成感は罪悪感を塗り潰し隠しきれない幸福感へ導く

何事もなく車は家に辿り着く。家路がこんなに長く感じたのは初めてかもしれない

紬「澪ちゃん、ここがこれから暮らす家よ」

紬「斉藤、聞いておくわ。あなたは私の味方よね?」

斉藤「わたくしめは紬お嬢様がまだ産まれていない時よりお嬢様の、いや琴吹家の味方でございます」

紬「秋山澪ちゃんというの。この子を離れに連れていくわ。用意なさい」

斉藤「離れ!?……かしこまりました」

離れ…本宅とは別の、今は亡くなったお祖父様が使っていた住居。小さい頃は毎日のように相手をしてもらった記憶が蘇る。お祖父様は父に仕事を譲った後に離れを作りそこで悠々自適な生活を送っていた。

幼い私はそこにある珍しい物全てに目を輝かせお祖父様が語る話に耳を傾けていた。お祖父様は話相手が出来て嬉しいのか秘密を条件に内緒の場所を見せてくれると言い…幼い私は何の疑いもなく承諾した

お祖父様はここは大切な物を仕舞っておく場所だと言っていた…そこには無機質な廊下と鍵のついた部屋が数部屋ある空間

そう、お父様もお母様も知らないお祖父様と斉藤、私だけが存在を知っている秘密の空間…そういえばあの時あの部屋にいた娘はどうなったんだろう

今度は私が手に入れたペットをあそこに仕舞える…ふと気づくとさっきまで友達だった澪ちゃんをいつのまにかペット扱いしている自分がいる。クスクスと笑いが込み上げる。可笑しいわ、せっかく出来た友達なのに

斉藤「準備が出来ました」

紬「ありがとう、澪ちゃんはまだ起きないと思うけど食事と着替えを用意なさい」

斉藤は軽く頭を下げ本宅へ消え私は澪ちゃんを背負い離れの戸を開け巧妙に隠された地下室への扉を開けた…



紬「りっちゃんおはよ~」

律「ムギか…あのな、まだ内緒にして欲しいんけど…澪のやつ、昨日から家に帰ってないみたいなんだ」

紬「えっ!?それってどういうことなの?」

律「わかんねぇ…なにやってんだよあいつ、変な事に巻き込まれてなけりゃいいんだけど」ブルブル

紬「ご家族は警察には連絡したのかしら…心配だわ」

律「それでも昨夜のうちに相談に行って放課後までに連絡が無ければ捜索願を出すみたいなんだ」

紬「………」

律「唯にはまだ内緒にしといてな、心配かけたくないから」

紬「……わかったわ。私に出来ることがあったら言ってね」

律「ムギ、ありがとう」ギュッ

紬「いいのよ、友達じゃない」

あまり寝ていないのか、腫れぼったい目をこすりりっちゃんは机に顔を伏せた…ごめんね、澪ちゃんはこれから私が面倒を見るからね。許してりっちゃん

放課後、りっちゃんが唯ちゃんと私のところに来て部活の中止を告げ足早に教室を出ていった…なにも知らない唯ちゃんと二人、少しの間世間話をしていると…

和「唯、たまには一緒に帰ろっか」

唯「うん和ちゃん、帰ろ帰ろ~…あれ~生徒会はいいの~」

和「あぁ今日は集まりがないからね、じゃあね琴吹さん」

唯「じゃあね~」ブンブン

紬「うふふ、さようなら~」パタパタ

そろそろ澪ちゃんも起きたかしら?私も帰りましょう



電車を降り軽やかな足取りで家路を急ぐ…この時点では特にどうしようという計画はなかった。ただあの美しくはち切れんばかりの若さを醸し出す澪ちゃんを手元に置いておきたかったのだ。その時はそれしか考えてなかった

裏口から入り悟られないように離れに急ぐ。秘密の地下室にはもうすぐだ…ふと閃きビデオカメラを用意する。日記代わりに使えるかしら…どうしよう楽しくて仕方がないの

ガチャリ

紬「うふふ、澪ちゃん起きてるかしら~?」

澪「ムギッ!!…ここはどこだ!?なんだこの部屋は!?それにこの鎖…一体なんのつもりだ」

紬「ここは琴吹家の離れにある地下室で、それは澪ちゃんが逃げられないようにする鎖よ。そして澪ちゃんはこれから私のペットなの」

澪「なにを言ってんだ、自分がなにをしてるかわかってるのか?」ジタバタ

紬「ふふっ……いたって冷静よ。これから澪ちゃんはここで私のペットとして暮らすの。初日だから記念にビデオ撮るわね~笑って笑って~」ジーッ

澪「狂ってる、変な奴だとは思ってたけどここまでとはな…早くここから出せ!!変態ッ!!今なら許してやる」

なにかしら、おかしいわ。澪ちゃんが見たこともないような表情で私を罵ってる。おかしい、こんなはずじゃ…コンナハズジャ…コンナハズジャ…オカシイワ…イヤ、オカシクナンカナイ


バキッ


うつ伏せに寝転がっている体勢で腹に蹴りを入れられ澪ちゃんが転がる、蹴ったのは…私?

呼吸がうまく出来ないのか、澪ちゃんは咳き込み信じられない物を見るような目で私を見上げる。もう一発…

今度は二の腕を蹴られ悶絶する澪ちゃん…更に近づき今度は足に蹴りを…そこで気づいた。澪ちゃんが怯えるような泣き顔になっていることを。これよ、これ…うふふ、澪ちゃんはこうでなくっちゃ。

澪「ヒッ…ムギッ、もう止め」ビクビク

紬「うふふ、ごめんね澪ちゃん…痛かったよね?でもペットには躾が大事なの、わかってくれたら嬉しいわ。さ、笑って笑って~ビデオに撮るんだから」ニコニコ

澪「あ、あはは」

瞳に大粒の涙を貯め精一杯口の端を上げ懸命に作り笑いをする澪ちゃん…堪らなく愛らしいわ

紬「ね、痛いのは嫌よね?私も大好きな澪ちゃんを蹴りたくないわ~だから大人しくペットになって欲しいの、駄目?」

澪「………」

断ったらまた蹴られると思っているのかはっきりと断れず、かといって友達のペットになれと言われ「ハイ、なります!!」などとは誰だって答えれないだろう

紬「いいわ、先にご飯にしましょ。待っててね、琴吹家のお抱えのシェフの一品をお持ちするわ」

澪「な、なぁムギ…その前にこの鎖を外してくれないか?」

紬「………暴れないって約束出来る?」

澪「と、当然だろッ…友達を疑うのか!?」

紬「それもそうね…でも澪ちゃんはもう友達じゃなくてペットなの、ごめんね。躾の行き届いてないペットを自由にするのはマナー違反なの」クスクス



紬「お待たせ~今日はビーフシチューだったわ。とっても美味しいんだから…はい、どうぞ」コトッ

澪「あ、あはは…冗談きついなムギ…これじゃ食べれないよ。いや、まさかこのまま食べろなんて言わないよな?」

紬「うふふ、ペットはスプーンなんて使わないわ~あらビーフシチュー美味しいわ」パクパク

澪「ふ、ふざけるなッ…そんなこと出来るかッ」ワナワナ

紬「嫌なら食べなくてもいいのよ?澪ちゃん痩せたがってたし…少しくらいご飯なしでも平気よね?ごちそー様でした」

澪「くっそ、こんな鎖…外れろ、外れろよぉッ」ガシャガシャ

紬「あんまり暴れると食い込んで痛いわよ~」



紬「じゃあ家族に気取られる前に本宅に行くわ~また明日の朝に見に来るわ。おやすみなさ~い」ガチャリ

澪「ま、待ってくれムギ、待って…」

考えてみれば最初からじゃれてくるペットなんていないわよね…いろいろ考えなきゃ。地下室から出ると離れの玄関に置きっぱなしの携帯が光っていた。メールと着信、りっちゃんと唯ちゃんからね。まずはりっちゃんから…

律『もしもし、ムギか?』

紬「ごめんね、すぐ電話に出られなくて…澪ちゃんは見つかったのかしら?」

律『いや、見つからないんだ。親御さんは警察に届けを出したってさ…なんでこんなことになってんだ?一昨日まで何もなく過ごしてたのに…チクショウ、澪ォどこにいるんだよォ』シクシク

紬「……ごめんなさい、力になれなくて」

律『いや、ムギのせいとかそんなつもりじゃないんだ。悪ィ…あたし余裕が無いんだな、ほんとゴメン』

紬「いいの、りっちゃんが優しいのはわかってるから…溜め込まずにいつでも電話して、ね?」

律『ありがとうムギ…またなにかあったら電話するよ』

本当に澪ちゃんが羨ましい。こんなに心配してくれる幼馴染みがいて…次は唯ちゃんね

唯『もしもしムギちゃ~ん、澪ちゃんがいなくなっちゃったんだって~知ってた~?』

紬「えぇ…今朝りっちゃんから聞いたわ。ごめんなさいね、黙ってて」

唯『ひどいな~わたしには内緒だなんて』プンプン

紬「きっとりっちゃんは唯ちゃんに余計な心配かけたくなかったのよ」

唯『………』

紬「とりあえず警察も動いてくれてるみたいだから私たちは待ちましょ、ね?」

唯『うん、わかった』

紬「そう、いい子ね…うん、また明日」カチャ

唯ちゃんもいい子ね…澪ちゃんは幸せ者だわ~優しい幼馴染み、優しいお友達、優しい飼い主がいるなんて…うふふ

そういえばメールも入ってたわね…知らないアドレス。タイトルも内容も空っぽ…間違いメールかしら?まぁいいわ。いつまでも制服じゃ可愛そうだから澪ちゃんの着替え用意しよっと。まさか斉藤が着替えといったら桜高の制服を用意するとは思わなかったわ



紬「おはよう澪ちゃん…あらあらこんなに散らかして悪い子ね」

澪「………」ジロッ

紬「ほら、言ったじゃない暴れたら食い込んで痛いって…すぐに消毒するわ~」

澪「触るなッ、汚ならしい」ジタバタ

紬「………」

澪「いいよ、蹴りたければ蹴ればいいさ…一晩中考えたんだ。私はお前のペットなんかにならな…ギィ」

どす黒い感情が溢れたが蹴りはしなかった…ただ澪ちゃんの足首についた鎖を足の上から思い切り踏みつける、何度も…何度も…

踏みつける度に聞いた事がない不快な音が部屋に響き踏みつける度に声にならない叫び声をあげていた澪ちゃんもいつしか痛みからか気を失っていた


アハ、アハハハハ…


澪ちゃんの足首は血に染まり見たことがない形に捻れていた…気を失ったと同時に失禁してしまったのか澪ちゃんの身体がビクビク痙攣する度に黄色い水溜まりが少しずつ広がっていく

私は迷うことなくその様を録画し続けた。あんなに美しかった澪ちゃんが壊れていく様を見続けたい…いつしかそう思えていた。



紬「ごめんなさい、昨日一晩中寝付けなくて…今日は休ませてもらうわ」

律『わかった、サワちゃんには伝えとくからな。ムギまで倒れちゃ洒落にならないからな。気をつけろよ』


紬「ありがとう…それじゃあね。りっちゃん」カシャ

紬「澪ちゃん今日は一日中一緒にいれるね」

携帯を玄関に置き地下へ降りる。鍵のかかった別の部屋をあける…幼い日に一度だけ入ったことがある部屋…そこにある道具には人を傷つける以外に使い道がないような…そんな形状をしていた



ちょっと澪ちゃんの様子を見てくるから席を外します


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