真鍋家
チーン…
澪「……」
澪(写真の中の和…すごく元気そうだ。まだ生きてるみたい)
澪「私ね、和」
澪「最初、和の後を追おうとして…死んじゃおっかなって思ってたんだ」
澪「戦っていても目的がない、剣を振りかざしても虚しいだけ…」
澪「だから死のうって…でもね、できなかったよ」
澪「死ぬのは…怖いよ…和ぁ…」グスッ
ス
和母「…和に会いに来てくれてありがとうね。きっとこの子も喜んでるわ」
澪「あ…」
澪「わ、私はこれで…お邪魔しました」サ
和母「待って。あなた、秋山澪さんよね?」
澪「? はい…そうですけど」
和母「あの子の部屋を片付けていたらね、あなた宛ての手紙が机の上に置いてあったのよ」
澪「あ…そんな…」
和母「まだ封は開けてないから安心して。それじゃあ…はい」ス
澪「……こ、ここで読んでもいいですか…?」
和母「ええ」
澪(和…)ス
澪へ
この手紙をあなたが読んでいるということは、恐らく私は死んでいるということになるのかしら。
そう思いながら書いているとなんだか複雑な気分になるわ。
あのね、澪。私がライダーバトルで勝つ為に澪が手伝うって言ってくれた時、私とても驚いたのよ。
あの怖がり屋な澪が戦うって…私の為に。相当勇気を振り絞ってくれていたんでしょう?
それなのに私、そんなあなたを自分が勝ち進む為の道具のように扱って…私最低よね、あなたの思いを踏み躙っていたのよ。
今さらこんなこと書くのはあれだけど…澪、あなたには剣じゃなくて、あの頃のあなたのようにベースを持っていて欲しかった。
私、あなたの演奏するベースの音…大好きだったのよ?
途中でこの戦いがやめられないのはわかっている。
今さらやめろだなんて言いたくても言えない…それなら澪、いっそのこと。私の為に戦わないで、あなたの為…あなた自身の為に戦いぬいて。
…長くなっちゃいそうだからこれで終わりにするわね。
最後に…こんなこと書くのも私らしくないけど…もし、生まれ変われるのなら…澪、あなたにもう一度会いたい。…それじゃあね。
真鍋 和より
澪「……あ…あ」
和母「たぶんね、あの子…もう自分の命が長くないってこと…分かってたのかしらね」
和母「あの子が最後に手紙を渡すぐらいなんだもの、あなたのことをとても大切に思ってたのよ。きっと」
澪「和ぁ…の゛ど…がぁ…っぐ…ああ…あぅ…」ペタン
澪「あああああああ…うわああああ…」
和母「あの子の分まで…生きてあげて。秋山さん」
澪「はい…はい…生きますっ…わ…わた…し…ぜったい…」
澪「うわあああああん」
平沢家
憂「……」
キィーン、キィーン
憂「! ……」
スゥゥ…
唯「よいしょっと」
唯「憂?」
憂「そ、そうだよ」
唯「あはっ、ホントに私たち瓜二つだね」
憂「……」
憂「お、お姉ちゃんを返して」
唯「ん~?」
唯「何言ってるの? 私、一応唯なんだけど」
憂「あなたはお姉ちゃんの姿をしてるけど…私のお姉ちゃんじゃない」
憂「ミラーワールドの平沢唯!」
唯「うん、そうだよ」
唯「いいじゃん! この際だし、私が憂のお姉ちゃんってことで」
憂「いや! そんなのいや!」
憂「私のお姉ちゃんはたった一人! のんびり屋さんだけど…優しくて、温かくて、可愛くて…世界でたった一人の大好きなお姉ちゃんだけ!」
唯「…そっか」
唯「残念だなぁ。憂のお姉ちゃんになれると思ってたのに」
唯「それで、どうして欲しいの? この体を返してほしいの?」
憂「返してくれるの!?」
唯「私と戦って勝てたらね」
憂「!」
唯「言っておくけど私、強いよ! めちゃくちゃ」フンス
憂(もう一人のお姉ちゃんと戦う…しかも、体は本物のお姉ちゃん…)
憂(そんなの…戦えないよ…)
唯「…戦わないの? 憂」
憂(ムギさんを止めることができれば…お姉ちゃんを取り戻せるかもしれない…)
憂(でも実際のところ、あの人をどうにかできるかすら怪しい…)
憂「…少し、考えさせて」
唯「ふふ」
唯「三日後にまたここに来るね。それまで憂、ちゃんと生き残っててよ?」
スゥゥ…
憂「…お姉ちゃん」
数時間前
憂「止めてくれって…そんな」
斎藤「無茶は承知の上で頼んでいる。元はといえば、私がお嬢様にこのライダーバトルのことを教え、手伝わなければよかったこと」
さわ子「ほんと、無責任な男…」
斎藤「過去に私がこの戦いに何を求めていたかは分からない…だが、紬お嬢様には…私と同じような道を辿ってほしくない」
斎藤「彼女には…幸せでいてもらいたいのだ」
憂「神崎さん…」
憂「…言われなくても、お姉ちゃんの為です。私はムギさんを止めますよ」
さわ子「ていうか…そもそもなんで唯ちゃんがこの戦いに参加する必要があったわけ? ライダーバトルを完遂させるだけの為なら…」
斎藤「ミラーワールドの平沢唯はリュウガ…つまり龍騎と相反する存在。現実世界の平沢唯と融合する為には、完全に表と裏の存在にならなければならない」
斎藤「これは最初から仕組まれていたことだ。平沢唯が龍騎になるようにな」
さわ子「つまり…ミラーワールドの唯ちゃん一方だけがライダーなのはダメで、ライダーとしても表裏が成り立ってなきゃダメだったってことね? 面倒臭い」
斎藤「…後は、現実世界の平沢唯の精神状態が不安定な時に、ミラーワールドの平沢唯がその体を乗っ取る、ということだ」
憂「そんな…」
憂(絶対に…絶対にお姉ちゃんを取り戻すよ! 絶対に!)
さわ子「さて、と……大体の話も分かったことだし…」
さわ子「戦いましょーか? 憂ちゃん」ス
憂「!」
さわ子「難しい話にもそろそろ飽きてきて、体を動かしくなってきたころでしょ?」
憂「い、いやですっ! そんな…」
さわ子「あら、ムギちゃんを止めるにはどのみちあなたもライダーになって戦わなきゃいけないのよぉ? 今のウチに慣れておいても損はないんじゃないかしらねぇ?」
憂「うう…そんな…先生…」
さわ子「ほら、さっさと準備なさい。先生が手とり足とり…戦い方を教えてあげる。ふふ!」
憂「あ、あ、あ…くっ、ごめんなさい!」タタタ…
さわ子「ちょ!? …あーあ、逃げちゃった…つまらないの」
斎藤「……」
律「たまにはこうやって部室でのんびりしてるのもいいな」
梓「ふふ、そうですね」
梓「…唯先輩がいませんけどね」
紬「……」
紬「お茶が入ったわ。はい、みんな」
澪「ありがとう、ムギ。…うん、ムギのお茶はいつも美味しいな!」
律「なぁ」ボソ
梓「はい?」
律「最近、澪…元気になったな」
梓「そういえば…そうですね。何はともあれよかったです」クス
律「そうだな」
キィーン、キィーン…
キィーン、キィーン
律・澪・梓「!」
澪(最近、ミラモンがあきらかに多くなってきてる…)
律(一般人への被害もこれじゃあ大きくなるばかりだ…)
梓(やらせません! 私たちがいる限り…!)
ス
紬「あら…みんな、どこへ行くの?」
律・澪・梓「トイレ!!!」
ガチャ…タタタ
紬「…ふふ」
紬「戦え…潰しあえ…もっと…もっと…!」
「戦え…戦え…!」
最終更新:2011年05月05日 20:17