― 同 桜山 戦闘指揮所 82式通信指揮車

連隊長「先遣、詳細を報告せよ。先遣どした!?」

しかし先遣小隊からの連絡はない。

連隊長が山を見上げたとき、遠くから乾いた銃声が響いた。

連隊長「!?」



― 同時刻 桜が丘駅前通

曇り空の中、駅前通を三人は歩いていた。

恵「ギャオスは人類の天敵として創造されたとしたらどう?」

突然先を歩いていた恵が振り返った。

恵「増えすぎる人口を調節し、腐敗した人類の文明をリセットするために」

和「誰がそんな事を!?」

恵「私と同意見の人ね」

和「ならガメラはそういう傲慢な考えを打ち砕くために生み出されたんですね」

恵「正しいわ」

唯「ガメラをどう思ってるんです?」

恵「ガメラの墓場の話、聞いてるわよね?ガメラは古代人が創りだした地球の意思を受ける器。ガメラは人よりも地球の意思を優先する」

唯「ガメラは人との関わりを断ち切ったんじゃ」

恵「勾玉が壊れたときにね。でもガメラの復活を願ったのは人。それがガメラの最大の弱みよ」

恵「ついてきて…田井中さんのところに案内するわ」

再び恵は背を向けて歩き出した。



― 同 15時55分 桜山 山中

乾いた銃声が山間に激しく響き、89式5.56mm普通弾がイリスに降り注ぐ。

先遣小隊の面々は迫るイリスにじりじりと後退しながらも攻撃の手は緩めない。

隊員r「小銃てき弾、前方120!」

銃口に小さなロケット弾のような06式小銃てき弾を装着した隊員が進み出る。

小隊長「撃て!」

数発のてき弾はゆっくりと飛翔していき、イリスの至近距離で炸裂して対軽装甲用の調整破片がイリスに襲いかかる。

しかしイリスはそれを砂粒か何かの直撃のように受け流して進行する。

隊員r「効果なし!」

なおもミニミ機関銃、89式小銃からは真鍮色の薬莢が飛び、硝煙の煙が白く立ちこめる中イリスはゆっくりと先遣小隊へ向かってくる。

小隊長「無反動射撃用意!」

砲手「準備よーし!」

その号令と共に無反動砲組が狙いを付けて前に進み出る。

小隊長「テェッ!」

84mm無反動砲から発射された対戦車榴弾が立て続けにイリスに直撃するが、イリスはそれをも物ともしない。

その触手が雑木林を薙払ったのは一瞬の出来事だった。

隊員a「ぎゃあああああ」

隊員b「くそー!」

隊員c「おい!大丈夫か!?」

小隊長「連隊長に報告!小隊は第二警戒線まで交代する!」

通信手「こちら先遣小隊!損害多大!第二警戒線まで後退する!」

倒木で負傷者が相次ぎ部隊は戦力を一気に奪われる。

隊員f「大丈夫か!?」

隊員d「しっかりしろ!」

そこに負傷した隊員の救出や分隊支援火器の弾切れが重なり攻撃の手が一瞬緩まった。

立て直しを始めて緩んだところを狙うように今度はイリスは直接隊員達を吹き飛ばした。

「退避!」

「飛ぶぞ!」

「う、わ!」

凄まじい風圧が隊員達を襲い、先遣小隊は遂に全滅した。

邪魔のいなくなったイリスは空へと舞い上がる。



― 同時刻 中上町 マンション 805号室

和「律…」

唯「りっちゃん…」

恵「…」

律はベットに腰掛けぼんやりと三人を眺めている。

しかしその目はまるでなんの感情を抱いていないかのようだった。

紬「曽我部先輩」

突然の声に恵が振り返ると、そこには数人の警察官とムギの姿があった。

恵「琴吹さん…」

紬「律ちゃんは病院へ運ばせて貰います」

恵「…」

紬「巨大生物は…ギャオス変異体は神経系統との融合を試みた可能性があります。命に関わるかもしれません!」

恵「生物は融合を試みてそれをどうしようと…?」

一瞬間をおいて和が口を開いた。

和「…融合した後、自己進化するのでは」

急に外を風が強く吹き抜け、ガラス窓を揺らした。

紬「何か来る!?」

和「!」

恵「!?」

ムギの一言で窓の向こうを見る。

空をイリスが飛び去っていくのが目に入った。



― 16時32分 航空自衛隊早期警戒機E-2C

数十キロ離れた上空を飛行する早期警戒機E-2Cホークアイ。

灰色のターボプロップ機の背中には回転する巨大な円盤の状レドームが搭載されている。

レーダーオペレーター「こちらセントラ。目標を捕捉、追尾開始」

その捜索レーダーにはしっかりとイリスが捉えられていた。



― 16時37分 東京都府中市 航空総隊司令部 作戦指揮所

LCD画面に明滅する表示。

先任要撃管制官「こいつか!?やりたい放題やってくれたギャオスは!」

幹部要撃管制官「ギャオスとは確認されていません。形態が著しく違うようです」

先任「セントラは追尾できるか?」

要撃管制官D「大丈夫です」

先任「近傍のFは?」

要撃管制官E「百里の15が東京湾上空でガメラ警戒中です」

先任「アプローチさせろ」

要撃管制官E「間もなく一帯は暴風圏に入りますが?」

先任「目標の進路は人口密集地だ。まずは市街地から引き離せ」


雲を突き抜け、透き通った空にイリスは躍り出た。

虹色の飛行膜を展開したイリスはそのままホバリングするように宙を漂う。


そこへ転進命令を受けたF-15Jが2機猛然と襲いかかる。


要撃管制官A「パルサー1、パルサー2接敵。射程距離です!」

先任「威嚇射撃を許可する」

F‐15のM61バルカン砲が唸り、タングステン合金製の20ミリM50榴弾が火線を引きイリスに殺到する。

要撃管制官A「目標、射撃に反応し、触手のようなもので攻撃して来ます!」

先任「回避させろ」

要撃管制官A「パルサー1、パルサー2、回避せよ」


パイロット「目標が再び攻撃してくる!」

飛行形態となったイリスは既に恐るべし飛行能力を持っていた。


先任「ミサイル発射を許可する」

しかしF-15は飛行を開始したイリスをロックオンするどころか

まともに後ろを取ることすらできずに苦闘していた。

パイロット「…目標の運動は当機を凌駕、ロックオンできません!」

触手の先端からはレーザーのようなものを発射し、凄まじい運動能力を持つイリス。

戦闘機相手の格闘戦とはまるで違う、生物相手の戦い。

2機のF-15は増槽を投棄してもなおギリギリの回避を強いられる。


イリスとF-15Jを一瞬雲が隔てた瞬間、雲が割れて突如黒い影が現れる。

雲が散っていくにつれその全貌が明らかになる。


パイロット「ガメラ!?」


F‐15のパイロットは思わず瞬いた。

月明かりに照らし出されたガメラはF-15とイリスの間に割って入り、イリスへ立ちはだかった。


要撃管制官C「目標付近に新たな飛行物体現出、500Ktで交戦域に接近中!」

同時にLCDの表示は二つになった。

要撃管制官A「パルサー1、ミサイル発射不能。パルサー2、ミサイル残弾なし」

要撃管制官C「目標転進!北上開始!」



遂に二体の守護獣、朱雀と玄武ことガメラとイリスが対峙する。

一瞬の静寂を置き、イリスとガメラは激しくぶつかり合った。


副司令「先程海自より東京湾沖合にガメラ現出との連絡があった。新たな目標はガメラだ。行動中の各機を誘導し排除行動に移れ!」

管制台に副司令がいきなり割って入った。

先任「するとこっちの飛行生物は!?」

主導権を奪われた先任が負けじと叫ぶ。

副司令「ガメラの掃討が先だ。第3高射隊にペトリオットの準備をさせろ!」

LCDに表示されるマーカーが静かにからに変更される。


その上空では激しい巨大生物同士の空中肉弾戦が繰り広げられていた。

回転ジェットでの体当たり、イリスの触手攻撃。

ガメラの血は何度も霧のように空中に舞い散った。



― 16時55分 陸上自衛隊霞ヶ浦駐屯地 航空自衛隊第3高射隊ペトリオットPAC3陣地

隊員達が慌しく走りまわる中、並んだ発射機には電源供給用のメタルコンセントが接続され、

M901発射機は目を覚ますように立ち上がり、モーター音を立てて回頭した。

レーダー員「目標探知!」

射撃管制員「射撃用意!」



― 同時刻 患者搬送車 車中

律「はぁ…はぁ…」

何が起きているのか律の息は荒くなり、首にかけられた勾玉も青く光り出す。

和「律をまだ求めて…完全に融合しようと…」

唯「…」

紬「急いでください!」


運転手「はい!」



― 16時57分 航空総隊司令部 作戦指揮所

要撃管制官①「第3高射隊、ペトリオット発射準備完了」

副司令「発射を許可する!」


数秒後、発射機からは甲高いロケットモーターの音を響かせ、1発3億円のPAC3ミサイルが空へ真っ白な噴煙を残し飛び立った。


要撃管制官②「ペトリオット発射確認」

要撃管制官①「着弾まで20Second!」

LCDの画面上に現れた、は高速でに移動していく。

そして2発のミサイルはその使命を全うすべく、イリスと戦うガメラに躊躇うことなく突っ込んだ。

凄まじい爆発、ペトリオットの直撃を受けたガメラは失速する。


要撃管制官①「着弾を確認、ガメラ速力低下」

要撃管制官②「飛行生物、転進、降下します!」

先任「どこに降りるんだ!?Fで阻止させろ!」

要撃管制官①「…市街地、桜が丘方向へ戻ります!」

要撃管制官A「間に合いません!」


イリスは、失速し怒りのこもる咆哮を上げるガメラを引き離すと、Uターンして急降下を始めた。



― 17時47分 寿町 三十七総合病院 特別室

律が再び病院に戻された時には律の症状が収まっていた。


恵「人は緩慢な自滅の道を歩いている…ギャオスがいなくてもいずれ滅ぶ。しかし滅亡より悪い未来が舞ってるかもしれない。

そうなる前に人類の幕を引いてもらおうと言うのがギャオスを生んだ者の考え。ガメラがそれを止めるのは―」


唯「ギャオスに人類なんて滅ぼせません」


恵「ギャオスじゃない。もう新たな存在よ。あらかじめ用意されていたのか自己進化の結果か。

かつてガメラがそうしたように、人と交感してより強くなろうとした。

しかも融合してガメラを超えようとしている…」

唯「…」

恵「ガメラは勝てない」

和「どんなにみっともなくても生物は最後の瞬間まで生き延びます!人類だって!」



律「来た…」

その応酬の最中、突然律が窓の外を見上げた。



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