― 病院

憂「お姉ちゃん…」

唯「ガメラは?」

憂「海に逃げたよ。ギャオスは富士の樹海に降りたみたい」

唯「手遅れにならなきゃいいけど…」

憂「手遅れ?」

唯「早くしなきゃ…」

唯「でも…ガメラも私も休まなきゃ…」

憂「え?ガメラ?」

唯はそのままベッドに横になり、眠りについた。

憂「…どういうこと?」



―6月15日 夜

アナウンサー『こんばんは。政治暴論政治争論の時間です。

今日のゲストにはギャオス対策の責任者である斎藤雅昭審議官にお越しいただいています』

斎藤『どうも』

アナウンサー『今日はよろしくお願いします』

斎藤『ええ、こちらこそよろしく』

アナウンサー『まず、お伺いします。ギャオスの捕獲を継続するのですか?』

斎藤『ギャオス捕獲の決定はまだ生きているんですよ』

アナウンサー『ギャオスの凶暴性と大きさは倍化しており、保護を中止するべきだという意見がありますが』

斎藤『むしろギャオスのおかげでガメラを撃退できたのでは?』

アナウンサー「撃退すべきはギャオスの方では?」

斎藤『根拠がないことより、現実的な提案をすべきではありませんか?』

アナウンサー『では、ギャオスに対する警戒はなさらないんですか?』

斎藤『ギャオスの光を嫌う性質を利用し、人口密集地に多数の投光器を設置して、警戒に当たっています。

しかしギャオスは誰もが捕獲を望む現代において貴重な生物であると―』

斎藤『例えば、犠牲者とそのご遺族には申し訳ないがティラノサウルスが現れたとき、誰もが捕獲を望むでしょう?』

憂「…」

テレビでは無神経な発言が流されている。

ふと唯の様子が気になり唯の部屋へ向かう。

眠っている唯の手に握られた勾玉。



憂「…まさかこの勾玉でガメラと通信できる?」

憂はそんなことを考えながら唯の寝顔を見つめていた。



― 6月1日 朝 平沢家

憂「まさかとは思うんですが…」

律「確かに勾玉が光ったとかって一度あったよな」

澪「ま、まさかあの勾玉か!?」

梓「唯先輩が突然静岡まで行ったのも…」

澪「唯が巫女みたいな役割ってことか」

梓「実際私達が触っても特別なにもありませんしね」

憂「偶然じゃない気がしませんか…?」

紬「…」

梓「可能性はあるよ…元々の出所もわからないような勾玉だし…」

紬「憂ちゃん!それを調べさせてもらえないかしら!何かわかるかも知れない」



和「話を腰を折るようで悪いんだけど、巫女ってことはガメラの受けたダメージがそのまま唯に直結してるって事かしら?」

憂「そんな気がします…妹の勘ですが…」

澪「テレビでしか観ていないけど、富士山でガメラが血を流してたのって腕だったよな。そして同じように唯も腕をケガした…」

和「じゃあもしガメラに何かあったら唯は…」



― 6月16日 夕方 平沢家

憂「どうでしたか?」

紬「調べてもらった結果、この勾玉は金属で出来てるらしいわ」

律「え?透明っぽいのに」

和「でも…金属?」

紬「そうなの。しかも現在知られてる金属の中にこれと同じ物はないらしいわ…」

和「未知の金属…」

澪「まさにオリハルコンだな…」

紬「ところでまだ唯ちゃんは…?」

憂「目を覚ましません…」



― 夜 東京都中野区 中央線

家路へ急ぐ乗客で混み合う中央線快速、2022H電車は軽量ステンレスの銀色の車体を輝かせながら東京駅に向かって疾走していた。

乗客A「眠い…」

乗客B「ふう…遅くなっちゃったな」

乗客C「…」

乗客D「あれ?外…」

乗客E「え?」

乗客B「何あれ!?」

乗客C「ぎゃ…ギャオスだ!」

窓の外で電車と並んで羽ばたく巨大な飛行生物、ギャオス。

乗客たちは車窓の光景を見てパニックに陥った。

ギャオスは車窓からフレームアウトすると獲物に襲い掛かる鷲のように先頭車を引っ掴んだ。

今や当初とは比べものにならないほど巨大化したギャオスの爪はいとも簡単にステンレス製のドアや天井を押し破る。

そのまま急上昇したギャオスに後方の車両は引っかけられ、次々と側壁を押し破り高架下へ落下し、下で逃げ惑う人々を一瞬で押しつぶした。


JR無線『こちらは東鉄指令です、指令から中央線防護無線発報の情報です。

これは中央線では中野付近、ギャオスと2022H電車が接触の模様。防護無線受信中の全列車は―』


警察無線『警視庁から各局、管下に対し、一斉指令を発令する。午後9時50分頃中央線中野駅付近、ギャオス、ギャオス飛来。

中央線電車を襲撃し、現在―』


作戦通信『―巨大な飛行生物はギャオスと確認。現在、新宿から銀座方面上空を移動中。翼長約一〇〇米に成長と推定。

投光器使用のもと、着地を阻止するよう指導されたし』


首都、東京は一瞬でパニックに陥り、都民が逃げ惑う中、街頭に設置されたギャオス払い用の大型投光器が一斉に点灯する。



F-15Jパイロット 『―こちらカペラ。ギャオス攻撃許可を要請』

要撃管制官 『カペラ。市街地上空での攻撃は許可できない。繰り返す―』

F-15J戦闘機ががスクランブルするものの、列車を襲撃したギャオスを追尾することしか出来ない。


ギャオスは各所に設置された投光器の光に追い払われるように暗がりの日比谷公園に降り立つと、

大事に掴んでいたクハE233の屋根板を缶詰でも開けるかのように器用に嘴で引き剥がし、遅めの夕食を決め込んだ。



― 深夜

テレビ『政府は先程、ギャオスの捕獲中止を決定、自衛隊によるギャオスへの攻撃が決定しました。これに伴い夜間から早朝にかけての外出自粛を―』



― 6月17日 午前 東京都港区港南 陸上自衛隊天王州戦闘指揮所

鳥類学者「ほとんど完全な遺伝を持った古代の遺伝子工学の産物です。並の適応能力ではありません!不意を突く攻撃を行わないと…」

一等陸佐「大丈夫です。81式なら空に逃げても追尾できますから」

通信手A「A地区、B地区避難完了」

鳥類学者「…目に遮光板のようなものが」

通信手B「81短SAM、配置完了しました!」

中隊長「発射!」

通信手B「発射!」

数キロ離れた陣地に陣取る81式短距離誘導弾発射機から立て続けに短SAMが発射される。



「着弾まで後、5、4、3―」

急降下した短SAMは立て続けにギャオスの元で炸裂し、濛々たる煙が立ち込める。

唯「…」

視認されるよりも先に対空レーダーがその姿を探知した。

通信手A「目標、新橋上空を南下!」

通信手B「SAM、第二波、目標を追尾中」

中隊長「なんで昼間なのに飛べる!」

鳥類学者「遮光板…!なんて適応能力…」

直撃を物ともせずギャオスは空へ舞い上がっていた。

中隊長「芝公園に墜とす!」

ギャオスは東京タワーを軸に急旋回を見せる。

猛追するSAMはそれぞれギャオスを中心に追尾し、東京タワーの方へと誘導され向かっていく。



― 短SAM陣地

自衛隊員1「急旋回!?」

自衛隊員2「まずいタワーに当たる!」

班長「自爆させろ!」

自衛隊員1「間に合いません!」

SAMは全弾東京タワーの至近距離でレーザー近接信管を作動させて炸裂した。

鉄骨の構造体は焔によって引き裂かれ、東京タワーは展望台より上が飴のように折れ曲がり、周辺のビルに倒れこんだ。



やがてギャオスは折れ曲がった東京タワーの上に戻ってくると、辛うじて残った展望台の上に着地し、そのまま巣づくりを始めた。



― 同 桜高 3の2

ワンセグ『自衛隊の対空ミサイルが!タワーに!東京タワーに命中しました!』

画面には煙を上げる見事に折れた東京タワーが映し出されている。

姫子「お、折れた…」

律「嘘だろ!」

和「…昼間も飛んでる…もう太陽は味方してくれない」

澪「ホントにガメラが最後の希望になった…」

紬「唯ちゃん…」



― 夕方

テレビ『ギャオスから逃れ東京を離れる人達で各交通機関は年末以上の混雑を見せています。

 東京発の下り新幹線は各線とも軒並み180%を超す乗車率で、JRでは臨時列車を増発し、避難する人たちの対応に追われています』

『道路の方は東名高速下り線沼津インターを先頭に100キロの渋滞、東北縦貫道も下り線同じように100キロ程度の』

『現在羽田国際空港は閉鎖されています。これは離発着便がギャオスに与える影響を考慮しての―』

『兜町証券取引所の閉鎖に伴いダウ平均が暴落、各地の証券取引所では売りが殺到しパニックになっています。また円の暴落も日銀の介入―』

『夕方から朝にかけては、決して外に出ないようにしてください。とりわけ広い道路ではギャオスに襲われやすく、厳重な注意が必要です』


『全都民の避難には一週間ほどかかるという試算もあり、わずかギャオス1匹に大混乱となった危機管理体制―』


人々がギャオスに右往左往する中、東京の日は暮れていく。

夕日に照らされタワーに鎮座するギャオスの姿は、まるで人類の勝利を確信しているようだった。

広報車『ギャオスの移動に伴い、港区を中心に交通規制が行われています。都民の皆さんは出来るだけ外出を控えてください―』


中隊長「ちくしょう!」

鳥類学者「東京が空っぽになったら次の餌場に移動と、首都圏近隣の各都市を襲撃する可能性があります」

一等陸佐「警戒範囲を広げなければ…ガメラもいる状況じゃ部隊もまともに割くことが出来ん」

通信手A「ギャオスが産卵しているようです!」

一等陸佐「!」

鳥類学者「!」



― 6月18日 早朝 平沢家

『今朝のJR、私鉄各線の運行状況をお送りします。まずJR、中央線はギャオス襲撃で高架が大破したため―』

憂は連日唯につきっきりで眠っておらず、さすがにまどろんでいた。

『ではここで、ギャオス関連のニュースをお送りします。政府は今朝7時を以てギャオスとの総力戦に臨むことをを決定しました。

この作戦は同時かつ多重的な攻撃によりギャオスを圧倒することが骨子とされています。

これにともなって港区周辺は非常に危険な状態となることが予想され、付近住民の避難の徹底と』


憂「…え?」


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