紬「……間違いないわ、梓ちゃんのカップよ」

律「つまりこれが凶器ってわけか……」

澪「ひぃっ」

唯「(みんなあずにゃんが生きてるの忘れてるんじゃ…)」

紬「指紋を取れば一発でわかるけど今はそんな用具もない…」

律「推理を続けようぜムギ。断定的だが犯人は先に来ていた梓を後頭部からこのティーカップで強打、そして割れたカップを片付けた後どうやってかここから脱出した…ってことになるな」

紬「もう一度確認するわ。鍵はさわ子先生が持っていたのよね?」

澪「う、うん。鍵はこれだけって言ってた」

紬「つまり犯人はさわ子先生…?」

律「待て待て、それじゃ安易過ぎるだろ。そもそも動機がない」

澪「じゃあ律はここにいるみんなが犯人だって言いたいのか?!」

律「そうは言ってないけど…ここにいるみんなには動機があるだろう?」

唯「?」

澪「……」

紬「っ…」

律「唯、お前はみんなにどれだけ好かれているかわかってるのか?」

唯「へ?」

澪「律…っ」

律「この際だ澪! 言わせてくれ!」

紬「そうね…そろそろ言っといた方がいいのかもしれないわ」

澪「でも…」

唯「??」

律「唯……いや、平沢唯っ!」

唯「はひっ」

律「……」

律「なんでそんなに可愛いんだよ……お前は」

唯「……へ?」

律「いっつも何でもない感じで「りっちゃんのこと大好きだよ~」って言われる私の身にもなってみろっ! 抱き締めたくなるだろっ?!」

唯「ほえ?」

澪「唯は自然体過ぎて可愛いんだよな。何か垣根なしに好きでいてくれるって感じがして落ち着くんだ…」

紬「そうね…。唯ちゃんの屈託のない笑顔が御馳走です」

唯「みんなどうしちゃったの?」

律「フンスってなんだよっ! お前をフンスってしたいわっ」

澪「お、お、落ち着くんだ律ぅっ! でも私もフンスしたい…」

紬「ご飯はおかず。唯ちゃん主食」

唯「ええええええっ」

律「なのに唯はいつもいつも梓梓梓あずさっ」

澪「うん…ちょっと寂しいよな」

紬「憎き梓ちゃん…でも二人がまぐさり合うのを見てるのもまたそれはそれで…」

唯「そ、そうなんだ…。なんかごめんね」

律「そして唯! お前にも動機はある!」

唯「!?」

律「いつも梓にスキンシップするも拒まれ続け……その愛が憎しみに変わってく前に……」

澪「なんか聞いたことある歌詞だな」

唯「そんなことしないもんっ」

紬「ただないわけじゃないわ。つまりここにいる全員動機はあるの。それだけで犯人にはなりうるわ」

律「そう言うこと」フンスッ!

唯「(あずにゃん早く起きないかな…)」



律「確かに動機は揃った。けど鍵がない限り出入りは出来ない。ってことはやっぱりさわちゃんが犯人…」

紬「それはないと思うわ。さわ子先生は6限目授業だった筈だから。終わるのは私達と同時、それで梓ちゃんを襲ってから私達と出会わず職員室にいるなんてことは出来ないわ」

律「う~ん」

澪「確か二年生は今日5分短だったよな?」

紬「ええ。夕方から二年生の教室の配電をチェックするとか何とかで」

律「つまり梓は終わってからここに来ていた…ん? 待てよ」

澪「どうしたんだ?」

律「梓はどうやってこの中に入ったんだ?」

澪「どうやってって、それは普通に入ったんだろ」

律「鍵は?」

澪「あっ…。そっか……私達が来たときかかってたんだから梓の時も…」

律「梓が来たときはかかってなかった、とすると…。梓が中に入る→犯行が行われる→鍵がかかる→私達が来るってなるよな」

紬「待って、りっちゃん。決めつけは良くないわ。もしかしたら私達が来たときはまだ気を失ってなかったかもしれない」

律「それって……」

紬「シュレーディンガーの猫ね。もしかしたらその時に犯行が行われたのかもしれない」

澪「つまり犯人は…」

唯「トンちゃん…?」

澪「トンちゃんって」

律「ないない。ってまた唯はそうやって一々可愛いんだよ! フンスしちゃうぞっ!」

唯「(りっちゃんなんか変……)」

紬「いえ、あながち間違ってないかも。古代北欧神話では亀が擬人化したなんてこと良くある話よ。日本にだって浦島太郎って云うお話があるじゃない」

澪「あれは助けられた亀がお礼に竜宮城に連れて行くっていい話だろ?」

紬「いいえ、あれには逸話があってね。実は亀が竜宮城の主に相応しい主人を探すためにテストをしていたって説もあるの」

律「なんとっ!」

澪「亀さんがそんな……」

紬「亀は悪魔の使いなのよ……!」

唯「(ムギちゃん亀嫌いなんだ……)」

澪「じ~」

律「じ~」

紬「じ~……」

トンちゃん「……」

唯「とりあえず餌あげてみよっか」

紬「スキを見せるかもしれないわ!」

律「田井中班了解!」

澪「秋山班りょ、了解」

唯「ぱらぱら~」

トンちゃん「」シュンシュン

唯「あ、餌もらったよサインだぁ」

律「餌は梓があげたのかな」

澪「トンちゃんのこと一番面倒見てるのは梓だもんな」

唯「こうやって鼻息をシュンシュンするのは餌もらったよ~サインだって言ってたのもあずにゃんだしね!」

律「まあ亀が犯人って言うのはさすがに無理が……あれ? おいあれって!」

澪「ん? どうした律?」

律「水槽の中に…」

澪「!? あれは梓のゴムっ!?」



律「つめち~。なんで私が」

澪「じゃんけんで負けたんだから仕方ないだろ」

唯「間違いない、あずにゃんのだよ…これ」

紬「なんでトンちゃんの水槽に…」

律「謎は深まるばかりだな…」

律「ん? そうか、違和感ってこれだったんだ!」

澪「?」

律「いつも餌やってる唯なら気づくだろ?」

唯「ん? あ、あぁっ!」

紬「いつも貼ってる黒い紙が反対側になってるわね…」

澪「ほ、ほんとだ…!」

律「つまり……、こう言うこと!」

ビリッ

りっちゃんが勢いよく黒い紙を剥がすと……そこには割れた窓ガラスがあった!

澪「わ、割れてる……」

紬「つまりこれは密室に見せかけてただけってことね」

律「つまり疑似密室…!」

澪「疑似…」

紬「密室…」

唯「(何だかわかんないけどりっちゃんがかっこいい…)」

律「犯人はここにいつも黒い紙が貼ってあるのを知っていてそれをトリックに使ったんだ」

澪「でもいつかバレるだろ? 私達は部室に毎日来てるんだから気づかないわけがない」

律「確かにな。ただその時間が欲しかったのかもしれない。密室だ密室だと私達に思わせて…その間にこの部屋で何かを回収したり…ね」

澪「…」

紬「…」

唯「(あずにゃんまだ~…)」

澪「でもさ、ここ何階だと思ってるんだ?」

律「……」

ガラララ

律「……」

ヒュ~

ピシャッ

律「たか~い……」

澪「だろ? そんなとこからどうやって外に出るんだよ」

紬「高さに惑わされちゃ駄目よ。高いからこそ脱出出来ることもあるわ。例えば屋上からロープを垂らして上がったり」

律「確かに不可能ってわけじゃないな…」

澪「でもそれならわざわざガラスを割らなくても普通に窓を開けて…」

律「それじゃ密室じゃなくなるだろ? さっき窓の鍵はしまってたんだ。あっちの窓は開かないようになってるし。だからこそ密室は成立してるんだ」


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