(なぜ・・?)
(それがどういう事になるのかわかってるのか?)

言えない
私には・・

(澪に・・)
(こんなのおかしいって)
(私達はこういう関係じゃないんだって)
(言えば全て終わるじゃないか)

違う・・きっとそれを言ってしまえば
その瞬間から
今までの私達の関係まで終わってしまうから
だから、言えない

(だけど私の気持ちはどうなる)
(澪とのそれを望んでる訳じゃないだろ?)

澪「律・・」ギュッッ

少し私に気を使ってくれてたのかな
澪は少し浮かせていた腰を私の腹部に密着させた
澪の重りが上半身に重くのしかかる
澪の両腕は私の脇の下を通って、背中に入り込み力強く私を抱きしめる
澪の頬と私の頬が重なり合っている、澪の呼吸はどんどん荒々しくなる一方だ
肌にかかる澪の吐息を感じながら天井を見つめる
私はそこで自分の感情の変化に気づき始めた
強引な澪の行動に私の感情はいつしか戸惑いから・・・

恐怖に変わっていた

澪「律・・律とずっとこうしたかったんだよぉ・・!」ぎゅうぅぅ

律「・・・うぅ・・・みお・・?」ウルッ

(怖いんだろ?)
(執拗に私を求めてくる澪が)
(これから何をされるのかわからない自分が)
(怖くて仕方ないんだろ?)

ちがうよ・・
ちがうんだって・・

(今ならまだ間に合うよ)
(勇気出して、伝えてごらん?)
(大丈夫、私もついてるから・・・)

ちがうよ!
君なら伝えられるの?
昔からずっと一緒にいてくれた澪を裏切る事が
君ならできるっていうの?

(・・・それは)

私は澪を裏切るような事はできない
澪や澪のお母さんが哀しい顔をしている顔なんて
想像もしたくない!

澪「律・・」ムクッ

澪「律・・・いいよね・・?」

律「・・・」

澪「し、してもいい・・・かな・・?」///

澪の哀しむ顔は見たくないの
澪は私を唯一認めてくれた
こんな私でも優しく接してくれた・・

(・・・それで、お前は・・)
(お前は・・平気なのか?)

私なら、大丈夫
私が
私が・・・
我慢すればいい・・
・・・だけだから

(わかったよ・・・)
(強情なやつだな)

ごめんね

(まったく)
(どうなっても知らないぞ)

澪「りつぅ・・・」はぁはぁ

律「・・・いいよ・・澪」

澪「・・・」

澪「律・・目閉じて・・?」

私は澪に従った
まぶたを閉じその時が来るのをじっと待った
女性同士で唇を重ねる事
抵抗があるのは当たり前の事だった
なのに何故か私の心情はとても落ち着いていて
物事を冷静に考える余裕があった
それはきっと私に強い使命感があったからだと思う
澪の気持ちに応えなくちゃいけないという絶対的な使命感
この場で澪を拒絶する事によって
私は澪という存在を失ってしまうかもしれない
そんな恐怖の感情に比べたら
私の抵抗感は一時的な感情に過ぎなかった

澪「・・・ん・・・」チュッ

律「・・・ん・・」

澪の柔らかい唇が私の唇と重なった
澪の甘い匂いが一気に私の周りを支配した
幼いころに経験した事のある香りだ
そうこれは澪の香り、ずっと忘れていた
唇を重ねた事に、さほど後悔は無かった
これで澪との関係を維持できるのならと思った
一瞬の口づけで全てが片付いた
そう思い、安堵の気持ちが芽生え私は口を開いた

律「澪・・積極的・・だね・・」

澪「・・・嫌・・だった?」

律「ううん・・嫌じゃないよ・・」

私は積極的な澪も素敵だなと思った
そのままの意味で伝えたつもりだった

澪「じゃあ・・もっとしたい・・」グイッ

律「・・え・・?・・みお・・っん・・?!」ピチャッ

突然澪の舌が私の口内に入ってきた
私は突然の事で頭の中がパニックになった
澪を満足させ、これで全てが丸く収まるのだと思っていた
そんな私の期待は裏切られ、想定外の事が今起こっている
私は目を大きく見開き、澪の紅潮した顔を見つめる
澪は目を瞑ったまま、舌を精一杯私の口内へ伸ばし
強引に私の舌と絡ませてくる
戸惑いから、私は舌を口内の隅まで避難させた
澪はさらに舌を伸ばし、口内の隅に置かれた私の舌を見つけ出す
言葉では伝えられなくても、澪の舌の動きから
私の舌との交わりを要求しているのは、直ぐに理解した
澪の要求を拒絶する選択肢は、私の中ではありえなかった
私は恐る恐る澪へ自分の舌を差し出す
澪の舌は、満足する様に私の舌を堪能し始める
澪の唾液が私の口内で私のそれと混ざり合う
澪の唾液の味を、私の舌を通じて感じ取る

澪の事は大好きだよ
だけどね
私が澪を好きな感情と、澪が私を好きな感情はきっと似ている様で
全然違うものなんだ
わかっていたつもりの事を、
お互いの舌を絡ませる事で、今はっきりと認識させられた

私からしてみたら澪とのそれは気分を害するものでしかなかった
嘔吐感すら感じられる程に、私の体は澪を拒絶していた

澪「・・・んっ・・はぁ・・はぁ・・」ぴちゃ・・ぴちゃ・・

律「ん・・んんっ・・・ん~!・・」

我慢すればいい
私が我慢すれば全て丸く収まる
そうさっき誓った筈なのに
私の体は自分の意識とは反して、澪に今の自分の感情を素直に表現した
澪の両肩を手で掴み
澪の唇が、私の唇から離れる様に力一杯上へ押し上げようとした

律「・・・んっ・・んん~!・・」ぐい

澪「はぁはぁ!・・・ぴちゃ・・ちゅうぅ・・」ガシッ

私は大きな澪の手で両手をベッドに押さえつけられてしまった
私の小さな抵抗は、きっと澪からすれば
この行為を私が受け入れてくれてるんだと思わせたのかもしれない
ううん・・違うな・・
抵抗する私をわかっていながら押さえつける
澪はそんなひどい人じゃないって・・
私がそう思いたかっただけなんだ

澪「はぁ・・はっ!・・りちゅ・・好き・・だよ・・?」ぴちゃぴちゃ

律「・・・」

これが・・
これが・・私の選んだ事だったんだ
澪に全てを委ねるしかない
全てが終わるまで、澪に身を預けるしかない
どんなに私が望まない事であっても
それで澪の笑顔が見られるのであれば・・
それで澪を満足させられるのなら・・
それで澪と一緒にいられるのなら・・

(ばかな・・やつだな・・くそっ)



澪「ぷはっ・・はぁ・・はぁ・・」

律「・・・」

どれだけ唇を重ねていたのだろう
どちらのものか分からない唾液が澪の唇を光らせている
きっと私の唇も同様だろう
私の意識はまるでどこかへ飛んでいってしまったかの様に
今は何も考える事ができない
抜け殻の様な状態で、きっと虚ろな目をしていたと思う
少し時間を置いて澪の息が整った頃
澪が眉を曲げ、哀しげな表情に移り変わり
私の顔をじっと見つめてくる

澪「律・・どうしたんだ・・?大丈夫か・・?」

私はなぜ澪がそんな表情で、そんな問いかけをしてくるのか理解できなかった
澪を喜ばせる為、澪を哀しませない為、
澪が今見せている表情を、私は見たくなかったから・・
私は・・澪を受け入れたんだよ・・?
なのになぜ・・なの・・?

澪「律・・嫌・・だったんだな・・ごめん・・」スッ

こめかみをつたう私の涙に、一番最初に気づいたのは澪だった
澪は私の涙を手で優しく拭ってくれた
さっきまで私を押さえつけていた手と
同じ手とは思えないくらい優しい手だった

律「・・あれ・・おかしい・・ね・・なんで・・だろ・・?」ぽろっ

澪「ご・・ごめんっ!・・りつ・・私・・なんてことっ・・!」うるっ

澪の目が涙で潤んだのを見た瞬間、私は我に返った
と、同時にどうすれば良いのかも
私の頭は冷静に答えを導き出した

律「・・違うよ・・?澪」

澪「・・え?」

律「・・嫌な訳・・ないでしょ」

律「澪と一緒になれて・・嬉しかったから・・涙でちゃった・・」

澪「ほんと・・に・・?」

律「・・ほんとだよ?ありがとう澪」

澪「よ、良かったっ!・・っていうことは・・さぁ」

律「?」

澪「恋人・・に・・なってくれるのか・・?」

律「・・・」

律「・・・うんっ・・もちろん」

澪「ほ、ほんとか!?」パァ

律「ほんとだよ・・澪の事・・好きだから・・」

澪「わ、私も・・律の事・・だ、大好きだからなっ!」///

律「・・・」

澪「と、とりあえず・・これからもよろしくなっ」///ダキッ

律「・・・うん」ぎゅっ

きっと普通に好きな人ができて
普通に相思相愛になって
時期がきたら、そういう関係になって
私は今日この日まで、なんの疑いも無くそう思っていた
その相手は、間違い無く「男の人」を想像していて
それが普通の事なんだと、学校の授業でもしつこく教えられて



もう私・・
どうしたらいいのか・・
わかんないよ・・

澪は私と同じ女の子なのに
なんの抵抗もないのだろうか
それともおかしいのは私の方?

もうわからないよ・・
澪・・
澪が怖い・・
私には澪の事がわからなくなっちゃった・・



澪にこういう行動をさせたのは
多分あの時の約束があったからだ
好きな人ができたら真っ先に言い合う事
あの時の約束
後悔が無いと言えば嘘になる
ねぇ・・澪
それが無ければ・・
あの時のあの約束が無ければ・・
私達ずっと親友でいられたかな?

ねぇ・・澪・・
もう一度昔みたいに、戻りたいよ・・


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