ハマーン様「二年前、この地域で大きめの地震があった」

唯「うん、あのときは本当にビックリしたよね」

麿子「あの地震でこの近くの山で地すべりが起きて、昔の地層が現れた」

ハマーン様「私たちは何か謎がないかと調査へ出かけた」

麿子「そこで、約5万年前と思われる地層から普通では考えられないものが見つかった」

唯「普通では考えられない?」

ハマーン様「5万年前の人類、ましてや現在の科学技術でも成し得無いであろう
       スーパーテクノロジーを秘めたものが出土した」

麿子「それは、5万年という時の流れから置いて行かれたかのように腐食などは全くなかった」

ハマーン様「それどころか、自己修復をしていることも確認された」

麿子「炭素繊維でもなければ金属でもない」

ハマーン様「おおよそ人類には作りようのない代物だった」

唯「なんだかよくわからないけど、すごいね! 私もそれ見てみたいな」

ハマーン様「い、今はここには無い……」

唯「……へ~」

麿子「しかし、一緒に見つかった手帳のようなものはある」

ハマーン様「これがそう」

唯「なんか、変な文字がびっしり書かれているね」

麿子「これは明らかに地球文明の文字ではない」

唯「だったら……」

ハマーン様「間違いなく地球外文明の文字」

唯「その自信はいったいどこから……」

麿子「失踪した部員はとても頭が良く、この文字を解明することに全精力を費やした」

ハマーン様「そして、ついにこの手帳にある内容の殆どを解読することが出来た」

麿子「どうやら、この手帳の持ち主は手帳に書いてある公転周期から計算すると
   今はもう存在しない惑星ミネルヴァ出身であることがわかった」

ハマーン様「ミネルヴァは火星と木星の間にあった惑星
       それがオーバーロードによって破壊され、今は小惑星と化し
       アステロイドベルトを形成する元になった」

唯(さっぱりわからん……)

麿子「私たちはそうやって地球に逃げてきたミネルヴァ人が伝えてくれた
   オーバーロードの危険性を人類に警鐘するために活動している」

ハマーン様「先の学園祭のときにもキャトルミューティレーションの考察に紛れ込ますように
       オーバーロードに対する私たちの対策を示しておいた」

唯「なんで、そんな隠すようなことを……」

麿子「先程も言ったように、すでにこの地球には奴らが住み着いている」

ハマーン様「この学校の生徒も例外じゃない」

麿子「オーバーロードはこの学校の生徒になりすまし監視の目を光らせているかもしれない」

ハマーン様「だから、おおっぴらに出来ない現実がある」

唯「生徒の中に……宇宙人?」

麿子「オーバーロードは実態を持たない、精神体のようなもの」

ハマーン様「おそらく人間に取り付き徐々に体を乗っ取る
       本人はそれには気づかない。でも、人間の行動原理とかけ離れたことを希にすることがある」

麿子「あなたも、もし、普段と違う行動をしている人間に会ったのなら気をつけてほしい」

唯「そ、それっていきなり他人のショートケーキの苺取ったりする人のこととか!?」

ハマーン様「……普通に考えれば、人間がそんなことをするはずがない」

唯「ま、まさか……和ちゃんが……」



 平沢家

唯(和ちゃんが、宇宙人に取りつかれてるなんて……)

唯(まさか……ね)

唯(オカ研の子たちも面白半分で言ってるだけだよね)

憂「────だからね、お姉ちゃん」

唯(……でも、生徒会室でケーキ食べたときに、私が和ちゃんのことを
  人間にあるまじき行為って言ったときのあの動揺のしかた……)

唯(今考えれば、和ちゃんが宇宙人だから、あんなにうろたえたのかな……?)

唯「……」

憂「お姉ちゃん? 私の話聞いてる?」

唯「えっ? ごめん、何だった憂」

憂「だから、私明日早く家を出るから、お姉ちゃん一人で起きれるかなって」

唯「う、うん。大丈夫だよ」

憂「そう? 本当に昼まで寝てちゃ駄目だよ」

唯「そんなに寝坊しないよ~」



 ・ ・ ・ ・ ・

憂「おやすみ、お姉ちゃん」

唯「うん、おやすみ~」



唯「今日、オカ研で言われたこと……」

唯「あまりにも現実離れしてて本当に信じられないけど……」

唯「和ちゃんが宇宙人?」

唯「もっと色々な話を聞いた……」

唯「えっと、確か……」



 ~~ 回想 ~~

麿子「和ちゃん?」

唯「生徒会長の真鍋和ちゃんだよ!」

ハマーン様「……実は我々も彼女のことは前から怪しいと思っていた」

唯「ええっ!?」

麿子「オーバーロードは特に頭脳の優れたものを好む」

ハマーン様「常に学年上位の成績を残している彼女は
       まさにオーバーロードが取り付く人間にピッタリ」

唯「そういえば、最近私に対しても勉強勉強ってうるさかった」

麿子「オーバーロードは人類を導く存在」

ハマーン様「勉強を強制するということは人類のレベルを引き上げることに繋がる」

唯「と、言うことは……」

麿子「真鍋和はオーバーロードに取り付かれている可能性が限りなく高い」

唯「そ、そんな……!!」

ハマーン様「あ、あくまで推測」

唯「だったら、もしかしてムギちゃんも……」

麿子「……詳しく聞かせてほしい」

唯「軽音部の部員でキーボード弾いてて、ほらあの眉毛の太い琴吹紬って子
  私たちはムギちゃんって呼んでるんだけど」

ハマーン様「もしかしたら、眉毛に寄生する新しいタイプかもしれない」

唯「や、やっぱり……」

麿子「何か心当たりが?」

唯「私たちもう受験生じゃない? でもあんまり勉強しなかったから
  そのムギちゃんが率先して皆で勉強しましょうって」

ハマーン様「人類の知能を上げるのがオーバーロードの目的の一つ」

唯「それに、たまに有り得ないパワーを発揮するときがあるんだ
  一人じゃ無理だろうって思うような棚をムギちゃんだけで動かしたり
  あ、それに予知能力みたいなのもあったよ」

麿子「肉体の限界値を引き上げることも、もしかしたらあるかもしれない
   それに他人の心を読んだり、未来を見るなんてこともオーバーロードにとっては簡単なこと」

唯「そ、そっか……」

唯「でも、勉強教えてくれたり、力がついたり、別に私たちにとっても悪い宇宙人じゃないんじゃないの?」

ハマーン様「オーバーロードは残す人間と破棄する人間を選別している」

唯「選別?」

麿子「そう、その選別に洩れたミネルヴァ人がこの地球に逃げこんできた」

ハマーン様「オーバーロードに認められた人間のみが新たな扉を開く権利を与えられる」

麿子「星の生命を吸い尽くし高位次元体になる権利を」

唯「あ~、だったら私はきっと選ばれないだろうな」

ハマーン様「オーバーロードに不必要だとされた人間はこの星の生命と共に最期を迎える」

麿子「良質なミネルヴァ人を高位次元体に変えたオーバーロードは次にこの地球の知的生命体。
   すなわち人間がある程度の文明レベルに達したところで人間の進化に干渉しようとしている」

ハマーン様「二年前、彼女はそれを食い止めようとオーバーロードに戦いを挑んだ」

唯「彼女って、失踪した人のこと?」

麿子「そう」

ハマーン様「彼女はその戦いに敗れ、その場から姿を消した」

麿子「学校側もその失踪は把握しているけど、現実離れした事実に
   そのことはなかった事にしようとしている」

ハマーン様「どうしても説明できない出来事が起こると大人は隠そうとする
       大人というのはズルイ生き物」

唯「本当にそんなことが……」

ハマーン様「……実は私たちも詳しいことは知らない」

麿子「……その場にいなかったから」

ハマーン様「彼女はもしものことがあったらいけないからと
        私たちにはそれに参加しないようにと説得をした
        不本意だったが私たちはそれに従った」

麿子「そして現実に最悪の事態になってしまった」

唯「だったら、本当にそのオーバーロードと戦ったかなんてわからないんじゃ……」

ハマーン様「その戦いに参加して生き残った人間がいる」

唯「えっ?」

麿子「木下しずか」

唯「しずちゃんが!?」

ハマーン様「でも、木下さんはその時のことを口をかたく閉ざして話そうとしてくれない」

麿子「記憶が無いのか、それともオーバーロードに口止めされているのか」

ハマーン様「もしくは、オーバーロードに支配されているのか」

ハマーン様「あの事件があってすぐ、木下さんはクラブの活動日誌に何かを書いていた」

麿子「おそらく、そのときにあったことを書き残そうとしたんだと思う」

ハマーン様「でも翌日、私たちがその日誌を見ようとしたら
        該当のページは破り取られていた」

麿子「真実を隠蔽しようとした者がいるということ」

ハマーン様「その日を境に木下さんはオカ研を辞め多くを語ろうとはしなかった」

麿子「私たちはそれでも、色々と調べてやっと真実に近づいた」

ハマーン様「彼女が消えて明日でちょうど2年」

麿子「だから、その日に今度は私たちが戦う番」

唯「か、勝てるの?」

ハマーン様「やってみないと何とも言えない」

唯「そんな……」

~~~~~~~~~~~~~~~



唯「オカ研の二人は明日戦うって言ってた」

唯「……どうなっちゃうんだろ」

唯「オーバーロードは人類を導く者……」

唯「本当に悪い宇宙人なのかな……」

唯「……」

唯「明日、もう一度学校で話を聞いてみよう」


 一抹の不安を抱えながらも唯は床に就いた

 天井から吊り下げているUFOが揺れている
 ゆらゆらと、まるで唯の気持ちを表すかのように



 翌朝

唯「……う~ん」

唯「……今何時~?」

唯「……目覚まし、目覚まし」

唯「なんだ、まだ、4時前か……」

唯「zzzzz……」

唯「って!? もう窓の外はこんなに明るいのに4時なわけないじゃん!」

唯「やっぱり! 携帯の時計はもう9時だ!」

唯「最近目覚ましの調子が悪いと思ったら、電池切れかかってたんだ!」

唯「大遅刻だよ~!!」

唯「なんで、憂は起こしてくれなかったの~!」

唯「……そういえば、昨日憂は早くに家を出るとか言ってたっけ」

唯「も~う! 私のお馬鹿さん!」



 ・ ・ ・ ・ ・

唯「うぅ~、今まで遅刻ギリギリはあってもこんな大遅刻することはなかったのに~」

唯「とにかく、急げや急げ!」

唯「時間が時間だからかな~、街の雰囲気がいつもと違う気がするよ~」


 そう、もし唯がこのときの街の変化にもっと敏感に気づいていたら
 今から起こる惨劇をあるいは回避できたかもしれない

 しかし、寝坊をしたというあせりからか唯はそれを見逃してしまっていた

 空は相変わらず厚い雲に一面を覆われている
 まるで何かを隠すかのように……



 ・ ・ ・ ・ ・

唯「やっと着いた!」

唯「って!? 校門も閉まってる!」

唯「どうしよう……、とりあえず乗り越えて入ろうかな……」

唯「うんしょ……っと」

唯「とう! 着地決まった! 10.00!」

     コロコロ……

唯「ああっ! ギュー太がカバンから外れちゃってる!」

唯「乗り越える時に引っ掛けちゃったのかな」

唯「もう一度カバンに付けて……これでよし、と」

唯「とにかく教室へ急がなきゃ!」



 ・ ・ ・ ・ ・

唯「……あれ? なんだろう。静か過ぎるよ」

唯「誰もいない?」

唯「な、なんで……」

  『ベントラー ベントラー スペース・ピープル……』

唯「ひっ!? どこからか……声が……」

唯「そ、空耳かな……」

  『ベントラー ベントラー スペース・ピープル……』

唯「空耳なんかじゃない! どこかで誰かが何かをしている!」

  『ベントラー ベントラー スペース・ピープル……』

唯「お、屋上かな……」



 ・ ・ ・ ・ ・

唯「一応、屋上に行く前に教室見て回ったけど、本当に誰もいなかった……」

唯「ううっ……みんなどこに行っちゃったの……」

唯「……」

唯「まさか、昨日オカ研の子達が言ってた宇宙人が……」

  『ベントラー ベントラー スペース・ピープル……』

唯「!? ま、また聞こえてくる……」

唯「きっとそうだ……、その宇宙人が変な呪文を唱えて
  みんなをどっかに連れていったんだ……」

唯「……ううっ、どうしよう」

唯「……」

唯「ここでうずくまってたって、何にもならない」

唯「確かめてやる!」



 屋上

ハマーン様「何か変化はあった?」

麿子「いや、まだない」

唯「あ、あれは!?」

唯「ハマーン様ちゃんに、麿子ちゃん!」

ハマ・麿「!?」ビクッ!!

唯「よかったよ~、私一人だけじゃなかったんだね~!」

ハマーン様「なぜ、あなたがここに!?」

唯「うわ~ん! 寂しかったよ~」

麿子「あ、あんまり騒がないでほしい……」

唯「学校に大遅刻したかと思って急いで来たら
  誰もいなくて心細かったんだよ~!!」

ハマーン様「……」

麿子「よくぞ無事でいた」

ハマーン様「!?」

唯「ど、どういうこと?」

麿子「思ったよりもオーバーロードが早く行動を起こした」

麿子「この学校の敷地内へ入ると別の空間へ転移される仕掛けが施してあった」

麿子「おそらくは、それでみんな気づかない内にオーバーロードの
   罠に嵌ってしまった」

麿子「私たちはみんなを救い出すために、こうやって戦いの準備をしている」

唯「そうだったんだ……」

麿子「私たちのこの黒装束はミネルヴァ人の技術を真似て作った
   全ての電磁波や光波を無効化する優れもの」

麿子「だから、私たちは学校に入ってもこうやって現実世界に留まることができる」

唯「……あれ? だったらなんで私もこっちの世界にいるの?」

唯「学校に入った瞬間に転移されるんなら私もそうなるんじゃ……」

麿子「それは……」

ハマーン様「……そのカバンに付けている牛」

唯「ああ、貰った牛だね。名前はギュー太っていうんだよ」

ハマーン様「それはミネルヴァ人の持ち物の中にあった素材と同じ物で作ったもの」

ハマーン様「それも、特殊な素材で出来ている」

ハマーン様「きっとそれがお守りになってあなたを守ってくれた」

唯「そっか……だからあのときカバンから落ちちゃったんだ」

ハマーン様「……きっとそう」



 prrrrrrrrr…

唯「あれ? 電話」

ハマ・麿「!?」

唯「……澪ちゃんから?」

唯「なんだ、やっぱり無事だったんじゃ……」

ハマーン様「出てはいけない!!」

唯「えっ!?」ビクッ!!

麿子「それはきっとオーバーロードの罠」

唯「ど、どういう……」

ハマーン様「その電波をキャッチすることによって座標を特定され
        直接空間転移を仕掛けられる恐れがある」

唯「そ、そっか! 危ない危ない」

ハマ・麿「……」

唯「じゃあ、電話に出なきゃ安全だってことだね」

麿子「その通り」

ハマーン様「話が早くて助かる」

唯「でも、そのオーバーロードに連れ去られた人たちはいったいどうなっちゃうの?」

麿子「きっと高位次元体になるために徹底的に管理された生活を余儀なくされる」

唯「管理された生活?」

ハマーン様「そう。争いごとも優劣もない、本当に平和な世界」

麿子「そこで永い年月を経て、人々は体を捨てる」

唯「体を……捨てる?」

ハマーン様「生物は進化の度にその形状を変えていった」

麿子「古代、海で生まれた生物は陸へ上がるためにヒレを腕や足に変えた」

ハマーン様「同じように、宇宙へ飛び立とうとするためにも進化が必要」

麿子「人間の寿命は精々100年」

ハマーン様「だけど、宇宙の広さから見ればそれは本当に少しの時間」

麿子「肉体があるから、体が衰え老いがきて人は死ぬ」

ハマーン様「だから、宇宙を旅するためには体は不必要」

唯「ご、ごめん。言ってることが良くわからない……」

麿子「要するに心だけになって死ななくなる」

唯「幽体離脱みたいなもの?」

ハマーン様「……そう思ってもらっても構わない」

唯「そうなんだ~、なんだか面白そう」

麿子「でも、そのためには永い間オーバーロードの管理下で
    ゆっくりと何世代もかけて進化していかなければならない」

唯「争いもない世界……だっけ?」

ハマーン様「そう。今までの人類の歩みを完全に無視した世界」

麿子「個人的な考えは否定され、常に種としての個を強要される」

ハマーン様「人類が一つになるためには何か一つの絶対的な考えを与えてやるのが一番簡単」

麿子「それによって人類は進化をただ促されるだけ」

ハマーン様「そこには個性は存在しない」

唯「二人はそんな人類を憂いてオーバーロードに戦いを挑むの?」

ハマーン様「そう」

唯「もし、負けちゃったら?」

麿子「きっと、不必要な人間として処分される」

唯「私も……?」

ハマーン様「……こちら側にいるということはたぶん」

唯「……嫌だよ」

麿子「平沢さん?」

唯「たとえ、与えられた平和でも、私は皆と一緒にいたいよ!」

ハマーン様「お、落ち着いて」



 prrrrrrrrr…

唯「また、澪ちゃんからだ……」

ハマ・麿「……」

唯「私弱い人間なんだ……」

唯「この電話に出たら皆のところに行けるんだよね」

ハマーン様「だ、だめ」

唯「私、りっちゃんや澪ちゃんやムギちゃんやあずにゃんのいる軽音部で過ごしたい」

唯「和ちゃんや憂とも一緒にいたい!」

唯「こんなわがままな私だけど……お願い、わかって下さい」

麿子「出たら終わっちゃう……」

唯「ごめんね。二人とも……」

      ピッ

 …
 …
 …


唯「……」

澪『おーい、もしも~し』

唯「……澪ちゃんの、声が聞こえる……」

澪『寝てるのか~?』

唯「目を開ければ……そこは争いのない平和な世界」

澪『おい唯! 電話に出たんなら何か返事をしろ!』

唯「……って、あれ? まだ学校の屋上?」

麿子「……」

唯「いったい、どうなって……」

ハマーン様「ごめんなさい」

唯「えっ?」

澪『唯! いい加減にしないと怒るぞ!』

唯「澪ちゃん?」

澪『ああ、やっと出た。もう唯の家の前に皆集まってるぞ』

澪『ったく、唯が勉強会は昼からがいいって言ったからこうやって昼にしたのに
  今の今まで寝坊するとはどういうことだよ』

唯「え? あれ?」

澪『早く起きて玄関の鍵開けてくれよ。じゃあな』

   ツー ツー ツー

唯「ええっと……」

ハマーン様「平沢さんがあまりにもノリがいいので私たちも調子に乗ってしまった」

唯「じゃあ、オーバーロードとかは……?」

麿子「あれは、嘘。というよりもそういう設定」

唯「設定!?」

ハマーン様「私たちが考えた宇宙人の設定」

麿子「その設定を披露する機会が訪れて浮かれてしまった」

ハマーン様「普段はこんな話、誰も真剣に聞いてくれないから……」

麿子「だから、平沢さんが私たちの話を聞いて
    真鍋さんや琴吹さんのことを宇宙人に取り付かれていると勘違いしてくれて
    私たちの設定がそこまで優れたものだったのか、と血が騒いでしまった」

ハマーン様「どうか許してほしい……」

唯「じゃあ、失踪した部員っていうのは……?」

麿子「……ただ転校しただけ」

唯「残念だよ! まったく残念だよ!」

ハマーン様「2年前に今日のような誰もいない学校の屋上で宇宙人と交信しようと試みた。
        さすがにそれを誰かに聞かれたり見られたりするのは恥ずかしいから」

麿子「でも、生徒会に屋上の使用許可申請を出したにも関わらず、何故か一向に返事が来なかった」

ハマーン様「これが私たち弱小部に対する生徒会の答えだと知り
        転校間近だった彼女とその親友だった木下さんは
        許可のないまま屋上で宇宙人との交信を始めた」

麿子「それがバレて、木下さんは退部。もう一人はただ転校していっただけ」

ハマーン様「私たちは、このオカ研を守るためにそれには参加しなかった」

麿子「この件を生徒会に問いただすと、そんな申請は聞いていないとしらを切り続けた」

ハマーン様「私たちは怒った。当時の活動日誌に生徒会への恨み辛みを書きなぐった」

麿子「でも、あとで冷静になってみるとさすがにヤバいと思い該当のページを破りとった」

ハマーン様「だけど、こうやって毎年生徒会への申請をせずにこっそりと
        誰もいない学校の屋上で宇宙人との交信をするのがせめてもの抵抗」

麿子「私たちのオカルト魂は誰にも止められない」

唯「あ~、そうだったんだ~……」

唯「でもさ、しずちゃんにそのことを聞いたら
  すっごい何か訳有り気に逃げていったんだよ」

ハマーン様「それは、私たちが頼んだこと」

唯「えっ?」

麿子「オカ研に謎はつきもの。だから私たちが、部員失踪の噂をばらまいた」

ハマーン様「木下さんは私たちに気をつかって真実をバラさない約束をしてくれた」

麿子「おかげで昨日今日と平沢さんを巻き込んだ濃いSF談義ができた」

ハマーン様「木下さんにも感謝している」

唯「……2人なのに部として活動できてる訳は?」

麿子「私たちは同好会」

ハマーン様「部じゃないので活動は自由。そのかわり部費は落ちない」

唯「……」

唯「じ、じゃ~さ、なんで今日は学校に誰もいないの?」

ハマーン様「本当にわからないの?」

唯「まさか、嘘だなんて言って私を油断させといて
  本当は私たちが宇宙人だったのだ~! なんてオチじゃ……」

麿子「平沢さんの頭はとてもおめでたい」

唯「いや~、照れるよ~」

麿子「……」

ハマーン様「……なぜ、今日学校に生徒がいないのか
        それは携帯の待ち受け画面を見ればわかると思う」

唯「え~、ホントに~?」

    パカッ

唯「……」

唯「なるほど……」




唯「SUNDAYじゃねーの」

 おしまい