・ ・ ・ ・ ・

さわ子「満足じゃ~」

唯「結局さわちゃんはさわちゃんだったね」

さわ子「さてと、じゃあ食べ終わって満足したことだし……」

さわ子「あなた達、テスト期間なんだから早く帰りなさい!」

律「さっきまでさわちゃんだって一緒になって食べてただろ!」

さわ子「さっきまでの私は欲望の赴くままの私」

さわ子「でも、今の私は教師山中さわ子よ!」

唯「ずるい~」

さわ子「大人になるっていうのはこういうことなのよ!」

澪「そんな大人になるんだったらこっちから願い下げです」

さわ子「ほらほら、後になって怒られるのは私なんだから早く帰ってね」

律「ったく仕方ないな~」

さわ子「あ、そうだ。唯ちゃんと真鍋さん、ちょっと」

和「何ですか?」

さわ子「あなた達、英語の先生に何かしたの?」

唯「え、英語!?」

さわ子「なんだか怒ってたから早めに謝っといたほうがいいわよ」

紬「宿題写してたのバレちゃったとか?」

律「おいおい、丸写しは私たち写ラーにとってはご法度だぜ」

澪「なんだよ写ラーって」

律「他人の宿題に全てを委ねる愛の戦士! その名も自分で宿題やりま戦隊写ラー!」

澪「馬鹿か……」

律「私が澪の宿題写してることバレないのは、適度にその問題に合うような
  間違いを忍ばせてるからなんだぞ、感謝しろよ!」

澪「威張るな!」

さわ子「とにかく、今日はもう帰って、言い訳するなら明日にしなさいよね」

紬「遅くまでいたことがバレちゃったら更に心象が悪くなっちゃうかもね」

和「確かにそうね、じゃあ明日にでも謝りに行こうかしら」

唯「ごめんね、和ちゃん……」

和「今、私に対して思っているごめんって気持ちを何十倍にもして
  先生にぶつけてくれたらきっと大丈夫よ」

唯「うん! しっかりと反省の態度を示します!」



 翌日 放課後

和「じゃあ、唯、そろそろ職員室まで謝りに行くわよ」

唯「はぁ~……気が重い……」

澪「自業自得だろ」

律「そうそう、自分でやらないのが悪いんだから」

澪「お前は……」

紬「終わるまで待ってようか?」

唯「ううん。もしかしたら長くなるかもしれないし、先に帰ってて」

紬「そう?」

和「そうね、あなた達も勉強する時間が惜しいんじゃないの」

澪「まぁ……」

律「じゃあ、私たちは先に帰るけど、唯と和もちゃんと生きて帰ってくるんだぞ!」

唯「もし、生きて帰ってこれたら……りっちゃんにあのとき言えなかった言葉を伝えるよ」

律「……唯」

和「ほらほら、馬鹿なこと言ってないで早く行くわよ」



 職員室前

唯和「失礼しました」

唯「意外とすんなり許してくれたね」

和「まぁ、先生も宿題写すなんて日常茶飯事だってことくらいはわかってるわよ」

和「問題は唯が毎回私のノート写してることが丸分かりだってことじゃないかしら」

唯「りっちゃんはバレないようにわざと間違えるって言ってたもんね」

和「一応、間違えるっていっても、それらしい間違えじゃないと怪しまれるから
  わざと間違えるのって逆に頭使うかもね」

唯「わざと間違えるなんて、姑息でちょっとな~」

和「でも、その嘘のおかげで澪は先生に怒られずに済んで
  私は、あなたの共犯としてこうやって謝りにきてるわけなんだけど」

唯「う~ん。そう言われると、返す言葉もありません……」

和「確かに律の場合も褒められたもんじゃないけど
  自分なりに工夫して澪に迷惑にならないようにしている」

和「そういう意味では、唯よりはいくらか考えての行動だっていうことね」

唯「でも、結局は宿題やってないんだから、私とあんまり変わらないよね」

和「私としては、怒られない方がありがたいけどね」

唯「ズル賢い人が得する世界っていうのもな~」

和「別に得なんてしないんじゃない?」

唯「だって、宿題は自分でやってないし、バレないから先生からも怒られないし」

和「そうやって宿題やらないでいるといつかは宿題やらなかったしっぺ返しがくるものよ
  家での勉強の習慣が身につかないし
  その積み重ねで大学へ合格出来るか出来ないかも自分の責任」

唯「厳しいなぁ~」

和「でも、これで少しは自分で努力しなきゃいけないって学んだでしょ」

唯「うん。ご迷惑をおかけしました」

和「唯がちゃんとわかってくれたんなら、私は言うことないわ」

唯「なんかお母さんみたいだね」

和「私は昔っから唯の保護者気分だったけどね」

唯「先生も『真鍋がそう言うなら』って許してくれた感じだったもんね」

和「今までの行いのおかげね」

唯「和ちゃん信用されまくってるよね」

和「処世術よ。そういう唯だって皆から愛されてるわよ」

唯「えへへ~」

和「勉強も出来たらもっと言うことないんだけどね」

唯「もう! 勉強勉強ってうるさいよ~」

和「これくらい言わないとやらないでしょ、あなた」

唯「グレてやるんだから!」

和「はいはい」

唯「むむむ~……」

和「ほら唯、早く帰って勉強しなさいよ」

唯「和ちゃんは帰らないの?」

和「私は昨日の棚の整理があとちょっとだから、それやってから帰るわ」

唯「だったら、私も手伝うよ」

和「駄目、早く帰って勉強しなさい」

唯「ちぇ~。だったら和ちゃんだって」

和「言ったでしょ、私は普段からしっかり勉強してるから
  テストだからって、特別に集中して勉強する必要が無いって」

唯「先生に見つかったら、遅くまで残るな~って怒られるよ」

和「私に限ってそんなこと無いから、心配ご無用」

唯「優等生って何かと優遇されるよね~」

和「羨ましかったら、あなたも優等生になってみなさい」

唯「和ちゃんのいぢわる~」

和「ふふっ。じゃあね」



 ・ ・ ・ ・ ・

唯「う~ん」

唯「家に帰って勉強しなきゃいけないとなると、家に帰りたくなくなるんだよね~」

唯「ちょっとだけ、部室にトンちゃんの様子でも見に行こうかな」

唯「気分転換、気分転換♪」

  テクテク… テクテク…

唯「軽音部の部室に行くためにオカ研の部室の前を毎日通ってるけど
  それほど気にしたことなかったんだよね~」

唯「結局、謎は謎のままか~……」

唯「って、うわっ!?」ツルッ

    スッテ~ン!!

唯「ばたんきゅ~……」

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 ・ ・ ・ ・ ・

麿子「    」ボソボソ

ハマーン様「     」ボソボソ

唯「……うぅっ」

唯(ここは……? 私……どうしちゃったんだろ……?)

唯(あそこにあるのは……バオバブの木?)

麿子「────彼女が?」ボソボソ

ハマーン様「間違いなさそう」ボソボソ

唯(あの二人は、オカ研の……)

ハマーン様「重要な最後のピース……」

麿子「選ばれし者……」

唯(何を言ってるんだろ……?)

唯「痛たたた……」

麿・ハマ「!?」

唯「う~、頭が痛い……」

ハマーン様「気がついた?」

唯「私、どうしちゃったの? ここは?」

麿子「ここはオカ研の部室」

ハマーン様「あなたは、私たちの実験の被験者になってもらった」

唯「実験?」

麿子「人は本当にバナナの皮でスベって転ぶのか」

唯「そうだ! 私、オカ研の部室の前で何かを踏んづけて転んで」

ハマーン様「まさか、あのように派手にすっ転ぶとは思いもしなかった」

麿子「またこの世の謎が一つ解明された」

ハマーン様「感謝する」

唯「私もバナナの皮で転ぶなんて迷信だと思っていたよ」

ハマーン様「その迷信かどうかを解明するのが私たちの使命」

唯「そっか~、やっぱり日夜謎と戦い続けてるんだね」

麿子「でも、あなたに害を及ぼしてしまった」

唯「あ~、でも、私もその謎の解明の力になれたんだったら嬉しいよ」

ハマーン様「そう言ってもらえると助かる。お返しに何か私たちが出来ることはないか?」

唯「そんな、気にしなくてもいいよ~。バナナの皮でスベって転ぶなんて経験なかなか出来ないもんね」

麿子「でも、それじゃあ、私たちの気が済まない」

ハマーン様「今、あなたが抱えている日常の謎なんかがあれば私たちが解決してあげるが?」

唯「そんな、謎なんてないよ~」

麿子「そんなはずは無い」

ハマーン様「生きている限り謎は付き纏う」

麿子「例えばテレビのリモコンが突然消える謎」

ハマーン様「例えばコード類のありえない絡まり方」

唯「オカ研とは思えないほどの庶民的な謎だね」



麿子「本当に何もない?」

唯「う~ん……」

唯(そうだ、オカ研の謎をオカ研に聞いてみればいいんだよ)

唯「えっとね」

ハマーン様「何でも聞いて欲しい」

唯「オカ研に謎の失踪を遂げた部員がいるって噂を聞いたことがあるんだけど……」

麿・ハマ「!?」

唯「オカ研の人だったら、その辺のこと詳しいかな~って」

麿・ハマ「……」

唯「……あれ? もしかして聞いちゃいけなかった?」

麿子「真実を知りたいと?」

唯「いや、駄目だったらいいんだけどさ」

ハマーン様「そこまで言うなら、あなたにその当時あった出来事を全て話そうと思う」

唯「私、そんなに食いついてないよね?」

麿子「まず前提として知ってもらいたいことがある」

唯「うん、まぁ、話したいのなら聞くけど……」

ハマーン様「すでにこの地球には他の恒星系からの知的生命体が住み着いている」

唯(突飛過ぎる……)

麿子「その知的生命体。私たちはオーバーロードと呼んでいる」

ハマーン様「彼らはこの地球に平和と秩序をもたらそうとしている」

唯「だったら、その宇宙人さんは良い宇宙人さんなんだね」

麿子「話は最後まで聞いて欲しい」

唯「ご、ごめん……」

ハマーン様「私たちはひょんなことからその存在に気づいた」

麿子「それに一番最初に気づいたのが、件の消えた部員」

唯「へ~、そうなんだ~」

唯(帰りたい……)


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