放課後

律「なぁ、しずか。さっきの話の続き……」

しずか「ご、ごめん。私今日早く帰らないといけないから、それじゃ!」

唯「あんなに慌ててどうしたんだろ?」

律「ますます怪しい」

紬「あれは、何か知ってるって感じだったわね」

澪「あんまり首つっこむなよ」

律「これは詳しく調べてみる必要がありそうだな」

唯「今日からテスト期間で部活禁止になるから時間はたっぷりとあるしね」

紬「なんだか探偵さんみたいね。でも、勉強もしっかりとしないと駄目よ」

澪「なんのための部活動禁止期間なんだよ、もう早く帰ろうよ……」



律「おーい、和~」

和「なに?」

律「生徒会室にクラブの活動日誌があるだろ?」

和「あるけど」

律「今から見せてもらってもいい?」

和「それを見るためには正当な理由と閲覧許可書が必要よ」

律「許可書はきっと和がなんとかしてくれる! 理由は好奇心!」

和「却下」

律「ええ~……」

和「と、言いたいところだけど。こっちの条件を飲んでくれるんなら考えてあげてもいいわ」

律「で、その条件とは?」

和「今、生徒会室の棚が一杯になって新しい棚を入れようとしてるところなのよ」

和「ついでに、その棚の中身も整理しようと思っててね」

和「私の生徒会長としての最後の大仕事ってとこかしら」

和「だけど、生徒会の子達も今はテスト勉強で大変だろうから。でも、私一人じゃあ少し荷が重いのよ」

澪「何もテスト期間中にそんなことしなくても……」

和「私、テスト勉強なんてしなくても、普段の勉強で足りてるから大丈夫よ」

澪「あ、ああ、そうなんだ……」

律「わかりました! お手伝いさせて頂きます!」

紬「でも、りっちゃんと唯ちゃん、勉強は大丈夫?」

唯「大丈夫! やれば出来ます!」

律「魔法の合言葉!」

和「じゃあ、頼んだわよ」

律「任せろ!」

澪(和、それは職権乱用なんじゃないのか……)



 生徒会室

律「和~、こんな伝票出てきたんだけど」

和「どれどれ? それは、この2010年度予算のタグのついたところにファイルしといてくれる?」

律「よしきた!」

紬「和ちゃん、これはどうしたら」

和「それは、破棄しちゃっても構わないわ」

紬「うん、わかった」

律「和~、順番はどうでもいいの?」

和「日付順にしといてもらえるかしら」

律「ラジャ!」

唯「和ちゃん! お腹空いた!」

和「帰っていいわよ」

唯「じ、冗談だよ和ちゃん!」

澪「和、これは?」

和「生徒会への申請届けね。しかも二年前の。学校が休校の際の屋上の使用申請」

和「どこから出てきたの?」

澪「この棚を動かした裏に」

紬「私が一人で動かしました!」

律「相変わらずの馬鹿力だな……」

和「きっと、誰かが落としてそこに入って行っちゃったのね」

紬「だとしたら、その申請は受け入れられなかったってこと?」

和「まぁ、そうなるでしょうね」

澪「そっか」

和「もう二年も前のものだし、それも必要なさそうだから、破棄しちゃって」

澪「わかった」



 ・ ・ ・ ・ ・

律「結構整理できたな」

和「みんな、ご苦労様。おかげで助かったわ」

唯「なんのなんの」

澪「お前はあまり役に立たなかったけどな」

和「ふふっ。でもこうやって皆でちまちまと作業するのって学園祭の延長みたいで良かったわね」

紬「もしかして和ちゃんもあの学園祭の雰囲気が名残惜しくて私たちを誘ったとか?」

和「さて、どうかしらね?」

唯「和ちゃんもあんがい子供っぽいとこあるよね」

和「唯に言われちゃお終いね」

澪「同感だな」

律「いやはやまったく」

唯「それってどういうこと~!?」

  「あはははははは」

和「まぁ、いきなり勉強のみにシフトしろって言われたってなかなか……ね」

唯「でも、私、和ちゃんのそういうとこ大好きだよ!」

和「はいはい、ありがと」

紬「じゃあ、せっかくだからお茶にしましょうか」

澪「え? ムギ準備してきてたのか?」

紬「うん。こんなこともあろうかと」

律「どんなことだよ……」

紬「心で見なくちゃ、肝心なものは目で見えないものよ」

澪「何それ? 恐い」



 ・ ・ ・ ・ ・

紬「はい、和ちゃん、どうぞ。ショートケーキお口に合えばいいけど」

和「ありがと」

唯 ササッ

和「どうしたのよ? 唯。ケーキ隠したりなんかして」

唯「だ、だって、和ちゃん私の苺取るし」

和「あんた、まだ言ってるの?」

唯「いつまでも言い続けるよ!」

和「はぁ~……」

唯「ケーキの苺取るなんて、人間としてあるまじき行為だよ!」

和「えっ……」

律「そこまでのことか……」

澪「和も幼馴染として唯に言いたいことは沢山あるだろうに。なぁ、和」

和「……」

澪「和?」

和「あ、ごめんなさい、何?」

紬「どうしたの? 和ちゃん」

和「いや……、なんだか私は人間じゃないみたいな言われ方だったから」

澪「い、いやいや。本気にするなよ」

律「そうそう、むしろ変わってるのは唯の方だと思うぜ」

和「そう……よね。でも、確かに悪かったわ」

和「ほら、唯。私の苺食べてもいいわよ」

唯「え? いいの♪」

和「あなたにとっての苺を軽視していた私も悪かったのよ」

唯「和ちゃんは世界大統領になるべき人物だね! 人類代表だよ!」

澪「調子いいなぁ」



和「ところで、あなたたちの目的はいいの?」

律「え? なんだったっけ?」

澪「忘れてどうするんだよ……」

紬「オカ研のクラブ活動日誌よ、りっちゃん!」

律「ああっ! そうだったそうだった」

和「とりあえず、ここ10年の分はそこに出てるから勝手に読んでちょうだい」

律「じゃあ、最近の3年分で充分かな……」

澪「なにいきなりめんど臭くなってるんだよ」

唯「クラブの活動日誌なんてあったんだね。私初めて知ったよ」

紬「じゃあ、軽音部のもあるのかしら?」

和「そりゃあ、あるわよ」

唯「見たい見たい!」

澪「こういうのって律が全部書いてたんだよな」

律「うん、なんせ部長だからな!」

唯「どれどれ?

  ○月×日 わらび餅
     △日 レアチーズケーキ
     □日 はちみつとラスク」

澪「ちょっと私にも見せて!

  ○月♪日 ういろう
     ♭日 チューペット
     ♯日 ジンギスカン

  なんだこれ?」

律「活動日誌じゃなくて、菓子どう?日誌になっちゃってさ~」

澪「くだらないことしてんじゃない!」ゴチン!!

律「あいて☆」

和(ジンギスカンがお菓子って……いったいどういう神経してるのかしら……)



 ・ ・ ・ ・ ・

律「フムフム……」

唯「りっちゃん結構真面目に見てるね」

澪「勉強もあれくらい真面目に取り組んでくれたら……」

律「……あれ? なぁ和」

和「なに?」

律「ここ、急に日付が飛んでるんだけど」

和「……本当ね。それまでは毎日のように書き込まれてるのに」

律「よく見たら飛んでる日付分だけページに切り取られた跡が」

紬「本当、ノート破ったみたいになってるわね」

律「きっとこの破られた日の日誌になにか重要な手がかりが……」

澪「ちょうど二年前だな、破り取られた部分」

律「その頃のオカ研のメンバーってわかる?」

和「ちょっと待ってね。……あった、当時のクラブ活動申請書」

澪「あ、部員に木下しずかってある!」

紬「一年一組ってなってるわね」

唯「しずちゃん本当に一年生のときオカ研だったんだね」

律「じゃあ、次の年は……」

澪「……名前が無いな」

紬「前の年に記載されている人でしずちゃん以外にいなくなった人もう一人いるわね」

唯「本当だ、じゃあこのいなくなった人が噂の失踪した人?」

律「充分に考えられるな」

澪「去年はまだ4人いたんだな」

和「そうね、三年生が卒業しちゃって現部員の2人だけになっちゃったのね
  結局一年生の新入部員は入らなかったみたい」

紬「消えたもう一人はどこに行っちゃったのかしら?」

律「まさか、本当にキャトられたんじゃ……」

澪「ひぃっ!?」



さわ子「ここからケーキの良い匂いがするっ!!」ガチャ!!

澪 ビクッ!!

紬「さ、さわ子先生!?」

律「犬かよっ!!」

澪「ああ、なんだ……犬か……、ビックリした」

さわ子「ちょっと! 誰が犬ですって!?
    お茶するんだったら、なんで私も呼んでくれないのよ~!」

律「いや、だって、部活禁止だし……」

さわ子「お茶してるじゃない!」

澪「普段もお茶するために部活してるわけじゃないんで……」

さわ子「わかったわ、そこまで言うなら私も先生らしく振舞わせてもらうわよ!」

さわ子「あなた達! テスト期間なんだから早く帰りなさい!!」

律「うっ……! まさかの正攻法」

紬「あの……、先生の分もあることにはあるんですけど……」

さわ子「さぁ! 他の先生に見つからない内に早く鍵を閉めましょう!」

和「先生がどんな生徒だったのか、なんとなくわかった気がします」


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