先生が教室の時計を見上げた瞬間、下校の鐘が鳴り響いた
最後の授業を終えて友達と雑談を始めるクラスメイト
それを目の端で捉えつつ机の引き出しからランドセルにノートを詰め込む
今日は宿題は算数と国語と、あ、算数たしかコンパス使う問題があったから・・

「~~ちゃん、今日一緒にかえろっ」
「うん!」

澪「・・・」

あ、今日給食の時間にエプロン汚しちゃったんだっけ
給食袋持ってかえってママに洗ってもらおう

「グラウンドでサッカーやろーぜー!」
「いくいくー!」
「あ、今日はぜって負けねーからなっ!」
「今日は三角ベースだろー」

澪「・・・」

そういえば図書館で借りてた本、明日までに返さないといけなかったんだっけ
まだ全部読んでないんだけどなぁ
図書館の先生、まだいるのかなぁ

「ねぇねぇ、~~くんってさ・・かっこいいよね~」
「え~・・そう?」
「かっこいいじゃん!運動できるし」
「じゃあ男子のサッカー見てく?」
「いこいこー!」

澪「・・・・」

澪「・・・・」

澪「・・・・」


放課後にね、する事なんて何もないんだ
いつも一人で家に帰るだけ
なのにね、私はたいてい一番最後まで教室に残ってる
なんでだと思う?

「あーきやーまさん」

澪「?」

すっごく羨ましかったんだ
これ以上無いくらいの笑顔で会話をしているみんなの事が
私も誰かと一緒に帰ってみたい
私も誰かと一緒に遊んでみたい
私も誰かと一緒に笑い合いたい
そんな願いが今日叶うんじゃないかって
いつも周りを気にしながら教室に残っているんだ
今日は・・・どうだろう

澪「な、・・・なーに?」

「なんでいつも一人でいるの?」
「ちょっと、やめなよ」クスッ
「一人が好きなの?」
「も~」クスクス

澪「え・・・」

「困ってんじゃん」
「ごめんね秋山さん」

澪「うん・・一人が好き・・なんだ」

「寂しくない?」
「こ~ら」

澪「・・・」

澪「・・・」

澪「寂しくなんか・・ないよ」

本当の事だもん
寂しくなんかないよ
私にはパパとママがいるし
ちょっと羨ましいと思ってただけ
みんなすごいんだね
友達いっぱいいて
やっぱり私には真似できないや

澪「・・・」

さっきはあんな願い事を並べていたけど
一人で帰る事もね、私はけっこう好きなんだ
なんでかって?それはね
頭の中で色んな事を考えられるから
県から選ばれたあの作文も
こうやって歩きながら考えてたんだよ
あ、その作文なんだけど今日みんなの前で発表したんだ
すっごく恥ずかしかったけど、みんなはちゃんと聞いててくれてたのかなぁ
帰ったらママにうんと自慢してあげよっと

・・・

私あんなに頑張ったのに
私の作文の事・・・
誰も・・・話しかけてくれなかったなぁ

澪「・・・」ジワッ

「みーおちゃん!」

澪「ビクッ!」

澪「・・・」グイッ

「良かった!追いついたっ!」

澪「り、りっちゃん」

律「はぁ、はぁ」

澪「ど、どうしたの・・」

律「澪ちゃん!」

澪「・・・?」

律「今日の作文とってもかっこよかったよ!」

澪「・・・!」

律「えへへ・・言うの遅くなってゴメンね?私と頑張って特訓したおかげだねっ」

澪「・・・うん」ジワ

律「・・・え、澪ちゃん?」

澪「・・・ひっぐ、ぐすん・・」ぽろぽろ

律「ど、ど、ど、・・・どうしたの?!」

澪「ぐっす・・」

律「何か変な事言った?!」アワアワ

澪「・・・ううん・・グス・・違う・・よ?」

律「なんで・・哀しい事でもあったの・・?」

澪「・・・ううん」ぐい

澪「り、りっちゃん・・グッス・・」

律「な、なに?」

澪「・・・ありがとう」にこっ

誰でも分け隔てなく優しく接してくれるその性格が
私に涙を流させているって事にりっちゃんは気付いているのかな?

ずっと遠くから見ていたんだ
キミの事
キミはね、私の憧れだったんだ
りっちゃんは常に笑顔で、
りっちゃんとお話してる人も常に笑顔なんだ
みんなから求められていて、りっちゃんはいつも友達の輪の中心で
いつか私もこんな女の子になりたいなって
心の中でそう思ってた