とある日の部室

梓「遅れましたー」

紬「いらっしゃい」

澪「おす」

梓「あれ? お二人だけですか?」

紬「りっちゃんと唯ちゃんは補習なの」

澪「普段から真面目にやってないからこうなるんだ」

紬「梓ちゃんのお茶も淹れるわね」

梓「あ、はい、ありがとうございます」

紬「……」カチャカチャ

澪「……」ペラリ

梓(よく考えたら珍しい組み合わせかもしれない)


紬「はい、梓ちゃん」

梓「ありがとうございます」

澪「……」

紬「……」

梓「……」

梓(間が持たない……)

梓(そういえば澪先輩とムギ先輩って二人きりだとどんな話するんだろ?)

澪「……ぷっ」

紬「……」ニコニコ

梓(本読んでにやけてる澪先輩と、それを見て微笑んでるムギ先輩)

梓(これは完成されている絵なのだろうか?)

梓(ここは後輩として私が頑張るべきだ!)


梓「え、えっと……良い天気ですね」

梓(バカか私は!? センス無いにも程がある!!)

澪「ああ、天気予報もそう言ってたな……」

紬「そうね」

梓(澪先輩は本から目を離さないし、ムギ先輩は会話を広げないし)

梓(あぁ……普段いかに律先輩が場を回しているのかよく解る)

紬「唯ちゃん達遅いわね」

澪「バカだからな……」

梓(小説に集中し過ぎて配慮が足らなくなってる!)

梓「み、澪先輩! 何を読んでるんですか?」

澪「んー? 本」

梓(見りゃ解るよ)

梓「な、何の本ですか?」

澪「んー? うん」

梓(おいおい……邪魔されたくないのは解りますけど、もうちょっと態度良くしてもいいんじゃないですか?)

紬「……」

梓(この人放っておいたら、全然動かないなぁ)

梓(唯先輩の奔放さは貴重だったんだなぁ)

紬「あ、梓ちゃん」

梓「はい」

紬「今日体育でね、姫子ちゃんが転んだの~」

梓「はぁ……そうですか」

梓(それが何なんだよ!!)

澪「……」ペラリ

梓(会話に参加しろよ!!)

梓(考えてみれば、澪先輩は完全なリアクション型)

梓(ムギ先輩は微妙にずれてる)

梓(これは大胆なアクションが必要だ……)

梓(しかし私に律先輩や唯先輩ほどの支配力は無い)

梓(ならばこの空気を打破するには……)

梓「ムギ先輩って、休みの日とかは何をしてるんですか?」

梓(趣味の話を引っ張りだす!!)

紬「そうねぇ……別に普通よ」

梓(普通って何なんだよ!!)

紬「お散歩したり、ゆっくりしたり……あんまりアクティブではないかもしれないわね」

梓「そうですか」

澪「ふぅ、面白かった」パタン

梓「読み終わったんですか?」

澪「うん」

梓「どんな話だったんです?」

澪「うん……まぁその……うん」

梓(わかんねーよ)

澪「……」

紬「……」

梓(またこれか)

澪(さて、本も読み終わってしまったわけだが)

紬(何を話したら良いのかしら?)

澪紬梓(はぁ……あの二人がいればなぁ)

澪(演奏能力はとにかく)

紬(唯ちゃんとりっちゃんが繋ぎ役なのよねぇ)

梓(ダメだ……真面目三人が固まっても何も生まれない!)

ガチャ

和「失礼……律いる?」

三人(救世主!!)

澪「律ならまだ補習だよ」

和「あら、困ったわね。また書類提出が遅れてるんだけど」

梓「まぁまぁ」

紬「お茶でも飲んでゆっくりしていって」

和「え? 何この生温かい歓迎」

紬「和ちゃんも生徒会が忙しくて大変そうね?」

和「別に……三年目ともなれば慣れたものよ」

澪「で、でも、会長はやっぱり負担が大きくないか?」

和「唯の面倒見るのに比べたら余裕よ」

梓「唯先輩って昔からあんな感じなんですか!?」

和「……」

梓「な、何です?」

和「あなた達、何か変よ」

澪「え?」

和「上手く言えないけど、妙に必死というか……」

和「ま、とにかく律が来たらこの書類を書かせてね」

和「それじゃあね、お茶も程々にしときなさいよ」

バタン

三人(あぁ……司会進行役が行ってしまった)


梓「……」

澪「……」

紬「……」

梓(どうする?)

澪(この和気あいあいでも険悪でもない、ぬるい空気)

紬(体にまとわりつくようで凄く嫌)

梓(誰かが突破口を開かなくては)

澪(そんなスキルあったら友達百人余裕だって)

紬(た、耐えられない……)

梓「……」

澪「……」

紬「……」

紬「………………ちゃんぽんは昼飯やん……」ボソリ

澪「……」ピク

梓「……」ピクピク

梓(は、反則でしょ……)

澪(笑ったら負けみたいな空気作るなよムギ!)

紬(あれ……違ったかしら?)


梓「……」

澪「……」

紬「……」

梓「……」

澪「…………………………コンソメパァンチ?」

紬「……ぶふっ」

梓「…………く」

梓(言い方じゃないですか!!)

紬(なんでネイティブ発音!?)

澪(やっぱりのり塩のが良かったかな?)


澪「……」

紬「……」

梓「……」

澪「……」

紬「……」

梓(え? やめて? 次は梓だよみたいな空気やめて?)

澪「……」

紬「……」

梓「……………………」

梓「アヴァター」

澪「ぐふっ」

紬「ぶっ」

澪(パクるなよ!!)

紬(やめて、白目剥いてアヴァターやめて)

澪(白目剥いたら何でも面白いだろ)

紬(卑怯よ梓ちゃん!)

梓(いや何やってんだろ私達)

澪(状況を打開するには)

紬(二人が来てくれるのがベスト)

梓(しかしそれは正直期待できない)

澪(この三人で何とかするしかない)

紬(どうにかいつもの空気に……)

梓「は・か・た・の・し・お?」

澪「ぶっ!」

紬「……」プルプル

澪(一人で続けるなよ!)

紬(なんで? どうして疑問形?)

澪(ダメだ! 後輩だけに頑張らせるわけにはいかない!)

澪(勇気だ! 勇気を出せ秋山澪!)

澪「あ、あのさ、最近暑いよね」

紬「そ、そうね」

梓「暑いです」

澪(え? 終わり?)

紬(暑いのは暑いで終わりでしょ?)

梓(もっと広げろよ! 唯先輩なら『暑くて溶けちゃうよ~唯アイス~あずにゃんペロペロして~』とか言ってるよ!?)

澪(ま、まだまだ!!)

澪「……」

澪(話のタネが無い!!)

澪(私って意外とつまんない奴だったんだな……ははは……)

紬「ね、ねぇ!!」

梓「何ですか?」

紬「暇だからゲームでもしない?」

梓「い、良いですね!!」

澪「賛成!!」

梓「と言っても、部室に置いてあるゲームは……」

紬「人生ゲーム、トランプ、ウノ……麻雀……」

澪「どれも三人でやるのはちょっと微妙だな」

梓「……」

澪「……」

紬「……」


梓(どうしてくれるんですかこれ)

澪(ちょっと盛り上がってからのダウンは効くぞ……)

紬(ごめんなさい……)

梓(さて……)

澪(いつまでもこうしているわけにもいかない)

紬(誰か助けて……)

梓(先生来ないかな?)

澪(律と唯がいないと機能しないんだな私達)

紬(いっそ勉強の話でも……)

梓(因数分解ってエロくないですか?)

澪(劇場版 メンデルの法則)

紬(激震! 漢字書き取り1000連発!!)

三人(アホか)


梓(仕方ない、これだけは使いたくなかったけど)

梓「ケ、ケーキ食べたいです」

澪「わ、私も! 律と唯の分まで食べちゃおうよ!」

梓「ですね! バクバク食べましょうバクバク!」

澪「はっはー! 太るなんて気にしないぞー!」

梓「やーん、澪先輩、これ以上巨乳になる気ですか?」

澪「梓もその内大きくなるぞー!」

梓「キャー! セクハラー!」

紬「ごめんなさい」

澪梓「え?」

紬「冷蔵庫に入れるの忘れて……腐ってるの……ごめん……なさ……」グスッ

澪「あ……うん」

梓「気にしないで……下さい」

紬「ごめ……ん……なさ……い」

澪「……」

梓「……」

紬「…………ひっく」

澪「……」スタスタ

梓「澪先輩?」

澪「ケーキってこれ?」

紬「え……? うん……」

澪「……うおお!!」バクバク

梓「先輩!?」

紬「澪ちゃん!?」

澪「せ、せっかくムギが用意してくれたんだ、捨てるわけにいかないだろ……?」

梓「澪先輩……」

紬「澪ちゃん……」

澪「うぶ……ちょっとトイレ……」

梓「あ、はい」

紬「い、いってらっしゃい」

澪「すぐ戻るから」

バタン

梓「……」

紬「……」

梓「…………食べる意味ありました?」

紬「…………きかないで」

紬「澪ちゃん真面目で友達思いだから」

梓「それだけ聞いたら良い人なんですけど」

紬「本人も良い子よ?」

梓「解ってますよ、でもぶっちゃけ融通利かないとこありますよね?」

紬「まぁ……確かに柔軟性には欠けるかもしれないわね」

梓「長所でもあるんですけどねぇ」

紬「難しいわね」

梓(あれ?)

紬(今普通に会話出来てる)

梓(ひょっとして誰かを肴にすれば話せる?)

紬(それってまさしくコミュ力不足じゃない)

梓(止めようこんな話)

紬(欠席裁判みたいで気分が悪いわ)

梓(とはいえ)

紬(梓ちゃんとの共通の話題は少ないわね)

梓(いや! ここで下がったら終わりだ!)

梓「あの」

紬「何?」

梓「え、えっと……ムギ先輩もロングヘアーですよね」

紬「え、ええ?」

梓「て、手入れとか教えて欲しいなー……って」


その頃

澪「うええええええっ!!」



……

紬「あ……うん、ちょっと触るわね」

梓「はい」

紬「そうね……ちょっと痛んでるかも」

梓「ええ……」

紬「長いとついつい手入れも億劫になるものね」

梓「そうなんですよ……正直邪魔な時もありますし」

梓「でもなんかバッサリいくのもなぁ、と」

紬「解るわ」クスクス

梓「先輩はショートにしたいとか思わないんですか?」

紬「思わない事も無いけど、似合わない気がするから」

梓「そんな事無いと思いますけど」

紬「うふふ、ありがと」



未完



最終更新:2011年05月04日 02:47