律「ちょ、ちょっと1日考えさせてくれ…。明日朝、ちょっと早めにみんな部室集合で…。いいか?」

紬「うふふ、OKよりっちゃん」

梓「わかりました」

唯「はーいっ!……って、あれ」

あたしが全員の返事を待っていると、唯が何かに気づいて、返事とは別の声をあげる。
みんなが釣られて唯の視線の方へ向く。



梓「…あ、澪先輩。ベース忘れて言ってますね」

本当だ。
やっぱりあいつ相当動揺してたんだな。
…全く、世話の焼けるやつ。



次の日!
部室!

唯「………ドッキリ?」

梓「何でまたそんな意味不明なことを…」

律「いやだってちょっと悔しいし…」

昨日考えたのはこうだ。

あたしから澪に謝るのは良い。
でもそれだとあたしとしてはかなり悔しい。
そんで、澪にもちょっとは反省してほしいって気持ちもある。

だから澪には、今日1日だけりっちゃん特性ドッキリに合っていただく、という訳だ!

紬「ちょっと面白いかもしれないわねー?」



梓「…で、私達はどうしたらいいんですか?」

律「いや、肝心のソレが思い浮かばなくてだね」デヘヘ

唯「…りっちゃん、それはないと思うなぁ…」





結局あたしは思いつかなかったので、ムギの考えた『返事は全て嫌だ!ドッキリ』となるものに決定した。
文字見りゃどんなドッキリか誰でもわかると思うけど…

紬「澪ちゃんに話しかけられたら、みーんなぜーんぶ、嫌だ!!で答えるの!」


唯「嫌だ!!」

律「え、いや唯。お前さっきこれで良いって言ったじゃないかよー…?」

唯「嫌だ!!」

紬「嫌だー♪」

梓「嫌です」

律「…おい、ドッキリの相手はあたしじゃない」

唯「嫌だ!!」

紬「嫌だー♪」

梓「嫌です」

律「(しつけぇー…)」



教室!

キーンコーンカーン(チャイム

ここで予想外の出来事が発生してしまった。
予鈴のチャイムがなったのに澪が教室に入ってくる気配はない。

律「…おい、肝心の澪がこないんだが」

紬「澪ちゃんが来ないんじゃドッキリが成立しないわね…」

唯「え、えぇぇええ!?なんてこったぁあ…」ガクシ

律「何で唯がガッカリするんだよ。楽しみにでもしてたのかよ」

唯「ばれてしまいましたかぁ」デヘヘ

何故かテンションの高い唯に、あたしは自然と笑みと溜め息が零れる。
ま、楽しむなら楽しむでいいけどな。唯だし。



さわ子「はいはーい、席についてー」

唯「あ。さわちゃん先生きちゃった。りっちゃん、私澪ちゃんにメールしてみるよ」

律「…頼むわ、唯」

紬「それじゃまた後でね、りっちゃん」

律「おー」





唯「(見つからないようにそーっとそっと…)」ピコピコピッピッ
「(澪ちゃん?今日お休みなの?…っと…。よし、送信っ!)」ピッ

律「(唯、マナーモードになってないからバレバレだよ…)」

唯「(あぁぁあっ!本文に書いてなかった!!!)」ガガーン!

さわ子「…唯ちゃん、携帯はしまってね。あとマナーモードね」



休み時間!

紬「風邪で欠席…、とさわ子先生は言っていたけど…」

律「……あいつ…」

十中八九ズル休みじゃねーか…。
変な気起こさなければいいけど。

唯「澪ちゃんからメールの返事ないねぇ…、電話もかけてみてるんだけどぉ」

律「そうか…」

紬「りっちゃんからもしてみたら?電話とメール」

律「え、あたしが…?」

いやいやそれはさすがにしにくい。
昨日の今日でメールなんてしにくすぎるにも程があるぞムギ。
でも、確かに心配なんだよなぁ…。
次の授業が終わったら昼休みか…。
さすがにまだ寝てるってことはないと思うけど。

その時、ピンッ!と頭に1つの案が浮かぶ。

律「ムギ、携帯貸してくれ。それでメールするわ」

紬「?え、私ので?」

律「おう。澪を学校に来させるとっておきの文章を考えたんだ!!」

紬「?だからそれを、なんで私の携帯で送るのかしら、りっちゃん」ニコニコ

突っ込んでくるなぁムギは…!
言わなくてもわかってるくせによぉ…。

律「は、恥ずかしいからだよ…!さ、早く早く!」

紬「もう、仕方ないわね」うふふ

律「サンキュ、恩に着るっ!!」

ムギから携帯を受け取り、あたしは自分の席に戻る。
文章を作るのに予想以上に手間どってしまい、結局送信できたのは授業が始まってからになってしまった。

律「(よしよし…)」

今からでも良いから早くきて!!りっちゃんが澪ちゃんを軽音部から退部させるって!!
凄く怒っちゃってて私じゃ止められないの!!

律「(上手くムギっぽく書けたし、これを送れば澪は間違いなく学校に来るハズだぜ…)」ニヘヘ

紬「(りっちゃん笑ってる…。変なメール送ってなければいいけど…)」


唯「スピー、スピー」zZZ



お昼休み!

な、何故…。
何故返事がこねーんだ…。
そして来る気配もねぇ…。
仕方なくムギに携帯を返却すると、ムギは心配そうな顔をして送信ボックスを見始めた。

紬「りっちゃん……これ……これ…」プルプル

律「お、ムギ。すげー良い出来だろ?」
「どっからどう見てもムギが書いたようにしか思えないよな!」アハハッ

紬「………」プルプルプル

律「?ムギ??」



紬「バカぁー!バカバカぁー!」ポカポカポカ

律「痛っ!痛い痛い!やめ!ポカポカやめ!」



唯「どうみてもムギちゃんだから、ムギちゃんが可哀想なんだよりっちゃん…」

律「あ、なるほど」

紬「りっちゃんのバカァー!」ポカポカポカ

紬「もうばらすっ!澪ちゃんに電話かけるんだから!」

律「…多分出ないけどな。実際そのメールの返事も返ってこねーし」

紬「………」クスン

唯「それにしてもどうしたんだろうね澪ちゃん。本当に風邪なのかなぁ??」


律「そんなことないと思うんだけどなぁ…」

あー…。
まぁ確かに本当に風邪ならメールとか電話の返事が返ってこないのも納得できるか。
でも澪なら着信見た時点で返事返してくれると思うんだよなぁ。
唯が朝にメールをして、あたしもさっきメールして…
その間一回も目を覚ましてないってことか?
有り得ないことではないけどさー。

和「珍しくどんよりしちゃって。どうしたの?」

律「ん。和。別にどんよりなんかしてねーぞ」

紬「どんよりしてるのは私だけよね、りっちゃん」

律「あ…、いやどうかな」

唯「和ちゃんー、澪ちゃんにメールと電話したんだけど、返事が全然返ってこないんだよぉ」シュン

和「あら、そうなの…。って先生が朝に風邪って言ってなかった?」

律「いや、多分ズル休み」

和「…はぁ?どうして澪がズル休みなんてするのよ」

律「説明するのに1時間はかかるから、まずは澪に電話してみてくれよー」

和「?よくわからないけどわかったわ…」





和「出ないわね。……まぁ風邪らしいし寝てるんじゃない?」

律「あー、うんそうだな。風邪だ」

唯「りっちゃん和ちゃんかわいそうだよぉ…」

悪ィ、和…。
説明してたら昼休みが終わっちまうんだわ。

律「いやさ、和からの電話なら出てくれるんじゃないかなーって思ったんだけど」

和「どうして風邪で寝てるのに私の電話なら出るのかわからないわよ…」

律「ゴメン!事情は今度話すからさっ!」

和「な、何よ電話までさせておいて…。もう…」

唯「和ちゃん、ごめんねぇ…」

ちくしょー、澪め。
ここまであたしらを無視するとは良い度胸じゃないか。

律「(よし…!こうなったら絶対返信したくなるようなメールを考えてやるか!)」



和「もう私生徒会から帰ってこないから」

唯「わわぁ。帰ってきてー、帰ってきてー和ちゃーん」

紬「帰ってきてー」


唯もダメで、ムギ(の携帯)もダメで…
和の電話も出なかった…

となれば、後はあいつしかいない…か。


2年2組

さて。きたぞ。
梓はどこにいるのかなっと…、あ、いたいた。

律「どうも中野さん。りっちゃん先輩です」

梓「何ですか気色悪い…」

紬「どうもー」

唯「あずにゃん会いにきたよー!!」ダキっ

梓「にゃ、にゃぁっ!!?///」
「ダ、ダメです唯先輩!!ここ教室ですよ!?周り周り!周り見てっ!」

唯「照れなさんなってぇ」モフモフ

憂「あ、お姉ちゃんだー」

唯「ういー、会いたかったよぅう。10年ぶりの再会だようぅう!」

憂「え?えと今朝会ったよね…?」

梓「私に抱きつきながら変なこと言わないでください!」

律「憂ちゃん、ちょっと梓借りてくな」」

紬「借りていくわねー」

憂「?あ、はい。どうぞ」

梓「!?」





梓「嫌です!!」

律「そこを何とか!」

梓「絶対に嫌です!!」
「律先輩に携帯を渡したら、澪先輩にどんなメールを送られるかわかったものじゃないです!」

唯「りっちゃん信用されてないんだね」アハハッ

紬「私もちょっと信用できなくなってきたのー」ウフフ

律「頼むよ梓ちゃん、いえ、梓さまっ!決して変なメールは送りませんっ!」

梓「大体なんで自分の携帯でメールしないんですか!」
「澪先輩が一番来て嬉しいのは律先輩だと思いますけど!?」

律「そこは今は重要じゃないんだ」

唯「重要じゃないのだよあずにゃん」

梓「(重要でしょうどう考えても…。)」



梓「わかりましたよ…。じゃあすぐ返し…」パッ

律「んじゃ借りてくな~」携帯ヒラヒラ

梓「うわああっ!律先輩ぃーっ!」

唯「ばいばーいあずにゃーんっ」



授業中!

…さて、梓の携帯を見事にゲットできたわけだが。

律「(あー。なんて送るかな…)」

こんにちは、あずにゃんです
今日純の家の猫が死にました。澪先輩のせいです
責任とってください

律「(イマイチ…かな)」

部室が爆発しそうです
でも今ならまだ間に合います
早く学校にきてください

律「(なんか。惜しい…)」

今すぐ学校に来てください
本当に風邪引いたわけじゃありませんよね
絶対返事下さい

律「(うん。やっぱり普通が一番だなー)」
「(本当に風邪で寝てる可能性も考えて、もう暫く時間経ってから送るか)」



放課後!
部室!

梓「りぃつ先輩ぃいいいいいいいいいいいッ!!」ドタドタドタッ

律「…おー、梓。早かったな、ほれ携帯」ヒョィ

梓「あ、どうも(あっさりだ)」

律「……はぁ…」ドンヨリ



梓「…唯先輩。律先輩どうしたんですか?これ」

唯「うんー…。澪ちゃんから返事まだこないんだって」

梓「え…まだきてなかったんですか。そういえば学校にも結局…」

唯「うん。さすがにちょっとヘンだね」

律「(な、何故だ…。さすがに気づいてないわけないだろこれ)」

紬「とりあえず、お茶にしましょうか」





紬「澪ちゃんの分、どうしようかしら…」

ムギが黙々とティータイムの準備を進める中、あたしは真剣に考えていた。
今日のお菓子はなんだとか、そういうんじゃない。勿論澪のことだ。
あいつのベースをボーッと眺めながら、今日の事を振り返ってみる。

律「(もし…もしもだ)」

仮に本当に風邪だったとして、もしも今、澪が目を覚ましたとしたらどうする…

律「(あたしらからの沢山の着信…。そして澪に対して残酷な内容メール…)」

そのメールを、昨日みたいに動揺しちまってる澪が見たらどう思うか。

律「(やっべえ…コレ、ドッキリより半端なく大変なことやらかしちゃったかもしれね)」

唯「ケーキおいひぃよぉー、ムギちゃん!!」

紬「うふふ。ありがとう」

梓「……律先輩?」

律「悪い、ちょっと電話してくる」

もう恥ずかしいとか言ってる場合じゃないな。
携帯にかけても出てくれないだろうし、澪の家に電話してみよう。





ツーッ ツーッ

律「……話し中か。しゃーないな…」

ま、もしかしたらメールを見て学校に向かってきてるかもしれないし…
少し部室で待ってみるか。

澪、早く来いよ。みんな待ってるし、お茶もお菓子もあるぜ。
それにお前が来ないと練習もできないんだよ。



唯「これももらっちゃっていいかなぁっ?」

梓「ダ、ダメですよ!!それ澪先輩の…!!」

紬「あらあら」

訂正、お菓子はなくなりそう。



律「…最後に唯の携帯使ってそれっぽいメール送るかな!」

唯「……なんで電話はできるのにメールはできないんだい!りっちゃん」モグモグ

律「あたしの名前を使うからな」

唯「?…りっちゃんの??」


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