唯「ほいっ!ほいっ!」

メタッ メタタッ

梓「ふっ・・んぁああ・・・明太子・・・・ほぁぁあ・・・・ぷつぷつ・・・・ほほおぁあ・・・」

梓の端麗な顔面に幾度と無く投げつけられる明太子

そのひとつひとつが紅の彗星の如き軌跡を描き

衝突の衝撃で真っ赤な花火の様に弾け飛んでいく

唯「ほいっ!ほいほいっ!!」

メタタッ メタッ メタタタッ

唯の投球、否、投卵フォームもこの上なく理想的な動きだった

元より何事も飲み込みの早い素質を持った彼女だったが

このような行為にさえ、それは発揮されていた

明太子を握りつぶさないよう、赤子を抱く母を思わせる優しい手つき

梓の顔面で程よく弾けるよう、緩やかながらも力強さを感じさせる投卵

類稀なる彼女の才能によって明太子は梓の顔面で存分に己が全てをさらけ出していた

梓「んんっ・・・はぁっ!ほあぁ・・・ぁぁあっ・・・・うぶぅっ!・・・んぐ・・・はぁ・・・」

唯「あずにゃんは明太子ぶつけられるの好きだねぇ~」

梓「そうですっ・・・そうなんですっ・・・・私は・・・・明太子無しでは生きてはいけない身体になってしまったんですっ・・・!」

この儀式めいた一見不可思議な行動は梓の意思によって行われていた

彼女がこの性癖を唯に打ち明けたのは一ヶ月前

放課後ティータイムの面々が帰宅にかかろうとしたとき、梓は唯を呼び止めて全てを打ち明けた

考えても見ていただきたい。明太子を顔面にぶつけられる事に快感を覚えるなどと、どうして人に晒せようか?

だが彼女は打ち明けた。彼女が絶対的な信頼を置く唯に。全てを打ち明けたのだ

そして唯はそれを受け入れた。他ならぬ愛すべき後輩の全てを受け入れたのだ

その愛と絆のなんと美しきことかな

二人の間には今確かに卵管よりも強い強い絆が結ばれていた

そして愛する二人の間には一切の邪魔はなかった

日々日々二人は惜しみなく愛の華を咲かせ続けた

梓の顔面で飛び散る粒は、まさしくそれを思わせる美しさだった



唯「あずにゃん・・・愛してるよ・・・・。ほいほいっ!!ほほいっ!!」

梓「唯先輩・・・・大好きです・・・・・んはっ!んほほぉっ!!・・・ほァッ!!」

唯「あずにゃん・・・私最近またコントロールが良くなってきたと思わない?ほいっ!」

梓「えぇ・・・ええ!思いますっ!!素敵です!!私がぶつけて欲しいところに的確に明太子が・・・・あぁっ!!」

唯「だよねだよね!そしてなんと!愛すべきあずにゃんのために!!私は新技を思いついたのです!」

梓「し、新技・・・・?あぁ・・・な、何をする気なんですか唯先輩・・・・!想像しただけで・・・私、もう・・・・んんんっ///」

唯「ふっふっふ・・・、ねえあずにゃん?私のこと、好き?」

梓「えっ・・・・は、はい!もちろん!好きです!!」

唯「愛してる?」

梓「あ・・・ぁぃ・・・・、あ、愛してますっ!!!うぅぅ~////」

唯「じゃあ私のことをもっと見つめて」

梓「はっ、はい!!」ジィ~

唯「そう、私のことを愛してるなら、絶対に目をそらさないでね!何があってもだよ!」

梓「はいっ!はいっ!!絶対に唯先輩を見つめ続けます!!」

唯「いい子だねぇ~あずにゃん!それじゃいくよ!・・・ほいっ!!!」

梓「ォギャッ!!!」

唯の新技であろう明太子は梓の大きくてくりくりとした眼球に正確無比にクリーンヒットした

唯「すごい!すごいよあずにゃん!!眼球に明太子が直撃しても私を見続けてくれるなんて!!」

事実、梓は高速で飛翔する明太子が目前に迫っても瞼を閉じず

本来眼球にぶつかろうはずもないものがぶつかってもなお、愛する者を見つめ続けていた

しかも・・・ぶつかった明太子・・・・これは・・・・

いや、これは明太子ではない・・・・・なんと、辛子明太子だったのだ

となると当然、梓の眼球には明太子の味付けに使用されている唐辛子調味液が存分に付着したことだろう

そんな状態で目を開き続ける梓・・・相当な痛みが襲い掛かっているのだろう

その目尻からは大粒の涙がぽろぽろと溢れ出している

だが、それでもなお、彼女の瞳は唯の姿を捉えて離さない

愛は人をどこまで成長させるのだろうか・・・

梓「ふぐっ・・・・ふっ・・・・ぁひ・・ぁ・・・くっ・・・・ゆ、唯せんぱぁい・・・・こ、これは・・・ギャヒィッ!!」

唯「ほいほいっ!!!ほほいのほいっ!!」

メタメタッ!! メタタタッ!!

間髪いれずに投卵を繰り返す唯

その全てが黒い輝きに吸い込まれる様に飛び込んでいく

恐るべきは唯のこの投卵力とコントロールである

後述となってしまったが、二人の姿は今、放課後と呼ばれる時間も過ぎ

全ての部活動が終了した人気の無い学校の廊下にあった

いや、誤解の無いように言おう

二人の姿は学校の廊下の"両端にあった"

これがどういうことかお分かりだろうか?

そう、唯は廊下の端から端という距離をもって、梓に明太子をぶつけているのだ

廊下の距離は・・・約50メートルといったところだろうか

野球のマウンドからホームベースまでの距離が約19メートルである事を考えると・・・・

無理だ、あり得ない、そういった類の言葉しか浮かばないだろう

ましてや唯が投げているものは硬球でも軟球でもない

味付けされた、食用の、スケトウダラの卵だ

だが現実として二人の間には幾重もの赤い架け橋が生まれては消えているのだ

愛、それは人に限界というものを与えないのだろうか・・・

唯「ほいっ!!ほほいっ!!!よ~っし、3点バースト!ほほほいっ!!」



梓「ふっ・・・ぅくっ・・・・先輩・・・唯せんぱぁい・・・・ぐすっ・・・んっ・・・」

唯「あれあれ?あずにゃん・・・泣いてるの?どうして?悲しいの?」

梓「いえ・・・・いえっ!ぐすっ・・・悲しくなんか・・・ありません!あるわけ無いじゃないですか・・・・!」

唯「じゃあどうしたの?」

梓「・・・唯先輩が・・・っ!私のために・・・こんなに頑張ってくれて・・・嬉しいんです!すっごく、嬉しいんです!!」

唯「・・・・・・・あずにゃん」

梓「嬉しくって・・・嬉しくって・・・・涙が止まらないんですよ・・・・!」

唯「・・・・・・」

梓「だって・・・、ずっと憧れてた唯先輩が・・・私のために・・・・私だけのために・・・頑張ヒギャアァッ!!!」

唯「ほいほいっ!!ほほいほいほいっ!!」

メタタッ メタラララッ!

唯の無慈悲とすら感じさせる投卵はますます速度を上げ、さながらアサルトライフルのようであった

そしてその銃撃は確実に梓の顔面と心を撃ち抜いていく

梓の性的興奮はピークを迎えつつあり、彼女の下着は既にその役割を果たさない程にぐしょぐしょに濡れそぼっていた



唯「さぁ~って、あずにゃん!そろそろクライマックスだね!!」

梓「んっ!!んぐんっ!!ほぉぉっ・・・!ほぁぉぁっ・・・・!!!」

唯「あらら~!もうろくに喋ることも出来ないみたいだねぇ~」

唯「じゃあとどめを刺すよ!次のはさっきの"アイズ・オン・ミー"なんて目じゃない技だよ!あ、これダジャレじゃないからね!!」

梓「ふひっ・・・!・・・ひっ!・・・ひっ!・・・・ふぅっ・・・ぁ・・・!」

唯「じゃあいくからね!・・・平沢流奥義!!"ダイブ・トゥ・ブルー"!!」

技名なのだろう、唯はそれを叫ぶと共に状態を大きく後ろに反らし、

バネのように反動をつけて大きく右腕を振りかぶった

当然のように、その手には明太子、いや、辛子明太子

それが彼女の手元を離れる瞬間、手首が目では追えない速度で複雑に回転する

一体何をしたのか・・・それを知るには愛を乗せて飛び始めた辛子明太子の行方を見守るほかにないだろう

廊下との平行線を描く辛子明太子、だがその軌跡は・・・・あまりにも低い

床から10センチ程だろうか、まるでホバリングするかのように直進する辛子明太子

物理法則を無視しているとしか思えないそれは着実に梓の元へ迫っていく

このままでは辛子明太子は梓の股下を潜り抜けて壁にぶつかって無残に砕け散るだろう

梓は虚ろな眼差しで迫る辛子明太子を見てそう思った

そしてそれは決して間違いではない

投手が・・・彼女でさえなければ・・・・!

唯「はーばたくーのーっさーすぐーにー♪」

"彼女"が口ずさむ―――

梓「・・・!?」

"辛子明太子"が急上昇し始める――――

梓の"股間"を目掛けて―――――

梓「――ひぃっ!!」

梓はその光景に、恐怖すら感じた

いや、言い換えよう、"恐怖で感じた"

おそらくほんの数秒後には、アレは女性の中心点をえぐりぬいてくれるのだろう

その期待が彼女に至上の興奮をもたらしたのだ

そしてその期待を背負った箱舟は、とうとう終着点へと―――――



タッタッタッタッ!!

律「わっすれっものー!わっすれっものー!あのノートがないと宿題できねーよー!――って!?」

唯「!?」

梓「!!?」

ドンッ!!

律「いたたた・・・・あ、梓!!こんなとこで一体なにやって・・・ゥホギャァッッ!!!」

梓「・・・・・」

唯「・・・・・」

律「ホギャーッ!!!ホギャギャーッ!!!ギャッギャギャー!!!!」

梓「・・・・・」

唯「・・・・・」

律「ウホッホホホホwwwwwホホホwwwwオホホホwwwww」

「「・・・・・・・・」」

何が起こったのかは言うまでもないだろう

突如現れた田井中律は股間を押さえ白目を剥きながら狂気染みた笑顔で床を転げまわっている



唯「あずにゃん・・・・」

梓「ゆ、唯先輩・・・・・」

唯「ごめん、あずにゃん・・・・」

梓「せ、先輩が謝ることじゃないです!!わたしがもっと注意してれば・・・!」

唯「ううん、私が悪いんだよ・・・・あずにゃんを愛しすぎて注意が向かなかった」

梓「・・・・もう一度、もう一度やってください!!」

唯「駄目なんだよ、あずにゃん・・・」

梓「!?」

唯「今の一球は私の全てを込めた卵。投手生命をかけた全力投球だったんだよ」

唯「私の肩は、もう、上がらないんだ・・・・」

梓「そ、そんな・・・・そんなのって・・・・ないです・・・・。あんまりです・・・・!!」

唯「だから・・・・ごめん」

梓「う・・・・うぁああぁああああん!!唯先輩!!唯せんぱあぁぁい!!!」

唯「あずにゃん・・・・!ごめんね・・・・!ごめんね・・・・!!」

律「ホッwwwwwwホホッwwwwwww」



何故こうなってしまったのか

お互いの不注意を嘆く二人

あの甘く辛い時間は一瞬にして消え去ってしまった

なんという悲劇、なんという悲恋

あろうことか二人の愛は、たった一人の招かれざる客によって永遠に潰えてしまったのだ

愛し合う二人に壁などない、そう思えたのはほんの数分前のこと

だがどうだ!今のこの有様は!!肩を抱き合いながら悲しみの涙を流す二人は!!

憎むべきは田井中律

なんなのだこいつは?何故現れた?どこから現れた?誰が望んだ?

神か?世界か?大地か?宇宙か?誰が望もうとも私は望んでいない

ならば現れるべきではなかった、二人の邪魔をする資格などなかった、私の邪魔をする資格などなかった

貴様は邪魔者、貴様は障壁、貴様は不要、貴様は消えるべき、貴様は削除対象!!



貴様は―――――



紬「わたしがころしてやる」


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