澪「ゆ、唯?」

律「いや……憂?」

唯「ま……待ってよ。私は憂じゃないよ、平沢唯だよっ?」

金田一「しらばっくれても無駄さ。今は……俺にはアンタがただの髪をおろした平沢憂にしか見えない」

剣持「……ま、待て金田一よ。そもそも、憂は死んだんじゃないのか?」

金田一「あれは……平沢唯の遺体さ」

紬「!?」

剣持「金田一、わけがわからんぞ。一体どうなっているんだ……」

金田一「難しく考えるなよおっさん。三日目の夜に平沢憂がとった行動を……共犯者の都合のいいように当てはめてみなよ」

金田一「前提として……彼女は『どっちの姿にもなれる』って事、を忘れずにな」

唯「……」

剣持「ええっと……『憂』の方が計画を立てたと考えて」

剣持「自分とは違う『唯』の顔で犯人の部屋を訪れる」

紬「……」

剣持「その後、犯人は『唯』を殺そうと考えた」

剣持「『唯』の顔のままだとマズイので、自分は『憂』に戻る……」

金田一「そして犯人が殺すのは……部屋には行ってない、本物の『唯』の方さ」

律「な、何と言う……」

澪「酷い……」

金田一「今の入れ替わりを使えば、自分に都合の悪い記憶や行動は全て別の身体に押し付ける事が可能になる」

金田一「片方が死んでしまった後は姿を入れ替える事は出来ないが……動機や犯行を押し付けるには十分なのさ」

金田一「何があっても『都合のいい片方』になる事が出来るんだから」

金田一「死人に口なしさ……」

唯「……」

剣持「待てよ……そうなると考え方が変わってくるぞ!」

美雪「もしかして、最初の事件が起こった時から……」

金田一「そうさ。最初に扉から出てきたのが平沢唯だろうが憂だろうが……うまく変わるタイミングさえ合わせれば、どちらになる事も可能なんだ!」

佐木「はっ、そうか……だから先輩は平沢姉妹を疑っていたのか!」

澪「そ、そんな事が……」

金田一「大したもんだよ。最初の事件をきっかけに……このトリックを使って保険金まで手に入れるつもりだったんだからな」

唯「っ……わ、私は……」

金田一「アンタは、琴吹紬が平沢唯に信頼感を持っているのを利用して……都合のいいように人間を動かしていたんだ!」

唯「私は……唯だよっ」

律「……」

唯「私は唯だもん。憂はムギちゃんに殺されちゃって……私はこうして生きているもん」

唯「私は……私は……」

金田一「……」

金田一「わかったよ、そこまで言うなら証拠を見せようか」

唯「!」

金田一「あんたが平沢憂だという……とっておきの証拠をな!」



唯『じゃあみんなで行こう行こう~』

憂『……あれ? 澪先輩と律先輩は?』

金田一『ああ、あの二人は大浴場に行くって言ってたから……多分もう下にいるんじゃないかな』

剣持「これは?」

美雪「まだ、第三の事件が起こる前の映像です」

律「こんな所に証拠が……?」

美雪『……』ジロッ

金田一『……とと。早くご飯ご飯~と』ダダダッ

美雪『こら、待ちなさ~い!』ダダダッ

紬『あらあら、私も~』タタタッ

唯『えへへ~、ご飯~』スタスタ

憂『もう。お姉ちゃんたら』テクテク

金田一「……」

澪「あまりそれらしい所は……無いかも」



金田一「そしてもう一つ。今日の推理前の様子を撮ったものさ」

紬『お待たせ~』タッタッ

唯『待たせてごめんなさ~い』スタスタ

澪『遅いぞ二人とも~』

唯『えへへ、ごめんごめん』

澪「ここは、唯……いや、憂ちゃん一人……なのか?」

律『休んで、ちょっとは元気になったみたいだな~唯』

唯『うん。おかげさまで! もう大丈夫だよ!』フンス

美雪『……ねえ唯ちゃん。本当に体調悪くない? 無理しないで大丈夫なのよ?』

唯『ふぇ? 私は大丈夫だよ?』

美雪『……でも、何だか辛そうに見えちゃって。気のせいかしら?』

唯『そうだよ気のせいだよ~。私は大丈夫だから、気にしないでね?』

美雪『そう……ね。それならいいんだけど』



律「……なんだよ~、全然わかんね~ぞ~」

澪「体調?が何か関係あるのか……?」

金田一「なあ、美雪」

金田一「どうしてこの時、平沢唯の体調を心配したんだ?」

美雪「それは……パッと見て、歩き方が変だったから」

唯「……!」ハッ

律「歩き方ぁ?」

澪「へ、変には見えなかった、けど……」

美雪「えっと、ビデオや実際に見てるとね。唯ちゃんの歩き方って、とても活発な感じがしたの」

美雪「でも、さっきの唯ちゃんは……元気なんだけど、気持ち前の方で両手を組んでいたように見えて……」

美雪「手の癖、って言うのかな。なんか違和感があって……」

美雪「そ、それで私。お腹が痛かったり、どこか体調が悪いのかって思ったのよ」

唯「……」

律「はえー、そんなもんなんかねー」

澪「でも、言われてみれば確かに……」



金田一「それを美雪に言われて、俺たちはもう一度ビデオを見返した」

唯「……」

金田一「アンタが普通に歩いているシーンを探すのに苦労したよ。なんたって、ずっとビデオ片手に琴吹紬を撮っていたんだからな」

唯「……こんなの、証拠にならないよ」

金田一「一日目、演奏するために娯楽室に移動する時の様子」

律『ようし、みんな移動だ移動~!』タタタッ

唯『頑張るぞ~』テクテク

梓『唯先輩、一番最初トチらないで下さいよ!』グイッ

唯『大丈夫だよ~。あずにゃ~ん』

憂『ふふっ、頑張ってねお姉ちゃん』スタスタ

律「唯と憂……」

金田一「そして三日目、アンタたちは夕飯の前には既に入れ替わっていたんだ」

唯『えへへ~、ご飯~』スタスタ

憂『もう。お姉ちゃんたら』テクテク

律「あ……」

澪「言われてみると、なんとなく違いがわかる気がする……」



金田一「そして四日目。本物の平沢唯が死んだ後も……」

唯『待たせてごめんなさ~い』スタスタ

紬「……」

金田一「もしこの時、美雪が歩き方を心配する発言をしたら、アンタはもしかしたら体調のせいだと言っていたかもしれない」

金田一「残りの時間を、完璧な平沢唯として過ごせたかもしれない」

唯「……」

金田一「これが、アンタが平沢憂である証拠さ。何か反論があるなら聞こうじゃないか」

唯「……」

紬「あなたは……誰なの?」

紬「私は、一番大事に思っていた親友を……この手で殺めてしまったの?」

唯「……」



憂「そうだよ」ニッコリ


!?


紬「あ、あぁ……」

律「そ、その髪……やっぱり」

澪「憂……ちゃん」

憂「……」

剣持「こ、この子が」

憂「確かに、私は平沢憂だよ。でもね、入れ替わっていたから……なに?」

剣持「な、なんだとっ?」

憂「よく考えてよ。私が変われるって事はさ、お姉ちゃんも私になれるって事なんだよ」

憂「私がこの四日間で何をしていたのか……本当の事を知ってるのは、私とお姉ちゃんだけ」

憂「私が悪い事をしたかもしれない、お姉ちゃんが悪い事をしたのかもしれない」

憂「くすっ」

剣持「こ、こいつっ! 立て! パトカーまで歩くんだ!」

憂「……プンだ」ガチャッ

紬「……」

紬(唯、ちゃん……)

……。



金田一「……」

美雪「これで……終わったのよね?」

金田一「ああ……」

美雪「ねえ、はじめちゃん」

金田一「ん?」

美雪「いつ位から、唯ちゃんたちが入れ替わっているって推理するようになったの?」

金田一「……ムギちゃんが言ってた事がきっかけさ」


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