金田一「いや、そうじゃない。共犯者は、この状況を逆に利用したんだ」

剣持「利用だと? どういう事だ?」

金田一「……もしも、さっき言った悪条件が全てチャラに出来て。自分の手を汚さずにそれを達成できるような手段が……あるとしたら?」

律「……人目につかないで?」

唯「自分の……手を汚さない」

紬「ま、まさか……!?」

金田一「……そう。共犯者はアンタを……一番最初の事件を利用したんだ」

紬「う……そ」

紬「うそよ、そんな……」

律「ムギ……」

金田一「鈴木純を殺害してしまった現場を見て……共犯者はほくそ笑んだろう」

金田一「これは利用できる、ここで事件を終わらせるのは……もったいない、と」

紬「……」

金田一「いくら警察の到着を誤魔化したところで、結局損をするのは犯人であるアンタだけだ」

金田一「おそらく共犯者は……それが本当の狙いだったんじゃないかな」

紬「……」フルフル

澪「も……もう」

澪「もうやめてやれよっ!」

律「澪……」

澪「ムギ、泣いてるじゃないか。もういいじゃないか……ムギは罪を認めているんだから!」

澪「だから、だから……もうムギをいじめるのは、やめて……やれよ……」

美雪「澪ちゃん……」

律「澪……」

「……」

「……」

紬「……ねえ」

紬「さっき言ったお話、本当にそうなの?」

金田一「ムギちゃん……」

紬「教えてよ……あの日、廊下で会ったんだから覚えているんでしょう」

紬「私と一緒に、地下室まで遺体を運んでくれたんでしょう」

紬「ね……唯ちゃん?」

唯「!?」

剣持「……な! こ、こいつが共犯者だと!」

紬「ね、あの日、私が廊下で困ってたら、唯ちゃん部屋から出て来たわよね」

紬「怯える私をなだめてくれて……大丈夫だよって言ってくれた」

律「お、おいムギ……」

紬「あなたが言ったから、嘘の電話だってしたし、怪しい行動とっていた梓ちゃんだって殺したのよ」

「!?」

澪「ムギが……梓を?」

金田一「……」

紬「ねえ、答えて唯ちゃん。一番最初の事件の時……私を助けてくれたのは唯ちゃんよね?」

唯「……」

澪「唯……!」

律「唯っ……本当に、お前なのか……お前が!」



唯「ムギちゃん。それはきっと……私じゃないよ」

紬「!?」

律「な、なんだよ唯。どういう事だよ!」

唯「……よく考えてみてよ。寝る前って大抵楽な格好だよね。服装もそうだけど、それは髪の毛もおんなじはずだよ」

澪「髪の毛……あ」

律「そっくり……憂ちゃんか」

唯「そうだよ。憂が髪の毛をおろせば私に。私は髪の毛をあげれば憂に」

佐木「確かに、姉妹揃ってそっくりだとは思っていたけど……」

紬「……じゃあ、あの日私が唯ちゃんて呼んだのは」

唯「憂だよ。きっと、お互い気が動転していたから間違えちゃったんだよ」

唯「それに、あずにゃんが殺されちゃった時だってさ。メールは間違いなく憂に届いていたんだよ?」

唯「憂が私にそれを教える必要はないよね? 二度手間だもん。憂がまた何か教えてくれる時に、必要な事を聞けばいいだけなんだもん」

律「唯……お前っ! お前も共犯なのかよっ!」

唯「違うってば~。私は憂に話を聞いていただけ、だから犯行には関係ないよ」

金田一「……」

唯「それにさ、みんな思い出してよ」

唯「私、もしかしたら死んじゃってたかもしれないんだよ?」

剣持「第三の事件か。確かに、部屋がどうとかは聞いたが……」

唯「私の部屋で憂が寝てくれたの。憂と約束して、お部屋を交換したんだよ」

剣持「一体……なんのために?」

唯「憂は、あまり私に理由を話してくれなかったよ。でも憂が言う事なんだもん、間違いないよ」

唯「私は憂を信じてたから、言われた通りにしたんだよ。そしたら……あんな事が起こって……」

紬「……っ! ま、待ってよ。その前に……私の部屋に来たじゃない。次の日に私の犯行をバラす、証拠があるんだって!」



唯「私は、やっぱり知らないよ」

唯「さっきみたいに……憂が私の格好をしてムギちゃんにお話しに行ったとしたら?」

紬「あ……」

金田一「ムギちゃん。君が平沢憂殺しを決意したのは……」

紬「……ええ、そんな事を言われたらもう怖くて。自分でもおかしかったと思うくらい」

剣持「ん、待てよ? 妹が姉になって部屋を訪ねて……姉が殺されるように仕向けたとして」

剣持「殺されるのは、入れ替わったままの妹じゃないのか!?」

金田一「それは簡単な話さ。ムギちゃんとの話が終わったらまた入れ替わればいい。片方がその事情を知らない事が条件になるけど」

剣持「……あ、そうか」

唯「憂も殺されるなんて思ってなかったんじゃないかな」

唯「本当にそんな話をしたかも、私にはわからないしさ。本人が死んじゃったんだから……ね」

紬「唯……ちゃん」

金田一「……」

剣持「なあ、金田一よ。そろそろいいんじゃないか。事件の内容は全部聞いた、犯人と共犯者もはっきりしている」

剣持「これ以上は、何を話しても無駄だと思うがな……」

金田一「無駄なだんてとんでもないぜおっさん……今までの会話の中で、俺は確信した」

金田一「この事件の共犯者、それはやはり、平沢憂だという事をな」

紬「……」

剣持「じゃあ、それで解決だ。さ、パトカーまで行こうか……立つんだ」

紬「はい……」

金田一「まてよおっさん。どうして……共犯者を連れていかないんだい?」

剣持「おいおい、いくら俺でも死んだ人間を逮捕して連れていく事はできんぞ」

金田一「……」

金田一「死んでなんかいないさ」


!?


金田一「今俺たちの目の前に、こうして生きているじゃないか」

剣持「お、おいおい……」

澪「ま、まさか……」

律「今ここにいるのは……!」

紬「嘘……」

金田一「……それとも、『今』の名前で呼んだ方がいいのかな」

金田一「この事件を裏で操っていた人間……それは」スッ

全員「!!」

唯「……!?」



金田一「平沢唯」

金田一「アンタがこの事件の、真の共犯者さ」


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