二階・廊下
佐木「皆さん~。先輩から話があるみたいなんで……一階に集まって下さい」
律「ん?」
澪「団欒室でいいのか?」
佐木「はい。皆さん一緒に……って、あれ? メンバー足りなくないですか?」
紬「唯ちゃんは、ちょっと疲れたから休むって。結構前に部屋に……」
佐木「廊下で雑談してたんですか……」
律「ま、まあ。話が盛り上がっちゃって、ついな」
佐木「とにかく、一緒に下に来て下さい」
紬「……」
紬「あの、私。唯ちゃんを連れてから行くわね」
澪「ん……お願いしちゃっていいのか、ムギ?」
紬「ええ。大丈夫よ澪ちゃん」
律「じゃあ、下で待ってんかんな~」
紬「……」
二階・憂の部屋前
紬(さすがに……血まみれの部屋で寝るわけにはいかないものね)
紬(唯ちゃん、起きてるかな?)
コンコン。
唯「……は~い?」
紬「唯ちゃん。起きてる?」
唯「その声はムギちゃん? な~に、またお話?」
紬「一階でみんなにお話があるんですって。だから今すぐ部屋から出てきて欲しいの」
唯「……」
唯「今、他に誰かいる?」
紬「えっ? わ、私一人だけど?」
唯「……ちょっと入ってきて。私もムギちゃんにお話があるんだ」
紬「……」
ガチャッ。
唯「ね、お願い?」
紬「……」
紬「わかったわ」
唯「うん……」
紬「……」
唯「……」
紬「あ、あのっ」
唯「……ねえムギちゃん」
紬「は、はいっ?」
唯「昨日は、ごめんね」ペコッ
紬「……え?」
唯「ムギちゃんの事、話しちゃうとか言ってたけど」
紬「うん……」
唯「私からはね、もう何も言わないよ。昨日のお話はこれでおしまい」
紬「……どうしたの、いきなり?」
唯「憂がね、私に教えてくれたん。私を守ってくれた」
唯「……憂が死んじゃったのは悲しいけど、私はこうやってちゃんと生きているから」
唯「そして、ムギちゃんとはお友達でいたいから」
紬「唯……ちゃん」
紬「……私はいつも、唯ちゃんに助けられてばっかりね」
唯「?」
紬「今回だってそう。部室で話していたあの時だって……」
唯「?」
紬「ふふっ、もう、いいのよ。ありがとう唯ちゃん。私も唯ちゃんとはずっとお友達よ」
唯「……うん!」
紬「……そろそろ一、階に向かいましょう。みんな待ってるわ」
唯「そうだね、行こう行こう~」スタスタ
紬「ええ、行きましょう」タッタッタッ
紬(お友達だから……ね)
一階・団欒室。
四日目、17時2分
金田一「……」
美雪「二人とも遅いわね」
金田一(まさか、彼女たちに何か……)
タタタッ。
律「お、あの足音は」
紬「お待たせ~」タッタッ
唯「待たせてごめんなさ~い」スタスタ
澪「遅いぞ二人とも~」
唯「えへへ、ごめんごめん」
律「休んで、ちょっとは元気になったみたいだな~唯」
唯「うん。おかげさまで! もう大丈夫だよ!」フンス
美雪「……ねえ唯ちゃん。本当に体調悪くない? 無理しないで大丈夫なのよ?」
唯「ふぇ? 私は大丈夫だよ?」
美雪「……でも、何だか辛そうに見えちゃって。気のせいかしら?」
唯「そうだよ気のせいだよ~。私は大丈夫だから、気にしないでね?」
美雪「そう……ね。それならいいんだけど」
金田一「?」
律「さて、全員揃った所でさ」
律「……聞かせてもらおうかな、はじめちゃんの推理とやらを」
佐木「先輩、準備出来ましたよ」
金田「よし……」
律「ありゃ。もしかして本当に推理するの?」
澪「律、ちょっと黙ってろって……」
金田一「言ったろ、犯人はこの中にいるって」
美雪「犯人がわかったの?」
金田一「……ああ」
全員「……!?」
金田一「一番最初の事件から、順番に話していこうか」
金田一「事のはじめは地下室で被害者、鈴木純が見つかった二日目からだ」
金田一「俺はまず、現場の異変とその服装に注目した」
律「服装は覚えてるぞっ! ええっと……確か毛布を羽織っていて……」
唯「違うよりっちゃん。純ちゃんは最初バスタオルを巻いた状態で見つかったんだよ~」
澪「あれ? でも確か毛布を巻いたって聞いて……」
美雪「それは、確か憂ちゃんが発言したんじゃないかしら。ほら、梓ちゃんの遺体が見つかってから……」
律「ああね~。って……あれ、唯。どうしてそれ知ってるんだっけか?」
唯「? 憂に聞いたんだよ~」
金田一「!?」
唯「ほら、あずにゃんと一緒に地下に言った時にね。見ちゃったんだって」
唯「毛布の下の、格好をさ」
澪「そ、そうだったのか……」
律「憂ちゃんがねえ……度胸あるなあ」
金田一「……なあ唯ちゃん。他に憂ちゃんから聞いた事はあるかい?」
唯「ん~っとねえ……」
紬「……」
唯「話ながら、出てきたらお話するよ。あんまりいっぺんに話しても……ね」
金田一「……」
金田一「わかった。それじゃあ話を続けよう」
金田一「次は現場の異変についてだ」
金田一「彼女があの格好で、現場にいたのはなんでだろうか?」
律「だって、階段から落ちちゃったんだろ? だったら別に現場まで行かなくても……ほら」
律「そこの地下室の扉を開けて、一歩だけ踏み出して落ちちゃった可能性もあるんだろ?」
律「別に変な事は……」
金田一「想像してみなよ。風呂上がりの水分を纏ったような体でさ、明らかに冷たい空気が流れている場所に入りたいと思うかい?」
律「ん……あんまり」
澪「まあ、確かに……一歩踏み出してみようとは思わないかな」
金田一「しかも、地下に電気がついていない状態だったら尚更さ」
紬「……非常用として、常に電気がついている食料庫もあるけど。今回はスイッチで明かりをつけるタイプのお部屋よ」
金田一「普段も消灯を?」
紬「管理の都合上、そのはずよ」
律「ん~、真っ暗で冷え冷えじゃあさすがの私でも遠慮かな~……」
金田一「そうなった場合、どこが現場になるか。考えてみてほしい」
美雪「亡くなった理由が階段から落ちた、っていう条件なら……階段は……」
澪「この団欒室から、二階に繋がっている階段か!」
金田一「そう。おそらく犯人はそこの階段で彼女を殺害。そして……人目につかないよう、地下室まで運んだんだ」
律「殺害って……」
紬「……」
金田一「しかし……この犯行には『計画性が全く無い』んだよ」
澪「……それは、どういう事だ?」
金田一「考えてみなよ。本当に殺すつもりがあるなら、わざわざ階段から人を落としたりするだろうか?」
金田一「もっと人目につかない場所とか、遺体を隠す場所をもっと考えるもんじゃないかな?」
律「んん~、言われてみれば確かに……」
澪「じゃあ、最初の事件は一体……」
金田一「そこに興味をもったのが、中野梓だった」
金田一「彼女は、親友の死を嘆いていた。そして犯人を探そうと必死だった」
最終更新:2011年05月04日 01:41