ピリリリリ。

ピリリリリ。

佐木「携帯?」

金田一「お、俺か。剣持のおっさん……」

ピッ。

金田一『もしも~し』

剣持『よう金田一。頼まれたもん、調べといたぞ』

金田一『お、悪いなおっさん』

金田一『……それで、何かわかったかい?』

剣持『まず、被害者からだ。鈴木純……父母共に、いたって普通の家庭だな。近年で何かトラブルがあった様子も無い』

金田一『……』

剣持『次行くぞ。中野梓、親は音楽家……ミュージシャンとも言うのかな。そう言った意味では、ちょっと珍しい家庭かもしれん』

剣持『近々ミュージックツアーがあるとかで、忙しそうな様子だったよ』

剣持『……でだ、数年前にそのミュージシャンの所属事務所が脱税をしていた事がわかったんだ』

金田一『脱税?』

剣持『ああ、そこの事務所な社長なんだがな……まあ、こういう言い方もアレだが、よくある事件だからな』

剣持『そこの社長が手を出した株が暴落したらしくてな……よっぽど金に困っていたらしい』

金田一『……他には?』

剣持『中野梓に関してはそれだけだ』

剣持『……そうだ、株と言えばな。面白い事がわかったぞ』

剣持『そこにいる、琴吹紬って……あの有名なコトブキコーポレーションのお嬢さんじゃないか』

金田一『おっさんでも知ってるくらいなら……そんなに有名なのか』

剣持『おいおい、大人をバカにするもんじゃない。最近よく経済ニュースでやっていただろうが。高校生のお前には、あまり興味が無いだろうがな』

金田一『……はぁ、おっさんもちゃんと勉強してんのね。ま、株で大損してもっと貧乏にならないようにね』

剣持『俺は株なんぞやっとらん! ……株で繋がっているのは、そこにいる平沢姉妹の方だ』

金田一『なんだって……?』

剣持『正確には、平沢家の両親だな』

剣持『調べてみると随分株で儲けているみたいでな。海外への旅行機会も多い』

剣持『それでいて……しっかり貯金もしているみたいでな。遊ぶ金に困らず、未来も不安が無いってやつだ』

金田一『……でもよ~、いくら株のプロでも大失敗する事だってあんだろ? いくら不安が無いったって……』

剣持『そこだ。この平沢家にはな……家族全員に多額の生命保険がかかっていたんだ』

金田一『生命保険だって?』

剣持『高額保険をスタートしたのが、ちょうど二年前。まずは両親からだ』

剣持『そして、一年前には姉妹二人にも多額の生命保険がかけられている。調べてみてわかった事だ』

金田一『……』

剣持『まあ、保険がかけられているから何だとは思わんがな。高校生がそれを理解しているとも思わないし……』

金田一『その事なんだがな、おっさん』

剣持『ん……』

剣持『な、なにぃ? 妹の平沢憂が今日殺されただとぉ?』

金田一『ああ、包丁で身体中を滅多刺し。ひでえもんさ』

剣持『ま、待て待て。という事は、犯人は……保険金が入って得をする人物!』

金田一『……』

剣持『そうなんだな、金田一?』

金田一『……いや』

金田一『確かに保険金の話を聞いた時、一番にそれを考えたよ』

金田一『それに、俺は一度彼女……平沢唯に自首を促した事もあった』

剣持『なら、犯人は決まりじゃないか! きっと第三の殺人も、彼女がやったに違いない。保険金の話で決まりだ』

金田一『……』

金田一(なんなんだ、この違和感は)

金田一(剣持のおっさんの言う通り、つじつまは合っていると思う)

金田一(何より俺は、平沢唯が第一の事件の犯人だと思い……そこから推理を進めていた)

金田一(そして、憂殺しに保険金……)

金田一(つじつまは合うが、第二の事件。中野梓殺しについては何一つわかっていないんだ)

金田一『……』

剣持『と、こんな所だな。俺が調べた内容は。どうだ、役にたったか?』

金田一『ん……あ、ああ。ありがとな。やっぱおっさんは頼りになるよ』

剣持『ははっ、お礼なら、帰ってからハンバーガーの一つでもご馳走してくれよ』

金田一『ああ、無事帰れたらな~。雨は止んだけど、相変わらず救助の連絡は来ねーし……はぁ。いつになったら帰れるやらで……』

剣持『……ん、何言っとるんだお前は。あの崖崩れの報告は冗談だったんだろう?』

金田一『はぁ? んなわけねーだろ。こちとら豪雨の中を必死で歩いてだな……』

剣持『……確かに、お前が出掛けた日の夕方から雨は降っていたがな。だがどこの場所でも崖崩れが起きた報告は無かったぞ?』

金田一『なんだって……』

剣持『調べるついでにな。作業が終わっていたら迎えを出そうと思ったんだが……そんな事実はないって怒られちまったよ』

金田一(つまり、という事は……)

剣持『まあ、崖崩れなんてちょっと調べたらわかる事だしな。てっきりお前の冗談だと……』

金田一『……』

金田一『そうか、そういう事か……』

剣持『ど、どうした金田一。大丈夫か?』

金田一『……おっさん、悪いんだけどさ。今から迎えに来てもらえないかな』

剣持『そりゃあ構わんが、いいのか?』

金田一『ああ。頼んだよ』

……プツッ。

美雪「はじめちゃん、電話終わったの?」

金田一「……佐木二階のみんなを集めて来てくれないか」

佐木「どうしたんです、いきなり?」

金田一「いいから、早く」

佐木「は、はい……わかりましたよ」タタタッ

金田一「……」

美雪「はじめ……ちゃん?」

金田一「……なあ美雪」

金田一「こいつは俺の考えていた以上に……悲しい事件なのかもしれない」

金田一「それでも俺は……犯人を」

金田一「犯人を暴くしか、ないんだ……」

美雪「はじめちゃん……」


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