二階・唯の部屋

澪「……うっ」

律「あんまり見るな、澪。ほら、唯も……」

唯「うぅ、うい……ういぃ……」

律「よしよし」ナデナデ

佐木「……酷いもんですね」

金田一(つい先ほど、ベッドの上で大量の血を流しながら事切れているその姿を見つけた)

金田一(凶器は、胸に突き刺された包丁。この別荘の厨房にあったものだ)

金田一(胸や胴体を中心に、滅多刺し)

金田一(第一発見者は、彼女を起こしに来た唯ちゃんと澪ちゃんで……)

金田一(俺と佐木が部屋に入ると、そこには)

金田一(血がベットリ染み付いたシーツの中で、眠っている平沢憂を見つけた……)



紬「ゆい……ちゃん?」

律「ムギ……」

澪「ムギ……」

唯「ぐ、ぐすっ、ムギちゃん……憂が、憂がぁ……」

紬「どうして憂ちゃんが、ここに寝ているのよ……」

唯「うっ、ひぐっ……」

金田一(そう。ここは唯ちゃんの部屋だ)

金田一(どうしてここに彼女がいたのか。唯ちゃんに聞けばわかるかもしれないが……)

唯「うわぁ……わっ……」

金田一(今は彼女に話を聞ける状態じゃあない)

金田一「佐木、みんなを一階に集めておいてくれ。俺はもう少しこの部屋を調べてから行く」

佐木「……はい、わかりました」

紬「……」



一階・団欒室

四日目、午後13時過ぎ

金田一「……っと」

美雪「あ、はじめちゃん。どう……だった?」

金田一「ああ、特に手がかりになりそうな物はなかったよ。凶器が残っていたくらいで、な」

佐木「でも、あれだけ出血していたって事は犯人もそうとう返り血を浴びているんじゃないですか?」

澪「ち、血の話……」ブルッ

金田一「それは俺も考えたんだが……シーツと掛け布団に付着した血液の様子から……犯人は憂ちゃんの体に布を被せたまま殺害したみたいなんだ」

律「うう……澪じゃなくても、こんな時は血が苦手になるってもんだ」ブルッ

佐木「なるほど、布団の下で……」

金田一「ああ。しかも傷口は相当深く、しかも多い」

金田一「これは、明らかに殺意を持った犯行だ!」

律「……つまり」

唯「憂を……殺そうって。そう考えていた人がいるだね」

澪「唯……」

唯「ねえ、誰? 憂を殺したのは……誰……」

唯「誰なの、教えてよぉ……っぐっ……」

律「唯……っ」ギュッ

金田一「……」

金田一「犯人は、この中にいる」

唯「え……」

唯「それは……」

金田一「……今はまだ、推理するための情報が足りない」

金田一「それでも俺は、必ず犯人を見つけ出してみせる」

律「はじめちゃん……」

澪「金田一、さん……」

唯「……」

佐木「先輩……」

金田一「名探偵と言われた、ジッチャンの名にかけて!」

美雪「はじめちゃん……」

紬「……」



二階・唯の部屋の前

四日目、15時過ぎ。

唯「……」

金田一「よっ」

唯「ひゃっ! つめたっ!」

金田一「ジュース、飲みなよ」

唯「……」コク

金田一「……俺も、隣座っていいかな」

唯「……」コク

金田一「ありがと」

唯「……」

唯「また……何かお話?」

金田一「……なあ唯ちゃん。どうして憂ちゃんは君の部屋にいたんだい」

金田一「思い出すのは辛いかもしれないけど、教えてくれないかな」

唯「……憂はね、私を守ってくれたんだ」

金田一「守るって?」

唯「憂はね、昨日こんな事を言ってきたの」

憂『私と眠る部屋を交換しよう、って』

金田一「……それは、なんでまた?」

唯「わかんないよ~。いきなりの事だったから」

唯「でもね、憂が言うんだから何かちゃんとした理由があったと思うんだ~」

唯「……今は、もう憂に聞く事は出来なくなっちゃったけどさ」

金田一「唯ちゃん……」

律「唯、そんな悲しい事言うなよ」

唯「あ……りっちゃん?」

澪「私たちもいるぞ」

紬「……」

唯「澪ちゃん。ムギちゃんも。どうしたの?」

律「……落ち込んでるみたいだから。そりゃあ、こんな事の後で無理に元気出せとは言わないけどさ」

澪「でも、私たち友達……同じ放課後ティータイムのメンバーじゃないか」

唯「みんな……」

律「だからさ、ちょっとみんなでお話してようぜ。そうすれば……」

澪「少しは気持ちも楽になるからさ。な、ムギ?」

紬「……ん、そうよね」

唯「みんな、みんなぁ……ぐすっ」

唯「りっちゃ~ん!」ギュッ

律「ば、バカ。私の服に涙と鼻水くっつけるなっての!」

澪「あははっ、そう言いながらも頭は撫でるんだな」

律「う、うるしゃいのっ!」

澪「照れるなよ、まったく。素直じゃないよな」

澪「ほら、ムギも何か言ってやれよ」

紬「あ、う、うん。そう……ね」

律「……ふふっ」

澪「あはははっ」

唯「うんっ!」

金田一(……俺は、退散した方が良さそうだな)



一階・団欒室

金田一「おっ、美雪一人か?」

美雪「さっきまで佐木君もいたんだけど、トイレに行くって言って」

金田一「ん、そ、そうか……」

美雪「……なんだか、二人きりになるのも久しぶりね」

金田一「きゅ、急にどうしたんだよ美雪?」

美雪「この数日間、色んな事があったから……なんだか落ち着かなくて」

美雪「それに、はじめちゃんてば、唯ちゃんの心配ばっかしてるように思えるんですもの」

金田一「……そ、そんなんじゃねうよ。俺はただ、落ち込んでいる姿が放っておけなくてだな……」

美雪「……」

美雪「ごめんね」

金田一「へっ?」

美雪「はじめちゃんだって、色々考える事があって大変なんだよね」

美雪「でも、私はそんなはじめちゃんを助けてあげる事が出来なくて……」

美雪「だから……」

金田一「美雪……」

金田一「心配するなって」

金田一「美雪は俺にとって心強いパートナーだ。昔も今も、それは変わらないだろ?」

美雪「はじめちゃん……」

金田一「だ、だからよ……その、そんな泣き顔……お、お前には」

金田一「お前に、は……」

佐木「……」ジーッ

金田一「……って、柱の影でカメラを構えるな」

佐木「いやあ、あまりにいいシーンだったもんで。お邪魔しちゃあ悪いかな、と」

美雪「……くすっ」

金田一「……ったくよ」


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