一階・大浴場
三日目、午後21時過ぎ
律「……ふい~」
澪「はあ、二度目二度目っと」
美雪「気持ちいいわね。私、ここのお風呂使わなかったから……ちょっと驚き」
紬「あら、遠慮しないでよかったのに~」
美雪「なんか、一人だと利用しづらくて……」
唯「じゃあ明日は一緒にお風呂入ろうよ!」バシャッ
律「うぺっ。お湯を飛ばすな唯!」
憂「もうお姉ちゃん、お風呂ではしゃいじゃ危ないよ」
唯「えへへ、は~い」
美雪「……ふふっ」
澪「……」ジーッ
律「ん、どったの澪しゃん。美雪ちゃんのお胸なんて見つめちゃって……」
澪「えっ! い、いや、その」
律「美雪ちゃんスタイルいいもんね~。身長高くて、胸もあって……そりゃあ見ちゃうよね~」
美雪「そ、そんな事……」カアッ
唯「でも本当にスタイルいいよね~。うらやましい」
憂「それは私もだよ、お姉ちゃん」シューン
美雪「そ、そんな事ないわよ。最近ちょっと太っちゃったし……澪ちゃんとか唯ちゃんの方がよほど立派よ」
律「……お胸が~?」
美雪「……もう! からかわないの!」
……。
二階・金田一の部屋
三日目、午後21時50分
金田一「……ん、廊下が騒がしいな」
佐木「多分みんなが戻ってきたんですかね」
金田一「みたいだな」
コンコン。
ガチャッ。
美雪「はじめちゃん、お風呂開いたわよ。よかったら……」
金田一「ああ、俺たちはもうシャワーですませちゃったからよ」
佐木「あとは寝るだけですよ」ジー
美雪「そうなんだ。じゃあ……」
金田一「あ、待ってくれ美雪。もう、みんな戻ってきたのか?」
美雪「ん。多分みんな部屋にいると思うわよ」
金田一「……」
美雪「じゃあ、私寝るからね。おやすみなさい」
金田一「ああ、おやすみ」
美雪「ちゃんと戸締まりはするのよ」
佐木「じゃあ、僕もそろそろ。おやすみなさい、先輩」
金田一「ああ、おやすみ」
佐木「先輩はまだ眠らないんですか?」
金田一「……ああ、俺はちょっと、な」
佐木「あんまり無理はしないで下さいよ。じゃあ、おやすみなさい」
金田一「ああ」
バタン。
金田一「……」
金田一「さて、どうすっかな……」
二階・唯の部屋前
三日目、午後22時10分
金田一「……う~ん」ウロウロ
金田一「……よし」
コンコン。
金田一「……」
唯「は~い」
金田一「あ、夜にすいません。金田一なんですけど……」
唯「あ、今開けま~す」
ガチャッ。
唯「? どうかしたの~?」
金田一「ちょっと話があるんだけど。いいかな?」
唯「ん~……まあ、まだ眠くないからいいかな。どうぞ~」
金田一「すんません、お邪魔します」
唯「……それで、お話って? やっぱり事件の事かな?」
金田一「ああ」
唯「もしかして犯人がわかったとか!?」
金田一「犯人……犯人ね」
唯「うん。あずにゃんと純ちゃんを……その、殺した犯人……早く見つかるといいな」
金田一「……」
金田一「そもそも、どうして犯人は殺人を犯したんだろうな」
唯「ん~、その人の事が嫌いだから……かな?」
唯「あとは、その人がいたら嫌なんだよきっと」
金田一「純ちゃんも誰かに嫌われていた?」
唯「……それはあんま無いと思うよ~。嫌いだったら呼ばないしさ」
唯「あずにゃんだって、みんなのアイドル的存在だよ。殺される理由なんて……」
金田一「もし……殺される理由が無いとしたら」
唯「……」
唯「……」
唯「事件じゃ、ない?」
金田一「そう、もう一つの可能性。最初の殺人が……もし事件でなく事故だったら」
唯「事故……」
金田一「あれから自分なりに調べてみたんだ。今のところ、純ちゃんが殺される理由は……俺にはわかっていない」
金田一「そこで俺はこう考えたんだ」
金田一『彼女は……本当に事故で死んだんじゃないか、と』
唯「……あの、地下の階段から落ちて?」
金田一「いや、純ちゃんがあの階段から落ちた可能性は低いと思うんだ」
唯「え、どうして?」
金田一「彼女の格好さ」
唯「……あ、そう言えばちょっと話していた気がするね」
金田一「あれ~、そんな話したっけか?」
唯「ほら~。みんなで事件のおさらいをしてた時……話題に出たじゃん」
金田一「……ああ、唯ちゃんと憂ちゃんが話してくれたやつか」
憂『純ちゃんは……毛布がかかっていたくらいです。それ以外は何も……ううっ』
唯「……あれ? 憂のその話は覚えてるけど、私何か言ったっけか?」
金田一「唯ちゃんは……ほら」
唯『ええ~。でもあんな格好で冷蔵庫開けたくないよ~……』
金田一「自分の発言なのに、忘れちゃったのかい?」
唯「ああ~、ね。結局私も憂とおんなじ事言ってたから、思い出せなかったよ」
金田一「……」
金田一「本当に……憂ちゃんはそれと同じ意味で言ったんだろうか?」
唯「え……」
金田一「考えてもみろよ。憂ちゃんは、地下で梓ちゃんと純ちゃんが死んでいるのを見たはずさ」
唯「……」
金田一「だから、横になっている純ちゃんの様子を知っていてもおかしくない」
唯「わ、私も……ほ、ほら。憂が話していたのはみんなで聞いたから」
唯「だから、純ちゃんの格好に関してはみんな知ってるはずだよっ」
金田一「……でも、それだと変じゃないかな。さっきの発言の中で唯ちゃんはこう言っていた」
金田一「『あんな格好で』と」
唯「……」
唯「だ、だってさ。地下だよ? おっきな冷蔵庫だよ?」
唯「パジャマと毛布だけじゃあとっても寒いんじゃないかなあ~、って思っただけだよ?」
金田一「ん……なるほどな」
唯「えへへ~」
金田一「なあ、どうして純ちゃんの格好がわかったんだ?」
唯「……?」
金田一「どうして君が、純ちゃんがパジャマを着ていたのを知っているのか……」
唯「だ、だってそれは憂が言ったから……」
金田一「憂ちゃんは『毛布がかかっていた』としか言ってないぜ。その下の格好までは……」
唯「っ……!」
唯「そ、それは……も、もう夜中だったんだもん。格好がパジャマだと思うのは当たり前だよ~」
金田一「……なるほど、確かにそうかもしれないな」
唯「それに、みんな憂の話聞いてさ、毛布を被ってるのは知ってるはずだよね?」
唯「あの時間で、毛布の下に何を着てるか、なんて聞かれたらみんなパジャマって答えるはずだよ~」
金田一「……」
唯「……」
唯「もう、いいかな。ちょっと疲れちゃった……眠りたいな」
金田一「ああ……夜中に、悪かったね」
金田一「おやすみ」
唯「……」
唯「……」
唯「はぁ……」
金田一『俺は、今回の事件のきっかけは事故だと思ってるんだ』
金田一『できれば、みんなの前で犯人を暴くような事はしたくないんだ……』
金田一『放課後ティータイムの事を知ってから、あまり時間は経ってないけれど……とても仲のいい人たちだったと感じているんだ』
金田一『俺が言えるのは、それだけさ』
金田一『おやすみ、唯ちゃん』
唯「……」
唯「だって、さ……」
唯「……」
唯「よしっ」
最終更新:2011年05月04日 01:38