二階・金田一の部屋

午後13時

金田一「……結局、二日目はみんな早めに寝ちまってアリバイ無し」

金田一「一日目だって、それぞれが部屋に戻って寝ていたからアリバイ無し。せめて死亡推定時刻がはっきり出ればな……」

金田一「アリバイから攻めるのはダメ、と……」

金田一「……」

コンコン。

美雪「はじめちゃん、いる?」

金田一「お~、美雪。なんか用か~」

美雪「どう、推理。進んでる?」

金田一「……」

金田一「犯人の目処は、なんとなく付いたよ」

美雪「えっ、本当に?」

金田一「ああ」

美雪「じゃあ、あとは証拠とかを見つけて……事件解決じゃない」

金田一「ところがドッコイ、引っ掛かってる部分が多すぎるんだな、これが」

美雪「そ、そうなの?」

金田一「それに……」

美雪「それに?」

金田一「……俺にはまだ信じられないんだ。あんなに仲の良さそうだったメンバーが、こんな事になってるなんて」

美雪「はじめちゃん……」

金田一「まあ、みすみす犯人を逃すつもりはねーけどな!」

金田一「さ~て、そうと決まったら調査調査! では、いってまいりま~す」

ガチャッ。



美雪「……強がっちゃって」

美雪「相変わらず、素直じゃないんだから」

美雪「でも、犯人の目処って……誰なんだろう」

美雪「それに、いつもの口癖も言わないし」

美雪「……はじめちゃん、大丈夫かな」



コンコン。

金田一「失礼しま~す、と」

……ガチャッ。

律「な、なんか用か?」

金田一「ちょっと、話をしたいんだけどさ」

律「……澪もいるけど、いい?」

金田一「もちろん。色々聞きたいからさ」

律「入れよ」

金田一「お邪魔しま~す」

澪「……」

金田一「早速で悪いけど、いくつか話を聞きたい」

律「私たちに答えられる事なら……何でも」



澪「この合宿場を選んだ理由?」

律「ん~、前も聞いたとおり、ここはムギの別荘だからムギの紹介なんだ」

澪「まあ、別荘によっては予約が入っていて空いてなかったりとかもあるみたいだけど……」

金田一「今回のここは?」

律「山がいい、って話から始まって。ムギがいくつか候補を出してくれたんだったかな」

澪「決まったのは多数決で、ムギが勝手に選んだわけじゃないから……」

金田一「んん~、そうか。来る時はいつもこのメンバーで?」

澪「……亡くなった鈴木さんと、唯の妹の憂ちゃんは部員じゃないから普段は来ないよ」

金田一「え!?」

金田一「じゃあ今回の理由は?」

律「大勢のが楽しいからって、私が決めたった!」

澪「……ま、まあ。三年生の合宿だから、ちょっとぐらいの無理はいいかなって感じで」

金田一「……」

律「そそ。断られたら、それもそれ。軽い気持ちで誘ったんだよん」

金田一「そして、この人数での合宿になった、と」

律「そう言うことっ」

金田一(……つまり、鈴木さんはこの合宿に『参加しない可能性』もあったと言う事か)

金田一「じゃあ最後に……鈴木さんや梓ちゃんが誰かに恨まれていたとかは?」

律「ああ~、多分無いかな。あっても所詮女子高生の戯言……」

澪「でもわからないだろ。最近はキレる若者が多いって言うし、もしかしたら心に悩みを抱えてるパターンも……」

律「それがあっても、私たちにはわかんねーって。だから、私はこう言うしかないんだよ」

律「梓ちゃんも鈴木さんも、とても元気で良い子達でした……ってさ」

澪「律……」

律「……ははっ。やっぱりまだ実感沸かねーや。梓がいなくなったなんてさ」

澪「そんな事言ったら、私だって……ううっ」

律「泣くなよ~。泣いたらまたあずにゃん悲しむだろ~」

澪「だ、だけどさ……ぐすっ」



二階・廊下

金田一(彼女たちから聞ける話は、こんなもんか)

金田一(合宿場はともかくとして……問題は)

金田一(殺された鈴木さんが、部活のメンバーではないと言う事)

金田一(あの発言の様子だと……特に何か考えがあって、鈴木さんや憂ちゃんを呼んだわけではないみたいだ)

金田一(それとも、殺害するつもりで今回の合宿に呼んだのか)

金田一(……考えてみれば、被害者は二人とも同じ学年か。しかし部活も違い、共通点は年齢くらいか)

金田一「……ああ~、泥沼」

金田一「考えれば考える程わっかんね~よ……。まあ、いい。次いこ次」



二階・憂の部屋

コンコン。

金田一「すいませ~ん。ちょっとお話を……」

ガチャッ。

唯「はい?」

金田一「ああ、唯ちゃんか。実はちょっと事件の事で話が……」

憂「どうしたの、お姉ちゃん」

唯「あ、はじめちゃんがね~。お話したいって」

金田一「うっす」

憂「そういう事なら……どうぞ」

唯「私はいない方がいいのかな?」

金田一「いやいや、軽い聞き込みみたいなもんだから」

唯「えへへ~、じゃあ一緒にいます~」



憂「それで、何を聞きたいんですか?」

金田一「純ちゃんと梓ちゃんに……最近何か変わった事は無かったかな?」

憂「変わった事、ですか?」

金田一「その、学校で何か事件があったとか。部活内でトラブルがあったとか」

唯「ん~、あずにゃんとはいつも仲良しだったよ」

憂「純ちゃんも別に、何かあったわけじゃ……あ。でも純ちゃん、最初はこの合宿に来るの乗り気じゃなかった、かも」

唯「あれ、そうなの?」

憂「うん。お誘いは受けても、部外者の自分が混ざるのは、って……」

金田一「それでも結局は付いてきたわけだ?」

憂「ええ。こっちに来ても最初は気後れしてたみたい……」

唯「憂はよく見てるね~」

憂「友達の事なんだもん、当たり前だよ。純ちゃんに関してはそれくらいかな」

金田一「……」

唯「ねえねえ、もしかして私たちが犯人候補っ?」

金田一「へ……」

憂「もう、お姉ちゃん。あまり変な事言わないの」

唯「だって状況が状況なんだよ~。無用な心配はお互いかけたくないじゃん~」

憂「それは、そうかもしれないけど……」

金田一「ああ、いや。本当に話を聞いてるだけだよ。他の人の所だって行ったしさ」

憂「あれ、私たちが最後ですか?」

金田一「あとは紬ちゃんだけかな。まあ、そんなに深い考えがあるわけじゃ……」

唯「……」

唯「ね、はじめちゃん」

金田一「ん?」

唯「あずにゃんを殺した犯人……絶対つかまえてね」

金田一「あ、ああ……」

唯「約束だよ?」

憂「お姉ちゃん……」

金田一「……」



二階・廊下

移動中

金田一「……ふぅ」

律「お」

澪「あ」

金田一「ん、お~お二人さん」

律「ういっすはじめちゃん」

金田一「今からどこか行くのか?」

澪「夕飯前に、お風呂すませちゃおうと思って。大浴場に」

律「覗いたら美雪ちゃんに言うかんな~、は・じ・め・ちゃん」

金田一「へいへい、そんな事しませんて」

澪「……っひ!」

律「……じゃあその、後ろでカメラ構えてる優秀なアシスタントは何なんだよ」

金田一「へ?」

佐木「♪」ジー

金田一「お、おわぁ!」

律「そんな相方連れて女子高生を録画だなんて……や~らしいわ~」

金田一「知るか! 佐木、お前もいきなり背後に立つのはやめてくれ!」

佐木「いやあ、廊下で皆さんの姿が見えたものでつい」

澪「……律、行こう」

律「そうだな。こんな調子で色んなとこ覗かれたら、たまんないもんな!」

金田一「お、おい! ちょっと!」

律「あんまり美雪ちゃん泣かせんなよ~」タタタッ

澪「……」スタタタッ



金田一「……ったく」

佐木「いやあ、やっぱり若い子は可愛らしいですね」

金田一「……お前だって十分若いだろうに」

佐木「なんていうか、元気がありますよね」

金田一「みんな、辛くても我慢してるんだろうな……いつまでも泣いていられない、って。強い人たちだよ」

佐木「先輩……」

金田一「それはそうと……佐木」

金田一「そのビデオテープ、複製できたら俺にもちょうだいね」

佐木「あ、もちろんいいですよ。先輩も好きですね~」

金田一「えっへっへっ」

佐木「……あ、でもテープよりも先に。後ろの方を何とかしないと命が危ないですよ」

金田一「……へ」

美雪「は・じ・めちゃん」

金田一「お、お、お……ち、ちがっ、これは……」

美雪「うるさいっ! バカっ!」

……。



……。

「ね、さっきの」

「ん……」

「やっぱり疑われてる?」

「多分大丈夫だとは思うけど……」

「でも……」

「心配?」

「ちょっとだけ」

「……」

「あ、連絡してあげないと」

「ん?」

「ほら、今から探偵さんが行くよ、って」

「……平気じゃない?」

「心配なんだよ、一応ね」

「……」

「ね」

「ん?」

「一個だけ、お願い聞いてくれるかな?」

「お願い?」

「そう。あのね、今夜……」

「……え?」

「ね、お願い」

「……わかった。理由は聞かない」

「……ありがとう」

「でも大丈夫? 危なくない?」

「……大丈夫、私だって頑張れる」

「だから、心配しないで」

……。


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