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MSのコックピット内で待機していた信代に、ブリッジから通信が入った。

通信手「ロンド・ベルが動き出した。 MS隊は出撃して艦隊の前面に展開。 敵の侵攻を阻止せよ、だ!」

信代「やっと来たかい、二人共、いいね!」

いちご潮「了解!」

右舷カタパルトデッキに信代の重装型、左舷側に潮の通常兵装のギラ・ドーガが固定され、順次発艦した。

いちご「立花さん…仇は必ず。」

少し遅れていちごのサイコミュ試験型が射出された。

出撃してすぐ、信代たちの前にいくつもの火線が現れた。

信代「ミサイルだ! 迎撃!!」

いちご潮「了解!!」

ライフルでミサイルを打ち落とす。
多少撃ち漏らしても、後方には艦が控えている。
MSの敵は、やはりMSである。

信代「ミサイルの後に、MS隊が出てくるよ! 二人はその迎撃! 私は対艦戦闘隊と共に、艦をやりに行く! また核なんか撃たれたらたまったもんじゃないからね! 二人共いいね!」

いちご潮「了解!」

ミサイル攻撃の第一波が止むとともに、信代の機体が、各艦から集められた対艦戦闘隊に混じって戦場を迂回する軌道をとった。
その信代に、いちごが通信を開いた。

いちご「中島さん!」

信代「何だい?」

いちご「必ず、帰ってきて。」

信代「あたりまえだろ! 対艦戦は得意なんだ! 旗艦を沈めて、戻ってくるよ!」

いちごたちは、それを見送ってから、味方のMS隊に混じっていった。
少しすると敵MSの航跡が見え、散開した。

いちご「来る!」

潮「よっしゃ!」

いちごの心の器に、一気に憎悪の念が満ち溢れた。


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前進中の和達も、敵を捉えていた。

和「敵接近! 今回の任務は艦隊主導だから、何としても艦を守りぬくわよ!!」

律「おうよ! 澪、いいか!?」

澪「了解だ!」

唯「あずにゃんも、いい!?」

梓「はいです!!」

紬「今度は、ちゃんとやってみせる!」

6機になっていたので、MSの編成は小隊基本になっていた。
和と紬、律と澪、唯と梓である。
散弾のバズーカは、紬、澪、梓がそれぞれ肩部に取り付けられたマウントラッチに携行している。

その時、編隊の横を白いMSが抜けていった。

律「なんだよ、ありゃ! 突っ込み過ぎだろ!」

澪「νガンダム…急ぎ過ぎじゃないのか?」

律「あんなに突出しちまって、掩護なんか出来やしないぞ!」

和「私たちは、私たちの仕事をするまでよ!」

敵が、迫る。

3つの小隊は、あくまで連携して、ギラ・ドーガの編隊に当たった。


――

いちごの戦い方は、まるで鬼神のようだった。
潮は、出撃前とは別人のようになった彼女に、恐怖すら感じている。

いちご「奴らはどこ? 立花さんを奪った敵は!?」

潮「ちょっと、飛ばし過ぎなんじゃない!?」

躊躇なくファンネルを放出し、いちごはそれらと連携して敵を落としていく。
その戦い方は、姫子を失う前より苛烈になっている。

潮「…パートナーを失ったら、ダメになるんじゃなかったっけ…?」

また、ファンネルが敵を爆散させた。
ビーム砲のバッテリー切れなのか、今しがた敵を落としたファンネルを放置し、サイコミュ試験型はもう1基ファンネルを放出し、敵に向かわせる。

戦闘中は回収して充電する暇が無いため、ファンネルはほとんど使い捨てにされる。
戦闘が一段落したときに、サイコミュで捉えきれるファンネルがあれば回収し、
充電して再利用することができるが、これが最後の戦闘である。そんな暇がある保証はどこにもなかった。

潮「ファンネル、使いすぎじゃないの? 大丈夫なの?」

いちご「どうせ奴らが出てきたらファンネルは無効化される。 使いきってしまって構わない。」

いちごたちの後方、アクシズの方には、α・アジールとヤクト・ドーガが敵のガンダムと交戦しているのが見えるが、いちごにそんな事は関係なかった。
彼女の目的は、姫子の仇を取ることだけである。

何故なのか分からなかったが、いちごはもうサイコミュによる頭痛を感じていなかった。

いちご「…見つけた!!」

憎悪の念がいちごの体から溢れ出し、周りの雰囲気を変え、潮に緊張を与えた。
サイコミュ試験型のコックピット周りから、黒々としたモヤのようなものが出ているようにも見える。

潮「…奴らか!?」

いちごがライフルを連射しながら突っ込む。
敵が蜘蛛の子を散らしたように散開するのが見えた。

モニターが敵艦の艦影をはっきり映し出しているのを見て、潮は自分たちが戦場の奥まで侵攻していたことを知り、背筋が冷えた。
しかし、いちごを放っておく訳には行かない。
潮は、いちごの後を追い、6機のジェガンに突っ込んでいった。


――

先鋒のギラ・ドーガを凌ぎきると、肌を突き刺すような緊張に、戦場の雰囲気が震えているような気がした。
その中心に、赤い機体を見つけて、唯の心は憎悪に染まった。
もう、出撃前の笑顔は、忘れている。

唯「あいつだ!! 憂の仇!!」

梓「やってやるです!!」

二人の親友を失った梓も、唯を止めようとはせず、自ら憎悪に身を委ねて突っ込んでいく。

律「畜生、あいつか!! 今日こそ引導を渡すぜ!!」

律も唯たちの雰囲気に飲まれているのか、熱くなっているのを見て、澪がそれを制した。

澪「律、落ち着け!! 周りもよく見るんだ!!」

律「あいつが諸悪の根源になって、みんながおかしくなってやがる!! あいつを殺したら、みんな落ち着くだろ!!」

澪「…分かったけど…ちゃんと連携して当たるんだぞ! 出来るのか?」

律「できる出来ないじゃねえ! やるんだよ!! 憂ちゃんの仇は、必ず仕留める!!」

艦の近くにいた和の小隊は、4機の動きに付いていくことは出来なかった。

紬「和ちゃん、みんなが…」

和「分かっている! でも私たちはこれ以上艦を離れるわけには行かないわ!」

散発的に戦場を抜いてきた敵が、艦に取り付こうとするので、和たちは、その対処に追われていたのだ。
この作戦は、核ミサイルを保有し、爆破処理を行う陸戦隊を擁するラー・カイラムを沈められると終わりである。
さらに敵艦に対処する必要もあったため、艦隊を損耗させないよう死守する必要があったのである。

紬「和ちゃん! 10時方向!」

和「掩護をお願い!」

和がビームライフルを放ち、また艦に取り付こうとした敵が爆散した。
艦隊は、徐々にアクシズに近づきつつあった。

律と唯が敵を追い散らし、梓が廻り込んでビームを撃つ。
その形を基本とし、時に役割とパターンを変え、赤いサイコミュ搭載機に当たっている。
澪は、サイコミュ搭載機に随伴していた通常型のギラ・ドーガを足止めしている。

澪「なんなんだよ…あいつら…恐い…。」

絡み合い、時にぶつかり合う敵味方は、お互いに深い憎悪の念に駆られているのが、澪には痛いほど分かった。

その憎悪の念は、4機のMSから滲み出し、拡散し、宙域を染め上げているような気がするのだ。
あまり近寄ると、澪もその毒気に当てられて、おかしくなってしまいそうな、そんな危うさを感じるのである。

だから、澪は援護しつつも、4機には近寄りがたいものを感じていた。

澪「あれが…律たちだって言うのかよ…そんなの認めたくない…」

目の前の敵も、同じことを感じているのか、味方機を避けているようにも見える。

澪「お前も…感じているのか?」

澪はそれを確認したい衝動に駆られたが、交戦中の敵機である。
その衝動は、抑えこむしか無かった。

艦長は、作戦の焦点が近いことを、感じていた。

艦長「もうすぐ、最後の核ミサイルの出番だな!」

副長「アクシズが最終加速をするポイントにさしかかります!!」

レーダー手「艦長、右舷に熱源多数、敵MSと思われます!!」

艦長「直掩は!?」

レーダー手「数が足りなすぎます!! このままじゃラー・カイラムが…!!」

艦長「手はず通り、当艦の横っ腹を敵さんに見せつけてやれ!! ラー・カイラムの盾になってやる!!」

操舵手「了解!!」

艦長「対空砲火、メガ粒子砲、敵機を撃ち落せ!! 簡単に、当艦を沈めるんじゃないぞ!!」

砲手「了解です!!」

ラー・チャターの右側面が、ラー・カイラムを敵から覆い隠したその時、艦内に大きな衝撃が走った。

副長「隔壁閉鎖! 消火作業急げ!!」

艦長「よっしゃ! ちゃんと盾になっているじゃないか、当艦は!!」

操舵手「操舵手の腕がいいんですよ!!」

艦長「ラー・カイラムが核ミサイルをアクシズにぶち込むまで、持ちこたえろよ!!」

砲手「1機落としました!!」

艦長「全部落としてから報告しろ!!」

砲手「了解!!」

通信手「ラー・カイラムが、核ミサイル発射!!」

艦長「おし!! アクシズがバラバラになるまで、持たせろよ!!」

また、艦内に衝撃が響いた。
しかしクルーは、それを気にも止めず、作業に没頭している。

和は、ラー・カイラムをかばうように進路変更をした母艦を見て、目を疑った。

和「何をする気なんですか!? 艦長!!」

ラー・チャターに、火線が集中する。

紬「ラー・カイラムの…盾になって…」

和「嫌ァアアア!! ムギ!! ムギ!!」

紬「分かったわ!!」

和は、その様子に取り乱して的確な指示が出来ず、紬の名前を叫けび続けるだけだった。
しかし紬には、和のしたいことが、言いたいことがハッキリと分かっていた。

紬「艦に取り付く敵を、排除するわ!!」

紬は散弾で牽制し、和と共に敵機の群れに突っ込んでいった。
しかし敵が多く、2機は連携出来ずに分断された。


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