番外編 隕石のあとさき!

チベットのラサは、無法地帯となっていた。

避難勧告こそ無かったものの、噂が人づてに伝わり、隕石が落ちてくるという情報はかなりのところまで広がっている。

そのため多くの人々はすでにこの土地から逃げ去ったか、その途中だった。
しかし移動手段を持たない低い立場の人間や、情報弱者がまだ相当数とどまっていたのである。

さっきも、車で脱出しようとした情報弱者が悪党の餌食になったばかりだ。

悪党1「ヒャッハッハッハ 水だー!!」

悪党2「食料もたっぷり持ってやがったぜー!!」

悪党1「こーんなもんまで持ってやがった!!」ビラ

パターンから読めると思うがこんな物とは札束のことである。

悪党1「ここじゃケツを拭く紙にもなりゃしねえってのによー」

悪党3「頭領!!」

悪党1「何だ?」

悪党3「そろそろライヴが始まりますぜ!!」

悪党1「よっしゃ、急ぐぞ!!」ブォオオオオ

逃げ惑う人々とは逆に、このラサに命知らずの無法者達がどんどん集結しつつあった。
吹きすさぶ風に舞うビラに、その理由がしたためてある。



隕石の堕ちるこのラサにあの四人が帰ってくる

DEATH DEVIL ラストライヴ 「メテオ」

時 ○月×日 ○×:00~隕石落下

場所 ポタラ博物館駐車場

入場料 タダ

伝説のソロアーティスト、山中SAWAKOも飛び入り参加


命知らず、集まれ



地球圏で知らないものはいないと言われる程の超有名バンドであるDEATH DEVILの4人は、
違法薬物の所持及び使用の罪で、連邦警察から指名手配中の身であった。

しかしこのラサでは連邦政府も警察もトップが真っ先に逃げてしまい、組織が瓦解したため事実上存在しない。

逃げるのに疲れを感じ始めていた彼女らは、このラサを死に場所と決め、隕石雨をバックに最期のライヴを行うことにしたのである。

現在は博物館となっているチベットの象徴であるポタラ宮を背景に、四人が仁王立ちになって集まり来る命知らず達を出迎えている。

Christina「どんどん集まってくるよ、Katherine。」

Katherine「命が惜しくない奴がこんなに居るとはねえ…今日は派手に逝くよ!!」

Della「おう、死に花、咲かせるよ!!」

Jane「私も、死ぬまでドラムぶっ叩く!!」

数万人を前に、彼女たちの最期のライヴが今、始まろうとしていた。

Katherine「お前らが来るのを待っていた~! ぎゃおおおおーーーー!!」

Christina「おめーら!! 今日は命を掛けてはあたしらのライヴに来てくれてありがとうYO!!」

観客「うおおおおおお!!!Katherine!!! Christina!!!」

観客が静まるのを待って、KatherineのMCが始まる。

Katherine「…人は逆立ちしたって天使にゃなれねえが…」

Katherine「悪魔になるのは簡単だ!!」

観客「わおおおおおおおおおおお!!」

Katherine「地球に隕石を落とすなんてのは…偶然か…」

観客「悪魔!!」

Katherine「俺達も!」

観客「悪魔!!」

Katherine「人の歴史は戦いの歴史だ!! 戦いが歴史を作った!! 平和なんてのは停滞だ!!」

観客「鬼!! 悪魔!!」

Katherine「隕石が落ちてくる…これはまさしく…」

Katherine「History!!」

Katherine「そんな血塗られたHistoryを重ねてきた、人類みな…」

DEATH DEVIL「DEVIL!!!!」

Katherine「Love&PeaceなんてUSOPPATI!! 民主主義なんて船頭多くして、船Climb the Mountain!! 戦争こそが、Justice!!」

Katherine「そう、そんな俺達人類は、地球を、ひいては宇宙を喰らい尽くす…DEVIL!」

観客「DEVIL! DEVIL! DEVIL!」

Katherine「さあ、唱えろ! 最強の魔法を…そして壊しつくせ…この腐った世の中をなあ!!」

DEATH DEVIL「ワン、ツー スリー、フォー、METEO!!」

観客「METEO! METEO! METEO!」

METEOの声が止むと、ChristinaのFAN SERVICEが始まる。

Christina「よっしゃあ!! まずは一足も二足も早いか遅いかわからねえクリスマスのプレゼントだあ!!」

Christinaが白い粉の入った袋をばら撒く。
もちろん中身は違法薬物である。

開始直後とは言え、KatherineのMCとこのSERVICEですでに観客のテンションはMAXだ。

Christina「それじゃあクリスマスと言えばこの曲だろ!!」

Katherine「ヤケクソ☆セイント聖夜!!」

Katherineのギターが始まると同時に、薬の入った袋が後ろの客にも配られ始める。
曲が止まったら、キメることが許されるのだ。

ちなみに、演奏中の四人はすでにキメまくっている。

Katherine「ジングルベール!!」

観客「ホイ!!」

Katherine「ジングルベール!!」

観客「イエーイ!!」

Katherine「すずが~なるぅ!! 今日は~楽しい~く・り・す・ま・す!!」

観客「YEAH!!」

Katherine「ジングルベール!!」

観客「うぉおおおお!!」

Katherine「きょおわあ たのしい ク・リ・ス・マ・ス ウォー イェーイ!!!」

Christina「ストーップ!! キメていいぜー!!」

観客「ぬおおおおおおおおおおお!!!!」

会場は、HIGH☆TENSION。
観客の熱気がTSUNAMIのように押し寄せる。
約八割がTRIPしたところで、DEATH DEVILらしくないさみしげな曲が流れ出す。
彼女たちの薬物スキャンダルが発覚したと同時にCOVERを希望するファンの声が殺到した、あの曲だ。

Christina「アタシらは薬を抜くために逃げていたんじゃない!! キメ続けるために逃げていたんだ!! というわけで二曲目…」

Katherine「碧いUSAGI!!!」

観客「おぎゃああああああああああ!!!!!」

Katherine「あとどれくらい 切なくなれば」

Christina「アフ――――!」

Katherine「テメーの声が 聴こえるか・し・ら!」

Christina「知らねーよ!!」

観客「ワッショイ!! ワッショイ!!」

つかみはOKなんてもんじゃない。
この四人は天才だ。

最早これはライヴではない。
世界の始まり。
そして終わり。

水辺に舞い上がる蜉蝣よりも儚く、太陽をも焦がすたった一時間程度のLAST STAGEだ。

Katherine「あおおおおおおおおおおっ!!」

Christina「オーケイ、 チェケラッチョ!!」

曲が、終わる。
アンコールの声が、止まない。

Katherine「アンコールなんかきけるかよおおおおお!!!」

Christina「隕石が落ちてくるまで、時間がないんだ!!このまま突っ走るよ!!」

観客「ぶぅぅぅうううううううう!!」

Katherine「うっせーぞ!! グズグズしてたら今日のゲストの出番もなくなるだろうがよ!!」

Christina「テメーら!! 今日のゲストは誰だ!! 呼んでみやがれ!!」

観客が静まり返る。
無音。
しかしすぐに、ポツリポツリと反応が始まる。

観客「SAWAKO…」ボソ

観客「SAWAKO…SAWAKO…」ガヤガヤ

観客「SA・WA・KO!! SA・WA・KO!!」

山中SAWAKOを、求める声。
しかし、ここで焦らすのが彼女たちのやり口だ。
いきなりKatherineが、ティッシュペーパーのようなものをヒラヒラさせて、観客に怒鳴りつける。

Katherine「オメーら!! これは何だ!!?」

観客は、何が何だか分からない。
彼らは、SAWAKOを待っているのだ。
早く、SAWAKOを。伝説のソロアーティストを。
ざわめく観客たちを尻目に、Katherineが続ける。

Katherine「これはメイク落としだ!! アヒャー!!」

躊躇なく、Katherineはメイク落としをその顔に押し付ける。
致命的だ。 悲鳴も聞こえる。 倒れる客も見える。

SUPPINのKatherineなど、この中の誰も見たくはない。
DEATH DEVILのKatherineは、WILDなMAKEあってこそなのである。
MAKEを落としてしまえば、そこら辺にいるババアと変わらない。
苺のないShortcakeになってしまう。

会場の誰もがそう思っている。

Katherine「いないいない…バァ!!」

次の瞬間、メイクを落としたその顔に、観客全員が見入っていた。
もしかして…この顔は…

SUPPINN・Katherineがメガネを装着し、大人し目の印象を与えた顔になる。

この方は…ただのババァなんかじゃない…もっとBIGな…あの伝説の…

Katherine「俺がSAWAKOだ!!」

高らかな宣言に、歓喜の雄叫びが帰ってくる。

観客「わぉおおおおおおおおおおおん!!」

世界がまた、脈動を始めた。

観客「SA・WA・KO!! SA・WA・KO!!」

空がひときわ明るくなり、大きな流れ星が空をかけ始める。

隕石落下が、近いようだ。

Christina「隕石が近い!! もうすぐこのLIVEも終わりだよ!!」

観客「ぶううううん!! ぶうううううん!!」

SAWAKO「続きはあの世でな!!」

観客「イヤッッホォォォオオォオウ!!」

Christina「それじゃあ、DEATH DEVILと山中SAWAKOの、夢のCollaboration!!」

SAWAKO「隕石と言えば、あの魔法だろ!! それじゃ最後の曲、METEOは無敵(FF4version)!! 逝くぜ!!」

誰も聞いたことがない、そして今後誰も聞くことがない疾走感溢れる音色(Melody)。

新曲だ!!

SAWAKO「メテオはすごいぜ 何でも倒すぜ ドカドカ!!」

観客「イヤァ!!」

SAWAKO「モルボル ドラゴン ベヒーモスも ボコボコ!!」

観客「ヤオ!!」

SAWAKO「ゴルベーザとフースーヤの 夢の」

DEATH DEVIL「夢の」

SAWAKO「コーラーボーレーション!!」

DEATH DEVIL「ダ・ブ・ル メ・テ・オ !!」

SAWAKO「メテオはすごいぜないと困るぜ やはりメテオが最強だろ」

観客「ヘイ!!」

SAWAKO「ファイファンⅣならやっぱり 最強魔法はメテオ」

SAWAKO「でも俺ァ DS版 もってねえよ!!」

DEATH DEVIL「ふざけんな!!」

観客「ヘイ ヘイ ヘイ ヘイ」

SAWAKO「1・2・3・4 ME・TE・O!!」

観客「ヘイ ヘイ ヘイ ヘイ」

SAWAKO「1・2・3・4」

観客「ME・TE・O!!」

隕石雨が、激しくなってくる。
赤熱したフィフス・ルナが落ちてくるのが見える。

ポタラ宮にも小さな隕石がぶつかり始め、観客の中にも乗用車ほどの隕石が落下した。

CLIMAXは、SAWAKOのMCだ!!

SAWAKO「隕石キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! テメーらもう一息だぜ!! パワーをメテオに!!」

観客「いいですともおぉぉぉぉ!!」

次の瞬間、隕石落下の衝撃波が数万の観客とSAWAKO達を吹き飛ばし、ポタラ博物館の壁を粉々に剥がした。

地球圏のトップ・アーティスト、山中SAWAKOとDEATH DEVILの最期であった。


番外編 隕石のあとさき! おわり




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