第一話 ロンド・ベル!

艦に着くと、艦長への着任報告だ。
五人は艦長室へ向かった。

律「艦長はどんな人だろうな?」

澪「なんてったって即応部隊ロンド・ベルの人間だからな、なんか怖そうだ…」ブルブル

紬「わくわくするわ~」

唯「憂の手紙ではね…」

梓「唯先輩は黙っててください。変な先入観を持っちゃいそうです!」

艦長室の前に来ると、中からヒステリックな怒鳴り声が聞こえる。
さすがの律も、入るのを躊躇しているようだ。

律「なんか入りづらそうな雰囲気だぞ…。」

そこに、純が通りかかった。
メンバーを見ると、目を丸くして驚いている。

純「あ…補充兵って梓たちだったんだ…」

梓「あ…純!」

純「着任報告なら今取り込み中だから、あとにした方がいいですよ。」

紬「取り込み中?」

純「ええ…この艦の名物みたいなものです。」

澪(怒鳴り声…取り込み中…名物…なんだろう…怖い…)ガタガタ

純「澪先輩? どうしたんですか?」

律「怯えてんだよ、何が行われているかわからないからな。」

純「傍目から見てるとなかなか面白いものですよ。」

澪「なんだ、面白いことなのか…」ホッ

澪がホッと胸をなでおろした瞬間、艦長室から鬼の形相をした和が出てきた。

和「やってられないわよ!!!」バン

澪「ヒィ!!」チーン

唯「あ…和ちゃん!」

律「和!?」

紬「まあ!」

梓「和先輩?」

澪「」

澪は、和の表情と声で気絶してしまった。
和は、大きな声を出したところを見られて少し気まずそうにしている。

和「あ…あなた達…//////」ドギマギ

純「艦長、なんて言ってました?」ニヤニヤ

和「私をのけ者にしているのは明らかなんだけど、その理由を教えてくれないのよ!!」

純「もっと優しくしてあげないと駄目ですよ。」ニタニタ

和「出来るわけ無いでしょ!!」

和はそう言ってどこかへ行ってしまった。

純「相変わらず鈍いなあ…」ハア

律「なんかよくわからないけど、着任報告いいんだよな?」

純「はい、どうぞ。」

律「澪、行くぞ。」

澪「」

唯「気絶してるね…」

梓「ですね。」

紬「大丈夫、澪ちゃんは私が支えておくわ。行きましょ。」

艦長室に入ると、艦長が恍惚の表情でぼーっとしている。
律は、取りあえず着任報告をした。

律「宇宙軍少尉、田井中律他四名、MSパイロットとして着任いたします。」

艦長「」ポワァ

律「あの~、艦長?」

艦長「」フワフワ

律「かあんちょおう!!」

艦長「お…おう、聞いているぞ…。」

律「じゃあ要件終わり、退出します。」

艦長「待て!!」

律「はい?」

艦長「調書を読んだんだが…君たちはサクラガオカ出身だな…?」

律「はいそうです。」

艦長「真鍋少尉の元同級だとか…//////」

律「はいそうです。」

艦長「なんでもいい、彼女のこと、教えて欲しいのだが…//////」

律「はは~ん…」ニヤリ

梓「それって…もしかして…///」ドキドキ

紬(…こんな冴えない男が和ちゃんと…女の子同士ならまだしもこれはありえないわ!)

唯「ほえ?なになに?」

澪「」

律と唯が和のことを一通り教えると、艦長は上機嫌で5人を開放した。
律はニヤニヤしているが、紬は虫の居所が悪いようである。

律「和、想われまくってんなあ!」キャハ

唯「ほえ?なにそれ?」

梓「唯先輩には関係の無い話です。」

紬「チッ…どうでもいいし(りっちゃんの彼氏疑惑の時は澪ちゃんの反応が面白かったから楽しめたけど、今回はすご~く嫌な気分だわ…)」イライラ

澪「うーん…なんか恐ろしい物を見たような…」ムク

律「おう澪、生き返ったか。着任報告は終わったぞ!」

唯「そうだ、医務室行こうよ。憂が居るんだよ。」

梓「前の作戦で怪我したって人のお見舞いにも行きましょう!」

律「そうだな、代わりが来ましたよって、安心させてやるか。」

紬「そうね(早く唯憂がみたいわ…)」イライラ

医務室に到着すると、看護師の憂が出迎えてくれた。

憂「お姉ちゃん!!」

唯「うーいー、元気だった?」ダキッ

紬「いいわあ…やっぱりこれがないと!」パア

律「ム…ムギ…」

澪「そういえば、前の作戦でケガをした人って…」

憂「お見舞いですか?ケガはたいした事なかったんだけど、戦闘のショックで心の病気なんです。起き上がることも出来なくて…」

憂「曽我部さん、お見舞いですよ~」

澪は、迂闊にも名前の部分を聞き逃し、ノコノコとベッドルームに近づいていった。
憂がベッドルームのカーテンを開ける。

澪「大丈夫ですか?」

澪の声を聞いた瞬間、動けないはずの病人がもの凄い勢いで跳ね起き、歓喜の声を上げた。

恵「その声は…秋山さん!!?」ガバ

澪「ヒッ…そ…曽我部先輩…」ビクビク

憂「わあ、曽我部さん、澪さんを見たら元気になっちゃった!」

恵「夢じゃないのね…ホントに秋山さんなのね…」ウルウル

恵はしきりに自分の頬をつねって夢でないか確かめている。
澪を見るその目つきは肉食獣のようだ。

澪(この人…怖い)ブルブル

憂「澪さん、ありがとうございます。曽我部さん、どこかのコロニーに寄って入院が必要だと思ってたんです。」

恵「平沢さん、私、もう元気になったわ。 秋山さんが来てくれたんですもの…へへ…」ジュルリ

恵は、よだれを垂らしながらドサクサに紛れて澪の手を握り締めている。
澪は、蛇に睨まれた蛙のようだ。

澪「」ガクガク

紬「これは思わぬ収穫だわ!!」ポワポワ

律「ムギェ…」

梓「あの人、誰ですか?」

唯「澪ちゃんのストーカーさんだった人だよ!」

梓「へえ…あの人が…。」

怯えきった澪を連れて一同が医務室を出ると、艦内放送でパイロットが呼び出された。
急いでブリーフィングルームに向かう。

5人がブリーフィングルームに到着すると、すでに和たちは着席して待っていた。
すぐに艦長が入室し、ミーティングが始まった。

艦長「ええっと、新人5名はまだ状況がつかめていないんだったな。今から当艦が置かれている状況を説明するから、よく聞いてくれ。」

艦長「一昨日のことだ、当艦の担当宙域を哨戒中に、正体不明の艦隊がスウィート・ウォーターに向かうのを発見した。」

紬「シャアが占拠したって言う急造品の難民用コロニーね。」

その時、扉が開いて恵が入室してきた。

恵「失礼します。」

艦長「あれ、曽我部中尉、もういいのか?」

恵「はい! 完調です!!」テカテカ

和(ああ、澪がお見舞いにいったのね…)

そのまま恵は当たり前のように澪の隣の席に滑り込み、顔を近づけて澪の体臭を嗅いでいた。

恵「…」クンカクンカ

澪(曽我部先輩…怖い…)ブルブル

艦長「続けるぞ、それで当艦は曽我部中尉を編隊長としてMS二個小隊を射出、偵察に向かわせたが、敵の攻撃を受けて、増援の一個小隊を含む6機のジェガンを損失した。」

艦長「曽我部中尉がかろうじて生き残ったが、他は全員戦死だった。(私は本来、終身刑モノだったが、事態を重く見たロンド・ベル上層部が上手くもみ消してくれた)」

澪「ヒッ…全員戦死!!」チーン

唯「あ…澪ちゃんが!」

梓「澪先輩!!」

律「澪! お~い! み~お~!!」ユッサユッサ

澪「」ユッサユッサ

紬「澪ちゃん、ミーティング中よ、起きて!!」ペチペチ

澪「」ペチペチ

恵「澪たんおさわりチャーンス!!」モミモミ

澪「」モミモミ

艦長(…こいつらホントに大丈夫か…?)

和「…秋山少尉には後で内容を伝えておきます。続けてください。」

艦長「・・・えっと、結論からいうとスウィート・ウォーターに入ったのはシャアの艦隊の一部だった。」

和「ネオ・ジオン艦隊ですか?」

艦長「ああ、シャアがスウィート・ウォーターを占拠したとき、たった3隻だった。 そんなんじゃ戦力なんて言えんから、やはりどこかで艦を建造しているんだろうな。」

梓「一体どこの施設で…」

和「スウィート・ウォーター建設時のベースコロニーが、スウィート・ウォーター完成後、いくつか行方不明になっている、という噂があったわ。 多分それをどこかに運んで、造船設備として流用したのね。」

艦長「そうだろうな、当のシャアはスウィート・ウォーターを占拠した後、独自政権を樹立、連邦政府にこのコロニーの独立を認めるように要求してきている。」

唯「えっと…シャアが入った時と、その時、近くに駐留していた防衛隊は何をしていたんですか?」

梓「唯先輩らしからぬ鋭い質問ですね!」

純「梓、何気に酷くない?」

和「どこの部隊も事なかれ主義者の集まりだし、シャアの艦隊と分かってしまえばコロニーの内乱を恐れて動けないのよ。 シャアはスペースノイドの英雄だもの。」

艦長「そういう事だ」

艦長「続けるぞ。奴は独立を認めない場合、地球連邦政府があるラサに対する直接攻撃の準備があると言っている。」

律「地球上にいるならまだしも、こんな宇宙からそんな事出来るわけねーじゃんか、脅しだよ!!」

和「私もそう思うけど、脅しでそんな事言うかしらね…普通、もっと現実的な文句で脅しをかけると思うんだけど…」

紬「核攻撃とか、地上のジオン残党を決起させるとかかしら…?」

和「成功の可能性は低いわね…特にラサをピンポイントで指名しているから、当然警備も万全になるし…」

艦長「とにかくその直接攻撃の方法ってのを我らロンド・ベルが全力で調査してるってわけだ。」

律「アムロ・レイが中心になって随分シャアの行方を探してたんじゃなかったっけ。その時見つからなかったのはどういうこったよ。」

和「連邦政府に対するスペースノイドの反発も凄まじいわ。シャアはそういう連中に匿われていたんでしょうね。」

艦長「それにロンド・ベル一隊が動いたところで、広い宇宙を探し尽くすことなんか出来んからな。」

律「結局税金の無駄だったってことかよ。」

艦長「そう言うな、みんな一生懸命なんだぞ。」

和「そういえばアムロ大尉が対ネオ・ジオンの為にニュータイプ用MSを設計し始めたんですよね?」

艦長「ああ、νガンダムな…アナハイムのフォン・ブラウン工場に頑張ってもらっているけどな…ネオ・ジオンがいつ行動に出るかも分からんから間に合うかどうか…」

律「なんだよその待遇はよう。 また税金の無駄かよ! そんな事すんなら私等にもいいMSを作ってくれよな。」

和「一応、私達も最新機種のジェガンを使わせてもらえるわよ。」

唯「へえ…私、ジムⅢしか乗ったことないや…」

律「でも所詮ジムの延長線じゃねえか、一昨日全滅したんだろ?」

艦長「ロンド・ベルを取り巻く状況は厳しいんだ。新型量産機のジェガンを優先的に回してもらうのが精一杯というのが実情だ。」

艦長「ゼータ系のリ・ガズィだって旗艦ラー・カイラムに試作品が1機しかないし、アムロ大尉のニュータイプ用ガンダムも予算を搾り出すのにジョン・バウアー氏がかなり苦労したらしい。」

その時、今まで無言だった恵がドサクサに紛れて気絶している澪の体をいじくり回しながら口を開いた。

恵「ニュータイプといえば…私達サイコミュ兵器にやられたの…気がついたらみんな落とされてて…」クチュクチュ

澪「」ビクッ

紬「/////////」ポワポワ

恵は、今までミーティングを無視して散々澪の体を触りまくっていたのである。
紬が鼻にティッシュを詰めながら恵と澪の方を凝視している。
紬も恵も幸せそうだ。

律「そんなのどうやって対抗すんだよ!!」

和「大破したジェガンから回収した曽我部中尉の戦闘データとアナハイムから提供されたファンネルの資料から、対サイコミュ兵器戦術を模索しているわ。後であなた方も訓練に参加させてあげる。」

純「あれ、なかなかいい方法ですよね!」

艦長(和は相変わらず有能だなあ…ますます嫁に欲しくなってくる…)

律「ちょっと待った! なんでアナハイムが敵の兵器についての資料を持ってるんだよ?」

和「大きい会社だから色々あるんじゃない? 敵の主力MSもアナハイム製だと言う噂があるわ。」

紬「そもそも規模の小さいジオン残党にMSを量産する能力なんかないから、かなり信憑性がある噂ね。」

梓「グリプス戦役時もティターンズとエゥーゴ双方の量産機をあそこが生産していましたしね。」

律「畜生! 金儲け出来ればどうでもいいってのかよ!!」

艦長「取りあえず今日のところはこのくらいだ。また何かあったら招集をかけるので、そのつもりで。」

艦長の言葉を聞いて、集まっていたメンバーが解散を始める。
しかし和は部屋を出ずに艦長を睨みつけていた。

艦長「な…何かな?(もしかして告白タイムか…?)」キュン

和「対サイコミュ兵器戦に必要な装備のリストです。調達願います。」ギロ

艦長「あ…ああ…対サイコミュ兵器戦とは恐れいったよ…一体いつ考えたんだ?」

和「私、艦長のおかげで恐ろしく暇なので考える時間はいくらでもあるんですが。」イヤミ

和は艦長を睨みつけながらありったけの皮肉を浴びせかけるが、艦長はそれを皮肉とは受け取っていない。

艦長「そ、そうか。君は優秀だな…危険なパイロットはやめて、戦術班にでも転属を…」

和「お断りします。戦闘を経験もせず戦術班勤務なんて出来るわけがないと思いますが?」ムカムカ

艦長「で…でもそういう士官はいくらでも居るぞ…こう言うのは経験というよりセンスでな…」アタフタ

和「艦長と話をしても時間の無駄ですね!とにかく装備の調達だけ、お願いします!!」バン

和は装備品のリストを壁に叩き付けて敬礼もなしに部屋を出た。

艦長「ふう、やはり彼女は怒った表情が一番イイな…たまらんよ!」ハアハア

艦長「ああやって尻に敷かれることが出来る…私は幸せものだ!!」イヤッホウ

平行世界でもこの男は相変わらずであった。


第一話 ロンド・ベル! おわり



3