放課後 

澪(律はいつもと変わらなかった)

澪(唯もマジックミラー号のことはすでに頭の中から消え去ったかのようだった)

澪(ムギの淹れてくれるお茶は美味しいし)

澪(ただ、和はなんだかいつもよりも積極的に私に話しかけてきたように感じた……)

澪(それに……)

梓「……」チラッ チラッ

澪(やっぱり、梓は何か感づいてるっぽい)

梓(ふっふっふ、澪先輩。いつまでそんなお淑やかキャラを通せますかね?)

梓「あ~、楽しみですね! マジックミラー号」

澪「!?」

梓(焦ってる焦ってる。澪先輩がだんだん涙目になってきてるぅ~!)

律(や、やばい! 澪の顔色が青ざめていく!)

律「あ、あ~、そういえばさ~クライマックスシリーズのロッテすごかったよな~」

唯「あずにゃん、マジックミラー号って何?」

律(うをぃっ! せっかく話題を逸らそうとしたのにっ!)

梓「やだな~、唯先輩。忘れちゃったんですか? 手品を見せに来てくれるんですよ」

唯「あ、そういえば昨日和ちゃ……。はっ!?」

唯「ゲホッゲホッ、いや……なんでもないよ」

澪(和がいったい何だっていうんだ!?)

紬「私もそのマジックに興味津々で昨日は夢にまで出てきたのよ
  なんだか皆がゲル状になる手品だったの~」

梓「どんなマジックなんですか? それ……」

紬「だって、私本当に興奮しちゃって、早く当日にならないかなって」

澪(ムギは知らなそうだけど、なんだか興奮って言葉が引っかかる……)

澪(って、私がこんな疑心暗鬼に陥っちゃドツボじゃないか)

梓「ムギ先輩も案外子供っぽいですよね、澪先輩」

澪「へえっ? あ、ああ。うん」

澪(梓だって本当にマジックミラー号が手品をしに来るって思ってるだけかもしれないし)

梓(『へえっ?』だって。そんなに声が上ずるほど動揺してるなんて、ぷくくく)

紬「だってお友達とそういう機会って今まで無かったから」

梓(もし、ムギ先輩が真実を知ったらどう思うかな~)

律「あ~、セ・リーグはどっちが抜け出すかな~」

唯「ほらほら、ムギちゃん、鉛筆が曲がります」クネクネ

紬「わー、凄いわ唯ちゃん! 唯ちゃんったらミカンを浮かすことも出来るしもう立派なマジシャンね」

律「……」



律(駄目だ……きっとこいつらは本当に手品だって思ってるから簡単には話題を逸らすことが出来ない……)

律(……あれ? 待てよ。だったらそんなに無理に違う話題にしなくてもいいんじゃね?)

律(私はマジックミラー号がどんなもんだか知ってるわけだからハラハラしてるけど)

律(こいつらが手品の話だって思ってるならそれで大丈夫だろ)

律(澪も黙ってりゃいいだけの話だしな。私が変に気を遣うのも逆に怪しまれちゃうかも)

律「いや~、私も手品なんて滅多に見ないから楽しみでさ~」

澪(り、律っ! 私の気も知らないで……)ヒヤヒヤ

唯(はっ!? み、澪ちゃんから大量の汗がっ! 
  そっか、澪ちゃんがエッチだってことは皆に隠しておかなきゃいけないんだった!)

唯(だけど皆はそんなことも知らずにマジックミラー号の話をするから澪ちゃんが困ってる!)

唯(澪ちゃんのイメージを崩すわけにはいかない! こ、ここは私がなんとかしなきゃ!)

唯「ね、ねぇあずにゃん! 澪ちゃんってカッコイイよね!」

唯(ここでさりげなく澪ちゃんのカッコよさをアピールする私。いけてる!)

梓「は、はい。そうですね」

梓(えっ? いきなり何?)

唯「ほ、ほら! 澪ちゃんもカッコイイポーズとってみて、こうやってさ……」

澪「ちょ! 唯! いったい何なんだよ」

唯「だ、だってそうしなきゃあずにゃんの澪ちゃんに対する信頼度がガタ落ちだよ!」

澪「ええっ!?」

律「なにそれ? 新しい遊び?」

唯「あ、遊びじゃないんだよ! 真剣なんだから!」

律「お、おう……なんかすまん」

紬「だったら澪ちゃんも何か手品すればいいんじゃない? マジシャンって私憧れるわ」

唯(そ、それじゃあ駄目なんだよムギちゃん! マジックミラー号から話題を遠ざけたいんだよ!
  だけどハッキリと言えないもどかしさ……)

梓「わぁ! 澪先輩の手品見てみたいです!」

梓(ふふふ、ここで然るべきタイミングで『でも、なんで昨日あんなに手品見に行くの嫌がったんですか?』
  って聞けばさすがの澪先輩も何かボロをこぼすはず)

唯(あれ? あずにゃんが喜んでるってことは手品する澪ちゃんでもOKってことかなのかな?)

律(あえて手品の話題を中心にして澪を慣れさす作戦でもよさそうだな……)

律「いいなそれ! 私も澪の手品見てみたい!」

澪(くっ……なんなんだよ、皆して。本当はやっぱり全部わかってやってるのか!?)

紬「じゃあ、私が澪ちゃんにとっておきのマジックを伝授してしんぜよ~」

梓「ムギ先輩が澪先輩に?」

律「なんだなんだ?」

紬「澪ちゃんの胸が……」

紬「大っきくなっちゃった~♪」ムニッ

澪「ひゃぁっ!?」

唯「おおっ! 寄せて上げる」

澪「な、なんてことするんだムギっ!!」



律「……あのさ」

澪「な、なんだよ……」

律「その胸が大きくなる手品私にも教えてくんない?」

澪「はぁ?」

梓「出来れば私にもお願いします」

澪「あ、梓までっ!?」

紬「ごめんなさい、この手品は元々無い人には向いてないの……」

律「……ちっ!」

唯「ほらほら、私はギリギリいけるかも~」ムニッ

梓「……けっ!」



紬「じゃあ、次は澪ちゃんが今穿いてる縞パンを横縞から縦縞に変えま~す」

澪「や、やめろ!」

梓「と、とても興味深いです」

唯(うんうん、あずにゃんは今澪ちゃんまっしぐらだよ!)

紬「うふふ、ごめんね澪ちゃん。でもマジックも恐いだけじゃなくってこうやって面白いものもあると思うの」

紬「だから、澪ちゃんも今度の休みの日に一緒に行こ?」

澪「いや……あの……」

紬「駄目?」

澪(こ、ここで駄目だって言ったらさらに窮地に立たされる気がする……)

梓(さすがムギ先輩。純粋さ故に残酷……)

律(な、なんとか澪を助けてやりたいが……いったいどうすれば……)

唯(あれ? 私っていったい何に対して今まで頑張ってたんだっけ?)



澪「わ、わかった。行くよ」

梓「!?」

律「!?」

紬「良かった~♪」

梓「ほ、本当にいいんですか!? 澪先輩!」

梓(ちょっと!? 行くって展開は予想外だった!
  MM号がどういものか知ってるのは恐らくこの中では私と澪先輩だけ
  と、いうことは律先輩や唯先輩は止めるなんてことはしないはず
  必然的に私がこの状況を止めなきゃいけない立場になってしまった!)

梓「澪先輩そんな無理しなくてもいいんですよ」

梓(私も昨日はMM号が手品だって喜んでた立場だし
  うかつに反対意見を言うと今度は私が澪先輩から変な目で見られるかも……)

澪「手品くらいなんてことないだろ」

梓(や、やばい……もはや開き直ってる
  無いとは思うけど本当にMM号出演なんてなってしまったらどうしよう……)

梓「……」

梓(私、子供っぽい下着しか持ってないよ……)

律「で、でもさ~。本当にそのマジックミラー号が来るのかな~。
  私の弟の勘違いだったりして~」

澪(そうか! 確かにそれはあり得る!)

梓「そ、そうですよね! 行って何も無かったじゃどうしようもないですもんね!」

律「ああ! そんな不確定な情報を鵜呑みにしても仕方ないしな!」

梓(ナイス律先輩! 今私の中で律先輩のランキングが急上昇です!)

紬「その時は皆で他のことして遊べばいいんじゃない? カラオケとか」

律「あ、うん。そうだな……」

梓(駄目か……)

唯「わ~い! 皆でお出かけ楽しそう!」

紬「きっととても楽しいに違いないわ!」

律「そ、そうだな。あははは……」

梓(諦めて勝負下着買ってくるか……)

澪(マジックミラー号は来ない! 皆とカラオケ!
  マジックミラー号は来ない! 皆とカラオケ!)



 そして当日…

梓(あの全面鏡張りの怪しいトラックは……)

澪(本当に来たのか……)

律(良くは知らない私でも異様な雰囲気は感じ取ることが出来るよ……)

唯「ややっ!? ムギちゃん、あれがもしや!?」

紬「ええ、間違いないわ! あれがマジックミラー号ね!」

唯「ほえ~……凄いね! 全部鏡だ!」

紬「中は見えないわね」

唯「うん、そうだね」

澪「……」

梓「……」

律「……」

紬「みんなどうしたの?」

澪「いや、どんなマジックが見れるのかと思うとドキドキしてきてさ」

律「わ、私も……」

梓「なんだか喉がカラカラですね」

紬「じゃあ、はい。この飴玉舐めて」

梓「い、いただきます」

唯「ムギちゃん、私にもそれちょうだい」

紬「いいわよ、ちゃんと皆の分あるから」

律「大阪のおばちゃんかよ……、まぁもらうけど」

澪「私にもちょうだい。飴でも舐めてないとなんだか落ち着かないよ……」

唯「この中に凄腕マジシャンが乗ってるんだね!」

紬「こういう奇異なことも手品師には必要でしょうからね」

梓(だ、大丈夫。ちゃんと下着は大人っぽいの買ったし。たとえ声掛けられたとしても!!)

律(あ、あの中では今頃凄いことになってたりするんだろうか!?)ゴクリ…!!

澪(だ、誰かが止めなきゃ……。でもあれが危険だって知ってるのは私しかいない)

梓(み、澪先輩……本当に何も言わないのかな……。
  もしムギ先輩や唯先輩が声掛けられたら……。
  もう、私のプライドなんかよりも二人の身の安全の方が優先だよね)

律(澪がどうのこうの言ってる場合じゃないよな……
  こんなところで貞操失ってちゃ洒落にならんぞ)

澪(わ、私がちょっと恥ずかしいのを我慢すれば皆助かるんだ……!!)



澪律梓「あ、あのっ!!」



唯「ん? どうしたの? 三人とも」

紬「なんだかすごく息が合ってたわよ」



澪「……律からどうぞ」

律「あの……梓、何だったんだ?」

梓「こ、ここは先輩方優先で……」

唯「変なの~」

紬「ごめんくださ~い」ドンドン

梓(ちょ!? こっちから乗り込んで行くなんて聞いたことないよ!)

澪(ムギ!? 何やってんだ!?)

律(こ、ここまでか……)

「は~い」

紬「手品見せて下さ~い」

「お待ちしてましたよ~」

律「お、女の人?」

澪「お待ちしてましたって……」

梓「ど、どういうことですか……」

紬「うふふふ」


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