平沢家

憂「お姉ちゃん、ご飯出来たよ」

唯「は~い。わぁ! 今日も美味しそうだね」

唯「それじゃあ、いただきま~す!」

憂「召し上がれ」

唯「う~ん、美味しい~」

憂「良かった」

唯「憂はいつお嫁に出しても恥ずかしくないね!」

憂「お嫁だなんて……そんな……///」

唯「あ、でも、憂がお嫁に行っちゃったら私のご飯作ってくれる人がいなくなっちゃう!」

憂「お姉ちゃんを置いてお嫁になんて行ったりしないから安心して」

唯「それは良かった~」

憂「もちろんお姉ちゃんもお嫁になんて行かせはしないけどね……」ボソッ

唯「ん? 憂、何か言った?」

憂「ううん、何でもないよ」

唯「ところでさ~、憂はマジックミラー号って知ってる?」

憂「マジックミラー号? 何それ?」

唯「なにやら凄腕のマジシャンがこの街にやって来るらしいんだよ」

憂「へ~、凄いね!」

唯「だけどね、澪ちゃんが私たちに絶対に観に行くなっていうの」

憂「澪さんマジックとかも苦手なのかな」

唯「ん~、それにしてはあまりにも必死だったんだよね」

憂「そうなんだ」

唯「だから憂なら何か知ってるかなって思ってね」

憂「ごめんね、私も知らないよ」

唯「そっか~」

憂「和ちゃんなら物知りだし知ってるんじゃない?」

唯「そうだね、食べ終わったら電話して聞いてみるよ」



 ・ ・ ・ ・ ・

唯「と、ゆ~わけで、和ちゃんに電話した次第でありまして」

和『へ~』

唯「和ちゃんマジックミラー号って知ってる?」

和『まぁ、知ってるわ』

唯「本当!? おねげーします! 教えてつかーさい!」

和『いいわ、ちょっと長くなるけど』

唯「はいっ!」

和『マジックミラー号は、ソフト・オン・デマンドが発明した合法的露出用移動スタジオで
  「MM号」と略される場合もあるわ』

唯「???」

和『トラックの荷台が一面マジックミラーによって囲われていて
  外から見ると一見ただの鏡にしか見えないんだけど、中から見ると外が丸見えになっちゃうのよね
  そこで脱ぐ事であたかも路上で脱いでいるように見えのよ。
  そのためナンパしてきた素人の女性をただ脱がす事以上に恥じらいを演出できるってわけ』

唯「あ、あの……和ちゃん……?」

和『要するに企画モノのAVってわけよ』

唯「え、えーぶいって、中学のときよく男子が言ってた、エッチなビデオのこと!?」

和『そうね、アダルトなビデオのことね』

唯「ふぇ~……」

和『でも、唯がこんなこと聞いてくるなんて珍しいわね
  まだ唯は赤ちゃんはコウノトリが運んでくるって信じてるもんだと思ってたわ』

唯「そ、そんなわけないじゃん!」

和『あら、そうなんだ』

唯「お、お父さんとお母さんがキスしたら赤ちゃんは出来るんだよ!」

和『うんうん、そうでなきゃね』

唯「ちゃんとキスしたあとは一晩中手をギュって握ってなきゃ駄目なんだから!」

和『そうね、合ってるわ』

唯「えへへ~」

和『でも、まさか唯からMM号の話題が出てくるなんて……
  幼馴染の春機発動期を実感してしまうわ』

唯「あのね、実は今日りっちゃんがこの街にそれが来るって話しててね」

和『ああ、だからなのね。確かにその情報は私の方にも入って来てるわ』

唯「で、私たちはそれが手品師が来るって勘違いしちゃってさ~」

和『うふふっ、唯もとんだおちょこちょいさんね』

唯「も~う! 私だけじゃなくって軽音部の皆もそう思ってたんだよ~」

和『さすが軽音部は期待を裏切らないわね』

唯「でも、澪ちゃんだけがなんか必死に私たちに行くのはよせって熱弁しててさ~」

和『澪はきっとMM号が何だか知っていたのね』

唯「だよね~。今思い出したら、確かに外からは見えなくて中からは丸見えでとか言ってた気がするよ」

和『まぁ、ただ見るぶんにはいいけど、見られる側になるのはぞっとしないわね』

唯「だから澪ちゃんもあんなに必死に私たちを止めてくれたんだね」

和『でも、意外だったわ。澪がMM号ファンだったなんて
  こんな知られざる一面をあの曽我部先輩が知ったらどう思うかしら』

唯「あ~、やめといた方がいいんじゃない?」

和『うふふっ。冗談よ』

唯「和ちゃんならやり兼ねないからさ~」

和『私だってそのくらいの常識は持ちあわせてるわ』

唯「そっか~」

和『で、唯はどうするの?』

唯「明日、皆にマジックミラー号はエッチなことだから行かない方がいいよって言ってあげるよ」

和『それは、澪の信用問題に関わってくるからやめといた方がいいわよ』

唯「なんで?」

和『唯は私が教えたから知ったっていう後ろ盾があるけど澪は元々知っていたのよ
  それがエッチなものだってわかっていたからこそハッキリとは言わなかったわけだし』

唯「でも、そんなことで私は澪ちゃんを嫌いになったりしないよ
  現に和ちゃんがこんなにド変態だって知っても変わらずに喋ってるし」

和『そうね。でも、唯がよくても他の部員の子がどう思うかはその人次第なのよ』

唯「あ~、それもそうだね」

和『特に梓ちゃんなんかは、澪に対して憧れを抱いているっぽいんでしょ?』

和『もし、澪がそんなMM号マニアだって知ったら落ち込んじゃうんじゃないかしら?』

唯「あ~、それはあるかもね」

和『ただ落ち込むだけならいいけど、可愛さ余って憎さ百倍って感じで
  憎悪の対象になっちゃう可能性だってあるわ』

和『私のカッコイイ澪先輩像を返せ! って』

唯「それは、是非とも避けたいね」

和『だから、こういうことは他人からこうだったんだよって言うんじゃなくて
  こそこそせずに本人の口から、私はMM号が大好きでMM号無しじゃ生きていけないんだ!
  ってカミングアウトさせた方がまだ被害は最小限で済むと思うわ』

唯「そういうもんなのかな~」

和『だから唯はMM号が何かしらないふりをして普段と変わらないよう澪と接してあげるべきね』

唯「和ちゃんがそういうならそうなんだろうね」

和『これは澪のためであり、また梓ちゃんのためでもあるのよ』

唯「うん、わかった! 私、MM号がなんだったかは忘れるよ!」



 梓の部屋

梓「フヒヒッ。まさか澪先輩がMM号を知ってたなんて」

梓「たとえ知ってたとしても、私みたいに知らないフリをすれば済むことなのに」

梓「澪先輩は根が真面目だからな~」

梓「澪『だから、え、エッチな……』だって」

梓「ムフフッ、普段そういうことには全く興味なさそうな澪先輩なのに、こりゃ堪らんです」

梓「あのけしからんおっぱいにはそんな澪先輩のいやらしい欲望が詰まってるんだろうな~」

梓「ふうっ……」

梓「さて、どうしたもんか」

梓「私がMM号を知ってるってことは極力隠しておきたいし」

梓「そうじゃないと、皆さんと一緒になって澪先輩を攻めることが出来ない」

梓「澪先輩がそんなエッチな人だとは思いもしませんでした!」

梓「澪『うぅ~、梓~そんなこと言わないでくれ~(涙)』とか」

梓「涙目の澪先輩……」ジュルリ

梓「へ、へへへ……」



 紬の部屋

紬「zzzzzzz……」

紬「ふ、うふふっ」

紬「まぁまぁ、こんなになっちゃって……」

紬「澪ちゃんったら……」

紬「もうトロトロね……」

紬「でも、ほら、私のも見て」

紬「どう? 澪ちゃん以上にグチュグチュなのよ」

紬「ムフフッ」

紬「すごいわ……」

紬「これがゲル状マジック……」

紬「……zzzzzz」



翌朝

澪「ううっ……心配で一睡も出来なかった……」

澪「もしかしたら今頃私がマジックミラー号を知ってるって誰かが言いふらして
  この街中に広まってるかもしれない……」

澪「……死にたい」

律「おーっす! 澪! おっはよー!」

澪「!?」

律「うわっ!? 酷い顔してんな。昨日寝てないのか?」

澪「り、りつぅ~」

律「ん~? どうしたどうした? 困ったことがあったらお姉さんに言い給え」

澪「ち、ちょっと勉強し過ぎてさ」

律「そ、そういえば!? 昨日は大量に宿題が出たんだった!」

澪「どうせ、ノート見せろだろ?」

律「へっへっへ~。適当に間違いを忍ばせるのでおねげーしますだ」

澪「ったく、仕方ないな」

澪(いつもの律だ! 律はきっとマジックミラー号の真実に気づいてないんだ!)

律(きっと昨日は不安で寝れなかったんだろうな……)

律(っていうことは、澪はマジックミラー号を知っているっていうことに
  恥ずかしさを感じているってことだな)

律(恥じらいを持ってるっていうのに必死に私たちを止めようとしてくれた)

律(そんな澪の必死の訴えを聞いてやれなかったなんて、私は親友失格だ)

律「……」

律(でも、まさか澪がAVの内容を知ってるなんて意外だったけど)

律(だからと言って、それで私が澪を見る目を変えるわけがないっ!)

律(けど、いきなり『マジックミラー号がAVだったなんて、そんなこと知ってる澪はとんだムッツリだな~』
  なんて言ったら、もしかしたら澪は立ち直れなくなるかもしれない)

律(澪が自分から言い出すまでは様子を見るべきだな)

律(出来れば、マジックミラー号の話題自体を無かったことにしてやりたい)

澪「律? どうしたんだよ、黙っちゃって」

律「んん? 何でもな~い。ほらほら、早く行かないと遅刻しちゃうぞ」

澪「お、おい! そんなに引っ張るな」


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