学校、音楽室前。

澪「はー、下校時刻に間に合ってよかった。
  ……あれ、音楽室の電気ついてる…………」

「……」「……」

澪「誰かいるのか……? 梓か?」

「……」「……」

澪「……」

音楽室の中から聞こえる話し声。
それは確かに梓のものだった。
梓の言っていた用事とはこれだったのか……澪は考えた。
澪はなぜか音楽室に入ってはいけないような気がして
ドアの影からこっそり中をうかがうことにした。

澪「……」コッソリ

音楽室の中には梓がいた。
水槽の前で何かをしているようだった。

梓「……、……」

澪(よく見えないな……
  誰かと話してる? でも他には誰も……)

梓「…………、……」

澪(ええい、聞こえん!
  澪イヤー発動!)キーン

説明しよう、澪イヤーとは任意に発動できる地獄耳だ。
これにより澪に梓の声が聞こえるようになった。



梓「……ふふ、トンちゃん」

トンちゃん「…………」

梓「ト~ンちゃん☆」

トンちゃん「…………」

梓「ねえ、今日の私の演奏……どうだった?」

トンちゃん「…………」

梓「昨日より上手く弾けてたでしょ?」

トンちゃん「…………」

梓「私、昨日帰ってから一杯練習したんだ」

トンちゃん「…………」

梓「あなたに聴いてもらうんだから」

トンちゃん「…………」

梓「もっと頑張って上手くならなきゃいけないよね」

トンちゃん「…………」

梓「あのさ、私がもっとギター上手くなって……」

トンちゃん「…………」

梓「今度のライブ成功したら、その……」

トンちゃん「…………」

梓「あ、やっぱり何でもない! えへへ」

トンちゃん「…………」

梓「そうだ、明日のご飯、何がいい?」

トンちゃん「…………」

梓「も~、『なんでもいい』が一番困るんだってば~」

トンちゃん「…………」

梓「じゃあ私が勝手に選んじゃうからね?」

トンちゃん「…………」

梓「うふふ、大丈夫、変なのは選ばないから安心して」



澪「アワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワ」がくがくがくがく



澪(ああああ、梓の用事ってこれだったのか!?)

澪(誰もいなくなった音楽室でっ……)

澪(トンちゃんとのラブ★トーク……!!)

澪(どういうことなんだ、何でトンちゃんと……)

澪(ていうか私は決して見てはいけないものを見てしまったのでは……)



梓「あっ、そうだトンちゃん、今日また先輩たちのこと見つめてたでしょ」

トンちゃん「…………」

梓「もう、確かに先輩たちはみんな可愛いけど……
  私が居るんだからさ、ね?」

トンちゃん「…………」



澪(うわあああああああもうこれ以上は聞いていられないいいいいいい)
だだだだだだっ



再び学校の外。

澪「はあ、はあ、はあ……」

律「なんで全力疾走してきたんだ」

紬「携帯はあった?」

澪「け、け、け、け、携帯……? あ、わ、忘れた……」

律「なんでわざわざ取りに戻ってまた忘れてくるんだよ」

澪「しししししししし、仕方ないだろ……」       ぉ?」
                         たよ
紬「どうしたの、何かあったの?」     なかっ
                    も
澪「なっ、なななななななななななな何

律「声が裏返ってるぞ、絶対なんかあったろ」

澪「な、なんでもない! ほんとに何でもないから!!」

律「怪しいなあ」

澪「も、もういいじゃないか、帰ろう、な」

紬「そうね、もう遅いしね」

澪「そうだよ、うん、あははは……」

律「腹へったなー」

紬「♪~」

唯「あずにゃんをシメるには……」ブツブツ



翌日、放課後の音楽室。

ガチャ
澪「おう、梓だけか」

梓「あ、こんにちは」

澪「どうしたんだ、トンちゃんの水槽見つめて……」

梓「いえ、別になんとなく」

澪「ああ、そう……」

梓「……」

澪「……」

梓「……」

澪(なんとなく気まずい……)

澪(うーん、昨日のことに付いて問い詰めてみるべきか……
  いやしかし、覗き見てたのがバレるのは……)

梓「なんですか、人の顔ジロジロ見て」

澪「え、あ、いや、なんでも……」

梓「じゃあ見ないでください。不快です死にます」

澪「すまんすまん……あ、そうだ。
  梓、最近唯と仲悪いのか……?」

梓「え、なんでですか」

澪「いや、なんかそう見えるから」

梓「そうですかね……」

澪「うん」

梓「まあ、そうですね……
  唯先輩のことはあまり好きではないです。
  というかどっちかというと嫌いです」

澪「えっ、なんでだよ」

梓「それは内緒です……
  あ、誰にも言わないでくださいね、このこと」

澪「まあ、それは言わないけど」

梓「はい、お願いします」

澪(梓の秘密を2つも知ることになってしまった……)

ガチャ
唯「ちーっす」
律「うーっす」
紬「今日のお菓子は蕎麦ぼうろよ~」

唯「わーい蕎麦ぼうろ~」

梓「……」

澪「……」

唯「あ、そーだ。トンちゃんにご飯あげよー」

梓「さっきあげました」

唯「えー、なんでまた先にあげちゃうの?
  私も今からご飯あげるもん!!」

梓「だめですよ、今日は私がもうあげましたから!」

唯「でもトンちゃんだって欲しそうな顔してるよ。
  ねー、トンちゃん」

トンちゃん「……」

唯「ほらほら、こっちに泳いできたよー」

律「はは、トン公は唯に一番なついてるからなー」

梓「っ……だから、今日はもうあげたからダメって言ってるじゃないですか!
  明日以降にしてください!」

唯「ぶー、あずにゃんのケチー」

澪(……梓が唯を嫌ってる理由って、ただのヤキモチじゃなかろうな)

梓「ほら、練習しますよ練習!」

律「へーい」


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