ドアガチャ

律「スマン遅くなった!掃除…」

澪「まったく、律のせいだぞ!この前m…」

紬「すぐにお茶を…」



唯梓「……」ヒシッ



律澪「何があったっ!?!?!?」

紬「お茶入れてる場合じゃねえ!お赤飯炊かなくちゃっ!!」ダッ

唯「…」クルッ

律(ん?唯がこっち向いた)

唯「…きひっ♪」ニチャア

律(何その邪悪な笑顔!?)

梓(唯先輩…)ギュッ

唯「よしよしあずにゃん、怖くないよ…ひひっ」ナデナデ シュルッ ヌガシヌガシ

律「梓逃げてーー!!」

―――



唯「いててて…」ヒリヒリ

梓「体まで許した覚えはないです」

紬「心は許しちゃったんだ?」ニコニコ

梓「揚げ足取らないでください。眉毛細くしますよ」

律「それで、なんで梓はあんな凶行に走ったんだ?」

梓「あっ…あああああ!!律先輩ごめんなさい!忘れてましたごめんなさい!」

律「私への無茶振り多くない!?」

梓「この前言ってたカブトたち、全滅させてしまいました…ごめんなさい」

律「あーそっか…、残念だなあ。梓も、残念だったな」

梓「怒って、ないんですか…?」

律「怒るも何も、死んじゃったんなら仕方ないさ。それに、大事にしてた梓のほうが辛いだろ?」

梓「でも、そんな…約束やぶっちゃったし、その」ジワッ

律「ホントに怒ってないから!ホントホント!(この温度差が逆に申し訳ない…)」

かえりみち!



トボトボ

梓「律先輩はああ言ったけど、やっぱりお詫びに何か埋め合わせをしたい…」

梓「でも、何をしたらいいんだろう…」

リーリーリーリー リーリーリーリー

梓「ムギ先輩から…?」ピッ

紬『話は聞かせてもらったわ!私に任せて!』

梓「通報してもいいですか?」

紬『待って待って、埋め合わせにいい話があるの!』

梓「はあ…その話って?」

紬「蛍狩り!それで何か準備が必要なのかちょうど梓ちゃんに聞こうと思ってたの」

梓「虫除けとか時間を潰す道具とか…特にコレといったものは必要ないと思いますけど」

梓「…それにしても蛍狩り、ですか」

紬『そう!この前学校の掲示板で見つけて、ずっと気になってたの』

紬『本当は私がみんなを誘った後、唯ちゃんと二人きりにして情事を覗くつもりだったんだけど』

紬『今日はいいもの見せてもらったから』

梓「(聞かなかったことにしよう)…でも、見直しました」

紬『何が?』

梓「ムギ先輩って、お金だけが取り柄と思ってたけど、いいところもあるんだなって」

紬『実はそれ言われるたびに結構傷ついてるの♪』

梓「じゃあ早速他の先輩を誘ってみます。ムギ先輩、ありがとうございました!」

紬『いえいえ♪じゃあ、またね梓ちゃん』ピッ



梓「…よし、まず律先輩から」カチカチ



ほたるがり!


唯「おーい!お待たせーー!」タタタタ

律「唯ー!今日も最後だぞー!」

唯「ヒーローは遅れて登場するものですっ」

澪「まったく…唯だけ集合時間早く教えた方がいいんじゃないのか?」

律「それにしても以外だな、ムギと梓がこんなこと企画してたなんて」

唯「珍しい組み合わせだよねー?」

梓「ほとんどムギ先輩の企画なんですけどね。
  先日空気を悪くしてしまったお詫びも兼ねて協力させてもらいました」

紬「…梓ちゃん?」ボソッ

梓「すいません、でもさすがに悪いですから」ボソボソ

梓「それじゃあ皆さん、行きましょうか。少し歩きますよ」



律「お、でっけートンボ」

紬「オニヤンマね。この時期に見られるなんて珍しい…」

梓「オニヤンマってホントカッコイイですよね。シオヤアブの次にカッコイイです!」

澪「トンボはともかく、あの不気味なアブが格好いいってのがわからない…」

唯「トンボさんのしっぽをねぶるとおいしいって憂が言ってた!!」タタタタ

梓「ふふ、唯先輩。がむしゃらに追いかけたってトンボは捕まりませんよ?蜘蛛の巣で網を作らなきゃ」

律「いや、普通の網使えよ。ていうか指クルクルしたら道具もいらないし」

紬「貧乏人の知恵ってすごい!」

唯「でも私はこの早さに打ち勝ちたいんだよ!」バタバタ

梓「あ、わかりますそれ!」

澪「トンボなんか追っかけたって楽しくないだろ?」

梓「そうじゃなくて。ほら、木の枝使って…律先輩もよくやりましたよね?トンボ切り」

律「えっなんで同意求めるの」

梓「トンボを打ち落とすと達成感です!首を落としたらくるくる回りながら落下するんですよね♪」

唯「…あずにゃんのそういう残酷なところ、嫌いじゃないよ///」パクッシガシガ

澪「聞こえない聞こえない聞こえない…」

律「梓…本当に虫好きか?」

梓「もちろんですよ!私だって子供じゃないんだから、そんな可哀相なこと中3でやめましたよ!」

律「わりと最近じゃねーかっ!」

唯「なんか苦しょっぱい」ジュルジュル



紬「ここがその場所のはず、なんだけど…」

唯「ホタルさんいないね」

梓「まだ夕方ですから。適当に時間潰しましょう」

律「ちょっと早く来すぎちゃったなー。どうする?」

澪「私のポエム朗読会とかどうかなっ?」

唯「ハリガネムシ捕り競争しようよ!」

梓「マニアック過ぎます!それに、私たちでやったら付近のハラビロが全滅します」

澪「大切なあなたにカラメルソース!」

唯「澪ちゃんうるさい」



律「アハハ、決めるまでに夜になりそうだな」

紬「それじゃあお茶でもしながらゆっくり考えましょう?いろいろ持ってきたの!」バサッ ドン!

梓「結局いつもの部活ですね」

唯「いやいや、お菓子が無尽蔵という違いがあるのだよあずにゃん君」ムグムグ

律「お前だけだろ…」

紬「唯ちゃんにお菓子をあげるのがもったいなく感じてきたわ♪」

カシマシカシマシ



澪「―あなたの火加減で美味しくなるの!」キリッ



律「すっかり日も落ちたな。もうそろそろかな?」

紬「ここはホタルの有名スポットって聞いたけど、ほとんど人がいないね…」

澪「何かイベントがあるわけではないし、こんなものじゃないか?」

梓「そうですね。それに、ホタルに興味を持つ人が減ってると思います。…本当に」

梓「ホタルは年々数が減っている虫の一つですが」

梓「そんな虫たちが消えるより早く、虫を好きな人が消えるかも知れないですね」

律「…」

ボウッ…

唯「あっ、光ってるー!あっちも!」

律「ホタルを直に見るなんて、何年ぶりだろ」

澪「昔、見たよな。二人でさ」

紬「綺麗…」



梓「……」

梓「…だからこそ、みなさんが虫を好きでいてくれて…みなさんに出会えて、よかったです」

梓「先輩たちと出会ってから」

梓「沢山の人の前でライブをしました。初めてクリスマスパーティに呼ばれました」

梓「先輩との約束のおかげで友達も出来ました」

梓「そして、先輩たちのおかげで」

梓「毎日おいしいお菓子が食べられます。楽しくお喋り出来ます。一緒に虫の世話が出来ます」

梓「私が思っていたより、ずっとずっと楽しい、日々が送れました」



梓「…私、頑張ります。先輩たちのおかげで、一人でも私、頑張れます」

律「おいおい、なんだか今が今生の別れみたいな言い方だなー?」

澪「今更大学へ行ったからサヨナラ、なんて言わせないぞ。
  梓には散々怖い目に合わされたんだ、責任とらせてやる!」

律「そうそう、おばさんになっても婆さんになっても無理やりにでもつるんでやるからな!」

唯「ちょっと離れたぐらいじゃあずにゃんへの気持ちは揺るがないよー!」

紬「二人が結婚するの待ってるんだから♪」

澪「だって、私たちは…ただの先輩後輩じゃないだろう?」

唯「時間だってまだまだいっぱいあるよ!」

梓「皆さん…」


梓(今日のホタル…忘れられない、な…)

梓(今なら……)

梓「…あのっ!」

律「梓?」

唯「急にどしたのあずにゃん?」

梓「決心がつきました。私の昔の話…猫の話を、聞いて、くれますか?」

唯紬「聞きたーい♪」

律「そっか、話してくれるんだな」

澪「梓が話したいなら、聞かない理由はないよ」

梓「ありがとうございます。話せば長くなりますが…」



梓「私は小学生の頃、ある野良猫を可愛がっていました。その子も私に甘えてくれていた、と思います」

梓「言葉は通じ合わなくても、お互いわかりあえていると信じていました」

梓「あの日が来るまでは…」モワモワ

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