紬「待てー!」

猫「お前の言う事なんて聞く必要ないにゃん! ……ん?」

猫は職員室へ向かっていたが突然別の方向へ駆け出した。

紬「えっ? どうして……」

とにかく後を追う紬。
猫と紬が玄関に辿り着くと猫は邪悪な笑みを浮かべ、紬は驚愕した。

猫「すごいにゃん……さっきのゴキブリ以上の逸材だにゃん!」

紬「う、憂ちゃん!? どうして……!」

憂「おっきい猫! あ、紬さんおはようございます。何だか今日は人が少ないような……」

猫「いただきにゃす!」

猫が姿を霊体に変えて憂の口へと入り込む。

憂「んっ!? ん、んぁ……おぶっ!?」

紬「しまった!」

憂の身体がガクガク震えてからピタリと静止する。
うなだれていた頭を持ち上げて紬を睨む瞳には狂気が見え隠れしていた。

猫憂「こ、これほどまでとは……! これなら猫の姿にならずとも力を限界まで引き出せるにゃん!」

紬「ああ……憂ちゃん……」

猫憂「……さてと。そこの沢庵にはさっきのお礼をさせてもらうのにゃん」

紬「くっ!」

紬は沢庵ショットガンを放とうとするも憂の身体の事を考えて躊躇してしまった。
猫憂は紬の動作など最初から気にしていない様に殴りかかる。

猫憂「ふんっ!」

紬「うきゃっ!」

力任せに振り下ろされた拳は紬を10メートル近く吹き飛ばし壁に叩きつけた。
猫憂はその後を追い壁に大の字で張り付く紬の腹部に膝をねじ込む。
前のめりになった所に組んだ手を叩きつけ今度は地面に貼り付けた。

紬「むぎゅ……!」

猫憂「これはすごいのにゃん! 無敵と言っても差し支え無いのにゃん!」

己の力に歓喜する猫憂。
紬はピクピクと痙攣している。

澪「ムギッ! 今の音は……」

遅れて玄関にやって来た澪が口を大きく開けて驚く。

澪「憂ちゃん!?」

猫憂「遅かったのにゃん。お前がのろのろしてるから沢庵がボロ雑巾になってしまったにゃん」

澪「ムギ!? しっかりしろ!」

全く反応しない。

澪「……憂ちゃんに取り付いたのか、お前」

澪が猫憂を睨み付ける。

猫憂「ふふっまあ待つのにゃん。とりあえずこの沢庵をすりおろすのにゃん」

澪「なっ!? おいやめろっっ!!」

猫憂は制止も聞かずに紬を玄関目掛けて全力で蹴った。

もの凄い勢いで地面にぶつかりながら吹っ飛ぶ紬。
玄関を抜け木々を砕いても尚止まらず、校門脇の壁をも破壊した。

澪「むっむぎいいいいいいいいい!!」

猫憂「イヤッホウ、GOOLなのにゃん!」

その言葉で澪の堪忍袋の緒が切れた。

澪「いい加減にしろよお前っ!!」

六本の足は一瞬で間合いを詰める。
しかし澪の左拳は空を切った。

猫憂「おっと! お前はこの姿に遠慮とかしないのかにゃん?」

澪「……っ!!」

益々澪の怒りが爆発する。
抑え切れない感情が拳を震わせ、禍々しい殺気となり溢れ出す。



下の階の衝撃が部室にまで響いてくる。
加えて寒気のするような恐怖と慄くほどの怒気が離れていても感じ取れた。

梓「澪先輩……どうなってるの……?」

梓「行かなきゃまずいような気がする。でも裸はやだなぁ……あ、そういえば」

梓はさわ子の遺産を身に付け部室を出た。
階段を降り始めた時一際大きく校舎が揺れる。

梓「早くしないと……!」

梓はまず職員室で落としたであろうギターを拾いに向かう。
一階へ着いた頃、戦場は玄関を抜けて広場の辺りへと移っていた。
職員室へ飛び込んだ梓はさわ子の横に寝ているギターを発見。

梓「……よし! G.K.B.R.は壊れてない!」

ギターを担いで玄関へと急いだ。



澪と猫憂の戦いは熾烈を極めていた。
一階の校舎は既にボロボロ。
外壁も容易く壊れてしまうためまるでお菓子の家みたいだなと澪は思った。

猫憂「おねむの時間はまだなのにゃん」

お菓子の家で遊ぶ夢から帰って来ると血の味が口に広がり現実に引き戻される。

澪「うっぐ……このっ」

胸倉を掴んでいた猫憂の手を掴み二本の足で蹴り飛ばした。
猫憂は数メートル飛ばされたが綺麗に着地した。

猫憂「おうふっ」

猫憂「その調子なのにゃん」

澪「はあはあはあ…………くそっ」

肩で息をしている澪に対して猫憂はピンピンしている。

澪「謝っても許さないからな!」

猫憂「何言ってるのにゃん。この状況で謝るも何もないのにゃん」

澪「梓を傷付けてムギをボロボロにして憂ちゃんまで乗っ取って……!」

猫憂「ゴキブリをやったのはそっちにゃん」

澪「うるっさい!」

澪が愚直に突っ込み荒削りな攻撃を仕掛けるが難無くかわされてしまう。

猫憂「にゃんっ!」

澪「あぐっ!?」

猫憂はラリアットを繰り出し、それを食らった澪は頭を地面に打ちつけた。
倒れた澪の蜘蛛足を一本掴み、胴体に脚をかけて引っ張り始める。

澪「ひぎっ!? ……あ゛あ゛あ゛っ!!」

猫憂「ホウホウホウホウ……!」

澪「うぐぁああああ……!!」

猫憂「ホーーーーウ!!」

猫憂は力任せに澪の蜘蛛足を引き千切った。

澪「……っ!! ……っあ゛!!」

澪が声にならない叫びをあげてのた打ち回る。
猫憂はそれを蹴り飛ばす。
そして近くにあった桜校の石像を土台ごと引っこ抜くと澪に向かって投げ飛ばした。

猫憂「ブチュッと潰れてしまえにゃん!」

石像が着弾すると衝撃で桜校が揺れる。
周りは砂煙に包まれた。


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