澪「…………プッ」

澪「あはっ、あはははははっ!」

律「な、なんだよ」

澪「だってハハ律がそんな真面目な顔でアハハハ」

律「――ッ! ちっ、ちくしょー笑うなぁ!」



紬(!! 今すっごいチャンス見逃した気がする)

唯「『甲鱗のワーム』出すよっ」

紬「じゃあ『不実』で」

唯「ぎゃーす」



~田井中家~

澪「おい律、悪かったって」

律「フン」

澪「……心配してくれてありがとな。でも私は凹んでないぞ」

律「嘘つけ」

澪「嘘じゃない。正直、すっきりした」

律「やっぱり彼氏にセックスを強要され」

澪「処女だっつってんだろ」

聡「いやっほぅ」ガタッ

澪「聡、盗み聞きしても別に得しないぞ」

律「そいつは盗み聞きそのものを楽しんでいるんだ」

澪「田井中一族のDNAはどうなってるんだ」

律「倦怠期ってやつか?」

澪「というか……たぶん、私は『恋に恋してた』んだな」

律「こいにこい ですか」

澪「うん。きっと憧れと恋愛感情を一緒くたにしてたんだ」

律「それは たいへんですね」

澪「付き合ってる時もどこかぎくしゃくしてた。嫌ってるわけじゃないのにさ」

律「からだじゅうが むずむず してきました」

澪「そう考えると友達と恋人って近いようで遠いよな」

律「わさんぼん」

律「ええい、ストップ!  この話、終わり」

澪「な、なんだよ。自分から振っておいて」

律「澪が元気ならそれでいい! 遊びにいくぞ」

澪「唐突だな」

律「砂糖漬けにされてたまるか」

澪「中の人ネタか」

律「その発想はなかった。それより行くのか行かないのか?」

澪「行くよ。律と出かけるのも久しぶりだしな」

律「よーし、『澪ちゃん傷心記念・カラオケツアー』だ!」

澪「蒸し返すな!」ゴンッ

律「いてー」



律「澪と二人きりなんて何ヶ月ぶりかな」

澪「おい、そこまで久しぶりじゃないだろ?」

律「だって澪は彼氏と遊んでばっかだったろ」

律「…ゴ、ゴメン。私も実は律とデートしたかったんだけど言い出せなくて」

律「?? だったらそう言えばいいだろ」

律「でも……彼とばっかり一緒にいたから嫌われたんじゃないかって……」

律「バカだなぁ。私はいつだってお前を受け入れるさ」キリッ

律「えっ!? あ――ありがt」

律「あー! 赤くなった、赤くなったー」

律「う、うるさい! バカ律!」



澪「さっきから何言ってんだ? お前」

律(そういえば――)

澪『……手…つないだ……歩きながら』カァァ

律「……澪」

澪「なんだ?」

律「……手」

澪「……」

律「手!」

澪「……バカ律」スッ

律「ん」ギュッ



紬(! またチャンスが去った気が)

唯「今度こそ、『甲鱗のワーム』だよ!」

和「X=20で『猛火』よ」

唯「きが くるっとる」



~後日~
唯「今日はいっぱい練習したねー」

澪「毎日しろ――どうした、梓? 練習中からモジモジして」

梓「あの、澪先輩……お気を落とさないでください…」

澪「!? おい律!!」

律「わ、私じゃないぞ!! さわちゃんが嬉々として話してたんだ」

紬「どこで知ったのかしら」

澪「……まぁいずれはバレることだからな、ハハ…」

律「まぁ澪にはもっとお似合いの人がいるさ。なっ!?」

唯・紬・梓「えっ? 誰[ですか]」

律「わたしです」

澪「そうね。はいはい」



梓(…………)



ギシギシ アンアン  スリスリ ニャーン

梓「唯先輩……今日も激しかったですね…」

唯「うん、あずにゃんとも今日で終わりだからね」

梓「えっ!? 嘘……そんな…」

唯「澪ちゃんが別れたってことは知ってるでしょ?」

梓「で、でも――」

唯「あずにゃんとは卒業の時なんだよ。子どもじゃないもんね、わかるでしょ?」

梓「もう縛っても写真撮っても怒らないから…卒業しないでよぅ…」

唯「澪ちゃんを落とすなら今がチャンス――」

梓「そんな……そ、そうだ! 新しいテクを覚えたんです。今やってみますね」ゴソゴソ

唯「あずにゃん、布団に潜って何を――ハゥンそんなとこ」

梓「唯先輩のならどこでも舐められます! だから捨てないで下さい、なんでもします!」

唯「やれやれ。とんだ『じゃじゃ馬Way To Go』だぜ」

唯「そうだ、あずにゃんも澪ちゃんを狙って見れば? 憧れだったんでしょ?」

梓「それは…澪先輩は真面目に練習してるから……」

唯「ふーん。じゃあ私も真面目に練習しようかな。あずにゃんに構う暇もないくらい」

梓「!? ゆ、唯先輩も真面目です!」

唯「そっかぁ、じゃあ今まで通りにしようかな?」チラッ

梓「はい! 今まで通りでお願いします、今まで通り…その……」

唯「甘えんぼさんだなぁ。おいで、あずにゃん」

梓「にゃぁぁ」

唯「いつも通り仲良くして、いつも通り練習中にお茶しようね?」

梓「はい、はい! 全部いつも通りでお願いします」

唯(これで堂々とおやつが食べられる。計画通り!)ニヤッ


コンコン
憂「お姉ちゃーん、ご飯出来たよー」

唯「わーい」



梓『唯先輩……澪先輩を狙ってるなんて嘘ですよね?』

梓「……なんてきけなかったなぁ」

梓(唯先輩も澪先輩と律先輩の間柄に気づいてるとは思うけど……)

梓(まったく本心がわからない人だからなぁ、唯先輩は)

梓(いつか私と唯先輩も澪先輩たちみたいになれるのかな)

梓(もっと唯先輩のことを知りたい――そうだ!!)



梓「全員集まりましたね」

律「いや、まだ唯が来てないぞ」

澪「唯は当番で遅れるってよ」

梓「そうです、だからこそ『軽音部会議を開いて下さい』と言ったんです」

紬「あら、唯ちゃんいなくて平気なの?」

梓「理由はあとで話します」

律「なあ、それは私の役目なんd」

梓「解読します!」

律「はい」

梓「唯先輩が歌う曲を解読すれば唯先輩のことがわかるはずです」

律「たしかに唯の歌もよくわかんないんだよな。『Utamaro! MIRACLE』だっけ?」

梓「もう下ネタはやめて下さいよ、律先輩!」

律「へっ? 何が?」

梓「今『Utauyo』を『Utamaro』って言ったじゃないですか」

律「あ、スマン。勘違いしてた」

紬「どこがやらしいの?」

梓「えっ……だってウタマロって…」

澪「喜多川歌麿のことじゃないのか?」

梓「違います! ウタマロはチンチンって意味がハッ!」

律「さっすが梓だ! 下ネタに関しては右に出る奴はいないな!!」

紬「いよっ! ドスケベ大将!」

澪「梓……いつからそんな子に?」

梓「ノーサンキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」



梓「と、とにかく! 今から流すんでご協力お願いします」

紬「歌詞を訳するんじゃないの?」

梓「どうも歌詞と歌が違ってる部分があるみたいなんです」

澪「あったかなぁ」

律「とりあえず聞いて見るか」



♪ミンナガダイスキ
律「みんなが大好き」

♪エンエンゾッコゥルラーラ ミラックール シンッ タイッ
紬「延々続行 ルララ Miracle Sing Time」

♪ウ タッテ ウ タッテ アイーツターエルサイキョシュダッ
梓「歌って 歌って シュエエアィサィ ターアイーサィ」

澪「待て、最後何て言った?」

梓「シュエエアィサィ ターアイーサィです」

紬「どういう意味?」

律「何語だ? っていうか意味あるのか?」

梓「きっと意味があるはずですよ」

澪「なんか曲解してる気がするぞ」

梓「そんなことないです! これを解読すれば唯先輩のことがわかるはずです!!」

律「いや、それはどうだろう」

梓「ここにきてですか!? 私もっと唯先輩のこと知りたいです」

律「そりゃあ少しはわかるだろう」

梓「じゃあ――」

律「でもな、結局『少し』なんだよ。昨日、澪と話してそれがよくわかった」

澪「話してもわかるかはわからない。でも話さなきゃわかるものもわからない」

紬「動きがあるから流れは起こるのよ」

梓「……だったら私はどうすれば」

律「本当に相手のことを知ろうと思ったらもっとすべきことがあるだろう」

梓「それは――?」

ガチャッ
和「そう、直接話し合うことだ」

澪・律・紬・梓「姐さん!」

おわり