唯「うい~うい~;;」

唯「腰が抜けて立てないよぉ…ういがやられちゃう…」

唯「誰か憂を助けて…」

唯は昔のことを思い出していた

唯(私の方がお姉ちゃんなのにいつもいつも憂に守られてばっかりだった…)

唯(今回の作戦も憂を頼りにしてた…それでなんとかなると思ってた…でも今は)

唯「…!」ゴシゴシ

唯は乱暴な仕草で涙をぬぐった

唯「今は私が憂を助けなきゃ!」



敵兵はまたしても憂の上に乗っていた

憂「うあ…やめて…!ストップストップ…!」

敵兵のナイフは憂の胸に到達しようとしている

憂「いや…!お姉…ちゃん…お姉ちゃん!」

ガチャ

唯「憂を離せー!」

パーン



敵兵「が…」ドサッ

唯「あ、あれ?」

憂「ハアハア…お姉ちゃん…お姉ちゃん!」ダキッ

唯「憂!良かった~!ごめんね遅くなって;;」

憂「私は大丈夫!でも少尉が…」

佐藤「生きてるよ」

憂唯「!?」

佐藤「腕を撃たれただけだ。問題ない」

憂「敵を撃ったのはお姉ちゃんなの?」

唯「私じゃないよ。部屋に入った瞬間に敵が倒れたからビックリしたんだ~!少尉が撃ったんじゃない?」

佐藤「いや、俺じゃない。怖くて死んだふりをしていたからな」

唯憂「…」

憂「あれ?」

機関銃を撃つために開けた穴を見ると、梓がこちらに向かってどや顔をしながら親指を立てていた

憂「梓ちゃん!?もしかしてこの穴から敵を狙撃したの!?」

梓(普通ならあんな狙撃成功するはずないのに…)

梓(やっぱりむぎさんが私を守ってくれてる)

梓(むぎさん、もう誰も死なせないから!)

澪「唯ー!後退だー!橋まで退却しろ!」

唯「あいあいさー!」

唯「憂、行こう!」

憂「うん、お姉ちゃん!」

憂「お姉ちゃん!橋までダッシュだよ!」

唯「わかってるよぅ!」

ダダダダダ

ドテッ

唯「あいた!うい~!ちょっと…まっ!」

唯「うい~うい~;;」




憂「平沢姉妹、佐藤少尉戻りました!」

澪「よく生きててくれたな!って唯は…?」

憂「お姉ちゃんなら後ろに、え…?」

憂「おおぁぁぁおおおねーちゃーん!」ガクガク

憂「お姉ちゃん!?澪さん、お姉ちゃんがいない!」

澪「落ち着け!一体どこに忘れてきたんだ!?」

憂「おおおお姉ちゃんのことだから途中で転んだのかも…私探してきます!」

澪「ダメだ!もう橋を爆破する!早くしないとこちら側に敵が雪崩れ込んで来るんだぞ!?」

憂「でも…お姉ちゃんが…」ポロポロ

律「…」

律「私に行かせてくれ…!」

憂「律さん…」ポロポロ

律「私のために誰かが死ぬのはもう嫌だ!唯は私が助ける!

澪「それなら私も…」

さわ子「はいはーい、注目~」

澪「こんな時になんだ軍曹!」

さわ子「若いものがわざわざ死ぬことはないわ。澪ちゃん5分だけ時間を頂戴。私が唯ちゃんを助ける」

澪「でも…」

さわ子「私を信じなさい。203高地でも最前線で一発も被弾しなかったんだから!」

澪「大丈夫なのか…?」

さわ子「大丈夫」

澪「…。わかった。でも5分だ。5分で戻らなければ橋を爆破する」

澪「死ぬなよ?」

さわ子「私を誰だと思ってるの?第101師団、鬼の山中軍曹よ?」

澪「…。待ってるからな…」

さわ子「ええ、あなたは絶対にりっちゃんを守り抜きなさい。いいわね?」

さわ子「バイバイ澪ちゃん。あなたの部下で本当に良かったわ」

澪「!?」

ダダダダダ

澪「…くっ。梓!援護射撃だ!軍曹を死なせるな!」

梓「了解!」



後続の敵部隊が橋に迫りつつあった

唯「あわわわわわ…」ガクガク

唯(もうダメだ…!憂、お姉ちゃんは一足先に靖国で待ってます…あれ?私って靖国に合祀されるんだっけ?まぁどうでもいいや…)

さわ子「唯ちゃーん!」

唯「!?」

さわ子「唯ちゃん!」

唯「さわちゃあん~!怖かったよぉ;;」

さわ子「早く立って!敵がすぐそこまで来てるわ!」

さわ子「私が敵を引き付けるからその間に橋を渡りなさい!」

唯「はい…」

さわ子「澪ちゃんを頼んだわよ」

唯「え?それってどういう…」

さわ子「行くわ!タイミングを見て走りなさい!」

さわ子は両手に歩兵銃を構え乱射しながら走り出した
と思ったらすぐに戻ってきた

さわ子「やややや、やっぱ無理ー!」

唯「!?;;」



パーン!

敵の放った銃弾がさわ子に被弾した

さわ子「ぎゃああああああああ!ケツを撃たれたああああああ!」

唯「さわちゃん!?」

さわ子はそのまま川へ転落した

唯「なんてこった…!」



澪「軍曹ー!」

梓「そんな…軍曹が死ぬなんて…」

律「また一人…私のせいで…」

律「くそっ…」

憂「お姉ちゃん…お姉ちゃん…」

澪「…」

澪「橋を爆破する…」

憂「待って!お姉ちゃんがまだ!」

澪「憂ちゃんごめん…こんな言葉で逃げたくないけど…上官命令だ」

憂「嫌だ…いやぁ…」ポロポロ

律「おい!戦車が狙ってるぞ!」

澪「!?みんな伏せろおお!」

轟音と煙を上げ、一瞬にして日本軍の防衛ラインが粉砕された

澪「う…あぁぁ…」

澪「起爆スイッチは…」ズルズル

梓「大尉!どこに行くんです!身を隠して!」

澪「爆破…橋を爆破しないと…」ズルズル

澪はヨロヨロと立ち上がり起爆スイッチのあるところに向かった

敵歩兵が、その的を見逃すはずがない
敵の放った銃弾が澪に被弾した

律「みおー!」

梓「出ちゃダメだ!」

律「でも澪が…澪が…」


澪「うぅううああう、爆破しな…いと…」ズルズル



唯は驚愕していた
澪を撃った敵兵が、前の戦闘で命を助けた者だったから



戦車が橋に差し掛かった
澪を見つけ、照準を合わせる

澪「…うっぐ…」ズルズル

澪「早く…スイッチ…」ズルズル

砲台は完全に澪に向けられた
もはや発射のスイッチを押すのみである

澪の頭の上で轟音が轟いたかと思うと、さらに凄まじい音と共に、戦車が爆発し火が上がった

梓「零戦…?」

律「初めて見た…」

何機もの零戦が敵部隊目掛けて機銃を放った
さらに後ろからはぞろぞろと日本兵が沸いてくる

敵部隊はこれは敵わないと判断し、早々に退却を開始した

敵兵「零戦だ!退却!退却!」

唯「動くな!」

敵兵「!?」

唯「銃を置いて手を上げろ…」

敵兵達は唯の指示に従った

唯「よくも澪ちゃんとさわちゃんを…」プルプル

敵兵「ユイ、ワタシダ。マエニユイニタスケテモラッタ。ユイトモダチ」

唯「…」プルプル

敵兵「ユイダイスキ。ハハハ」

パーン!

唯「ハアハアハア…行け…行け!」

唯は元捕虜だけを射殺し、残りの者は逃がした



梓「澪大尉!」

澪「り、律は?律は生きてるか…?」

梓「ええ…!ええ!あなたが守ったんですよ!律さんは生きてます!」

澪「そうか…やっと私にも正しいことができたんだな…」

澪「これで胸を張って、死んだみんなに会えるよ」

梓「縁起でもないこと言わないでください。日本に帰ったらバンド組むんでしょ?それと一緒にむぎさん達の墓参りに行きましょう」

澪「あ、ああ。そうだったな…梓、ちょっと疲れた。少し休ま、せて…」

梓「!?衛生兵ー!衛生兵ー!」

梓は衛生兵を探すため、その場を離れた

澪「り、つ…」

律「はい」

澪「これを頼む…。持っていてくれ」

澪は血まみれの歌詞を書いた紙と和の手紙を胸ポケットから取り出し、律に手渡した

律「やめろよ…もう死ぬみたいなことはよせ…」

澪「死な、ないよ。日本に帰ったら…バンドを組むんだから、な…」

澪「律…命を無駄に…する、な。しっかり生きろ…」

日本軍がビルマを制圧したのは、このすぐ後のことだった



少しその後の話をしよう

梓は今回の作戦でその実力が認められ、異例の尉官特進の話が持ち上がった
しかし当の本人は階級になど興味がないといい放ち、作戦直後に除隊
彼女は終戦後初の総選挙で見事に当選を果たすと、
新米派ということもあって、吉田茂の右腕としてサンフランシスコ平和条約や日米安全保障条約を締結させた
さらに憲法9条を提案したのは他ならぬ梓だった

その後、自民党に入党した彼女は、佐藤栄作内閣外相として日米共同声明を発表、沖縄返還を実現させた
沖縄が返還されると、自分の役目は終わったとでも言うように外相を辞任、次の総選挙には出馬せず、
今は全国各地をまわり戦争の悲惨さを訴える講演を行っているそうだ

唯は達者な中国語とその愛くるしいキャラを活かし、外交官として活躍
日中国交回復のため、中国を飛び回った
そして彼女の側にはいつも有能な秘書がいる
もちろん唯の大切な妹、憂ちゃんだ

そして私、田井中律は…



律「普通の人生を送ってしまった」

孫「おばーちゃん、急にどうしたの?」

律「なんでもないよ~ふぇっふぇっふぇ」

孫「その笑い方やめてっていつも言ってるでしょ!馬鹿律!」

律「ふぇっふぇっふぇ。まったくおばーちゃんに何て口の聞き方だい。おっと、遊んどる暇はないの。そろそろ行かないと」

孫「どこ行くの?」

律「お墓参りだよ。お前も来るかい?」

孫「うん、行く」



墓地

梓「…」

律「おーおー梓じゃないか」

梓「律さん、久しぶり」

律「毎年この日はみんなに会えるのぅ」

梓「そうですね。ところでそちらはお孫さん?」

孫「こ、こんにちは…」モジモジ

律「そうそう。いつまでたっても恥ずかしがり屋で困ってるんじゃ」

唯「おーい二人共ー!」

律「うるさいのがきたの」

梓「あなたが言えないでしょ…」

唯「いると思ったよ~!」

憂「お久しぶりです」

唯「お?そちらはりっちゃんのお孫さん?」

孫「ここ、こんにちは…」

唯「あはは~照れてて可愛い~!昔の澪ちゃんみたいだね」

「みんな揃ってるわねー!」

一同「?」

律「あの~どちらさん?」

さわ子「ちょっとぉ!軍曹の顔忘れるなんてひどくない?」

一同「えーーーー!?」

律「あんた一体何年生きてるんだ!」

梓「というか生きてたの!?」

さわ子「そりゃあ生きてるわよ。連合軍に土左衛門寸前で引き揚げられてね~そのまま終戦迎えてシベリア抑留よ!いや~あれはしんどかった!」

律「ターミネーターかよ…」

さわ子「ちょっとぉ、人を何だと思ってるの?そんなことより線香上げて早く飲みに行きましょ!」

律「まぁ、こんな終わりも悪くないか」



律「めでたしめでたし」

唯「うっうっう…ええ話や…」

紬「すごいわねりっちゃん。また紙芝居を作るなんて」

律「はっはっは、隠れた才能だからな」

梓「というか律先輩、絶対私のこと好きですよね?」

律「だって梓可愛いんだもん」

梓「か、可愛いだなんてそんな///」



ガチャ

澪「ういーす」

律「!?」

律「やべぇ!澪には見せるな!隠せ!」

バサバサ

律「あ」

澪「なんだこれ?」

澪「澪「プライベート・律っちゃん?」?」

澪「…」プルプル

澪「こんなオチは認めな~い!」




fin