1942年(昭和17年)2月~中華民国南京城~

司令「秋山大尉」

澪「はい?」

司令「貴様に大本営から直々に極秘任務が下った」

澪「え?」

司令「明日、ビルマに行け」

澪「ビルマへ!?」

澪「や、ヤダッ!」

司令「!?」

澪「私には南京城の警備という重要な仕事があります!ビルマになんて行けません!」

澪(つい先日、帝国軍によるビルマ侵略作戦が始まったばかり・・・最前線になんて行きたくない!)

司令「大本営が貴様を指名したのだ。これは名誉なことなのだぞ」

澪「ヤダッ!」

司令「貴様には秋山元陸軍大将の血が流れているんだ。本営も大いに期待している」

澪「ヤダッ!」

司令「麦飯だけじゃ?」

澪「ヤダッ!」

司令「雑炊つけなきゃ?」

澪「ヤダァッ!」

司令「貴様」

ジャキ

司令は九九式短小銃を澪の頭に向けた

澪「ひいっ!」ポロポロ

司令「命令に背いたら銃殺だぞ」

澪「やd・・・」

司令「ああん?」

澪「うう・・・」ポロポロ

司令「行ってくれるな?」

澪「はひ・・・」ポロポロ

澪「ところでビルマに行って何をすれば?」

司令「人探しだ」

澪「人探し・・・ですか?」

司令「そうだ。探して欲しいのは田井中律二等兵。貴様と同い年だな」

澪「二等兵?その二等兵がなんだというんです?」

司令「田井中二等兵には弟がいてな。その弟が先日の真珠湾で戦死したらしいのだ」

澪「よくあることです。それと今回の任務になんの関係が?」

司令「田井中家は二人兄弟でな。遺族の心情も考え、大本営の計らいで姉を日本に帰国させることになったのだよ」

澪「そ、そんな馬鹿な話があるか!私も帰国したいです!」

司令「」

ジャキ

司令は無言で銃を向けた

澪「嘘です」



澪はトボトボと南京の街を歩いていた

澪(なんでこんなことに・・・)

澪(何が陸軍大将の血だ・・・)

澪(おじいちゃんが日露戦争でちょっと活躍しただけで私まで有能だと思い込みやがって・・・)

澪(そもそも陸軍大学校だっておじいちゃんのコネで入っただけで講義なんてまったくついていけなかったっていうのに・・・)

澪(あれよあれよと言う間に、大尉にまで昇進してるし・・・,もう日本に帰りたいよ)

澪(ビルマ・・・補給すら届くかわからないようなところになんて行きたくない・・・)

澪「お国のために死ぬなんてごめんだ!」ガーッ

さわこ「口を慎んでください澪ちゃん大尉」

澪「あ、さわこ軍曹」

さわこ「大変な任務を引き受けたそうね」

澪「困ったことになったよ・・・もう日本に帰る」

さわこ「私の上官ともあろう者が弱音を吐かないの。ほら、部隊編成のために兵隊集めするんでしょ?行くわよ」

山中さわこ、日露戦争では203高地を戦い抜き、後に関東軍として中国を転戦、
満州事変や張作霖爆殺事件、ノモンハン事件にも関わったとされる

現在は第101師団に所属し、新米尉官秋山澪を精力的に支えていた

澪「兵隊集めって言っても、私友達いないし・・・」

さわこ「もう!仕方ないわね!じゃあ私にまかせなさい!」




射撃場

パーンパーン!

同じ部隊の人「中野さんすごーい!」

梓「こんなの普通だよ」

パーンパーン!

上官「中野オオオオオオ!おい中野オオオオオオ!」

梓「はい?」

上官「貴様!一発目は的の真ん中に当てたようだが、その後は全部はずしてるじゃないか!舐めてるのか貴様!」

上官「おい中野オオオオオオオオオ」

オナブタ「あのー上官殿?」

上官「なんだアアアアアアアアアア」

オナブタ「中野さん、外してるんじゃなくて全弾一発目の穴を通してるんですよ」

上官「なんだとオオオオオオオオオ!?」

梓「すみません、うるさくて射撃練習に集中できないんですけど?」

上官「チッ、弾の無駄使いはするなよ?ちょっと射撃の腕がいいからって調子に乗りやがって・・・ブツブツ」

梓「ふん」

パーンパーン!

オナブタ「中野さん、ぁんなの気にすることないょ」

オナブタ「ぁぃつ中野さんに嫉妬してるんだょ!中野さんめっちゃ才能ぁるからさ」

梓「才能なんてないよ。こんなの練習すれば誰でもできるようになる」

同じ部隊の人は知っていた
梓の手は銃ダコだらけであることを
一体一日何時間銃を握っていればこんな手になるのか、同じ部隊の人は想像することすらできなかった



さわこ「見た?」

澪「見た」

さわこ「あの若さでものすごい才能よ。上官に恵まれていれば、今頃上等兵なんかではなく、澪ちゃんと同じくらいの階級だったかもね」

さわこ「それにあの子は参謀的な才能もあるのよ。ぜひとも今回の作戦に参加してもらいたいわ」

澪「・・・」

澪(きっとああいう人が上に立つべきなんだ。私のようにコネで上にのし上がったって人望を得られるわけがないよ)

さわこ「梓ちゃん上等兵」

梓「はい?」

さわこ「噂通りの腕ね。御見それしたわ」

梓「はあ。というか、どちら様です?」

さわこ「私は第101師団山中さわこ軍曹、こっちが同秋山澪大尉よ」

梓「秋山大尉?ああ、あの噂の・・・」

澪「?」

梓「ヘタレ尉官って噂の」

澪「!?」

さわこ「口を慎みなさい梓ちゃん。今からこの大尉があなたの上官になるんだからね」

梓「は?」

さわこ「あなたには極秘の作戦に参加してもらうわ。大本営直々の任務よ。光栄に思いなさい」

梓「大本営の!?もしかして蒋介石の暗殺ですか!?」

さわこ「人探しよ」

梓「ひ、人探し・・・?」

梓「詳しく聞かせてください」

さわこ「実は・・・」

梓「はあ・・・」(そんな話ありえるのか?国家総動員法まであるってのに)

梓「まあ、命令だったらやりますけど・・・」

澪「あ、ありがとう・・・」

梓(こんな上官で大丈夫かな?)



さわ子「この子は琴吹紬ちゃんよ」

紬「こんにちは」

さわ子「彼女はとても優秀な衛生兵よ。しかもなんと!あの琴吹財閥の一人娘!」

梓「そうなんですかー」

梓(あのと言われてもよくわからないし…)

澪(財閥だと!?自分達の儲けばかり考えてこの戦争を起こしたと言っても過言ではない奴らだ)

澪(そもそもなぜ財閥の娘が戦場に来ているんだ)

さわ子「むぎちゃんは社会勉強のためにこの戦争に参加してるの。偉いわよね~」

澪(金持ちの道楽か。こんな奴…嫌いだ)

澪「…」ジー

紬「?」

紬「私の顔に何かついてる?」

澪「いや、なんでもない」プイッ

紬「?」



さわ子(澪ちゃん、それは上官としてとってはいけない態度よ)

さわ子(あまり私を失望させないで)

和「真鍋伍長です」

さわ子「和ちゃんは昔、私と同じ部隊に所属していたの」

さわ子「この子もすごいわよ!あの満州某重大事件の際は…」

和「軍曹、それ以上は…」

澪梓紬「?」

さわ子「おっと、これ以上はタブーだったわね。まあとにかく凄い子だからみんな仲良くね!」



指令本部

澪「部隊編成、完了しました」

司令官「うむ。時に大尉こちらからも一人兵を推薦しておく」

澪「はぁ」

司令官「彼女は所謂事務屋だが中国語が堪能だ。道中、役に立つこともあるだろう」

司令官「平沢二等兵!入れ!」

ガチャ

唯「は~い」

司令官「平沢、明日からこの秋山がお前の上官だ」

唯「異動ですか?」

司令官「うむ、お前にはビルマに行ってもらう。激戦地だ、気を抜くな」

唯「ビルマ!?む、無理です!私銃で人を撃ったことないし…」

さわ子「訓練はしてるんでしょ?」

唯「まあ、最小限は…」

さわ子「なら大丈夫よ。道中、指導してあげるから」

唯「そ、そんな…」

唯「嫌です!絶対無理!人を殺すなんて私には無理!」

澪(唯の気持ちわかるよ)

さわ子「大丈夫よ。慣れたら人に向けて銃を撃つことなんてとても簡単になるわ」

梓「そうですよ。大体国家総出で戦争に勝とうって時にそんな発言…そんなんじゃダメです」

紬「唯ちゃん、天皇陛下のために玉砕しましょ♪」

和「私達だって好きでやってるわけじゃない。任務だからやってるの。あなただけ逃げることなんて許されないのよ」

唯「う…うぅ…私にはできないよ…」

ガチャ

憂「お姉ちゃん!」

唯「憂!助けて憂~この人たちが~」

憂「じゃあお姉ちゃんが最前線に行くっていうのは本当なの…?」

さわ子「本当よ。これは大本営直々の任務。断ることは許されないわ」

唯「うい~…」

憂(お姉ちゃん…お姉ちゃんは虫も殺せないような優しい女の子なのに…)

憂「わ、私も連れていってください!」

唯「!?」

憂「お姉ちゃんだけじゃやっぱり心配だから…せめてお姉ちゃんの側にいさせて!」

司令官「どうする大尉?貴様が部隊長だ。貴様が決めろ」

澪「私は別にいいですけど…」

さわ子「決まりね!これからよろしくね平沢姉妹!」

唯(日本に帰りたい…)


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