―喫茶店―
律「…ったく。ムギの電話番号は知ってるんだから、最初からこうやって呼び出せば良かったんだよ…」モグモグ
唯「もー、律っちゃんが思いっきり地面に叩き付けたからケータイにキズがついちゃったじゃない!」プンプン
律「だから何度も謝ってるだろー。ほれオカワリ好きなの頼んでいいから機嫌治せって」
唯「ほんと!?やたー、このジャンボストロベリーパフェがいい!」バッ
澪「コラ!残金60円のヤツが言うセリフじゃないだろ」
唯「ん…、あ!向こうから歩いてくるのってムギちゃんじゃないかな」モグモグ
律「おーい!ムギ、こっちだ!こっち!」ブンブン
紬「…………?」キョロキョロ
澪「おい、ムギのヤツ気付いて無いみたいだぞ。もっと声をはれよ」
律「あれ?おっかしーな。思いっきり目もあってたんだけど」
唯「むーぎぃちゃぁん!!こぉっちだよぉぉ!!」ブォンブォン
澪「!?ばっか!お前は大き過ぎだ。周りのお客さんの迷惑になるだろ!」
紬「……あぁ、そういう事ね」トコトコ
律「お、でもやっとこっちに気付いたみたいだぞ!」
紬「どうもこんにちは、紬だからムギです」ペコリ
澪「ん、なんだよその挨拶…?でも、ムギもあんまり変わって無いみたいで安心したよ」
唯「そだねぇ、私もムギちゃんに会いたかったよ!」
紬「わ、私もですよ…、えーっと……平沢さん!」キョロキョロ
律「何にしてもこれでまた軽音部のメンバーが揃ったな。四人揃えば文殊の知恵だぜ!」
澪「…………ん?」
唯「んー、どしたの澪ちゃん?ハトがマシンガン食らったような顔して」
澪「なんだかムギのヤツ、おかしくないか?」
唯「へ…?おかしいってどこが。別に寝癖も立ってないしいつものムギちゃんじゃないかな」モグモグ
唯「敢えて言うなら…、このストロベリーパフェ…。イチゴが凍り過ぎて歯が全く通らない事くらいかな!」シャクシャク
澪「…それは敢え無くていいから…、全くどうでもいいから」
律「ほらほら、ムギも遠慮せずに何でも頼んでいいぞー!」
紬「そ、そうですか?有り難うございます!」ペコリ
澪「だから、所持金60円のお前が言うセリフじゃないだろ!」
紬「あははっ、お二人とも仲が良いんですね!。…あ、すいません私ちょっとお手洗い行ってきますね」
唯「うん、行ってらっしゃいームギちゃん!何か適当に頼んどいてあげるね」
トタトタ
澪「おかしい……。やっぱり何かがおかしい…」
律「なんだよお前は、さっきから。一人でエンドレスなエイトでも体験してんのか?」モグモグ
唯「そうだよ、気になるから私達にも話してくれないかな?」パクパク
澪「こういう悲しくなるような事はあんまり言いたく無いんだけど……」
律「な、なんだよ澪…。脅かすんじゃねぇよ…!」
唯「そうだよ澪ちゃん!実はムギちゃんは私達だけの想像上の人物であって、あのムギちゃんは私達の記憶とは、全くの別人だとでも言うの!?」
澪「いや、なんだよそれッ!悲しい話じゃなくて怖い話だろソレ!!」
紬「ごめんなさい…、お手洗いが少し混んでいて…」スッ
澪「丁度良かったムギ。どうせだからこの際ハッキリしようじゃないか…!」
紬「え…?一体なんの事ですか、えっと……秋山さん」キョロキョロ
澪「その呼び方、そしてしゃべり方…。ムギ、お前高校の時の記憶、殆ど忘れてるんじゃないか!」ビッ!
律「な、なんだって!?」
紬「えッ…!?いえ、そんな事は……」ビクッ
唯「そっかー!だから律っちゃんが最初に『ムギちゃん』って言ったのが自分だって気付かなかったんだね!」
紬「ご、ゴメンなさい…、なんだか悪い様な気がして言い出せ無かったんです……」ペコリ
澪「水臭いぞムギ。私達は例え卒業したって、軽音部。放課後ティータイムはいつまでも心の中で生き続けるんじゃなかったのか!」
紬「あ、秋山さん……」グスッ
澪「違うだろ?澪…だよ。後敬語も止める事!」ニコッ
唯「そうだ!私のケータイに高校の時の写真入ってるから一緒に思い出そ!」バッ
紬「ゆ、唯ちゃん…、有り難うね!」
澪「しかし、本当に気付かなかったのか?ムギの様子に」
律「いんや。あの眉毛見れば誰だって変わって無いと思うだろ。細マユになってればまだしも」
澪「眉毛でしかムギを判別してないのか、お前達は……」
唯「澪ちゃんー、律っちゃんー!ムギちゃん大体思い出したって」
紬「ごめんなさい皆…、大学の方が忙しくて…」
律「それは仕方ねーって、気にするな。唯なんかもっと酷いんだからな」
唯「ブーブー、私だってちゃんと覚えてる所は覚えてるもん!」
紬「あははっ、こうしていると本当に高校時代に戻ったみたいね…。また演奏してみたいな」
澪「そうだな…、ムギ。まさかキーボードの弾き方とか忘れて無いよな?」
紬「ふふっ。それは大丈夫よ。大学に進んでもキーボードの練習は続けてたから」
澪「そっか、なら安心だな。唯に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいよ」
紬「澪ちゃんの方こそ錆付いてない?トロンボーンの腕」
澪「……いや!?それはお前の楽器だろッ!正確には違うけど…、って唯ぃぃぃッ!」
唯「ほぇ…?なんか違ったっけ」
律「お前、それ思い出させてるんじゃ無くて洗脳してるんだろうが!」グイッ!
唯「ぎぷぎぷ!?りっちゃんくるひぃよ!」バタバタ
紬「そうよ、フリー田井中ちゃん!唯ちゃんに酷い事するのは止めてあげて!」
律「お前かッ!?お前がさわちゃんにもチクッたんだな!!唯ぃぃ」グイッグイッ
梓「どうしたの憂?ご飯余ってるよ」モグモグ
憂「うん……なんだか食欲が無くって…」
純「ご飯の前にお菓子食べ過ぎるからじゃん」モグモグ
律「ほら、もっかい復唱してみる!」
唯「田井中律っちゃんは浪人生ですぅ!……ねぇもう良いかな?土下座し過ぎて額が律っちゃんみたいになるよ」
律「あぁ後、三十セット追加な…」
唯「さ、さんじゅっせっと!?」
澪「……と、言う訳なんだ。ムギお前の家に余ってないかな?」
紬「うーん…、カメなら沢山余ってるんだけど。トンちゃんタイプは無かったわね…、ごめんなさい」
澪「そうか…、こうなったら虱潰にペットショップをあたって見るしかないかな」
紬「そうねぇ…。ペットショップ…かぁ」
澪「ん?どうしたんだムギ」
紬「あ、いえ。何でもないのよ!気にしないで」
純「ふーん、本当に京都は碁盤目に家が建ってるんだ。凄いね」
憂「うん…、そうだね。凄いよねぇ」
純「何、まだお姉ちゃんの事気になってるの?本当心配性なんだねぇ憂は。梓も何とか言ってあげてよ!」
梓「う、うん………」
純「もしかしてアンタまで心配になってるの?勘弁してよ」
梓「あ、いやそういう訳じゃなくてさ…。私達が修学旅行の間って、唯先輩がトンちゃんの世話するんだよね?」
憂「え、それは勿論そうだけど。それがどうかしたの?」
純「あー、そういう事か、梓の方が心配性だったって訳ね。大丈夫だって、あの憂のお姉ちゃんだよ。万に一つも無いってば」
梓「うーん、私もそうだとは思うんだけど」
最終更新:2011年05月01日 01:51