紬「憂ちゃんよかったわね、あと2時間くらい我慢して」

唯「――――」

唯は絵のように静止したまま、虚空を見つめた。
頭が真っ白になり、視界が真っ暗になる。

紬「綺麗な、臓器ね」

紬は憂の体内に手を突っ込んだ。

脾臓と膵臓を掴み、そのまま引きづり出す。

紬「お願い、斎藤」

斎藤「はい」

繋がっている管をナイフで、全て切り離した。

憂「あgppppppppp」

横隔膜が空気にさらされて、うまく呼吸ができない。
それ以前に内臓が抜き取られる痛みで、呼吸どころではなかった。

すると痙攣した胃袋が、姿を現す。

紬「我慢してね」

紬はナイフで、胃袋をズタズタに切り裂いた。

憂「ぶっttぶぼっ、ごぽっ」

小さな口から、血の噴水が飛び出した。

膵臓は腸へ繋がる管に、生えているようにくっついている。
それを乱暴に引きずったせいで、憂の内臓はプルプルと痙攣を起こした。

紬の顔に血の雨が降り注ぐ。
憂は泡を吹きながらその痛みに悶えていた。

紬「良い顔してるわ、もう死にそうね」

紬「でもまだお休みは早いわ……」

紬は無駄に場所を取る、肝臓の下大静脈を切り離し、そのまま引きずりだした。

憂「ああbbbb……!!」

体内に血のプールができる、紬は肝臓に繋がったその他の血管を全て切り離した。

ブシュウウウウ――。


もう死んでもおかしくない状況なのに、憂は意識を保ち続けている。
それもそのはず、多量な強心剤が憂の体を元気にしたのだ。
紬は臍から下へ再び裂くと、憂の未熟な卵巣を見て頬を染めた。

紬「かわいい……」

針に電線のついた器具を取って、紬は両方の卵巣に突き刺す。
この苦痛は精巣を貫通する痛みに匹敵するが、この程度の痛みなど憂にとっては可愛いものであった。
そして変圧機のスイッチを入れる。

紬「オンっ」

憂「pppぎゃああああああ!!!!!!」

憂の卵巣は電気によって、バチバチと痙攣を起こした。
電気は近代の拷問に頻繁に使われる、それは簡単に死ねないという利点が大きく影響していた。

バチッ――チッ。

絶えることなく電流は憂の卵巣を刺し続ける。
生じた一つの火花が、紬の期待を大きく膨らませた。

紬「えっ、もしや……」

次の瞬間、右の卵巣がバチバチと激しく鳴り始め、たちまち発火した。
左も続くようにしてバチバチと音をたて、発火する。
紬は生命維持が危ぶまれると懸念して、変圧器のスイッチをきった。

憂「  gggggッ……  ぁ……!!!」

紬「すごい……」

卵巣の炎上は卵巣隔膜を通じて子宮にうつり、メラメラと溶かした。
ベロンと子宮外膜が剥がれ、中の様子が丸見えである。

紬「素晴らしいわ、憂ちゃん……」

憂の意識は朦朧とし、5秒に一回のペースで血を吐き続けていた。
紬は燃え盛る炎を無視して小腸を掴みとる。
そしてその端をフックに引っかけ、斉藤に合図をした。

紬「引っ張って」

斉藤「了解」

ワイヤーが勢いよく稼働する、フックに引っかけられた小腸はジュルジュルと引っ張り出された。
そしてグルグルと滑車に巻き付けられる。

憂「  pp bbヒbb……!!!」

ブチッ――。

勢いに負けて小腸が切れてしまった。
紬はもう一度引っかけて、滑車に巻き付ける。

これが延々と、なくなるまで続き憂の心臓は段々と弱まっていった。

中世ヨーロッパでもその残忍さゆえ、執行人の興味を惹いた腸抜きという処刑方法が存在する。
今行っているのが腸抜きであることは言うまでもない。
執行人が手軽に行えるということと、実際に使用する道具以外、なにも変わらない。

目の前で腸が引き出される恐怖、これは狂おしく堪え難かったであろう。
そういう面でみると、瀕死の憂はラッキーだったのかもしれない。

紬「ふぅ……」

憂の体の中はスカスカになって、血溜まりがより際立っていた。
紬は憂の心臓を優しく掴んでみた。

紬「あっ……生命が消える一歩手前って感じがするわ」

とくん――――――――とくん。

鼓動は微々たるもので、今にも止まりそうな勢いであった。

紬「もう痛みとか、そんな感覚ないでしょ?脳が麻痺しちゃってるもの」

血の気の引いた憂の顔はさっきと比べると、非常に穏やかであった。
口を小さく動かして、目はうつろに、眠たそうにしている。
試しに腹を爪で引っ描き回してみたが、憂の反応は無いに等しかった。

紬「ふぅ……」

紬は時計を見る、もう1時間50分という時が経っていた。

紬「妹の最期よ、挨拶くらいさせましょ」

斉藤「畏まりました」

斉藤はうな垂れた唯の両脇を抱え、憂の近くまで運んだ。
死んだ魚のような目を、強制的に開かせて憂のこの現状を見せた。

紬「もう妹だと思ってないかもしれない、でも血縁は口先だけで消えるものではないの」

紬「ちゃんと見てあげて、これがあなたを愛した妹の最期よ……」

唯「……」

唯「……」

静かに口が開いた。

唯「う……い……?」

唯「うい……  いや……  こんな……」

唯は顔を強ばらせて、憂の頬に右手を差し伸べた。

冷たい――。

紬「……」

斉藤「……」

唯が自分の足で地面を踏むと、傍観者は静かに後ずさった。
姉妹の最期くらいは二人だけの空間を作ってあげたかったのだ。

唯の呼吸は次第に荒々しくなり、体はブルブルと震えだした。

唯「いやっ……うい、ういっ、笑っでよ……怖いよっ」

憂「……」

唯「はっ……はっ」

憂「……」

唯「いや゛ぁっ!ういっ!う゛いっ!起ぎてよ!!一人にしないでよ!!!」

憂「……」

唯「ひっぐぅ、うぅぅっ!!!や゛だああああっ!!やだああああっっ!!!」

憂「……」

動かない、心臓は段々と心拍数を低下させていた。
唯は憂の血だらけの顔に両手を添えて、何度も名前を呼び続ける。

唯「う゛いっ!!!!う゛いっ!!!おぎでよおおおお!!!!」

憂「……」

唯「死ぬなんていや゛だあああぁあぁ!!!!うぐううぅうぅぅうう……!!!!」

憂「……」

唯「いやっ!!いやっ!!!」

紬は腕時計で今の時間を秒単位まで確かめる。

午前11時48分7秒。

そしてこう呟いた。

紬「終わったわ……」

唯「う゛い゛い゛いいいいいいい!!!!!!」

我が妹の惨殺の末を、目の当たりにする。
この悲しみの悲鳴は、一生耳について離れないだろうと紬は思ったのであった。


その時、

ピクッ――。

唯「……うい、うい?うい!!!ういっ!!!!!」

憂の口が微かに動いた。

紬「……」

紬「信じられない……」

内臓を引きずり出してから結構な時間が経つというのに、まだ憂は生きていた。
今までに数々の処刑を執行してきた紬でも、これは信じがたいとしか言い様がない。

唯「ういっ!!!ういっ!!!!」

憂「……」

しかし話すことなどできやしなかった。
憂の視界は視神経が機能障害を起こして、真っ暗な状態だ。
いくら唯が大声をあげても、憂に届くことはまず、あり得なかった。

唯「うい……うい……」

憂「……」

唯「ッ……な……なにか……っ、なにかいってよォぉ……っ!!」

唯の滴が血まみれの顔に、零れ落ちた。

唯「うぅぅ……っ……!!」

憂「……」

震える、憂の口がゆっくりと動く。

唯「はぁっ、はぁっ……」

声は出すことができない、しかし何かを言っていた。
唯はその口の動きを一瞬も見逃さず見つめる。

唯「……」

憂「……」

憂の目から、たった1滴の涙が頬を伝って流れ落ちた。

唯「う  うう ううううううう……ういっ!!!!!ういいいいいいいいっ!!!!」

憂「……」

唯「いやああああ  ああああ   あああああああああああ ああ  あ    あ!!!!!!!!」

憂は姉の手の中で、永遠の眠りについた。
ずっと一緒に、二人で過ごしてきた、感謝とお別れを告げた。
大好きなお姉ちゃんの温もりを体で感じながら。

”お姉ちゃん”

最期まで、愛する人を口にして。





男「うぇぇ……これ拷問だろぉ……」

第一地下室の死体を袋に詰めて、持ってこい。紬の命令であった。
しかし男達はそこに横たわる亡骸を見るや否や、吐き気を催して近づこうともしなかった。

斎藤が何食わぬ顔で入室する。

斎藤「時間がありません、急いでいただけますか」

男「……」

斎藤に急げと促され、男達は観念した様子で俯いた。
紬の執事を任された男、こいつに反発したらそれだけで大変な事になるとわかっているのだ。

男「はぁ……」

男達は嫌々ながら、3人の死体を袋に詰めた。
ゴカイは取り除けとの事で、相当な精神的苦痛を味わい、拷問の恐ろしさを身に沁みて感じたのであった。

斎藤「ある意味、良い機会なのかもしれませんね」

斎藤はそういうと悠長に笑ってみせた。


紬の部屋にて。

紬「ヘリよ、決まってるわ。私も行方不明って事になってるんだから」

斎藤「しかし……」

紬「お金でヘリポートくらい借りれるでしょ?なんならその建物ごと買ってもいいわ、どうしてもみんなと行きたいところがあるのっ!」

斎藤「そうですか、お嬢様がそこまで言うのであれば仕方ありませんね」

紬「うん、お願い」

これ以上日本にいるわけにはいかない、紬は遠く離れた外国で一時身を潜める事を決意した。
しかし紬には夢があった、それを実現するには放課後ティータイム全員が動かないといけないらしい。
これを実現する為に処刑を一週間早まらせたのだ。本当はもっと楽しめたのだが、誘拐事件が加速してそれ所ではなくなった。

紬「今日の夜を予定してるわ、そのまま日本を出るから身支度を済ませておいて」

紬「うふっ、楽しみ……」


午後8時を丁度過ぎた頃に、紬達一行は地元である桜ケ丘に到着した。
何日かぶりにこの地を踏んだ紬は、変装をして、深呼吸で一息つく。
うまくカモフラージュをしたつもりなのだろう。

斎藤「派手過ぎるかと」

紬「え?そうかしら……でも別に変じゃないわよね」

明らかに変だ、しかし斎藤は微笑んでなにも言わなかった。

こんなゆっくりしている時間はない。
紬はいざ目的地へと、歩を進めた。

紬「唯ちゃんはちゃんと寝かせてる?」

斎藤「はい」

紬「騒がれたら困るものね、寝かせたのならいいわ。行きましょ」

紬「失礼しま~す……」

やっと行き着いたその場所は、3年間お世話になった軽音部発祥の空間。
うす暗い闇が、ふわふわとした部室のイメージを一変させた。

紬「明かりをつけたら目立っちゃうわね……仕方ないからこのままでいいわ、斎藤」

紬は寝ている唯を椅子に座らせて、その隣に律を、向かい合わせに澪を同様に座らせた。
最後に一番原型を止めていない、梓の亡骸を座らせる。

紬「うふ、これがしたかったの~」

紬は頬を赤らめて、テーブルにお菓子を置いた。
そして各々に紅茶を差し出して、

紬「召し上がれ~」

満面の笑みで紬は、椅子に腰を下ろす。
これがどうしても叶えたかった紬の夢であった。

勿論、食べるわけがない。
紬はそれを承知した上で、このような悪フザケにも見える挙動を起こした。
何故――。
それを問うてしまうと、話にならない。

”これが紬の夢だったから”

それで理由は十分だ。

紬「うふふ……」

紬はなにもせずただ笑って、この状況を楽しんでいた。

紬「あっ……!写真写真!!」

どうやらもう一つの目的を思い出したみたいだ。
紬はバックの中を探って、デジタルカメラを取り出した。

紬「みんなで記念写真よ」

紬「はい、チーズっ!」

パシャ――。

紬は急いでその写り具合を確かめる。
拷問のもの凄さを物語る、とっておきの写真が撮れた。

紬「うふ……宝物……」

紬はデジタルカメラを大事そうにバックにしまった。
すると、

斎藤「お嬢様、そろそろお時間が……」

斎藤が恐るおそる、紬に警告を呼び掛けた。
沈黙が部室に漂い、重たい雰囲気を作りだす。

すると上擦った返事が、紬の口から吐き出された。

紬「わかってるわ……」

紬「……」

斎藤「……」

紬「……」

紬の涙が、闇に光る――。

紬「お別れね……みんな……」

斎藤「……」

この涙の一番の理解者――それは斎藤であった。
以前、斎藤は唯にこんな説得を聞かせている。

”この拷問が怖いのであれば、その受け止め方を『愛』だと変えてみては如何でしょう”

斎藤「……」

紬「……」

紬は涙を拭いて、笑ってみせた。

紬「唯ちゃんは連れて行くわね……だからみんなとはこれで永遠にお別れ」

紬「本当にありがとう、楽しい3年間だったわ……」

紬は一時の間をおいて、退室間際に感謝を残して去っていった。

紬「ありがとう」






さようなら私の愛した、軽音部――。


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