律「澪はどこ行ったんだろうな…」

梓「…どうして澪先輩があんなことに……
  そういや唯先輩、さっき『やっぱり澪ちゃんが』って言ってましたけど、もしかして」

唯「うん、私たちも澪ちゃんに襲われたんだ」

律「私はゲロと小便ぶっかけられて……唯はゲロだけだからまだいいけど」

唯「よくないよっ」

律「いやしかし、あれはマトモな人間には見えなかった」

梓「そうですね、私もあんな澪先輩……いや、あんな人間は初めて見ました」

唯「気が狂っちゃったんだよ、澪ちゃん」

律「そうだな…このままほっとくと、また犠牲者が出たりして……」

唯「どうしよう、先生に言う?」

律「ああ、先生に言って、澪を探すの協力してもらおう
  梓、職員室行くけどいいか?」

梓「あ、はい……体洗うより、そっちのほうが優先すべきですよね」

律「すまんな」


職員室

唯「失礼します、せんせーっ」

さわこ「どしたの?」

唯「あの、澪ちゃんが大変なことになって」

唯と律は職員室中の教師を集め、今までのことをかいつまんで説明した
さわこ他、教師たちは信じていないようだったが、
梓がみずからジャージを取ってウンコまみれの体を晒すことにより、ようやく信じてもらえた

さわこ「わかったわ。今からみんなで探します」

教師「校内放送もかけてみるよ」

教師「そうだ、外に出ぬよう校門を封鎖せねば」

唯も律も梓も、外に出る…という事態は考えたくなかった
澪はまだ校内にいる、先生たちと協力して捕まえられる……そう信じ込んだ

さわこ「ここは私たちに任せて。梓ちゃんは体を洗ってらっしゃい」

梓「はい、よろしくお願いします」

律「先生、澪を……捕まえてください」

さわこ「任せなさい、教師にできないことなんてないのよ」


校庭の端、シャワー室

律「まだみんな部活やってるから使われてないな」

唯「あずにゃん、体洗っといで」

梓「はい、わかりました」

梓はシャワールームに入っていった

と同時に、校内放送のチャイムが鳴った
『2年秋山澪さん秋山澪さん、至急職員室まで来なさい。2年秋山澪さん、至急職員室に来なさい。
 秋山澪さんを見かけた生徒は、すみやかに職員室に連絡しなさい』

普通の放送とは違うただならぬ雰囲気に、校庭の運動部員たちも気づいたのであろう、
一瞬だけとまどったようだったが、すぐに練習に戻った

唯と律は、シャワールームの外壁にもたれ、運動部の掛け声をBGMに
赤くなりつつある空を眺めていた


その時、シャワールームの中から悲鳴が轟いた

梓「っきゃあああああああああああああ!!!!!」

唯「あずにゃん!?」


唯と律が中を覗き込もうとすると、
澪がすさまじい勢いで飛び出してきた!


律「唯!私は澪を追う!!」

唯「わかった、私はあずにゃんを」

唯はシャワールームの中に足を踏み入れた
一番奥の個室で全裸の梓が震えているのを発見した

唯「大丈夫!?あずにゃん!!」

梓「ああああ、唯先輩……!!
  シャワー浴びてたら、ドアと天井の隙間から澪先輩がじいいっと見てたんですっ!!!
  もうイヤですっ、怖い、怖いですう!」

梓は唯にしがみつき、ぶるぶると震えた

唯「あずにゃん……!」

唯は梓をやさしく抱きしめた



律「待て澪おおおおおおおお!!!」

澪はソフトボール部が練習しているのを真っ直ぐに横切って走って行った

澪の走り方は端から見ても普通ではなかった
エヴァ立ちのまま足だけ動かして走っているようなものだった
それでも追いつけないくらいに速いのだから恐ろしい

律「澪おおおおお!!」

ソフ部の部員たちもその声に振り返った
さきほど、ただならぬ放送で呼ばれていた、秋山澪……

部員たちは誰からともなく走り出し、澪を追いかけた

しかし運動部の俊足をもってしても、澪に追いつくことができなかった

律「まてええええっ!!」

総勢20人で澪を追いかけている
その異常な光景に、テニスコートで練習していたテニス部員や、
体育館のバスケ部員、剣道部員たちも目を引かれ、
そして澪を追いかける人々に加わった

剣道部員「私たちは第2校舎から回って挟み撃ちにする!!」

律「任せた!」

バスケ部員「くらえぇぇぇぇ!!!」

十数人のバスケ部員が後ろから一斉にボールをぶつけようとしたが、
澪は華麗にかわしてしまった
まるで後ろに目が付いているように

テニス部員「はあっはあ、何者なの、あの人……!!」

律「あいつはもう人間じゃねえんだ!!」

澪は校庭から外れ、第二校舎の方へ走っていった

律「よしっ、あそこには剣道部がいてくれるっ」


校舎と校舎の間で、澪は律&運動部連合と先回りしていた剣道部に挟み撃ちにされた

澪「ぐげ……ぐげげげげげひひひひひひひひひひぃぃぃ」

律「観念しろ澪」

じりじり、と歩幅を詰めていく律&運動部
剣道部員は横一列に並び、竹刀を構えている

澪「ぐひひ、ひひ、ひぃ、律…律……律………律」

先ほどまで凶器に歪んでいた澪の顔が、
だんだんと元の正常な顔に戻ってきた

澪「律……」

澪は律にほほ笑んだ
それは、いつも見ていた、優しさを満面にたたえた微笑みであった

律「澪?正気に…戻ったのか?」

澪「うん……ごめん、律……私……」

律「澪……」

澪「律っ…!私、私……!!」

律「もういいんだ、もういいんだよ澪。元に戻ったのなら、それで……」

律は澪の肩を抱いた

律「な、澪……」


澪「……ふ…ふひ…・・・ぐひひひひひひははやうはうふはははははひふふんぐ」


澪「ふーひひひひ!!ふーひひひひひひひ!!!」


澪は狂乱状態に戻り、律の首に手をかけ、そのまま一気に力を込めた

律「ぐ……苦しっ」

テニス部員「離しなさい!!こらっ!!」

テニス部員が四人がかりで澪をはがそうとするが、
いくら力を込めてもぴくりとも動かなかった
この澪の細身に、どれだけの力があるのか……部員達は恐ろしくなったが、
それでも澪を引っ張り続けた
しかし澪はついぞ動かず、その間にも指は律の首を絞め続けていた

その時、

剣道部員「めええええええええん!!」

剣道部員の一人が、竹刀を思いっきり澪の脳天にブチかました。
しかし澪はまったくひるまず、なおも律の首を絞める
律は顔が紫色になりつつあり、素人目に見ても危ない状態だということが分かる

剣道部員たちはさらに竹刀で攻撃を加えた
頭に、脇腹に、背中に、腕に……打ち込んでも、突いても、澪にはまったく効かなかった

律「う……ぐ……は……」

律はついに白目をむいてうなだれてしまった


澪は亡骸となった律を地面に投げ捨てた

そして澪はぐるりとまわりを見回した
その獣のような目つきに、そして今さっき見た澪の化け物としか思えない身体能力に、
運動部員達は完全に委縮してしまった

澪は歩き始めた
もちろんおなじみのエヴァ体勢である
澪は校庭に向かっているようだった
澪の歩く先にいた部員達は、さささっと脇によけた

邪魔ものがいなくなったため、澪は再び全速力で走りだした

校庭隅のシャワールームへ、一直線に


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