べつの日

「追試の人は合格点とるまで部活動禁止だって……もぐもぐ」

私の予想通り、唯の口から私達にとっての爆弾がしれっと投下された。

澪紬「「ええ!?」」

澪とムギの焦った声が妙におかしく感じてしまう、私が既に達観しているからだろうか。

澪「てゆーかなんで言わなかったんだよ律!」

律「もぐもぐ!!もぐもぐもぐもぐ!!」

澪「そうか、そういうことならしかたない」

紬「わかるんだ……」

律「ごっくん!とにかく、そういうことだ。
まだできて少ししか経ってのに廃部なんてごめんだぜ。俺は今日から全力で追試に望む!あばよ」

唯「流石りっちゃん、背中で語る漢だよ!」


追試まで後七日

カリカリカリカリカリカリカリカリカリ

律「ブツブツブツブツブツブツブツ」

聡「俺……俺、何があっても兄ちゃんの弟でいるから」


追試まで後六日

カリカリカリカリカリカリカリカリカリ

律「ブツブツブツブツブツブツブツ………あれ?」


追試まで後五日

『どう?勉強はかどってる?こっちは私とムギだけなので落ち着く反面、なんか寂しいよ』

『え?もう追試の範囲は網羅したから勉強してない!?どこからくるんだそんな自信!』

『……わかった、そこまで言うなら私とムギでテストしてやる』


澪「唯……ちゃんと勉強してるかな……」

律「(ホントはやってないんだけど)……まぁ大丈夫じゃない?」

澪「勉強してないお前が言うな!」

紬「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ…………」


追試まで後二日

澪「それにしても、律ってやればできるんだな」

律「覚えてる事じゃなくて、覚える力の方が強くてニューゲームだったらしい」

澪「?、なんだそれ」

律「分かる人にはわかる」

唯「というわけで澪ちゃん助けて!!」

やっぱり唯は勉強してなかったらしい。澪に泣き付いて助けを求めている。
つーかあれだな、何処かで見た光景だな!そう、アレは……私じゃないか、よし忘れよう

澪「え!?勉強してきたんじゃないの……?」

唯「できなかった………」

澪「ええ!?」

律「やれやれだぜ……」

唯「なにその余裕!?もしかしてりっちゃんは勉強したの!?」

律「もちのロンだ!澪とムギの保証もあるぜ!」

唯「そんなの……そんなのりっちゃんのキャラじゃない……りっちゃんは私の仲間だって信じてたのに……」

紬「合格点取れなかったら私達……」

唯「それだけは絶対したくない~!」

澪「う~ん…………よし!今晩特訓だな!」

これから唯の家に行くのか……あれ?俺は行ってもいいのか?

律「ホントにいいの?」

唯「いいってば~、りっちゃんどうしてそんなに心配なの?」

律「そんなあっさりオッケーする方が俺は不思議だよ。だって俺、男だぜ?」

唯「それはホラ、別にふたりきりってわけじゃないし~。それにねぇ澪ちゃんムギちゃん」

澪「だな」

紬「ええ~」

澪唯紬「「「だってなんか男の子って感じしないし」」」

……なんか複雑だ


律「でもほら、ご両親とか」

唯「ええ~?だって結婚するわけじゃないんだし……もしかしてりっちゃん、
私と結婚したいの!?いいよ~りっちゃんなら」

律「ちょ……何バカなこ」

澪紬「ダメ!絶対だめ」

律「それはそれでしどい……うっうっうっ」

唯「それに今日はお父さんが出張でね~、お母さんも付き添いだから気兼ねしなくていいよ~」

そういえばとうとう卒業まで唯のご両親を見る事はできなかったな……もしかしてご両親は既に亡くなっていて、
平沢姉妹はお互いの傷を嘘で慰めあっているとか……

律「んなわけないか……って、そーいえばういちゃ……妹がいるんだっけ?」

唯「うん、妹は帰ってきてると思う」

紬「それだとお邪魔にならないかしら……」

澪「唯の妹か……」

澪紬の想像

「「あはははははははははははははは」」

二人は大丈夫なんじゃないかという結論に達したらしい。
まぁ、ホントに大丈夫過ぎるほど大丈夫なんだけど。


唯「皆、あがってあがって~」

「「「おじゃましま~す」」」

律「おお~~」

唯の家!すげー久しぶりだ!つーかモデルハウスみたいだ!

憂「あ、お姉ちゃんお帰り~」

お、憂ちゃん

憂「あれ?お友達?始めまして~、妹の憂です。姉がお世話になってま~す」

初めて会った時はびっくりしたよな、あの時の心境って言えば

こんなしっかり者が唯の妹のはずがない!って。

澪紬「「(出来た子だ~……)」」

ちょうど今の二人みたいに。

ちょうど今の二人みたいに。

憂「………!…スリッパをどうぞ~」


憂ちゃんを驚かせないためにとちょっと気を遣って一番後ろにいたのだが、
意味はあまりなかったみたいだな…やはりちょっとびっくりしてる。

律「あー………」ペコリ

憂「っ………」ペコリ

ははは……やっぱりちょっとビビられてる?


唯「っあ……足が痺れ……」

律「………ちょん」

唯「ひゃああああ……ぁん……」

澪「律ぅ!!」

律「あいた!!」ゴン

行くぜ!!

バン!

律「うおりゃああああああ!!!たのもー!!」ゴロゴロ

澪「やかましい!!」ゴン!!


唯の家に来たのはいいが、やはりやることがない……

勉強?するわけがない。

三人ともよくもまぁあんなに長く集中できるもんだ、

私は物覚えがよくなってるみたいだから短時間で済むが、

それでもやはり紬や澪には及ばないだろう。

唯は天才だし。


律「(暇だ……)」

ピンポーン

憂「はーい」

唯「誰かな?」

あ、そういえば今日確か……

唯「あ、和ちゃ~ん!」

和がくるんだった。唯の幼馴染だ。

唯と和の関係は私と澪に似ていると思う。

片方が片方に苦労させられているところとかも……まぁ、昔の話だ。

そういえば和とはこれが初対面になるんだっけ、

一時期澪を取られそうになって、それで澪と喧嘩しちゃったんだっけ……

まったく子供だよな……つーか私、どれだけ澪の事好きだったんだよ。

もちろん今でもその気持ちは変わらないけど、激しいのは自重しよう。

唯が私達の紹介をしてくれた。

それにしても、馴染むの早くないか?

初対面の相手とすぐに馴染めるのって女の得意技だよな、

それが表面上だけかどうかはおいといて。

これで男女比は5対1、流石に私もいごごちが悪くなってきたぞ。

律「お、俺ちょっとお手洗い……」

退散退散っと


憂「あ……」

律「お……」

一階のリビングでは憂ちゃんがテレビを見ていた。

気まずそうな顔をしている。私はどちらかというと

気まずいというよりは驚かせてしまって申し訳ないという
感じだ

……やはり唯の友達として、ここは仲良くなっておかなければ
なるまいて!

律「ご、ごめんなー。いきなり男が来たからびっくりしたろ」

憂「い、いえ!そんなことは………」

律「ほんと?」

まぁそれはないだろう。自分でもちょっと無理があるってわかるはずだ。

つーか……慌てる憂ちゃん可愛いな


憂ちゃんはしばらく狼狽えた後、

憂「……はい、ぶっちゃけますとびっくりしました…あはは。
わ!お姉ちゃんが男の人連れてくるなんて!って」

と、カミングアウトした。

律「はは、それが普通の反応だよな。
俺も最初は遠慮したんだけど、唯がまるで当然の事のようにいいよって言うから、
つい皆に甘えちゃったっていうか……」

憂「わかります……お姉ちゃん、あんなだから……あまりそういうのよくわかってないんだと思います」

律「わかるわかる、ちょっと危なっかしいよな……詐欺とかに引っかかりそう」

憂「そうなんですよっ……なんだか律さん、お姉ちゃんのことよくわかってますねー。もしかして、
好きなんじゃ……!?」

律「へ?」

律「ち、違うって!あ、嫌いってわけじゃないんだけどそういう意味じゃなくて、
俺はそういうの得意なだけで……!」

別に得意でもなんでもないが今は言い訳がこれしか思いつかない。

憂「あはは、冗談ですってば」

律「な、なんだ冗談か。びっくりさせるなよなー」

憂「私は本当でもいいですけどね♪」

律「えー?俺なんかでいいのかよ?」

憂「私はお姉ちゃんが幸せならそれでいいです♪……………幸せなら、ね」

律「(ひいいいぃぃっ!!!)」

憂「あはは♪」

唯と結婚するなら一番の障害は、間違いなく憂ちゃんだな……目が虚ろだったぞ。


気付くと憂ちゃんはいつも通りのニコニコ笑っている女の子に戻っていた。

いや、さっきも笑っていたがあれは何かがおかしい。

憂「律さんはお勉強しなくても大丈夫なんですか?」

律「え、あい、いや……なんかいごごち悪くなっちゃってさ……男俺だけだから。
下に避難してきたの」

憂「それは確かに……じゃあ、お姉ちゃんの勉強が終わるまで私がお付き合いさせていただきますね♪」

お、それは名案だな。

憂「ゲームします?」

律「受けて立とう!けちょんけちょんにしてやるぜ!」

憂「望むところです♪」

和「憂ー?私そろそろかえ………なにやってんの貴方達」

律「ウェーイ!」

憂「甘いですね~♪……あ、和さん、お帰りですか?
気をつけてくださいねっ」

律「よそ見しながらとは……舐められたものだな!!」

憂「馬鹿め……ケリをつけてあげましょう♪」

律「………笑えよ」


そんなこんなで時間が過ぎた。

私、ゲームしかしてないし。

澪「馴染み過ぎだろ……」

律「あー!!また負けた!!」

澪「しかもまたって!」

気付けば唯達の勉強も終わり、私と憂ちゃんのジハードもお開きとなった。

唯「ふへへへへへへへ……」

憂「また一緒に遊びましょうね、律さんっ」

帰り際の平沢姉妹の対照的な表情がとてもおかしく、すこしわらってしまった。

律「よっしゃー!合格点到達だぜ!」

澪「ホントか!?」

紬「やったわね、りっちゃん!」

律「やっほーう!」

澪「……で、問題の唯の方は?」

律「あ………」

唯「………………どどどどどどどうしよう………」

澪「まさか、まただめだったのか?」

紬「そんな……」

唯「100点とっちゃった!」

あ、そーいえば唯はやっぱりコードを忘れていたみたいだ。

一つの事にしか集中できないって言っても、唯の場合は

限度ってものをしらないみたいだ



今晩の澪メール

『まさか唯がここまで極端な奴とは思わなかったよ』

『そういえば、憂ちゃんと随分仲良くなってたみたいだけど』

『だ、誰が嫉妬なんかするか!私は律が憂ちゃんに変なことしてないか
気になっただけだ!』

『馬鹿律もう寝る!!







……おやすみ』


……

律「……………」

こんにちは、田井中 律です。
本日はある電車の中から、お送りしています。

ガタンゴトン

車窓から見える景色が、とても美しいですね。

ガタンゴトン

しかし、私の周りにはその景色に勝るとも劣らない御嬢さんがたがなんと三人。

ガタンゴトン

紬「ゲル状がいいの……」

ガタンゴトン

さっきからガタンゴトンガタンゴトンってうるせーなっ!!

ガタングスン


いかん、取り乱してしまった。

何故私達が電車の中にいるかって?

それは………

澪「合宿をします!もうすぐ学園祭だし!」

ってことだ。

実は私は、あまり乗り気じゃないんだよな。

だって、女の子三人とお泊りなんて周りの人が見たらなんて言うか……


一応辞退を申し出たりもしたんだけど……

律「ってわけで俺はパスってことで……」

澪「ダメだ!いくら上手くてもサボるなんて許さないからな!」

と、澪に怒られ今に至るのである、やれやれだぜ

…………まぁ、本音を言えば行きたかったんだけどな。



ちなみに唯は今回も寝坊していた。


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