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生徒会SS


合計点<17>


タイトル<点数/コメント>







裏・探偵権限(プラススリー)<+0.5/SSというより設定っぽい>


探偵権限
1:探偵のいる場所では事件が起きなければならない

2:その事件は出来る限り不可解なものでなければならない

3:探偵は状況保全のため、現場の封鎖の権利を与えられる

4:探偵は事情を聴取する権利、義務を持つ

5:探偵は現場を捜査する権利、義務を持つ

6:探偵に発見できない証拠は無い

7:探偵は犯人であってはいけない

8:探偵は調査を邪魔されない

9:探偵が主観を偽ることは出来ない

10:探偵は事件の解明を当事者たちの前でしなければならない


探偵権限はこれ10の条で成る。
そのどれもが探偵が華やかに事件を解決するために必要であり、完全な善・正義の存在としての探偵の印象付けに必要である。

しかし、探偵権限には隠された3つの条がある。
そのどれもが傲慢で無慈悲で無責任な探偵の負の部分を表したものである。
私はここにそれを記そうと思う。
必死の思いで、ようやく探偵になれた私が完膚なきまでに叩きのめされた3つの条。
これを記すことで私はそれらの条の虜にならないよう、人々を守る存在になれるよう、自分を厳しく律したい。
安易に事件を解決しないために。虚実を真実にしないために。

裏・探偵権限(プラススリー)

-1:探偵はその事件の証拠、証言に合致し論理的に矛盾しなければ犯人でないものを犯人にできる。否、それはもはや真実である。

-2:探偵は最初の事件の発生を嗅ぎつけても阻止してはいけない。人が死のうと悲しもうと最初の事件が起きなければ連続殺人は有り得ない。探偵自ら活躍の場を失うようなことは禁ずる。

-3:探偵は犯人の動機を誰にも憚ることなく暴露できる。事件を犯すような犯人に慈悲の心は必要なく、どんな痛ましい悲惨な哀れな過去による動機であろうと暴露し、犯人の人格、精神、羞恥心、良心、葛藤、悩み、逡巡、嘆き、不幸をも踏みにじり嘲笑うべきである。


プロローグSS<+3/素晴らしいプロローグをありがとうございます>


「高橋さんがいらっしゃいました――」



白鷺信吾は荒い息を吐きながら、人生で最大の恐怖と焦燥を味わっていた。
いくら大きく呼吸をしても全く楽にならない。
彼の呼吸の乱れはそのまま精神の乱れを表していた。
「う、あ、ううううう……」
独り言を口にして気分を紛らわそうとしても、出てくるのは震えた唸りだけだった。
禅僧。
禅僧。禅僧。禅僧。
話だけは聞いたことがあった。彼自身はまだ存在すらなかった頃の昔、1960年代に起きたという学生闘争。
その抗争を体験した父が一度だけ「それ」について語っていた。
否。
語ったというほど多くの言葉は出て来なかった。
父たち学生が直面した、禅僧という禁忌の存在。
「――絶対に関わるな」
今にしてみればわかる。
父の口が重かった、その理由が理解できる。
その事件から30年以上が経過した今でもなお、思い出すことすらはばかられる存在。
「…………禅僧」
思索の淵から信吾は我に返った。
ともすれば逃避しそうになる思考を捕まえ、現実へと引き戻す。

禅僧が校内に侵入したという現実へと。

一目見た瞬間に理解した――言葉ではなく心で理解できた。
あれは、触れてはならないものだ。
頭の中が真っ白になっていた。次に気がついたとき、信吾は放送室への道を全速力で疾走しているところだった。
放送部員である彼は、希望崎学園内での報道員として、生徒会や番長グループと言った勢力には所属していない中立の立場にある。
「有事の際は、教師もしくは生徒会員が緊急の放送を流す」という手順が彼の頭の中には叩きこまれていた。
本来ならば自分の役目ではない、その放送を彼は単独でこなした。

しかし――
(本当に、こんな放送なんかに意味があるのか?)
思わずにはいられない。
希望崎学園は、学園自治法という名目の治外法権の地であり、それゆえに大っぴらに外部からの干渉を受けることになれていない。
また、生徒の中のかなりの割合が魔人という性質上、不審者が侵入することなどこれまでにはなかったことだ。
好きこのんで虎口に飛び込むようなのはそれこそ転校生くらいしか――
(いや、考えてる場合じゃない)
放送を終えた生徒も速やかに避難を開始しなければならない。
避難訓練の際、放送機器の準備を行うのは彼の仕事だったから、段取りは頭に入っている。
(…………ん?)
そこで気がついた。
今日は避難訓練の日だ。
それならば校内の生徒は皆、信吾が行った放送が「現実に侵入者がいる」という警告だと思っているはずがない。
(どうする)
これは訓練でないという、追加の放送を入れるべきか。しかしそれでは侵入者の方にも意図が伝わってしまう可能性がある。
自らの分を超えた判断を前にして信吾は悩む。が、答えは出ない。
それならば仕方がない、先生か誰かに判断を仰いで――と、そこまで考えたとき、信吾の脳裏に疑問が湧いた。

――なぜ、放送室に誰も来ない?

もうすでに避難訓練開始の時間は来ている。担当の教師が来てもおかしくない。
あるいは、今の放送を聞いて、本来教師の役目であるはずの放送を信吾が行ったことを、教師か生徒会の誰かが不審に思ってもいいはずだ。

――それなのに、どうして誰も来ない?

――どうして校舎内がまるで嵐の前のように静まりかえっている?
                 ・・・・・・・・・・・・・・・
――そして、放送室の機器パネルに、ハルマゲドンの時にしか降りない非常用隔壁の稼働ランプがついているのはどうしてだ――!?

ぽん。
肩に感触を感じて汗が噴き出る。
手を肩に置かれているというのに微塵も気配を感じない――信吾が振りかえると、





そこには、


リアルドキュメンタリー:禅僧<+2/禅僧汚染進みすぎだろ…>


このおぞましき状況を産み出してしまったのは、もしかして私達マスメディアなのかもしれない――。

 おぞましき状況。そう、それは今、まさに禅僧という悪魔がこの学園を狙い舞い降りたことである。
 もとより禅僧は今ほどにおぞましき存在ではなかった。
 太古の昔より、彼らは言語を絶した超論理(ロゴス)的存在として君臨してきた。
 しかし、彼らは奥深い山林の中で慎ましく暮らす修行者に過ぎなかったはずだ。

 それが、いつの頃だろうか。
 彼ら禅僧が世界を悟りに導くべく活動を開始したのは――。
 それはマスコミによる禅僧報道が過熱した20世紀半ばからであったと思う。
 マスコミが面白おかしく禅僧の奇特な修行風景―公案―などを報道するうちに、世間では
禅僧を超人的怪物と見る動きが加速した。江戸時代の頃はまだ蒟蒻問答程度に収まって
いた禅僧たちが、徐々におぞましき変貌を遂げていった様子は多くのビデオテープに
残されている。

 私は一度「報道イデア界」に救いを求めた。
 おぞましき禅僧の群れから身を守る術を報道の幻想に求めたのだ。
 だが、そこにあったのは、この現実よりもおぞましき世界――
 禅僧により、世界の全てが悟りに包まれ、滅亡し去った世界だったのだ。
 実に、報道は人々の中の「禅僧」をこれほどの怪物に育て上げていた。
 もしかすると、報道イデア界がもたらす影響が、徐々に人々の――禅僧たちの存在を
捻じ曲げていったのかもしれない。禅僧を怪物へと育て上げたのは、私達マスメディア
かもしれないとは、そういうことだ。

 今や、全人類の12%が禅僧と化し、禅僧アウトブレイクは留まるところを知らない。
 アメリカではワシントンが陥落し、中国では天安門広場が禅僧で埋め尽くされた。
 禅僧を発見次第射殺しようとしたサウジアラビア軍は次々と禅僧に感染し、既に
イスラム教国の面影はない。辛うじて禅僧の侵攻を食い止めているのは、焦土作戦を
敢行し、冬将軍に守られたロシアだけである。

 そして、我が日本の――、我が学園でも――。
 禅僧に命を付け狙われた不運な少女、山乃端一人はこの学園に逃げ込んだ後、自ら命を絶ち、学園に禅僧を呼び寄せてしまった。
 生徒会と番長グループの対決も禅僧の感染を助長する結果に終わるだろう。

 私、報道部部長、林水素は愚かな闘争から離れ、いま一人報道部部室に篭って、この
手記を書いている。これが誰かの目に止まる際には、私はおそらくこの世にいないだろう。
――少なくとも、「人」としていることはないであろう。
 私に残された時間はあまりに少ない。今は少しでも多くの禅僧に関する情報を後世に
伝えることが私の報道部としての使命である。なに、いざとなれば、私は報道イデア界に
逃げればいいのだ。向こうもおぞましき世界ではあるが、当面の時間稼ぎにはなる。

 ん……。なんだ……?

 ドアが音をたてている。何かつるつるした頭のものが体をぶつけているかのような音を。
ドアを押し破ったところでわたしを見つけられはしない。いや、そんな! あの手は何だ!
 窓に! 窓に!

前哨戦~駒沢争奪戦~<+3/夢のビッチ対決!>


「フフフ、駒沢君……。貴方を探してたのよ」

 ボンバービッチは空虚な教室で独り言のように呟いた。

「フフッ……、姿が見えなくてもここにいることは分かってる……。いえね、別に戦いの前に貴方を倒そうとか、そういうわけじゃあないの。私は貴方に興味があるだけ。そう、あなたとの『透明プレイ』に、ね……。だから、貴方を迎えに来たの……。あの、ビッチの神様、――クトゥルフ神と触手プレイをしたとさえ言われる鏡子さえも成し得なかった『透明プレイ』。映画『ポルターガイスト』などでお馴染みの、透明存在に犯されるあのプレイ。そう、透明プレイを極めれば私はまた一段上のビッチになれる」

 だが、駒沢は姿を見せない。返事もない。

「フフフ、私たちは敵同士ですもの。いきなり言われても困るでしょうね。いいわ、
私のビッチを見れば、あなたも黙ってはいられないはず。たとえロボといえ性欲は普通に、
いえ――、人並み以上にあるでしょう。私のビッチであなたを誘惑してみせる」

 そう言うと、ボンバービッチは無人の教室の中でおもむろに股間を弄り始めた。
 だが――、

「お待ちなさい! ボンバービッチ!」
「来たわね! みらくる☆エクスタシー!」

 そう、魔法痴女みらくる☆エクスタシーが仲間のピンチを察して駆けつけてきたのだ!
 そして――、

「駒沢君をあなたたち悪の手に渡してたまるものですか!」

 みらくる☆エクスタシーは股をおっぴろげて座り込むと、ギンギンに反り返った
やりまるで己の股間を慰め始めたのである。

「あなたなんかに駒沢君を誘惑させたりしない! 私の痴女プレイで駒沢君の目を覚まさせる!」
「ウフフ、乳臭い高校生痴女が私のビッチに勝てるかしら?」
「私は負けない……! 女子高生痴女の力を見せてやる!」

 そうして、ビッチと痴女は駒沢を巡り、互いに向きあってドロドロでグチョグチョの
自慰戦争を始めたが、いかんせんビッチと痴女である。
 相手の自慰を「やるな!」「やるわね!」などと思いながら見続け、己も数分自慰を
続けているうちに、そのうち二人ともムラムラとしたものがこみ上げてきて、瞳もとろり
と濁ってきて、挙句の果て、どちらともなくお互いに近づくと、不意に互いの股間を貪り
始めたのである。

「ボ、ボンバービッチ、アッー!」
「み、みらくる☆エクスタシー、アッー!」

 駒沢の前に自分たちが誘惑されていれば世話はないが、ともかく今は目の前のレズプレイに勤しみ、まぐわい続けるばかりである。


 ***

 一方、その頃、駒沢は駅前の中華料理屋にいた。

「オッチャン、タンメン、旨イメカー」

腐死病 ナナ<+2.5/イイハナシダナー>

 幼い頃の腐死病ナナは寂しい女の子だった。

 一人っ子のナナに兄弟はなく、両親は共働き。二人とも出張もしょっちゅうで、家で一人で過ごす時間の方が多い。引っ込み思案な性格ゆえに学校でも友達はできず、決してシカトされていたとか、イジメられていたわけではないけれど、仲の良い友達もいなかった。
 小学生にしてナナは一通りの家事はできたし、両親はいつも多めに生活費を残していったから、生活には何も困っていなかったけど、彼女は、ただ寂しかったのだ。
 そんな彼女の寂しさを紛らわせてくれたのは、いつも同じ。大好きなゾンビ映画。両親からもらった豊富な生活費で、彼女は毎日新しいゾンビ映画を借りてきては、それを居間で見ながらお手製の中華丼などを突付くのだ。
 ナナはゾンビたちが好きだった。彼らのことが大好きだった。映画の中のゾンビたちは、主人公がどこにいても、いつも主人公のことを追いかけてきてくれる。ずっと追いかけてきてくれる。主人公を無視するゾンビなんか一人もいない。ナナは主人公たちのことがとっても羨ましかった。映画を見た後は、ナナは自分を追いかけてくるゾンビのことを――、自分のことを必死に構ってくれるゾンビのことを思いながら、暖かな気持ちで眠りに就くのだ。夢の中にゾンビが出てきてくれた時などは特に幸せである。

 そんな彼女に転機が訪れたのは小学五年生の時だった。クラスでも人気の男の子――、もちろんナナは彼とお話をしたこともなかったけれど――、ナナは彼と廊下でばちこーんとぶつかって、ひっくり返ってしまったのだ。そして、その弾みで、男の子の顔はナナの股間に埋まっていたのである。

「は、破廉恥な!」

 ナナは男の子を跳ね飛ばして逃げ出したけれど、家に帰って、昼間の出来事を思い返すと、ナナの鼓動はドクドクと高鳴り、顔は真っ赤に、股間は熱を帯びてくる。今までに体験したこともない、何かとてもフシギで、奇妙で、でも、悪くないカンジだった。そして、気持ちを落ち着かせようと、いつものゾンビDVDを再生した彼女は……そこに、新たな世界を見たのである。

 それは、無数のゾンビたちが、倒れこんだ人間の上に群がるシーンであった。

 いつも見慣れた、ゾンビ映画ではお馴染みのシーンだ。でも、その日のナナはいつもと違った。覆いかぶさるゾンビたちを見て、彼女はあのフシギなカンジを――。何とも言いようもない奇妙な気持ちと、股間に集まる不思議な熱を感じたのである。ナナは昼間の男の子との衝突を思い出し、男の子の顔を頭の中でゾンビに変えてみる。すると、奇妙な気持ちはいよいよ強くなってくるのだ。彼女の股間は一段と熱を帯びてきて――、そして、少女の右手指はゆっくりとパンツの中で蠢き始めるのである――。


 後日。男の子の家をこっそり見に行ったナナは、彼が「セリーヌ」という巨大な植物を育てていたことを知る。さらには、その植物は今や幼女と化して男の子と同棲しているのだとも。ナナはそこに一縷の希望を見出した。植物は、大きく育てば人間になるのだ、と――。ならば、私も精魂込めて育てれば、植物はゾンビになってくれるかもしれない。そして、たくさんのゾンビが育って、私がたくさんのゾンビに囲まれたら、その時には、私も――……。

 夢を掴んだ彼女は、もう何も寂しくはなかった。

無題<+3/四悠君に共感した>

「本当に出ていくのね?」
腐死病ナナは生徒会室を出ようとしていた少年を呼び止める。
呼び止められた少年は彼女に振り返ると、明るく返事をする。
「いままでありがとうございました、ナナフシ先輩。
明日からは敵同士っすね。まあお互い死なないようにしましょうぜ」

軽い口調で返す少年だが、瞳に映る決意は固い。
それは彼女も同じことだ。引き留められないことは最初から分かっていた。
とでも告げるように、「そう」、とだけ優しく微笑んだ。

「じゃあ俺は行きますんで」
「四悠君、最後に聞かせて?
なぜ生徒会を抜けて番長グループに?お金……以外にも何かあるんでしょう?
お願いだから、これだけは教えてほしいの」
「いや……それは……」
四悠君、と呼ばれた少年は一瞬言いよどむ。が、彼女の強い眼差しに、口を開いた。
「確かに金以外の理由もあります。一番の理由は……」

一瞬の沈黙。

しかしその静謐な雰囲気をぶち壊す勢いで、四悠は叫ぶ。


「なんでゴリラが会長なんですかー!!」


四悠の叫びはしかし、腐死病ナナに伝わったようには見えなかった。
頭に疑問符を浮かべたような顔をしている。
ええい可愛いな畜生、じゃなくて。

彼女はとぼけたように返してくる。
「え、それのどこが問題なんですか?」
「いや、流石にゴリラが生徒会長ってのは……」
「? 何かおかしいですか?」

「イヤイヤイヤイヤ……
ゴリラだぞゴリラ!確かに昔白熊が番長だったという話は聞いたことがあるけどよお
生徒会長だぞ?仮にも学園の代表だぞ?
それでなんで誰もゴリラが生徒会長ってことに疑問を持たねえんだー!!」

頭の中で叫んだつもりが思わず声に出してしまっていたが、
腐死病先輩は全く理解できないといった顔を崩さない。

「?」
「もういいです……世話になりました」

生徒会室の扉を閉め、四悠はふう、とため息をつく。
願わくば番長グループは普通の人達でありますように、と儚い期待を抱きながら、彼は廊下を歩いて行った。

番長が空気いす用の背もたれという最早人外どころか無機物だ、と四悠君が知るのは別のお話。

「革命」1<+3/長いよー>


一般人の群れに押し流されるようにして腐死病ナナは中庭に到着した。
避難訓練開始と同時に生徒会員は集合し、番長グループを叩く手はずだった――しかし。
「何……これ?」
まず感じたのは匂いだった。
破壊的でありながら、それでいてどこか蠱惑的な――腐臭。
べったりとするほどきつい甘い芳香が充満している。
次いでそこに広がっている光景が目に飛び込んできた。
普段は土がむき出しになっているだけの中庭が、一面緑で覆われている。
非常に硬そうな葉とツルが互いに絡まり合い、足の踏み場もないほどに地面を覆い尽くしていた。。
そして、人間の何倍もの大きさがある、人工的なまでに濃い赤の花。花弁には毒々しい黒の斑点までついている。
「これ……植物……?」
園芸部に所属しているナナだったが、このような植物は知識になかった。
そもそも、1日2日のうちにここまでの爆発的な成長を遂げる植物などあるはずがない。
「ナナ!」
「ナナ先輩!」
こちらに気付いた生徒会のメンバーが近寄ってくる。
どの顔も不理解と恐怖をたたえていた。
無理もないと思う。ナナ自身も同じ表情をしているだろうから。
「ナナ先輩、これは……」
「ごめん、私にも――」
言いかけたところで空間が歪んだ。
ナナは思わず言葉を飲み込む。
「ナナ!」
虚空に音も無く現れた林水素が、いつもの余裕をかなぐり捨てて詰め寄ってくるのを呆然と眺める。
「水素……?」
「ナナ、あの中――」
ツルの密集地帯の中心にある、ひときわ大きい花弁を水素は指して。
「あの中にキョウカが……」
「え――」
息を呑む。
彼女がそう呼ぶ人物は一人しかいない。
その名前に反応したかのように、突如植物が動いた。
それまではあてもなく蠢いていただけのツルが、意志を持つ生き物のようにうねり、ナナ達の方へと振り下ろされる。
二人を庇うように、大柄の男子が飛び出した。
「ここは俺に任せて先に逃げ――ぎゃああああああ!?」
名前が思い出せないその同級生をすぐに飲みこみ、ツルの海が迫る。
緑の奔流を鋭く睨みながら、ナナは指を鳴らした。
「うげえええええ」
地面から跳び出したのはナナの能力で生み出された園芸ゾンビである。
ツルがゾンビに絡みつく――が、ゾンビは力を込めると身体に巻きついたそれを引きちぎっていく。
(末端だからか……ツル自体のパワーはさほどでもないようね)
園芸ゾンビの奮闘でツルの進撃は食い止められている。
しかし、こちらから中心部に突撃し、花に捕らわれている彼女を……狂香を救い出すのは無理難題に思えた。
「! ナナ、ダメっ!」
水素の叫びにはっとする。
園芸ゾンビから、ぶすぶすと黒いもやが立ち上っていた――急速に腐っている。
(すでに存在そのものが腐敗している園芸ゾンビまで腐らせるというの!?)
「戻れ!」
ゾンビが崩れ落ちる寸前、ナナは能力を解除した。同時に動き始めるツルから逃げようとする。
――後ろから襟首を掴まれた。
そのまま、物凄い力で引かれ、植物から遠ざけられる。
隣を見ると、水素が全く同じ姿勢で引きずられていた。

「革命」2


そして、二人の後ろにいるのは……
「ウホ」
「か、会長!」
ゴリラだった。
その隣には剣を提げた厳めしい顔の3年生、虎斑が控えている。
「危ないところだったな、二人とも……と、会長が仰っている」
「虎斑君……ゴリラと話ができるの?」
「その様な些事よりも、お前たちにもあの花の正体はわからないのか?」
結果として水素の問いには答えず、虎斑は質問をする。
「何か弱点がわかれば対処のしようもあるのだが……」
「……あの花は、異界の植物だよ」
ゴリラの手から離れ、地面に下ろしてもらいながら水素は苦々しげに言った。
「報道イデア界にあの花の情報はない――それは、その異界は、報道する間もなくあの花に滅ぼされてしまったから。そうとしか考えられない」
「ということは、俺達の相手は世界の覇者ということか」
虎斑は意味ありげに笑った。
「ウホ」
「会長も仰っている……相手がどれほど強敵でも、99.9%勝ち目がなかったとしても」
「ねえほんとにそれ会長が言ってるの? ねえ」
「可能性がたった0.1%だろうと諦めるわけにはいかない、俺達の仲間を助けだす……と」
話している間にも、花は一般人を何人か巻き込んでのたうっている。
「たとえ道が困難でも、生徒会の切り札が並べば“革命”を起こせる。この状況も引っくり返せる……お前たちならそれができる」
「本当に? でも、どうすれば……」
ナナは思考する。
生徒会メンバーも何人かが花に捕らわれ、残りの人数はそう多くはない。
虎斑の言っていた通り、せめてあの花の弱点でもわかれば――
「異界の花――『腐敗花』」
「え?」
「その花はキョウカに触れることで形質を変化させ、生物の精神を蝕み食らう植物となった――そして弱点は」
ナナは突然饒舌になった水素をぽかんと見る。報道イデア界にその花の情報はないのではなかったか?
「弱点は、具現化して間もない今のうちに、母体である狂咲狂香から引き剥がすこと――!」
「水素、どうして……?」
「たしかにあの花のもといた世界では報道はなかった……でも」
「ウホウホ」
「『こちらの世界』では話は別……そういうことか」
「まさか、未来の報道まで……」
しかしさすがに消耗が激しかったらしい。最強の情報能力者は弱々しく頭を振る。
「でも、どうやって引き剥がすの……」
「――僕の出る幕のようですね」
涼やかな声がした。
学生服の上に青く光る鎧を着込んだ少年が、薄い笑みを浮かべながら進み出る。
「あなたは1年の……木下君?」
「捕らわれている人がいる以上、火力で焼き尽くすわけにはいきません。なら……答えはひとつ。ナナ先輩、援護をお願いします」
「まさか……突っ込むつもり!? ダメよ、危険すぎる!」
「心配していただいてありがとうございます、でも……僕は行かなければなりません」

「僕は、転校生なのですから――!」

彼は大地を蹴った。
凄まじいスピード。
見ているナナがぎりぎりで視認できる程度の速度で、彼は駆けていく……最も危険な、腐敗花の密集地帯へと。
しなるツルも、うねる根も、あまりに速い彼の身体に触れることすらできない。
そのまま苦もなく中心の花弁まで辿り着く――かに見えた。
突然、木下の前方に壁が現れる。
「!?」
否。道を阻むように現れたのは、それまで蔦に覆われていて隠されていた葉だ。
その用途は絶対に光合成のためのものではない。その硬い葉肉は中心を守る壁であると同時に、獲物を捕らえるための捕手だ。
……数は木下を取り囲むように4枚。
まるで握り潰すかのように、包囲が狭まり、木下を握り潰す。
葉に覆われて青い鎧の姿が見えなくなる……次の瞬間。
「うげえええええ」
「うげえええええ」
「うげえええええええええええ」
ぎちぎちという音を立てて、葉肉の檻が強引にこじ開けられた。
ナナの能力で造られた園芸ゾンビ――数十の腐ったゾンビが葉を押しのけ、茎にとりついて引っ張り、向かってくるツルから木下をかばう。
腐死病ナナが、自らの夢のためにストックしていたゾンビの種の全てを使って投入したゾンビ軍団。
あっという間に葉に押し返され、ツルに捕らわれ、ぶすぶすと腐って崩れていく――その攻防の隙間を縫うように、木下は再び跳んだ。
壺を思わせる形状の花の中に、一直線に飛びこむ。
「あっ!?」
ぐにゃりと植物が揺らいだ。
次の瞬間、ナナの隣に少女を背負った木下が出現した。そのまま前のめりに倒れ込む。

「革命」3

「瞬間移動……。この子を、頼みます……」
言い残して、木下は力尽きた。完全に意識を失っている。
救出された狂香も酷い状態ではあるが、生きてはいるようだ。
思わず安堵のため息を漏らす。が。
「ウホウホ!」
「……なんという!」
二人につられてナナは顔を上げた。
宿主である狂香を失った腐敗花はそのまま崩れ去るはずだったが。
「そんな」
一旦は勢いを弱めていたツルが再び動き出している。
傷の痛みに激怒するように、葉が波打ち始めた。
「ウホウホ」
「なるほど――間に合わなかったということですね、会長。花の一部がすでにこの世界に根を張ってしまったと」
「そんな! そんなことって……」
凄まじい生命力。
木下の突撃で傷ついた部分を補うように、すぐに新しいツルが生み出されていく。
「ウホウホ」
「このままでは加速度的に腐敗花が生育してしまうな、と会長が仰っている」
「そんなことになれば……」
「ああ、今のままならともかく、もっと規模が大きくなればそれだけ生育量も増え、希望崎全体が飲みこまれてしまうな」
「ウホウホ」
「驚異的な生命力……回復させる間もなく一瞬で焼き尽くすしか手は無い、と会長は仰っている」
「そんな、あんなの絨毯爆撃でもしないことには……」
その時、ひとつの声が短く応えた。
「わかった」
可愛らしい制服に身を包んだ少女が単身飛び出していく。
その背から天使のような純白の羽が生えているのをナナは見た。
「ガードスキル・ハンドソニック」
速い。
移動速度こそ先ほどの木下の跳躍には及ばないが、両の手から出現させた長剣を振り回す動作は目にも止まらない。
その閃きは、ナナの目には通常の魔人の動きではなく、まるで瞬間移動を行っているかのように見えた。
「あれの戦闘力は爆撃機並か……!」
虎斑が呟いた時には、もう終わっていた。
まさに瞬く間に、腐敗花はバラバラに解体されていた。

「革命」4

「う……」
「! 気がついた!」
「あ、私……?」
狂香が意識を取り戻した。
ナナの声に反応して、水素も狂香の隣に腰を下ろす。
腐敗花との激闘を終えて戻ってきた橘が、心配そうに覗き込む。
木下は、ダメージが大きかったのか、まだ目を覚ましていない。
腐敗花に捕まっていた栂村阿々阿は運悪く橘に踏んづけられたらしく、ぼろ雑巾のように転がっていた。
「大丈夫、キョウカ?」
「水素さん……」
「木下君が助けてくれたんだよ、キョウカ」
「……そう、ですか」
「あのね」
「水素、ちょっと待って」
ナナはなおも喋り続けようとする水素を押し止めた。
「狂香さんはまだ安静にしていないと。保健室に運びましょう。どの道今のままではこの後――」
「……待ってください」
弱々しい声で、だがはっきりと狂香は告げる。
「私を……殺してください」
沈黙。
誰も何も言わなかった。
ナナも水素も、離れたところで成り行きを見ていたゴリラと虎斑も、何も言えない。
「どうして」
意外にも、橘が理由を問う。
「あの花は……まだ私の中に残っています。なくなることはありません……私が生きている限り」
狂香はか細い声で答えた。
「……嘘でしょう?」
「本当です、ナナ先輩。私はもう、ほとんどあの花に乗っ取られているんです。本当はもっと早くに死ぬべきだったのに……私のせいで皆さんに迷惑を」
「嘘……そんなの」
「いつになるかはわかりませんが……このまま放っておけば、また花が現れます。今度は止められないかもしれない」
もちろん嘘でないことはナナにもわかっていた。
しかし、これでは報われない。
木下や橘が身を賭して腐敗花に挑んだことが全く報われない。
「お願いします……」
「そんな……そんなこと、できない。できないよ……」
何度も首を横に振る。それで事態が打ち消せるわけでもないのに。
ナナは心が千切れそうだった――しかし、そこにさらなる衝撃が加わる。
仰向けの狂香の喉元に、漆黒の刃が突き刺さった。
音が消えた。
狂香が目を見開き、苦悶の表情で身をよじっている。
叫び声は聞こえない。
「できないなら……私がやる」
その小さい声はなぜか聞こえた。
振り向くと、派手な格好の少女が、不釣り合いに大きい鎌を持っているのが見えた。
着ている衣装や髪の色はショッキングな原色なのに、鎌の色だけが闇のように黒い。
「あなたの魂をそのままにはしておけない……だから、私がもらうよ」
「…………」
死神のような言葉。
ナナは彼女の能力を知っていた。
魂を奪い取り、抜け殻となった身体に偽物の魂を注入する、その力。
植えつけられる魂はまがい物にすぎない……たとえ生前の記憶を持っていたとしても。
原色の死神は鎌を引き抜いた。
刃先に、魂の欠片がくっついている。
植物の根のようなものがからみついている……魂のひとかけら。
(カケラ?)
ナナが違和感を覚えたとき、躊躇なく鎌を振り下ろした死神は、目だけで笑った。
「あれ、うまく当たらなかったみたい」
「う……?」
狂香が起き上がった。
「ほんとなら魂全部もらうところなんだけど。まあいいか」
「まさか……?」
ナナよりも先に水素のほうが表情を変えた。
「寄生した腐敗花だけを切り取って……!」
その言葉で、ようやくナナも気付く。
さながら内臓の悪くなった部分を摘出し、人工の臓器を装着するように。
鎌の少女は、狂香の魂を治したのだ。
「まさかそんなことが……」
「ウホウホ」
「なるほど。腐死病ナナ、林水素、木下、そして橘かなで。この4人ではフォーカード。革命を起こしたわけだが……」
虎斑が、まっすぐにその少女を見つめて指差して続ける。
「漆黒の大鎌は死神の暗示。衆洲城 爽というジョーカーを加えた、ファイブカードだったわけか」
そして手を下ろし、締めくくった。
「……と、会長が仰っている」