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【背景:黒】
【BGM:無し】
……油断した。
その恐ろしさは、ずっと前から知っていた。
でも、少しはマシになっていると思ったんだ。
それが油断。
もう、逃げることは……できない……


【場面転換】
【BGM:無し】
【一枚絵】大家出会いで使用するところが無かったんで、こっちで使わせてもら
えば、と。
(主人公・大家テーブルを囲んで座っている。テーブルの上にはスライム。後方
におたまを持った幼馴染。主人公・幼馴染中心で)
差分可能ならば、料理を隠すようにしていただければ

今日は小春が料理を作りに来てくれた。
そして今、机には山盛りの……
…………
………
……
何だこれ……
とりあえず「料理」で無いことは確かだ。
何か当てはまる言葉があるとすれば……スライム……とか……?
うん、そう、スライム。そっくりすぎて、泣きたくなってくる。
さっきから、大家さんが「どうすんのよ、これ」と目で訴えてくるが華麗にスル
ー。
どうするも何も食べるしかないだろう……
ああ、本当に油断した。

なぜ、こんな状況に至ってしまったのか。
それは……今日の朝のこと―――

【場面転換】
【背景:主人公の部屋】
【SE:ノック音】
……戸を叩く音が聞こえる。
大家さんが朝食でもねだりに来たのだろう。……時間的には、もう昼に近いが。
そういえば昨日は、いろいろあって何も食べてなかったな。
丁度いいし、ガッツリ食べれそうなものを作ろうかな。

……なんてことを考えながら、戸を開ける。
【SE:扉を開ける音】【BGM:ハッピースキップ】
ああ、やはり大家さん……ともう一人。
……小春だ。
一応の仲直りは果たしたとはいえ、やはりまだ……なんというか……
いや、まぁ、来たものは仕方ないが。

大輔「あー、えーっと……」

どうしたんですか? と尋ねる前に大家さんが答える。

大家「遊びに来たのよ。小春ちゃんと外でバッタリ会ってねー」

大輔「はぁ……てっきり飯でもねだりにきたのかと」

大家「ああ、飯ねー。お腹空いたし、作っていいよー」

なんて言いながら家へと入っていく。
作っていいよー、なんて頼まれ方初めてだ。

大輔「俺も昨日から飯食ってないし、いいですけどさ……。ああ、小春も入って

小春「あ、うん。おじゃましまーす」

二人を居間へ向かわせ、俺はキッチンへ。

大輔「小春も食うだろ? 飯」

居間にいる小春に声をかける。

小春「え? あ、うん。……じゃなくて、えっと、その……」

しばらくモジモジとしていたが、やがてこちらに走り寄ってくる。
何か食えないもんでもあるんだろうか。

小春「あの、さ、私がご飯作ろうか?」

頬を赤らめながらそんなことを言ってくる。
これなんてエロゲ?

……ん?
ちょっと待て。今、何て言った?

私 が ご 飯 作 ろ う か ?

……冗談じゃない。俺はまだ命を諦める気は無いぞ。
と、とりあえず小春を止めないと。

大輔「い、いや、いいよ。えーと、ほら、あの……そう!
   ほら、俺も料理とか結構するようになったからさ。だから、大丈夫ってい
うか……」

大家「いーじゃん、小春ちゃんが作ってくれるっていうんだしさー」

大輔「いや、でも、お客さんに作らせるのもどうかなーって」

小春「そんなの気にしなくてもいいよー。むしろ、急に押しかけてきちゃったん
だから、そのくらいさせてよ」

大家「く~! いい子だねー! ほら、ここまで言ってんだから作らせてあげな
ってば」

大輔「いや、でも……」

大家「あーもう、うだうだ言ってんじゃないわよ。作らせないとねぇ……」

大輔「作らせないと……?」

大家「新興宗教立ち上げてしつこく勧誘するわよ」

大輔「はいッ! 分かりましたッ!」

我ながらいい返事だ……
本当にやりかねない辺り大家さんは恐ろしい。

でもまぁ……流石に小春でも多少は上達しているだろう。
もしかして、俺が心配しすぎなのかもしれないな。
小春も頑張っているみたいだし、きっと大丈夫だろう。

小春にキッチンを譲り、俺は居間へと向かう。

【背景:黒】
【BGMストップ】
【SE:料理】
さて……
小春に任せてみたものの、本当に大丈夫なのだろうか……
一応、料理音は軽快に聞こえてくるし、問題は無さそうだが……

小春「あっ! う~ん……まぁ、いっか」

ちょ……

小春「うわわっ! ……まだ大丈夫……かな……」

いや、まだって……

【SE:爆発音】

な、何だ今の音!?

小春「フゥ~フゥ~クワッ」

ご、ゴシカァン!?

小春「うわぁ……すごっ……」

どっちの方向にすごいんですか?!
良い意味ですごいんですよね!? そうですよね!?

小春「あ、でも大丈夫……そう?」

疑問系ですか!

大家(ちょっと、あんた様子見てきてよ。明らかにおかしい音してるしさぁ……

大輔(はぁ……いいですけど。俺も不安ですし)

とは言っても……
不安で見に来たなんていったら怒りそうだしなぁ……
こっそり見に行こう……

【背景:主人公の部屋】
【SE:心臓音】

こちらスネーク、キッチンに潜入した

前方には、料理をする小春。
とりあえず、机の下に潜みつつ様子を伺う。
ここからだと料理は見えないが、これといっておかしい臭いなどはしない。
心配しすぎだったのだろうか。
まだ不安は残るが、ここは見つかる前に退散しておこう。
物音を立てないよう、慎重にキッチンを後に―――

小春「……なにしてるのかな?」

…………

恐る恐る後ろを振り返る。

…………

まだだ……まだあわてあわあああわわあああわ

小春「なにをしてるのか、聞いてるんだけど?」

ゆっくりと微笑みながら繰り返す。右手には包丁を持って。

大輔「お、落ち着こう! まずは落ち着いて、とりあえず包丁は下ろそう! 俺
はただ、心配になったっていうか……」

小春「私は落ち着いてるよ? 大輔こそ落ち着いたほうがいいよ。あと、そんな
に私の料理が信じられない?」

直も、小春は包丁を持ったまま微笑んでいる。

大輔「う、うん、そうですよね! こ、小春なら大丈夫ですよね! 俺の心配し
すぎでした、はい!」

小春「うん、大輔の心配しすぎだよ。だから、居間でおとなしく待っててね」

大輔「は、はいぃ!」

殺られるかと思った……
小春の言う通り、居間でおとなしくしていよう……
もしかしたら本当にきちんとできてるかもしれないし……
うん、きっと大丈夫さ!
…………
そう信じたい……

【場面転換】
【一枚絵】
【BGM:焦り】

何が大丈夫だったんだろうな……
心配しすぎ? 油断しすぎの間違いだろう。
多少は上達? 確かに上達してるな。何か違う方向に。

小春「えーっと……見た目はちょっと悪いかもしれないけど、味はきっと大丈夫
だからさ! 食べてみてよ!」

大家「う、うーん……これは……一体……何……かな……?」

小春「ハンバーグです!」

大家「あ、うん。そう……だよね。うん、ハンバーグ……だよ……ね……?」

へぇ、酷く前衛的なハンバーグですね。
見た目がちょっと悪いどころじゃないですよ、これは。
何か、どろどろしてるし、気泡が……ポコポコ言ってるんですけど……
おまけに七色に輝いてるし……臭いきつすぎて鼻は麻痺してるし……
これで、味は大丈夫って……どこからその自信が来るのだろう。
……このスライムを食べるのか。
どこの苦行なんだろう……
RPGの主人公だって、倒したスライムを食べたりはしないぞ……
何をどうすれば、こんなマッドモンスターが生まれるんだ。
こいつ自体が、地獄の底まで食い散らかしそうな形をしてるじゃないか……
なんて、考えながら呆然と目の前の料理を見つめていると、大家さんがこっそり
と話しかけてきた。

大家(で、これの正体は何よ? どうみてもハンバーグのナリじゃないんだけど

大輔(どっかの悪魔か何かじゃないですか)

大家(素敵ね。じゃ、処理お願い)

大輔(いや、大家さんも食べてくださいよ)

大家(流石の私も、これは無理だわ。一人でお願い)

大輔(……嫌ですよ。っていうか、俺は必死で止めたじゃないですか。それを大
家さんが―――)

大家「え、何? お腹が空いていて全部食べれそうだぜ! だって? まったく
食いしん坊なんだからー!」

大輔「はいぃぃ?!」

突如、大家さんが大声で喋りだす。
最低だ、最低だよ……この人。
小春は「本当!?」なんて言って目を輝かせているし……
もう後には引けない。
天国の父よ、母よ。もうすぐそちらへ行きます。

【BGMストップ】
大輔「い、いただきま~す……」

スライムの一部を掬い取り、ゆっくりと口へ運んでいく。
近づくにつれて、麻痺しているはずの鼻に強い刺激臭が。
そして、口を開き、そのスライムを口の中へ……入れた。

思わず声を上げそうになるが、ぐっと堪える。
ドロリとした食感。
ねちゃねちゃと口の中で絡み付いてくる。
味は……苦味と酸味と甘みが混じり合って言語化できないような状態になってい
る……
気を抜くと意識を失いそうだ。
むりやり飲み込もうとするが押し戻されてくる。

大輔「う"……ぐご……」

大家「……あんた涙目になってるわよ……。泣くほど美味かったのね……」

大家さんが何か言っているが、それどころじゃない。
コップを掴み、口の中のものを水で流し込む。
なんとか全てを飲み込み、一息つく。
まだ、微妙に口の中がねちょねちょしている。気持ち悪い。

【BGM:楽しいパニック(仮)】

小春「えっと……どうだった……?」

大輔「うっ……それは……」

小春「それは?」

大輔「えっと、その……美味かった……かな……?」

小春「本当!?」

大輔「あ、ああ……もちろん。ほ、ほら、大家さんも食べてみてくださいよ!」

反撃。
大家さんは、しばらくこちらを睨んでいたが、やがて諦めスライムへと向かった

ふふふ……ざまをみろ……
俺一人でこんな苦しみを味わってたまるか。
こういうことは、みんなで共有するべきなのだ!
つーか、こんなの一人で食えるかっての。
そう、こんな料理を平気で食える人間なんているわけがない。
……ただ、一人を除いて。

過去、幾多にも渡り被害者を出してきたこの料理(主に俺と誠司なのだが)。
そんなキラーな料理を平然と食べることの出来る人物。
それは、料理を作った本人である小春。
……どうやら、相当な味音痴らしい。
そのために、この殺人的な味に違和感を抱かず、被害者を増やしてしまうのだが

ということで、この料理の攻略法。
それは、小春に食べさせること―――!

大輔「……ありがとう。っていうか、小春は食べないのか?」

小春「あ、うん。作ってるときに味見してたら、お腹いっぱいになっちゃった」

大輔「ああ、そう……」

……終わった
これは完全に終わった。
ラスボス戦で即死魔法使っても効果が無いのと同じ現象なんだろう、これは。
おまけに、有限ではあるが回復魔法まで唱えてくるツワモノ。
なんつーか……勝てる気がしない。

……そういえば、大家さんは大丈夫だろうか。
大家さんへと視線を向ける。
そこには、元気に料理を食べている大家さんの姿が!
……あるはずもなく、目を回して倒れていた。
安らかに眠ってください、大家さん。

……ん? いや、つーか大家さんがリタイアしたってことは……
残り全部……俺が食べるの……?

冗 談 じ ゃ な い

大輔「安らかに眠ってる場合じゃないです、大家さん」
大家さんの下へと駆け寄り、肩を揺らして起こす。
が、なかなか目を覚ましてくれない。
これはもう駄目かもわからんね。

ふと、大家さんの皿に目をやると、何か違和感が……
これは……料理減ってなくね?
つーか、食べた形跡が一切無いんですが。

……ということは。

大輔「大家さん、起きてますよね? ……もう分かってるんで、諦めてください
よ」

何度か呼びかけると、大家さんはチッと舌打ちをして起き上がった。

大家「……妙なところで、勘がいいんだから」

大輔「……ふっ……この俺を欺こうなんて100年早いですよ……」

再び反撃。
今日は、なかなかノってるな。
今までの恨みを晴らせていけてる。
この調子でいけば、いずれ奴隷生活も卒業できるぜ。

大家「明日から毎朝6時に部屋に入ってきて、耳元で呪詛唱えてやるから」

大輔「あ、ごめんなさい。それだけは勘弁してください」

……やっぱり無理っぽかった。
この人にはどうやっても勝てないみたいだ。

小春「さ、悠さんも食べてください」

大家「うん、そうね。いただきます……」

やっと、覚悟を決めてくれたか。
さようなら、大家さん。

大家「……っと、いけない! そろそろペットのオニイトマキエイに餌をあげな
いと!」

小春「え? そうなんですか? それじゃあ残念だけど―――」

大輔「いや、飼ってないですよね、そんなの。妙な嘘つかないでくださいよ」

大家さんがこちらを睨んでくる。
や、エイ飼う人なんて普通いませんから。そんな嘘通じないに決まってるじゃな
いですか。
……小春は見事に信じてたが。
大家さんはしばらくこちらを睨み続けていたが、やがて観念して箸を持った。

大家「……ま、せっかく作ってくれたんだしね。食べないと失礼よね。……んじ
ゃ、いただきます、小春ちゃん」

小春「はい、どうぞ」

そして大家さんは帰らぬ人と、
……なるかと思ったが、流石しぶとい。なんとか意識を保っていた。

小春「……あ、あの……どうでしたか?」

恐る恐る小春が尋ねる。
意識を保っているといっても、大家さんは既に瀕死。
今までに見たことのないような顔をしていた。

大家「……お゛、おいし……かった……わよ……?」

小春「そうですか。よかったー」

大家さんは笑顔で答えているが、どうみても顔が引きつっている。
小春は気にも留めてないが。なにか、小春フィルター的なものを通しているのだ
ろう。別にいいさ。

小春「どんどん食べてねー」

ボトボトという音ともに、そんな声が聞こえてきた。
おそるおそる皿に視線を戻すと……山盛りのスライムが。

これは……リジェネーターか何かだろうか……
いや、仲間を呼んだというべきか……
っていうか、お玉で掬い上げて皿に落とす時点でハンバーグの扱いじゃないし。
つーか、まだ大量に残ってる臭いんですけど……
これ全部、食べなきゃだよな……うん。
大家さんの方にチラリと目をやると、既に放心状態になっていた。

大輔(ああ……俺が一体何をしたと言うんだ……)

そんな俺の嘆きも空しく、直もスライムは皿に盛られていくのであった。