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【フェードイン、屋外(大学生になりました)】



誠司 「好きなんだ…」



大輔 「はい?」



状況がよく見えない。
今日は確か、いつも小春と誠司、俺で昼飯を食べてるんだけど、小春がサークル
の集まりとかで一緒に食べられないから二人で昼飯を食べることになったんだ。



誠司 「たまには、さ…学食じゃなくて違うとこで食べねぇ?」



誠司が珍しくそんなことを言ったもんだから二月の寒空の下、嫌々大学の中庭の
ベンチに腰掛けてパンを頬張っていたんだった。
そう、覚えてる。
でもそれからどういう流れでこんなことになってるかは全く覚えてない。
だから俺が間の抜けた声を出してしまうのも当たり前と言えば当たり前なわけで



誠司 「だから…好き、なんだよ。高校3年の…夏くらいから」



【ドカーン】
何言ってんの、このひとーーーーッ!!?




大輔 「…え、や、お前…そーゆー趣味だったの…?結構付き合い長いけど、そう
だったなんて気づかな───」



誠司 「気づいてなかったわけないだろ?!」



ガシッと誠司の両手が俺の両肩を掴む。
ヒイッ!
怖い…怖いっ!!!
いつになく真面目な誠司の顔が怖い…
「あ、俺もしかしたら食われるのかな」
そう思った瞬間だった。



誠司 「小春とお前、一応幼馴染みなんだから小春に俺のこと勧めてくれよ!」



大輔 「……え、小春?俺じゃなくて?」



誠司 「…何キモイこと言ってんの」



素早く俺から身を離す誠司。
や、元はと言えばこんな人気のないところに連れ出す方が悪いだろ?!



大輔 「主語も無しに真面目な顔して言われたら誤解すんに決まってんだろーがっ
!!」



誠司 「ちょ、マジ勘弁して。キモイ。俺に近寄らないで」



並んで座っていたベンチの端ギリギリまで身を離す誠司。
本当にムカツク…



誠司 「どうせ俺のこと、いつも薄汚れた眼で見てたんだろっ!?俺の体が目当て
だったのねっ!」



大輔 「…………」



誰 か コ イ ツ を 黙 ら せ て く れ




大輔 「…で?小春のこと好きなんだ?」



誠司 「おう。だから協力してくれ!」



大輔 「…協力って、例えば?」



誠司 「例えば~小春をどうにかして俺の彼女にするとか?」



【ツッコミ】
大輔 「他人任せすぎだろ」



誠司 「頼むよ、大ちゃ~ん」



俺の肩を腕を回す誠司
近づくなって言ったり近づいてきたり忙しい奴だな…



大輔 「キモイ」



誠司 「つれないこと言うなよー、俺とお前の仲だろ。心の友だろ、俺たちっ!」



あれ、こういうのってどっかで…
ああ、あれだ



大輔 「…お前さ、ド○えもん見たことある?」



誠司 「うん?あるけど」



大輔 「ジャ○アンてさ、お前に似てるよな」



誠司 「!!?」



大輔 「都合の良い時だけ友達扱いするとことか」



誠司 「…………」



大輔 「たまにちょっとだけかっこよくなって、実はいい奴みたいなポジションにいたと    か」



誠司 「…………」



大輔 「ジャイ○ンって卑怯だよな、真面目に考えてみると」



【ドカーン】
誠司 「!!!」



大輔 「特に映画版のドラ○もんは───」



誠司 「…大輔はさ」



大輔 「?」



誠司 「俺にだけ毒舌だよな…」



大輔 「愛だよ、愛」



嘘だけど



誠司 「!…大輔ったらやっぱり俺のことそーゆー眼で…っ!」



【ツッコミ】
大輔 「ねぇよ!」



誠司 「ともかくだ。お前にしか頼めないんだよ!!なんとかならない?」



そのまま、ベンチから滑り降り、目の前で両手を合わせて土下座をする。



大輔 「なんとかって言われてもなー……俺にどうしろと……」



誠司 「そこは、ドラえも○の秘密道具とか」



大輔 「んなもんあるかッ!ていうか、そんな下心を叶える秘密兵器なんて登場しねぇ!!」



誠司 「…………ケチ(ボソッ」



大輔 「そういう問題かッ!?」



……ったく。
こいつはホントに昔から変わらないな。
その元気さに、ある意味救われてたりするが。
実際、大学生活を楽しく過ごしてるのもコイツのおかげだし。
あんまり、認めたくはないけど。
…………たまには、協力してやるのも悪くはない、か。




大輔 「はぁー……わかった。少し考えてみるよ」



誠司 「マジかッ!?」



大輔 「あぁ」



誠司 「よっしゃぁぁぁぁ!!おぉ~心の友よ~!」




大輔 「うざい、くっつくな。そして、いい加減そのネタから離れろ」




誠司 「照れるな照れるな。もっとくっついてやろうか?」




大輔 「!…誠司ったらやっぱり俺のことそーゆー眼で…っ!」



誠司 「うん」



大輔 「そこは否定しろよッ!?」



誠司 「……いや~、でもよかったよかった。普通に断られると思ってたからさー」



大輔 「なんでだ?」


急に真面目に戻った誠司に少し違和感を覚え、聞き返す。
少し言いにくそうに頭を掻きながら、誠司は答えた。



誠司 「なんていうかさ……お前も小春のこと好きなのかなーって思ってたから」



大輔 「……は?」



誠司 「いや、お前の行動見ててそう思っただけ。でも、俺の勘違いだったみたいだな……っと」



誠司 「やべぇ、もうこんな時間か。わりぃ、講義受けてくるわ!」



大輔 「あ……あぁ、わかった」



誠司 「何か決まったらメール送っといてッ!じゃな!!」



誠司が、慌しく構内に戻っていく。
アイツが居なくなったあとには、静寂だけが残った。


俺が……小春のことを好き?
誠司の言葉が、胸を刺していく。
確かに、大学に入ってから可愛くなったとは思う。
でも、好きなのかどうか考えたことはなかった。
付き合うことは絶対にない。

――だけど、誠司が小春のことを好きといってから、胸に引っかかっているこの気持ちは一体なんなんだろうか。
まさか、俺も小春のことを――



大輔 「………さむ……戻るか」


雑念を吹っ切るように、勢いよくベンチから立ち上がる。


あるはずがない。
誠司と約束した手前、そんなことがあっては――――


【場面転換】


小春 「遊園地?」


5限が終わり誰も居なくなった室内に、小春の声が響く。
俺は、昨日の作戦会議を思い出しながら、次の言葉を紡いだ。


大輔 「そ、遊園地。誠司と話しあってさ、もしよかったら今週の土曜にでも行かない?」


小春 「いきなりどうしたの?」


大輔 「あ~……大学に入ってから3人で全然遊んでないだろ?だから、たまにはと思って」


ホントは違うけど。


小春 「えっと、ちょっと待ってて。今、予定入ってないか調べるね」


そう言って、小春は手元に置いてあったカバンから手帳を取り出しペラペラとめくり始めた。
俺はその間に会議のおさらいをするべく、昨日のことを思い出す。


【場面転換】



誠司 『遊園地?』


大輔 『あぁ、それくらいしか思い浮かばなくてな』


誠司 『……なんか、大輔って意外と子供なんだな』


大輔 『切るぞコラ』


誠司 『いやん、大輔ちゃんったら怖い!!』


【電話を切る音】

【ツーツーツーみたいな音】

【電話がかかってくる音】

【ボタンを押す音】


誠司 『なんで切るんだよッ!!?』


大輔 『や、あまりにもウザかったからつい』


誠司 『やっぱり大輔って俺には毒舌……』


大輔 『あぁ、そうだな。で、続けていいか?』


誠司 『嫌』


【電話を切る音】

【ツーツーツーみたいな音】

【電話がかかってくる音】

【ボタンを押す音】


誠司 『冗談なのにすぐ切るなよ!!?これって結構傷つくんだ――――』


【電話を切る音】

【ツーツーツーみたいな音】

【電話がかかってくる音】

【ボタンを押す音】


誠司 『スミマセン、ゴメンナサイ、もう生意気なことは言わないので切らないでください』


大輔 『よし、続けるぞ』


誠司 『ハイ、よろしくお願いします』



【場面転換】


真面目なことしゃべってないなオイ。

……まぁ纏めると、あとから俺が用事で抜けるということに落ち着き、今に至る。
ありきたりだけど、俺のちっぽけな脳じゃコレしか思いつかなかったのだからしょうがない。



小春 「あ、うん。大丈夫だよ、その日はなんにも無いみたい」


大輔 「ん、じゃあ10時に駅前集合で。そこからみんなで行こう」


小春 「りょうかいしました~」


大輔 「よろしく。それじゃあ、今日は帰るわ」


小春 「あ……ちょっと待って!!」


ドアノブに手をかけたところで小春に呼び止められ、後ろを振り向く。


大輔 「どうした?」


小春 「え……えっと……あの……」


大輔 「?」


小春 「もしよかったらだけど……今日、何も無かったら一緒に帰らない?」


小春の言葉に、少し拍子抜けする。
言いにくそうにしていたから、当日に用事があるのを思い出したのかと思ったじゃないか。
……まぁ、それくらいなら大丈夫だろう。


大輔 「え?……あぁ、うん。別に構わないけど」


小春 「ホントにッ!?よかったぁ~……」


大輔 「よかった?」


小春 「へッ!!?あ、なんでもない、なんでもないよ!!」

小春 「あ、ちょ……ちょっと準備するから、出口のところで待っててくれないかなッ!?」


大輔 「あ……あぁ、じゃあ先に行ってるな」


小春 「うんッ!それじゃあ、またあとで!!」


ガチャン



俺は小春に追い出されるようにして、室内から退出した。
…………なんだったんだ?

………
……




【場面転換】



小春 「ハァハァ……ご……ゴメン、ま…待った!?」


大輔 「い……いや、全然」



待ったもなにも……あれから、まだ5分しか経ってないのにわけで。
わざわざ走ってくるとは予想外デス。


大輔 「…………大丈夫?」


小春 「う……うん、大丈夫」


大輔 「そっか、ならよかった」


小春 「うん」


大輔 「…………」


小春 「…………」


大輔 「あ~……それじゃあ、行くぞ」


小春 「うん、そうだね」


二人並んでゆっくりと歩く。


大輔 「…………」


小春 「…………」


ゆっくりと、ゆっくりと。


大輔 「…………」


小春 「…………」


周りの風景を楽しみながら。


大輔 「…………」


小春 「…………」



ウッキウッキワックワックたのし


大輔 「くねえぇえええええぇぇぇえええええぇええええぇぇぇえぇッ!!?」


小春 「きゃっ!?ど……どうしたのッ!?」


大輔 「ハッ!?わ……悪い、何でもない」


……つい、心の声が。
って、何で無言なんだ。
というか……


何 故 こ ん な に 重 い 空 気 ?


今まで小春と話していて、こんな風になったことなんて……


…………あぁ、そうか。忘れてた。


今日は、アイツがいないからか。
よく考えてみると、
3人一緒に帰ることはよくあった、2人で帰ることはこれが初めてだった気がする。


うわ、なんか気まずい……
全部話題作りは誠司に任せてたから、俺から話しかけたことなんて両手で数え切れるくらいだし。
今更、趣味の話をするような段階でもない。

……それに、誠司の『あの』言葉のおかげで小春を妙に意識して余計に――――


あ゛ぁ゛~もう!!こうなったのも全部アイツのせいだ!!
今度、何かを奢ってもらうことにしよう。



小春 「……ふふっ」


大輔 「……?何かあった?」


小春 「へ?」


大輔 「いや、笑ってたから。何か可笑しいことでもあっ……たな。さっきの奇声は忘れてくれ」


そりゃ、いきなり叫んだら誰だってそうなるだろう。
むしろ、引かないで笑ってくれてありがとう。切実に。


小春 「あ、違う違う。そのことで笑ったんじゃないよ?」


大輔 「…………?」


小春 「懐かしいな、っと思って」


大輔 「懐かしい?」


小春 「うん、柳君は覚えてないかもしれないけど……」


小春は懐かしそうに、目を細めながら上を向く。
そして、突然俺の方を向いたかと思うと――


小春 「えいっ」


大輔 「ッ!!?」


俺の手を、両手で握りしめていた。
寒さに凍えていた手に、ぬくもりが伝わる。


小春 「昔、こうやって一緒に帰ったの思い出して……えへへ」


大輔 「そ……そんなことあったっけ」


小春 「もう10年以上前だけどね~」


そう言って、俺の手をジッと見つめる。


小春 「…………えっと、お願いがあるんだけどいいかな?」



大輔 「ん?」



小春 「久しぶりに……このまま帰ってもいい?」



大輔 「ハイッ!?」



いや待て、落ち着け。何でコレくらいで動揺してるんだ俺。
手を繋ぐくらい今までいくらでも……あるわけないからだよな、常考。
どうする、どうするよ俺!?


小春 「……返事が無いってことはOKってこと?」


大輔 「え、あ……あぁ。まぁ……」


小春 「やった!それじゃあ、行こっか」


大輔 「あ、おい!!」


満面の笑みを浮かべ、強引に歩いていく小春。
不覚にも、その笑顔にドキリとしてしまう。
しかし、同時に誠司に対する罪悪感が浮かんでくる。


…………まぁ、しょうがないことだ。
向こうから言ってきたんだし、あそこで断ったら気まずい雰囲気になる。
そう……これはしょうがないこと。
俺が言ったわけでは無いんだから。


………
……



小春 「あ、私こっちだからここで大丈夫」


大輔 「ん、わかった。それじゃあ、気をつけてな」


小春 「うん、バイバイ。土曜日楽しみにしてるね」


大輔 「おう」



手を振りながら、歩いていく小春を見送る。
そして、角を曲がり見えなくなったところで――――



大輔 「…………はぁ~」


盛大にため息をついた。


…………疲れた。
こんなに気を使って、喋ったのは何年ぶりだろうか。


……って、何で気を使う必要があるんだ。
それじゃあ、まるで――――


出てきそうになった言葉を急いで飲み込む。
これ以上は考えないほうがよさそうだ。



大輔 「土曜日……気が重いな」


首をあげ、空を見つめる。
この寒さのせいか、星が憎らしいくらい輝いていた。