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[[1日目【夜の散歩は危険がいっぱい!?】]]より 【背景:主人公の部屋】 【BGM:すずめのちゅちゅん】 大輔「……っく!」 布団から飛び起きる。 また"あの夢"だ。 朝からこうとは、気分が沈む。 最近よく見る気がするが、久しぶりに他人と知り合ったからだろうか。 いい加減、引きずりたくは無いのだが…… まだまだ難しいようだ。 大輔「とりあえず、顔洗うか……」 【SE:水流】 のそのそと洗面所へ向かい、顔を洗う。 冷たい水が顔にかかっていく毎に、思考がクリアになっていく。 大輔「あー……、目ぇ覚めた」 呟きながら服を脱ぎ、洗濯籠へ。 パンツ一枚になったところで、服を取りに居間へ ???「おはよー。目が覚めたなら、さっさと朝食作っといてー」 ……行こうとしたところで背後から声が。 気のせいだろうか。 でも確かに声が…… ……いやいや。 俺、一人暮らしだし。誰か居るはず無いし。 そう、この部屋には俺しか居ない。さっきのは空耳。 うん、きっとそうだ。いや、絶対に。 そう納得したところで振り返る。 【BGM:ハッピースキップ(変更可能性大)】 大輔「……あー……」 イタ。イマシタヨ。 しかも、よく見知った顔が。 どうみてもアパートの大家さんです。本当にありがとうございました。 実は大家さんの部屋だったとか…… いや、それはないな……常考。 大輔「……なんでここに居るんですか……?」 とりあえず、一番の疑問をぶつけてみる。 【大家:立絵】 大家「へ? だって、私大家だし。それよりも朝食作ってよ」 はい? 意味が分かりませんが。 「だって、私大家だし」 ……もしかするとこの言葉には、とても深い意味があるのかもしれない。 ……いや、どう考えても無いな。 大輔「……言葉の意味がわかんないんですけど」 大家「……お腹が空いたから、朝ごはんを作って欲しいって頼んでるんだけど。まだ寝ぼけてんの?」 大輔「いや、そっちじゃなくて。なぜここに居るのかと……『私大家だし』って理由になってないですから」 うん、俺おかしくないよな。まともなこと言ってるよな。 当然の反応だよな。 でも、なぜこの人はキョトンとしているんだろう。 まるで俺がおかしいことを言っているみたいじゃないか。 大家「大家だし、鍵開けて部屋入っても問題ないでしょ?」 ……なんですか、この俺ルールは。 つーか、マジだよこの人。本気でそう思っちゃってるよ。 大輔「いや、駄目ですからね。犯罪ですよ、それ」 まぁ、ちゃんと注意しておけば問題ないだろう。 大家「あー、そうなん? 気に留めておくわー」 面倒くさそうに、そう答えた。 反省の色無し。絶対に再犯するよ、この人。 大家「んで、問題解決したところでさ、朝食作ってよ」 ……なんかもう、どうでもいいや。 っていうか、この人の朝食に対する執着心は異常。 大輔「分かりましたよ。作りますから、ちょっと待っててください……」 とりあえず居間へ戻り、服を着てから台所へと向かう。 大家「あら、裸族に目覚めたのかと思ったら、服着るのね」 何か言ってるが、華麗にスルー。 いちいち対応しても疲れるだけ。ちぃおぼえた! 【背景:主人公部屋天井隅みたいの】ひだりからおしだし ……さて、何を作ろうか。 と考えたところで、材料は大家さんが持ってきたものだから、作れるものは限られてくるんだが。 とりあえず、冷蔵庫を確認する。 卵と……卵と……ああ……卵だけか…… スクランブルエッグでいいかな…… 冷蔵庫から卵を2個取り、調理を開始した。 【SE:料理】 料理をしていると、日々、料理スキルが上昇していくのが感じられる。 ……まぁ、それも大家さんの所為なのだが。 キュウリと調味料だけ持ってこられて、「これで美味いもの作れ」なんて言われたら嫌でも料理が上手くなる。 そういえば、こうして大家さんが料理を要求してくるのは、いつからだっただろうか。 引きこもり始めてから、ある程度落ち着いてきた頃だったと思うが…… いつの間にか、大家さんが材料を持ってきて、俺が作る(強制)という関係が築かれていた。 このままだと、知らぬ間に奴隷化していきそうだ。恐ろしい。 ……そういえば、梨亜も料理とかするんだろうか。 もしそうなら、少しは話がしやすいかもしれないな。 ……と、いつの間にか料理が出来ていた。 というか、出来すぎていた。大分、焦げついてるよ。 考え事をしながら作るものじゃないな。 ……まぁ、あの人なら気にせず食うだろう。多分。 明らかにマズそうだし、俺は食わないけどNA! 【背景:主人公部屋】【立絵:大家】 大輔「……はい、できましたよっと」 居間に皿を運び、机に置く。 大家「……いつもより前衛的な出来ねー。別にいいけどさ」 ぼやきながら料理を食べ始める。 やっぱり、焦げてても気にしなかったか。微妙に体に悪そうだけど、自己責任だよな。 大家「うわ! マズ!」 ああ、やっぱり。 っていうか、見て分からなかったのだろうか。 それでも大家さんは、全て食べてしまった。 この人って、味には拘るくせに、どんなに不味くても、結局全部食べるんだよな…… 嬉しいと言えば嬉しいが。 ふと、時計を見る。 ……もう10時か。 いつもなら、大家さんも帰る頃なんだが、今日は一向に帰る気配が無い。 何か用事でもあるんだろうか? とりあえず、尋ねてみるか。 大輔「えっと、大家さん? 何か用でもあるんですか?」 大家「あー、大輔さー、公園で何かあった?」 大輔「は、はい? な、何でですか?」 ああ、明らかに動揺してるよ、俺。 大家「いや、最近帰るの遅いからさ。それに、珍しく料理失敗してたし」 ああ、確かに。 梨亜と話したりしてたせいで、帰るのが遅くなってたしな…… 別に隠すことでも無い気がするが、何となく嫌なんだよなー。大家さんに話すの。 ここは、誤魔化しておくか…… 大輔「い、いや、少し遠くまで歩いてみてるんですよ。だから遅く―――」 大家「女?」 俺が言い終わらないうちに、重ねてくる。 しかも、当たってるしね! 誤魔化せてないSHINE! 本当、なんなんだこの人は…… なんかもう、どうあがいても隠せる気がしないし、話すしかないか…… 大輔「……何で分かるんですか。あー、えーっと、一昨日の話なんですけど……」 大家「あ、冗談のつもりだったんだけど、本当に女絡みだったんだ」 ……自爆した。 仕方ないので、そのまま続けて一部始終を話した。 脚色なんてしてないです。……少ししか。 大家「んでさ、大輔はその女の子が好きなわけ?」 ニヤニヤしながら、尋ねてくる。 だから嫌だったんですよ、この人に話すのは。 大輔「い、いや、そういうのは……よく分からん……と思う……」 大家「ふーん、ま、別にいいけどね。前に比べると、随分進歩したじゃん」 【場面転換】 【背景:黒】(もやもやと暗転) 【BGMSTOP】 確かに……あの頃に比べたら、かなりマシになった。 俺が引きこもり始めたのは、大学に入学してしばらく経った頃。 原因は、大学での人間関係の縺れ。 引きこもるのはこれが初めてではなかった。 俺は高校時代にも、両親が死んだことで、引きこもっていた。 それでも、克服することは出来た。 それは多分、友人の支えがあったからだと思う。 だけど……今回の場合は……ケースが違う…… 今まで築き上げてきたものも全て壊れてしまった…… 友人たちも全て……失った。 でも、ただ一つ、大家さんとの関係だけは無くならなかった。 大家さんは俺が引きこもっている間、ずっと支えていてくれた。 俺が公園に出るようになったのも、大家さんに言われたからだ。 あれは確か、俺の引きこもりも大分落ち着いてきた頃…… 【場面転換】 【主人公の部屋】(もやもやと) 【BGM:なつかしいあの頃】【画面効果セピア】 大家「そろそろ、外に出てみよっか?」 夏ももう終わりか。 なんて、ぼうっと考えているところに、飛び込んできた言葉。 また、冗談か何かかと思って聞き流そうとしたが、大家さんはどうやら本気らしい。 俺が引きこもり始めてから、数ヶ月。 初めのうちは、毎日やってくる大家さんを鬱陶しく思い、突っぱねていたが、今では大分落ち着き、普通に接することが出来ている。 ここまで立ち直れたのも大家さんのおかげだし、今でも俺の引きこもりを克服させようとしてくれている。 しかし、これは幾らなんでも急すぎないだろうか。 大家さんとは、今までどおりに接することが出来るようになったものの、それでも未だ他人を見るだけで幻聴が聴こえてくる。 そんな状態で外に出れるわけがない。 大輔「……い、いやぁ……、ま、まだ無理……だと思います……」 大家「まだやってもないでしょ? 無理なら無理で直ぐに部屋に戻ればいいしさ。……外に、出たくない?」 ……外には出たい。 今までみたいに、堂々と人の居る場所を歩きたい。 ……けど、他人会うのが怖い。 大輔「出たくないことも……ないですけど……、で、でも、やっぱり無理っていうか……怖いっていうか……」 俺がハッキリしないでいるのに痺れを切らしたのか、大家さんは立ち上がり、俺の手を掴んで、そのまま玄関へと向かった。 大輔「ちょ、ちょ、ま! ス、ストップ!」 必死に静止するが、華麗にスルーされる。 大家「どうせ今は夜中だし、人居ないでしょ。大丈夫大丈夫」 そう言われて、結局俺は外に連れ出されてしまった。 【場面転換】 【背景:アパートの外】ひだりからめくり 【SE:扉】 何ヶ月ぶりだろうか。 食事なども大家さんの世話になっていたため、引きこもり始めてから一度も外に出ていない。 久しぶりに見た外の世界。 月や星が綺麗だ。以前は、こういうものに目を向けていなかったことな…… 当たり前に感じていたものも、今では新鮮に見える。 大家「ほら、出てみてよかったでしょ?」 その言葉に自然と頷く。 大家「明日からさ、夜に散歩するようにしなよ。最初はアパートの周りだけ。その後で、少しずつ距離をのばしていけばいいからさ」 突然の提案。 少し考えたが、俺は深く頷いた。 久しぶりに外に出たことで興奮していたし、外の世界に魅力を感じていたのもあったと思う。 それに今は深夜。アパートの辺りを通る人なんて殆ど居ない。 俺に、外に出ることが案外、何でもないことなのだと錯覚させるには十分だった。 ……こうして、夜の散歩が始まった。 【場面転換】 【背景:主人公の部屋】 (もやもやと)【BGM:すずめのちゅちゅん】 夜の散歩を始めて、もうすぐ一年…… 散歩を始めてから、初めて他人に出合ったときは、正直挫折しそうになった。 元々、雰囲気に流されて始めたようなもの。 そこでやめても、おかしくなかったと思う。 それでも、散歩を続けようとしたのは、やはり大家さんが励ましてくれていたからだ。 だから俺は今でも散歩を続けているし、距離も徐々にだが、のばせている。 もしも大家さんが居なければ、俺は今でも引きこもり始めた時のままだったと思う。 大輔「……ありがとうございます」 ……そんなことを考えていたせいか、自然と感謝の言葉が出ていた。 顔を見て言えるほどの度胸はなかったので、俯いたままだったが。 ふと、疑問が出てきた。 なぜ、大家さんは俺のために、ここまでしてくれたのだろう。 元々、めちゃくちゃ仲が良かったわけでもない。 それなのに、なぜ? 顔を上げ、大家さんに尋ねようとする。 ……が、そこには既に大家さんは居なかった。 いつの間に帰ったのだろうか。 まぁ、いいさ。今度会った時に聞けば。 そう思ったが、何となく誤魔化されそうな気がした。
[[1日目【夜の散歩は危険がいっぱい!?】]]より 【背景:主人公の部屋】 【BGM:すずめのちゅちゅん】 大輔「……っく!」 布団から飛び起きる。 また"あの夢"だ。 朝からこうとは、気分が沈む。 最近よく見る気がするが、久しぶりに他人と知り合ったからだろうか。 いい加減、引きずりたくは無いのだが…… まだまだ難しいようだ。 大輔「とりあえず、顔洗うか……」 【SE:水流】 のそのそと洗面所へ向かい、顔を洗う。 冷たい水が顔にかかっていく毎に、思考がクリアになっていく。 大輔「あー……、目ぇ覚めた」 呟きながら服を脱ぎ、洗濯籠へ。 パンツ一枚になったところで、服を取りに居間へ ???「おはよー。目が覚めたなら、さっさと朝食作っといてー」 ……行こうとしたところで背後から声が。 気のせいだろうか。 でも確かに声が…… ……いやいや。 俺、一人暮らしだし。誰か居るはず無いし。 そう、この部屋には俺しか居ない。さっきのは空耳。 うん、きっとそうだ。いや、絶対に。 そう納得したところで振り返る。 【BGM:ハッピースキップ(変更可能性大)】 大輔「……あー……」 イタ。イマシタヨ。 しかも、よく見知った顔が。 どうみてもアパートの大家さんです。本当にありがとうございました。 実は大家さんの部屋だったとか…… いや、それはないな……常考。 大輔「……なんでここに居るんですか……?」 とりあえず、一番の疑問をぶつけてみる。 【大家:立絵】 大家「へ? だって、私大家だし。それよりも朝食作ってよ」 はい? 意味が分かりませんが。 「だって、私大家だし」 ……もしかするとこの言葉には、とても深い意味があるのかもしれない。 ……いや、どう考えても無いな。 大輔「……言葉の意味がわかんないんですけど」 大家「……お腹が空いたから、朝ごはんを作って欲しいって頼んでるんだけど。まだ寝ぼけてんの?」 大輔「いや、そっちじゃなくて。なぜここに居るのかと……『私大家だし』って理由になってないですから」 うん、俺おかしくないよな。まともなこと言ってるよな。 当然の反応だよな。 でも、なぜこの人はキョトンとしているんだろう。 まるで俺がおかしいことを言っているみたいじゃないか。 大家「大家だし、鍵開けて部屋入っても問題ないでしょ?」 ……なんですか、この俺ルールは。 つーか、マジだよこの人。本気でそう思っちゃってるよ。 大輔「いや、駄目ですからね。犯罪ですよ、それ」 まぁ、ちゃんと注意しておけば問題ないだろう。 大家「あー、そうなん? 気に留めておくわー」 面倒くさそうに、そう答えた。 反省の色無し。絶対に再犯するよ、この人。 大家「んで、問題解決したところでさ、朝食作ってよ」 ……なんかもう、どうでもいいや。 っていうか、この人の朝食に対する執着心は異常。 大輔「分かりましたよ。作りますから、ちょっと待っててください……」 とりあえず居間へ戻り、服を着てから台所へと向かう。 大家「あら、裸族に目覚めたのかと思ったら、服着るのね」 何か言ってるが、華麗にスルー。 いちいち対応しても疲れるだけ。ちぃおぼえた! 【背景:主人公部屋天井隅みたいの】ひだりからおしだし ……さて、何を作ろうか。 と考えたところで、材料は大家さんが持ってきたものだから、作れるものは限られてくるんだが。 とりあえず、冷蔵庫を確認する。 卵と……卵と……ああ……卵だけか…… スクランブルエッグでいいかな…… 冷蔵庫から卵を2個取り、調理を開始した。 【SE:料理】 料理をしていると、日々、料理スキルが上昇していくのが感じられる。 ……まぁ、それも大家さんの所為なのだが。 キュウリと調味料だけ持ってこられて、「これで美味いもの作れ」なんて言われたら嫌でも料理が上手くなる。 そういえば、こうして大家さんが料理を要求してくるのは、いつからだっただろうか。 引きこもり始めてから、ある程度落ち着いてきた頃だったと思うが…… いつの間にか、大家さんが材料を持ってきて、俺が作る(強制)という関係が築かれていた。 このままだと、知らぬ間に奴隷化していきそうだ。恐ろしい。 ……そういえば、梨亜も料理とかするんだろうか。 もしそうなら、少しは話がしやすいかもしれないな。 ……と、いつの間にか料理が出来ていた。 というか、出来すぎていた。大分、焦げついてるよ。 考え事をしながら作るものじゃないな。 ……まぁ、あの人なら気にせず食うだろう。多分。 明らかにマズそうだし、俺は食わないけどNA! 【背景:主人公部屋】【立絵:大家】 大輔「……はい、できましたよっと」 居間に皿を運び、机に置く。 大家「……いつもより前衛的な出来ねー。別にいいけどさ」 ぼやきながら料理を食べ始める。 やっぱり、焦げてても気にしなかったか。微妙に体に悪そうだけど、自己責任だよな。 大家「うわ! マズ!」 ああ、やっぱり。 っていうか、見て分からなかったのだろうか。 それでも大家さんは、全て食べてしまった。 この人って、味には拘るくせに、どんなに不味くても、結局全部食べるんだよな…… 嬉しいと言えば嬉しいが。 ふと、時計を見る。 ……もう10時か。 いつもなら、大家さんも帰る頃なんだが、今日は一向に帰る気配が無い。 何か用事でもあるんだろうか? とりあえず、尋ねてみるか。 大輔「えっと、大家さん? 何か用でもあるんですか?」 大家「あー、大輔さー、公園で何かあった?」 大輔「は、はい? な、何でですか?」 ああ、明らかに動揺してるよ、俺。 大家「いや、最近帰るの遅いからさ。それに、珍しく料理失敗してたし」 ああ、確かに。 梨亜と話したりしてたせいで、帰るのが遅くなってたしな…… 別に隠すことでも無い気がするが、何となく嫌なんだよなー。大家さんに話すの。 ここは、誤魔化しておくか…… 大輔「い、いや、少し遠くまで歩いてみてるんですよ。だから遅く―――」 大家「女?」 俺が言い終わらないうちに、重ねてくる。 しかも、当たってるしね! 誤魔化せてないSHINE! 本当、なんなんだこの人は…… なんかもう、どうあがいても隠せる気がしないし、話すしかないか…… 大輔「……何で分かるんですか。あー、えーっと、一昨日の話なんですけど……」 大家「あ、冗談のつもりだったんだけど、本当に女絡みだったんだ」 ……自爆した。 仕方ないので、そのまま続けて一部始終を話した。 脚色なんてしてないです。……少ししか。 大家「んでさ、大輔はその女の子が好きなわけ?」 ニヤニヤしながら、尋ねてくる。 だから嫌だったんですよ、この人に話すのは。 大輔「い、いや、そういうのは……よく分からん……と思う……」 大家「ふーん、ま、別にいいけどね。前に比べると、随分進歩したじゃん」 【場面転換】 【背景:黒】(もやもやと暗転) 【BGMSTOP】 確かに……あの頃に比べたら、かなりマシになった。 俺が引きこもり始めたのは、大学に入学してしばらく経った頃。 原因は、大学での人間関係の縺れ。 引きこもるのはこれが初めてではなかった。 俺は高校時代にも、両親が死んだことで、引きこもっていた。 それでも、克服することは出来た。 それは多分、友人の支えがあったからだと思う。 だけど……今回の場合は……ケースが違う…… 今まで築き上げてきたものも全て壊れてしまった…… 友人たちも全て……失った。 でも、ただ一つ、大家さんとの関係だけは無くならなかった。 大家さんは俺が引きこもっている間、ずっと支えていてくれた。 俺が公園に出るようになったのも、大家さんに言われたからだ。 あれは確か、俺の引きこもりも大分落ち着いてきた頃…… 【場面転換】 【主人公の部屋】(もやもやと) 【BGM:なつかしいあの頃】【画面効果セピア】 大家「そろそろ、外に出てみよっか?」 夏ももう終わりか。 なんて、ぼうっと考えているところに、飛び込んできた言葉。 また、冗談か何かかと思って聞き流そうとしたが、大家さんはどうやら本気らしい。 俺が引きこもり始めてから、数ヶ月。 初めのうちは、毎日やってくる大家さんを鬱陶しく思い、突っぱねていたが、今では大分落ち着き、普通に接することが出来ている。 ここまで立ち直れたのも大家さんのおかげだし、今でも俺の引きこもりを克服させようとしてくれている。 しかし、これは幾らなんでも急すぎないだろうか。 大家さんとは、今までどおりに接することが出来るようになったものの、それでも未だ他人を見るだけで幻聴が聴こえてくる。 そんな状態で外に出れるわけがない。 大輔「……い、いやぁ……、ま、まだ無理……だと思います……」 大家「まだやってもないでしょ? 無理なら無理で直ぐに部屋に戻ればいいしさ。……外に、出たくない?」 ……外には出たい。 今までみたいに、堂々と人の居る場所を歩きたい。 ……けど、他人会うのが怖い。 大輔「出たくないことも……ないですけど……、で、でも、やっぱり無理っていうか……怖いっていうか……」 俺がハッキリしないでいるのに痺れを切らしたのか、大家さんは立ち上がり、俺の手を掴んで、そのまま玄関へと向かった。 大輔「ちょ、ちょ、ま! ス、ストップ!」 必死に静止するが、華麗にスルーされる。 大家「どうせ今は夜中だし、人居ないでしょ。大丈夫大丈夫」 そう言われて、結局俺は外に連れ出されてしまった。 【場面転換】 【背景:アパートの外】ひだりからめくり 【SE:扉】 何ヶ月ぶりだろうか。 食事なども大家さんの世話になっていたため、引きこもり始めてから一度も外に出ていない。 久しぶりに見た外の世界。 月や星が綺麗だ。以前は、こういうものに目を向けていなかったことな…… 当たり前に感じていたものも、今では新鮮に見える。 大家「ほら、出てみてよかったでしょ?」 その言葉に自然と頷く。 大家「明日からさ、夜に散歩するようにしなよ。最初はアパートの周りだけ。その後で、少しずつ距離をのばしていけばいいからさ」 突然の提案。 少し考えたが、俺は深く頷いた。 久しぶりに外に出たことで興奮していたし、外の世界に魅力を感じていたのもあったと思う。 それに今は深夜。アパートの辺りを通る人なんて殆ど居ない。 俺に、外に出ることが案外、何でもないことなのだと錯覚させるには十分だった。 ……こうして、夜の散歩が始まった。 【場面転換】 【背景:主人公の部屋】 (もやもやと)【BGM:すずめのちゅちゅん】 夜の散歩を始めて、もうすぐ一年…… 散歩を始めてから、初めて他人に出合ったときは、正直挫折しそうになった。 元々、雰囲気に流されて始めたようなもの。 そこでやめても、おかしくなかったと思う。 それでも、散歩を続けようとしたのは、やはり大家さんが励ましてくれていたからだ。 だから俺は今でも散歩を続けているし、距離も徐々にだが、のばせている。 もしも大家さんが居なければ、俺は今でも引きこもり始めた時のままだったと思う。 大輔「……ありがとうございます」 ……そんなことを考えていたせいか、自然と感謝の言葉が出ていた。 顔を見て言えるほどの度胸はなかったので、俯いたままだったが。 ふと、疑問が出てきた。 なぜ、大家さんは俺のために、ここまでしてくれたのだろう。 元々、めちゃくちゃ仲が良かったわけでもない。 それなのに、なぜ? 顔を上げ、大家さんに尋ねようとする。 ……が、そこには既に大家さんは居なかった。 いつの間に帰ったのだろうか。 まぁ、いいさ。今度会った時に聞けば。 そう思ったが、何となく誤魔化されそうな気がした。 [[回想だわ~【僕と小春と、ときどき誠司】]]へ

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