大輔 「…………zzzZZZ~」 ?? 「おぉ~い、起きろ~」 大輔 「あと……5時間……ぐぅ」 ?? 「あらあら、ぐっすり寝ちゃって可愛いものね」 大輔 「すか~……ぴ~……」 ?? 「……フフッ、起こしちゃうのが勿体ないくらい」 大輔 「……ん~……」 ?? 「……なぁ~んて、言うとでもぉ~」 ?? 「思ってんのか、このクソガキィィィィー!!」 カキィィィィィーン 大輔 「イッ……たあああああああぁぁぁぁあああああぁぁあああっ!!?!?」 衝撃で、飛び起きる。 な……何が起こった!!?主に、股間辺りに!!? 悠 「はい、おはよう。 じゃあ、世間一般で昼と呼ばれる時間に起きた感想でも聞こうかしら」 大輔 「た……まが……たまがぁぁぁああぁあっぁぁ!!」 悠 「潰れたかもね。 でも、無くなったところで問題ないじゃない」 大輔 「な……なにしてるんですかッ!!?」 悠 「あんたの股間を、私の足で蹴り上げた」 大輔 「そんなことわかってますよ!!なんでこんなことするんですかッ!?」 悠 「私の朝ご飯が無いからに決まってるじゃない」 大輔 「それくらい自分で作ってくださいよッ!?」 悠 「そんなめんどいことしたくない」 大輔 「この、グウッ……!!」 タラ女、と付け加えそうになって口を慌てて閉じる。 が、遅かった。 悠 「グウ? ……その先は何が続くのかな~?」 不気味な笑みを浮かべて、こちらを睨み付ける大家さん。 まぁ、なんて素敵な表情なんでしょう。 ……じゃなくて…… ま……不味い……思わず口にしてしまったけど、何とか誤魔化さないと洒落にならん。 じゃないと、あれ以上の制裁が待っているだろう。 大輔 「ぐう、ぐう…………ぐぅ~」 俺はゆっくりと布団を手繰り寄せた。 寝たフリ、古来から誤魔化すために使われる最高の一手。 これさえあれば大丈夫!! その成功確率は……成功確率は……? って、成功したの見たことねぇよ!!? 慌てて、飛び起きる。 大根を装備した鬼が居た。 悠 「いい度胸してるわね~、だいすけぇ~?」 大輔 「ま……待った!!謝る、謝るから!!……って、そんなのどこに持ってたのさ!!?」 悠 「いっぱつ~、ぎゃくてん~」 大輔 「ちょ、ストップッ!!?や……やめっ」 悠 「ホォォォォムラァァァァァァァーン!!!!」 カッキィィィィィィィィぃぃーン!! 実況 「おぉーと、コレは大きい、大きいぞーッ!?このままスタンドまで、逝ってしまうのかぁぁぁーッ!?」 空高く舞い上がるゴールデンボール。 あぁ、俺の青春は終わってしまったか。 さようなら、ボール……俺は今日で君とお別れみたいだ。 今まで楽しかったよ、有意義に使ってやれなくて悪かったな。 実況 「逝ったぁぁぁぁぁー!!これは、人生を決める一撃となりそうだぁぁぁぁ!!」 変な解説を耳にしながら、俺は気を失った。 ……… …… … 大輔 「はい、どうぞ」 悠 「ん、ありがと。 やればできるじゃない」 たった、今出来上がったばかりの朝食を机に並べる。 ご飯、味噌汁、焼き魚。 典型的な日本人の朝ごはん。 うん、我ながら最高の出来だと思う。 ……問題があるとすれば、いつこんなものを作ったかなんだが。 気がついたら、キッチンに立っていて目の前にコレが出来上がっていた。 どうやら俺は、いつの間にか意識を失っていても、ご飯を作れるようなっていたらしい。 ……恐るべし、大家の調教マジック。 ……ちくしょう、また手を抜いて黒こげたまごを食べさせようと思ったのに…… 悠 「ん?食べないの?」 俺を恐怖させた本人は、何食わぬ顔で口に箸をくわえたまま、問いかけてきた。 普通にしてるときは、美人なのになぁ…… 大輔 「……食べますよ。 あと、それは行儀悪いので止めて下さい」 悠 「別にいいじゃない。 あんたの家なんだし」 大輔 「そういう問題じゃありません。 …………はぁ~、これ食べ終わったら帰ってくださいよ?」 悠 「なんで?」 大輔 「…………」 居座る気なのか…… こちらとしては、寿命が縮まる気がするので早く帰っていただきたい、結構本気で。 悠 「ん~、帰ってもいいけどよかったの?」 大輔 「何がです?」 悠 「聞きたいことがあるんじゃないかと思ったんだけどね。 そう、例えば――」 大輔 「例えば?」 悠 「小春ちゃんと何故知り合いなのか、とか」 大輔 「…………」 邪気たっぷりの笑顔で、大家さんがこちらを見上げる。 全く、この人はどうして……。 こっちが気になっていることを、簡単に当ててしまうんだろうか。 大輔 「……ご飯、早く食べないと冷めますよ」 悠 「あ、そうね。 先に、食べちゃいましょうか」 大輔 「……えぇ、そうしてください」 俺も椅子に座り、出来立ての食事を頬張る。 ……先に、ね。 少し、誤魔化そうとしたんだが、やはり無駄のようだった。 【一度暗転させる】 悠 「ごちそうさま」 大輔 「お粗末さま。 お茶、いりますか?」 悠 「ん、お願い」 この前、大家さんが買ってきてくれたものが確かまだあったはずだ。 【ガサゴソSE】 あぁ、あったあった。コレコレ。 『水を注いで薄めるだけ!!麦茶・どろり濃厚タイプ!!』 なんかどっかで聞いたことのあるフレーズだなオイ。 というか……麦茶を凝縮して、何の得があるのだろうか。 俺なら絶対に飲まない。例え、喉がカラカラで干からびそうになっても。 ……まぁ、いいや。 どうせあの人が買ってきたものだし、このまま出してやろう。 【水をいれるSE】 大輔 「……………うわ」 【歩くSE】 大輔 「…………どうぞ」 悠 「ん、ありが…………」 俺からコップ受け取ったまま、固まる。 ……まぁ、そうなるわな。 俺だってホントに渡していいのか躊躇したくらいだ。 悠 「…………なにこれ?」 大輔 「少し粘り気が強すぎるお茶です」 悠 「…………お茶?」 大輔 「えぇ、誰がなんと言おうとお茶のような気がします」 悠 「ふ~ん…………そっか」 大輔 「マニアの間では美味しいかもって評判らしいですよ。確認したくもありませんが」 悠 「…………」 【椅子が動くSE】 悠 「…………大輔~」 大輔 「な……なんですか?」 悠 「飲め」 大輔 「……すみません、よく聞こえなかっ――」 悠 「今すぐ、飲め」 大輔 「…………あぁ~、最近耳が遠いん――」 悠 「さっさと、飲め」 大輔 「………………」 悠 「……………(ニコッ」 大輔 「……ゴメンナサイ、もう二度とこんな真似はしません」 ちこっとだけ~