現在未完成未構成 前と同じく書き始めは、食事シーンが終わってから書きます。 大輔 「こんばんは」 梨亜 「こんばんは~。……ちゃんと来てくれたんだね」 大輔 「う、うん」 梨亜はベンチに座ったまま、こちらを見上げてきた。 ……上目使いでその笑顔は、反則だと思います。 俺の精神衛生上、非常によろしくない。 梨亜 「よいしょっと…。でも、遅刻だよ。私なんて、30分も前に来てたんだから」 大輔 「あ……あれ?」 もしかして、時間を間違えてた? 慌てて、時計を確認する。 20時ぴったし……合ってるよな。 大輔 「2時間前で……よかったんだよね?」 梨亜 「うん、そうだよ」 大輔 「なら、遅刻してないんじゃ……」 梨亜 「乙女を待たすなんて、さいて~」 大輔 「………………うぐ」 要するに、時間通りに来ても梨亜より遅かったら遅刻になるってことね。 …………どこの独裁者だよ…… 梨亜 「あはは、冗談だよ?半分」 大輔 「………………」 ……半分は本気だったんだな。 梨亜 「……これからは気をつけてね?」 大輔 「出来るだけ頑張ります……」 梨亜 「よろしい。それじゃあ、時間がもったいないしそろそろ行こうか」 大輔 「い、行くってどこに?」 てっきり、ここで何かの話をするんだとばかり思ってたんだけど…… 梨亜 「私のおうち」 大輔 「はいっ!?」 梨亜 「嫌だった?」 大輔 「え……えっ~~!!?」 一体どういうことだ!? まだ、数回しか会ってない俺を家に呼ぶなんて…… だ、だって普通はそんな簡単に招待しないだろ? こう…ウフフでムフフな関係になってから―― 梨亜 「何をぶつぶつ言ってるのさ……」 大輔 「な……なんでもない」 梨亜 「それで、どっち?」 大輔 「……嫌とかじゃないんだけど……まだ心の準備が……」 梨亜 「あ、気を使わなくても大丈夫だよ。この時間は親いないから」 大輔 「余計ダメでしょ!?」 (大きい文字) なんだか、梨亜って……すごい無防備。 信頼されてるのか…それとも、俺が男として見られてないってことなのか…… 梨亜 「なんで?」 大輔 「………………なんでもない」 どうやら、後者だったらしい。 どうしてかわかんないけど、ちょっとショック。 梨亜 「あぁもう、いつまでも悩んでないで早く行こう!ほらっ!」 (手をパシっと叩くような音) 大輔 「ちょ……ちょっと!?」 梨亜 「手を握ったくらいで、そんなに動揺しないでよ。じゃあ、しゅっぱ~つ」 大輔 「うわっ!?」 梨亜は俺の手を握ったまま、グイグイと引っ張っていく。 俺は抵抗をすることを忘れ、引きずられていった。 ……… …… … ……あったかい。 女の子特有の柔らかい手の感触が、俺に直接伝わってくる。 しかも、ひいき目で見なくても上ランクに入るような子の。 ……動揺するなっていう方が無理な話だよなぁ~…… 心拍数が、どんどんあがっていくのがよくわかる。 梨亜は、自分がどれだけ可愛いのか気づいていないのだろうか。 梨亜 「―――輔。大輔っ!!」 大輔 「……へ?」 梨亜 「なにをボ~っとしてるのさ……もう着いたよ」 大輔 「あ……あれ?」 慌てて目の前を見上げてみる。 そこには、白い外壁のお洒落な洋館が門を構えていた。 ……ここってどこの国ですか? 俺は、いつの間にか国境を越えていたらしい。 大輔 「……ここが、梨亜の家?」 梨亜 「うん、そうだよ」 大輔 「ほ~……」 ……もしかして、梨亜ってお嬢様? 梨亜 「あはは、先に言っとくけど、お嬢様なんかじゃないからね」 大輔 「うえっ!!?」 しかも、エスパー!? 梨亜 「エスパーでもないったら……ホントに大輔はわかりやすいね。それがいいところなんだろうけど」 大輔 「な……なんで考えてることが?」 梨亜 「大輔は顔に全部出ちゃってるんだよ。綺麗さっぱりすっきりばっちり」 大輔 「………………」 俺って、サトラレみたいなものだったのか。 …………これからは無心を心がけるようにしよう。 絶対無理だと思うけど。 梨亜 「さて、こんなところで立ち話もなんだし、上がって上がって」 大輔 「あ、お邪魔します」 とは、言ったものの足が動いてくれない。 なんだか、これだけ豪勢な場所だと家の前にいるだけで萎縮してしまうな。 これほど自分に不釣り合いなところはなかなか無いだろう。 梨亜 「どうしたの?」 大輔 「いや……なんか歓迎されてないような雰囲気が……」 梨亜 「そんなことないって。さぁ、行くよ!」 大輔 「でも…………」 なんていうか、歓迎してるように見せかけて俺を拒絶してるみたいな…… そう、例えるなら京都のお姉さんが笑いながら―― 梨亜 「…………お茶漬けでも食べてく?」 大輔 「すみません、帰ります」 梨亜 「冗談を本気にしないでよ!?」 ……… …… … 大輔 「……まだ?」 梨亜 「もうちょっと~」 あれから俺は梨亜の家ではなく、そこから少し離れた別邸の前で待たされていた。 …………30分間も。 中で何をしているのやら…… 大輔 「あと、どれくらいかかりそう?」 梨亜 「だから、もうちょっと~」 わかんないってことね。 …………………… ……それにしても、凄いミスマッチな建物だよな。 さっき見た本邸とは、かけ離れた作りをしている。 ……なんだか、山奥にひっそりと建っているボロ小屋みたい。 大輔 「なんのために、作られたんだろうな」 用途が全くわからない。 景観を崩してまで建てておくような、意味があるのだろうか。 俺だったらとっくに壊して―― (扉の開く音) 梨亜 「お待たせ!」 大輔 「うわぁぁぁあぁぁぁぁぁあ~~っ!?」 梨亜 「なんでそんなに驚いてるのさ……」 大輔 「いきなり飛び出してくるからだよ!?」 ……ホントに梨亜は容姿と性格が一致してないよなぁ。 最初に出会ったときはもっと大人しい子だと思ってたのに…… って、あれ? 大輔 「なんで、着替えてるの?」 梨亜 「ん?あ、これか」 いつの間にか彼女は、~~に~~という姿になっていた。 妙にゴソゴソと聞こえてくると思ったら、着替えてたのか。 …………覗けばよかっ―― 梨亜 「…………変なこと考えてない?」 大輔 「そんな、滅相もございませんっ!!」 梨亜 「ホントに?」 大輔 「ホ……ホントに」 ジトッっとした目を向けてくる。 …………すみません、考えてました。 とりあえず、心の中で謝っておくことにしよう。 口には絶対ださないけど。 梨亜 「……まぁ、いいや。汚さないためだよ。あのワンピースお気に入りだから」 大輔 「………もしかして、なにかするとか?」 まさか、この小屋の整理をするとか言い出さないよな…… それなら俺を呼んだ理由がわかるけど……肉体労働だけは勘弁。 そんなことしたら、確実にぶっ倒れる。 梨亜 「後からのお楽しみってことで。とりあえず、中に入るよ」 大輔 「わ……わかった」 ガラクタの山っていうのはやめてくれよ……? 俺は梨亜に促され、恐る恐る小屋のドアをくぐった。 (場面転換) 大輔 「…………………」 ドアの先――そこには、ガラクタでもゴミでもなく…… たくさんの絵が、壁一面に飾られていた。 なんなんだ……これは。 一枚一枚から不思議な魅力が溢れだしている。 懐かしい……いや、暖かい。 まるで、日の出みたいに…… 梨亜 「えっへへ、凄いでしょ」 大輔 「これ……は……」 言葉が出てこない。 俺は、息をするのも忘れ、絵に見入っていた。 大輔 「……描いたのか?」 梨亜 「ん?」 大輔 「梨亜が、全部描いたのか?」 梨亜 「そうだよ!……って、言いたいところだけど、違うんだ」 絵が飾られている壁まで歩み寄っていく。 梨亜 「これは、ほとんどお父さんが描いた絵たち。私が描いたのはこれとこれかな」 大輔 「………………」 梨亜 「やっぱり、お父さんに比べると違いがよくわかるよね……私なんてまだまだ」 大輔 「そんなことない」 梨亜が描いた絵。 それは、他の物にひけをとらないほどの技術力で描かれていた。 でも………… 梨亜 「ありがと。お世辞でも嬉しいよ」 大輔 「お世辞なんかじゃ……」 梨亜 「ううん。だって、私の絵は技術だけのもの。人に何かを訴えかける絵じゃない」 大輔 「…………っ!!」 そう、確かにその通りだった。 梨亜の絵はうまい。 父親が描いたものにも劣ってはいない。 でも……それだけ。 なにも、感じるものがなかった。 梨亜 「私にもわかってるんだ……このままじゃ、全然ダメだって」 大輔 「…………………」 梨亜 「でも、しょうがないんだ。本当に描きたいものが描けないから……」 大輔 「描きたい……もの?」 梨亜 「うん……私ね、キラキラ輝いてる海が描きたいんだ」 大輔 「……?描けばいいんじゃ?」 梨亜 「あはは、そうだよね。でも――」 梨亜は一端、言葉を区切って俺に笑いかけた。 梨亜 「本物を見れないから、うまく描けないんだ」 大輔 「あ…………」 梨亜 「見てみたいなぁ……昼間の海が」 彼女はそう言って、視線を俺に向ける。 しかし、どこかを見つめるようで焦点が定まっていなかった。 遠い場所へ思いを馳せているのだろうか。 大輔 「どうして、夜にしか……」 それは、絶対に言ってはいけない言葉。 わかってるんだけど……勝手に口が動いていた。 なんで彼女みたいな人が、対人恐怖症になっているのか。 どうして、俺と同じ症状に悩まされているのか。 知りたいという欲求を抑えられなかった。 昨日、約束したばかりなのに…… 大輔 「出歩けないんだ?」