彼は近くにあった演説台に上り、禍々しい玉を掲げ上げ呪文のような言葉を唱え呟く。


「βψιθωι...ξψχλγφωδψτ...............τακα!!」


唱え終えた瞬間、穏やかだった風が急に強風になり砂煙が荒れはじめる。
・・・が、それ以外は何も変わらず。
彼はしばし玉を見つめ、不可思議な状態に首をかしげる。
呪文がおかしいのかと思い、もう一度呪文を唱えるが何もおきない。
「ナゼダ・・・ナゼナノダ・・・」
これは混沌玉だ、それは間違いない。呪文だって一字一句間違えてないはずだ・・・
彼は、脳内で自分自身を詮索し始める。
しかし、その行為が次第に怒りへと変わり憤怒する。

「ナゼダ・・・ナゼダナゼダナゼダァァァッァァァァァァァァ」

彼は気づいていなかった。
固体に乗り移る際、元ある能力の半分を犠牲にするという事が。
力や知識、そして記憶なども薄れるために彼は肝心な部分を思い出せずにいた。
しかし、このまま終わるわけにはいかない。
彼はその場を後にし、ねぐらに戻った。
体育座りになり、左手の人差し指を噛みながら考える・・・
日が悪かったのか、呪文は本当に正しいのか、あの玉は本物か、場所が悪いのか。
思い尽くす限りを頭に浮かべ、繰り返し脳内の記憶を探る。
しかしそれもやがて限界が訪れ、ため息をつく。
どうしたらいい・・・どうしたら・・・
彼は情報が欲しかった。古代の記憶、あの時代のすべての。

・・・ふと、大図書館の事を思い浮かべる。
100年前に設立し、今もなお原形を留めつつ経営している図書館。
"あそこにいけば、探し物は大抵見つかる"などとキャッチフレーズが付くぐらいに大量の本が貸し出しされている。
彼は他に行く当ても、思い当たる節もないため、大図書館に向かう事にした。

ねぐらからは3.4駅をまたがなければならないため、そこまでお金を持ってない彼にとって、これは痛手である。
電車に揺られて2時間30分。ようやく目的地が見えてくる。
彼は早々と図書館に入り、古代云千年の情報がある本を探す。
「何かお探し物ですか?」
通りがかりのスタッフに聞かれたが、彼は首を振る。
混沌玉についてなど、誰に聞いてわかるほど知名度はない。
ましてや、世界を破滅させる道具などと言ったら、笑われて恥をかいてしまう。
彼は近辺の本をすべて読み漁り、調べつくした。
だが、特に目ぼしい情報は見つからなかった。
あと3冊で、大図書館にある云千年の情報がある本が読み終わる。
ぺらぺらとページを捲るたびに、もしや!と、次第に確信へと深まっていく。
そこには云千年前に悪魔の異名を持つ玉が、世界を壊滅に導いたと記されていた。
次のページにその玉の力を発動させるための何かが載っているに違いない。
そう彼は思いつつページを捲った。

おや?

次のページにはそれとは別の事が載っていた。
・・・よく見てみると、次に値するページが破られている!

「ギギギギ・・・・」

彼は怒りを抑えつつ、冷静になるのを待つ。

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最終更新:2009年10月25日 17:02