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俺とミカが爆弾を見つけたときには、もうその秒針は5分を切っていた。
話を戻そう。俺達は兼ねてからある計画を立て、目的地へと向かう途中だった。
朝方の人もまばらな電車の中で、棚の上に置いた荷物を取ろうとした時、ミカが横の紙袋を見つけた。
前の乗客の忘れ物だと思い、車掌に届けようとした手前、中身の物々しさに俺が気付いたわけだ。
秒針がコチコチと音を刻む。無数の導線の先には、火薬と思わしき物体と繋がっている。
どこぞの本や映画でしかお目にかかれないような筒状のそれが5,6本ある。こいつが爆発すればひとたまりもないだろう。
ていうか、死ぬ。
「あ~もうダメだね。映画みたいに赤とか青の導線ブチッってわけにはいかないだろうし」
彼女は事も無げに言い放った。
「お、おいおい。まずは駅員さんに言わないと」
俺はなるべく平静を装ったつもりだった。が、ミカは俺の内心の動揺を看破したかのように言う。
「うーん、結局アタフタしてる間にドカン、だと思うけどなぁ。時すでに遅し」
ミカは実際、サバサバとした性格だった。ここぞ、という時に早々と決断ができる。
優柔不断な俺がミカに何度助けられたか知れない。それこそ晩飯の献立から、今日の計画まで、だ。
しかし今回ばかりは俺は困惑した。
「ちょっと待てよ。どうしてそんな簡単に諦められるんだよ?まだ死ぬって決まったわけじゃないぞ」
「世の中にはね、何とかなる事とならない事があるの。これは何とかならない方」
「何とかならないって…やってみなくちゃわから」
「いい?」
俺の言葉を遮って、彼女は続ける。
「今日の計画は、何とかなる方。結局いつかはしなきゃいけないんだからさ、善は急げだよ」
いや、俺はそれと爆弾をまったく結び付けられないのだが。ここで死んでしまっては、計画も糞もない。
しかし彼女は至って普段通りだ。寧ろこの状況を楽しんでいるようにも見受けられる。
「でもさ、愛する人と一緒に死ねるって、一番幸せだと思わない?アタシはそう思うね」
「お前なぁ…」
こんな時に惚気るなよ、バカ。
だけど、ミカのこんな突拍子もない言葉を聞いていると、死すら安寧に迎えられると思えてくる。
うん、でもまあ、これも悪くないかな、と。つくづく俺は彼女に頼りっぱなしだ。
周りのわずかばかりの乗客も俺達の物騒な会話に気付きはじめたらしく、こちらを覗き込んでくる。
そして、秒針はいよいよゼロに近づく。5,4,3,2,1…






















アオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!

物体から発せられるけたたましい犬の鳴き声が、閑散とした車内に響き渡った。



結局、これは手の込んだ悪戯だったらしい。もしくはこんな紛らわしい玩具を、誰かが忘れていったのか。
ミカは暫く腹を抱えて笑っていた。あまりにも馬鹿馬鹿しくて感情が抑えられなくなったらしい。
俺達は最寄り駅で降ろされ、駅員室にてこってりと絞られた。ようやく解放され、駅のホームへと向かう。
「大分予定より遅れちまったな…お養父さんにどう説明しよう」
「大丈夫だって。父さんにはさっき電話入れといたから。それよか手強いよ、あの爆弾オヤジ」
ミカはニシシ、と悪戯っぽく笑った。
そうだな、頼りっぱなしじゃいけないな。計画を立てたのはミカだが、その成功は俺にかかっている。
俺ももうちょっと、頼もしくならないとな。

俺はホームから、空を仰いだ。