処分性の考え方

処分性の考え方

 行政事件訴訟法の取消訴訟(行訴法3条2項)は「行政庁の処分その他公権力の行使」にあたる行為の取消を求めるもの、とされています。
 そこで、この「行政庁の処分」とは一体何か、が問題になってきます。行政庁の処分でなければ、たとえ行政庁の行為であっても、取消訴訟という形では訴えることが出来なくなるからです。これを学術的には「処分性」の問題といいます。

行政庁の処分

 行政庁の処分について、判例は以下のように定義づけをしています。
行政庁の処分
公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたその範囲を確定することが法律上認められているもの

 学説上はこれを
  1. 公権力性があるかないか
  2. 国民の権利義務に対し直接・具体的な法的効果を発生させるか否か
 という2つの要件で成り立っている、と考えています。

 もっとも、このあたりは、例えばその法律がどういう定めになっているか、とか、争いがどれだけ具体的、などといったいろんな状況に変わっていくので、個々の事情を見ていかないとなんとも言えない側面はあります。

具体的事案(1)内部行為

 内部行為とは、行政機関の内部又は相互で行われている行為のことを言います。税法とか詳しい人だと「基本通達」というのが存在するのはご存知かと思いますが、その通達は、税務署員が税務処理をする上でどうすべきかを規律するものに過ぎないのですから、まあ内部行為といえるでしょう。簡単に言ってしまえば会社の社内規則の公務員版みたいなもんです。他にも通達とかも内部行為といえます。
 これらの行為は基本的に内部の行為に過ぎず、国民の権利義務に対して直接的な影響を与えることはありません。そのように考えると処分性はないとするのが普通です。

具体的事案(2)給付行政

 例えば農地の売り払いなどの場合、実質的には売買契約と同じ、と見ることが出来るので処分性を否定する方向に働きます。
 しかし不服審査とかができるような場合は、逆に認めていくこともありえます。

具体的事案(3)一般的行為

 例えば法律や条例の制定は、すべての国民や住民に適用されるものなので、直接個人の具体的な権利義務に影響を及ぼすわけではないので、処分性は否定される方向に働きます。
 ただし特定人に具体的に影響を及ぼすなどという場合には、逆に処分性があると認められることもあります

具体的事案(4)行政計画

 行政計画については、原則として処分性はない、と判断することが多いです。というのはそもそも計画自体が「青写真」みたいなもので、直接・具体的に権利義務を定めたりその範囲を定めているわけではないんですね。だから減速として認められないとしています。
 もっとも、早い段階で不服申立てが出来るとか、早い段階で認めないと後々処理できなくなるなるなどの場合、早めに処分性を認めてしまうことも考えられます。

具体的事案(5)事実行為

 事実行為とは、なんか法律に基づいて判断したとかそういうわけではなく、単にある事実を伝えたとかというようなものを言います。例えば告知とか通知とか。
 これらについても、基本処分性とかは認められないと見たほうが妥当です。なぜならこれらの行為よりもその元になった行為に処分性アリとしたほうが訴訟としては妥当ですから。
 ただ、行為が外部に対するものであって、直接法的効果を及ぼす場合は処分性が肯定されるケースもあります。

処分性がない場合

 処分性がない場合は、抗告訴訟はできないことになります。その場合考えられるのは「それを行う義務がない」ことを確認する訴訟になってくると思います。法律的には実質的当事者訴訟というものです。
 例えば通達によってなにかしろ、といわれた場合は、その行えと支持された行為をしない義務を確認する訴訟を行うことになると思います。
最終更新:2010年05月07日 15:46
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