完全比例代表制の違憲性


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完全比例代表制の違憲性


 国会議員の選挙制度については、いろいろな点からいろんな議論がなされています。例えば議員定数不均衡(いわゆる「一票の格差」の問題)や、どれがもっとも民意を反映した選挙制度なのかとかです。
 議員定数不均衡はここでは割愛するとして、選挙制度としては…
  • 大選挙区制…1つの選挙区から複数の候補者を選出する制度
  • 小選挙区制…1つの選挙区から1人の候補者を選出する制度
  • 比例代表制…政党に投票し、その比例配分で議席数が割り当てられるもの
という3つの制度が挙げられます。

 このうち、大選挙区、小選挙区というのは分かりやすいと思います。というのは私たちは特定の候補者に票を投じ、そのうち得票数が一番多い候補者が当選する、というものですから。当選議員がその選挙区で1人か複数かという違いだけで。
 ただ、大選挙区制度にしても小選挙区制度にしてもいろいろと問題がある制度で、まず死票が生じやすい。特に小選挙区の場合、全部の候補から当選者を一人選ぶ制度なので、例えば3人の候補者が出てその得票数が拮抗して34%、33%、33%となった場合、全体の34%しか得票していないのに1位になったゆえに当選ということになります。あとはどうしても個人勝負になるから個人の利権誘導とかそういう選挙活動になりやすくなります。特に昔の参院中選挙区制では、同じ党の候補が1つの選挙区に2人、3人と出ることがあったので、その同じ党の候補者同士が熾烈な争いを展開することがありました。確かに同じ党所属ということは、思想信条が似たり寄ったりですから、どうしても色分けにしにくい部分があったりします。そんな中で選挙違反とかが出やすいとかという指摘もあります。

 こういった個人名記載型の選挙制度の問題点を打破するために、今日いろいろな国で使われるようになったのが比例代表制おいう選挙制度です。
 これは原則として投票の際に政党を選び、その政党の得票に応じ一定の議席を与えるものです。いろいろな計算式がありますが、特にドント式というのが有名ですね。
 これだと、ある程度の比例配分が期待できるので、死票が少ない、小政党に有利である多様な意見を反映できるなどという意見がよく聞かれ、なんかこっちのほうがいい選挙制度のように見えてしまいます。

比例代表制の問題点

 しかし、制度という物は大体利点もあれば欠点も有するわけで、まず小政党が当選しやすいということは、国会運営が混乱しやすいことを表すという指摘があります。
 あと比例代表の名簿順位が決定している場合、その順位をめぐって党内で争いが出てくる恐れがありますし、その際に党が強い権限を有してしまう恐れもあります。
 さらに、比例代表制の場合投票するのが「党」になってしまうため、その党から離党した議員の扱いはどうなるのか、という問題をはらんでいます。
(政党からの除名後の繰り上げ当選について、「政党からの除名と比例代表の順位(最判平7・5・25)」参照)

完全比例代表制の憲法上の問題

 このように問題もある比例代表制度ですが、もっと比例代表制を強めるべきだという意見が根強く、特に少数政党と同一の思想を有する関係者からの主張が多いように思います。こういう識者の中には完全に比例代表にすべきだという見解も出てきます。

 しかし完全比例代表制という制度だと憲法上問題が出てきます。
 まず、日本国憲法は参政権を認めていると解されています。具体的な条文はないのですが、選挙関係の条文が存在することから、当然に認められると考えられています。
 そこで問題になるのは、立候補の自由です。
 国民に参政権が認められるなら、立候補の自由もまた認められるという解釈になります。まあ被選挙権には年齢の制限がありますが、これは社会経験が存在するほうがよいだろうという考えからであって、これが差別という見解はありません。

 問題は比例代表制が原則として政党に投票する制度だ、ということです。
 政党に投票する制度であるということは、裏返すと政党に所属していないと名簿に登載されず、立候補できないということになってしまう恐れがあるのです。
 無論、政党員でなくても名簿記載は可能だという意見もありますが、その場合もやはり党に拘束されてしまうわけで、集会・結社の自由に反するんじゃないか、という見解があるのです。結社の自由というのは何らかの組織を作る自由であり、また参加する自由でもあるのですが、これは逆にそういう団体に参加したり作ることを拒否する自由でもあるんです。
 もっと言ってしまえば、不偏不党の無所属で行きたい人が政党に拘束されるのはまずいんじゃないか、という話になってきます。

 そのように考えると今の比例代表制は、あくまでも個人投票制を補完する制度として使われるのが限度であって、それを主制度として使うのは認めにくい、というのが憲法学説の考え方になるのでしょう。

 しかし、現在活発に議員定数不均衡訴訟とか行われているのですが(実はある程度裏事情も知っていたりします…これは内緒話)、どうも不均衡是正の選挙制度として、主張者側は完全比例代表制を想定しているようです。無論そんな主張をしているわけではないのですが、完全に議員定数不均衡を1にするためにはこれにするしかないんですね。となると、やはり議員定数不均衡の是正のために想定している制度は完全比例代表制と考えるのが妥当でしょう。
 しかしそうなると立候補の自由を侵害することになりかねないわけで、果たしてそれが妥当かどうか、仮に人権を主張している人々が、一方で人権を無視しかねない制度を主張するのが妥当かどうか…
 この辺はじっくり見ていく必要があるようです。
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