文書提出命令に関する特別抗告(最判平22・4・12)


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文書提出命令に関する特別抗告(最判平22・4・12)

 民事訴訟法の中でも結構大きな論点でもある「文書提出義務」に関する判例です。

事案
  •  ある市民団体が市議会会派の政務調査費について、返還する訴訟を起こした際に、証拠として提出を求めた政務調査費の報告書及び領収書を「自己使用文書」として開示を拒否したため、文書提出命令を裁判所に求めたもの。
  •  原審は「自己使用文書」に当たらないとしたため、市側が特別抗告。

判決
  1. 原告側の申立却下
  2. 理由
    1.  ある文書が, その作成目的,記載内容,これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯,その他の事情から判断して,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であって,開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど,開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合 には, 特段の事情 がない限り,当該文書は民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解する。
    2.  政務調査費の制度は,議会の審議能力を強化し,議員の調査研究活動の基盤の充実を図るため,議会における会派又は議員に対する調査研究の費用等の助成を制度化し,併せて政務調査費の使途の透明性を確保しようとしたものである。もっとも,これらの規定は,政務調査費の使途の透明性を確保するための手段として,条例の定めるところにより政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出することのみを定めており,地方自治法は,その具体的な報告の程度,内容等については,各地方公共団体がその実情に応じて制定する条例の定めにゆだねることとしている。
    3.  政務調査費は議会による市の執行機関に対する監視等の機能を果たすための調査研究活動に充てられることも多いと考えられるところ,会派による個々の政務調査費の支出について,その具体的な金額,支出先等を逐一公にしなければならないとなると,当該支出に係る調査研究活動の目的,内容等を推知され,その会派及び所属議員の活動に対する執行機関や他の会派等からの干渉を受けるおそれを生ずるなど,調査研究活動の自由が妨げられ,議員の調査研究活動の基盤の充実という制度の趣旨,目的を損なうことにもなりかねないことから,政務調査費の収支に関する議長への報告の内容等を上記の程度にとどめることにより,会派及び議員の調査研究活動に対する執行機関や他の会派等からの干渉を防止しようとするところにあるものと解される。
    4.  このような本件条例及び本件規則の規定並びにそれらの趣旨に照らすと,本件規則が会派の経理責任者に会計帳簿の調製,領収書等の証拠書類の整理及びこれらの書類の保管を義務付けているのは,政務調査費の適正な使用についての各会派の自律を促すとともに,各会派の代表者らが議長等による事情聴取に対し確実な証拠に基づいてその説明責任を果たすことができるようにその基礎資料を整えておくことを求めたものであり,議長等の会派外部の者による調査等の際にこれらの書類を提出させることを予定したものではないと解するのが相当である。そうすると,これらの規定上,上記の会計帳簿や領収書等の証拠書類は,専ら各会派の内部にとどめて利用すべき文書であることが予定されているものというべきである。
    5. 領収書は,本件規則所定の領収書に該当する。本件報告書も,政務調査費の個々の出納の状況を記録したものではないから,これをもって会計帳簿に代わるものと見ることはできず,また,市において整理,保管等を義務付けている書類であったとしても,せいぜい本件規則所定の証拠書類に該当し得るにとどまるものというべきである。そうすると,本件各文書はいずれも,専ら会派内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であると認められる。
    6.  また,本件各文書は,個々の政務調査費の支出について,当該支出に係る調査研究活動をした議員の氏名,当該議員が用いた金額やその使途,主な調査内容等が具体的に記載されるものであり,これが開示された場合には,所持者である会派及びそれに所属する議員の調査研究活動の目的,内容等を推知され,その調査研究活動が執行機関や他の会派等からの干渉によって阻害されるおそれがあるものというべきである。加えて,本件各文書には,調査研究活動に協力するなどした第三者の氏名等が記載されているがい然性が高く,これが開示されると,以後の調査研究活動への協力が得られにくくなって支障が生ずるばかりか,その第三者のプライバシーが侵害されるなどのおそれもあるものというべきである。そうすると,本件各文書の開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる。
    7.  以上によれば,前記(1)の特段の事情のうかがわれない本件各文書は,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。


解説
 この判決を解説するに当たっては、本題に入る前にいろいろと説明が必要になります。
 まず、本来の請求は市民団体関係者が、地方議会の議員に対してなした不当利得返還請求です。

 ここで勘のいい人ならお気づきかもしれませんが、不当利得といってもあくまでも政務調査費を出したのは市なので、損害を負ったのは市、すなわち市が不当利得返還請求を行うのならわかるけど、なんで市民団体が勝手に行うことが出来るのか、という疑問が出てくるんじゃないかと思います。

 実はこれ、地方自治法の住民訴訟の手段を使っています。
 説明すると長くなるのでそれは別のところで追々…ということで、簡単に説明しますと、市民が自治体の代わりにいろいろと訴訟をやる権限を有しているんですね。市民が税金を払っている以上、その使い道に対して監視する義務があるし、それを防ぐ手段が必要だ、とかという理由付けがなされています。それに自治体と議員ってずぶの関係のことも多いですから、自治体が返還しろなんて請求するはずがないんですよね。
 なのでこういう権能を自治体の住民に認めているんです。
 有名な判例ですと「愛媛玉串料訴訟」なんかがこの住民訴訟が使われたケースです。

 で、原告側はその住民訴訟という手段を使って、市議会議員に無駄遣いした政務調査費を返せ、という訴訟をしたわけです。



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