告訴と告発


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告訴と告発


 民主党の小沢一郎幹事長をめぐる一連の事件の不起訴が、2010年4月の検察審査会で起訴相当となりました。

 この事件……まあ仮に「小沢疑惑」とでもしましょうか……ですが、非常に面白い経緯をたどっています。2010年1月の段階で「市民団体」による告発を得て、いろいろと取り調べて(もっとも取調べはそれ以前からしてましたが)、その上で不起訴となったわけです。(その辺の経緯は詳しい人にお任せします)
 しかし同「市民団体」の検察審査会申立てがなされ、現在起訴相当の決議がなされたことが明らかになっています。

 まあここまでで、いろんな検察のシステムやら何やらが出てきて、一般の方には理解しにくいところかも知れません。例えば告訴と告発がどう違うのか、とか。なんで告発された事件を検察が不起訴にできるのか、とか。あと検察審査会ってなんだ?って疑問をもたれる方もいらっしゃるかもしれません。

 そこで、いろいろと項目を立ててコラム的にいろいろと書いてみようかな、と。

告発

 まず、「告発」から考えてみましょう。
 条文としては刑訴法239条に書かれています。

刑訴法239条1項
何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。

 要は「犯罪があると思料した」場合、誰でもできるんですね。

 「犯罪があると思料」ですが、これは単に「こいつは悪いことをしてそうだから」という理由とかはダメで、具体的な犯罪事実を申告しないといけません。

告訴

 似たような言葉に「告訴」というものがあります。
 条文としては230条に書かれています
刑訴法230条
犯罪により害を被った者は、告訴をすることができる。

 要するに被害者しかできないんですね。
 しかも告発と違って、結構いろんな要件が厳しかったりします。例えば告訴できる期間が犯人を知ったときから6ヶ月だったり。告訴の取消しは可能だが、取り消した場合は再告訴できなかったり。
 このように要件が厳しいのは、犯罪の中には告訴があって初めて犯罪として成立するものが意外に多いからです。例えばわいせつ関係の罪とか典型例です。まあ確かに愛情としての行為を何でもかんでも、わいせつで犯罪というのはどこかおかしいですからね。

 ただ、告訴も告発もそういう点以外では、さほど差がないものといえるかも知れません。どっちも被害届とかではダメでちゃんとした手続を踏まないといけないし。

 ちなみに告訴も告発も、起訴を強制するものではなく、起訴はあくまでも検察官の裁量で不起訴にできます(これを起訴便宜主義といいます…詳しくは起訴便宜主義で)

不当な告訴・告発への対応

 さて、この告訴・告発ですが、実は面倒な問題をはらんでいます。
 というのは、純粋に犯罪が起きて、それによって被害を受けた人が告訴するのは問題ないんですよね。例えば物を盗まれた人が告訴するとかはいいんです。
 問題は、告訴ないし告発という行為を、別の意図で使う可能性です。
 例えば、ある政治家を追い落とすために、ライバル政治家が、政治的な不正をやったと、告発するとか、普通に考えられます。
 例は政治家のケースですが、他にもいろんなケースが告訴告発によって起こっています。痴漢冤罪なんかも、痴漢行為が強制わいせつであり、これに告訴行為が必要だとするとやはり同じ問題といえます。

 この点、虚偽の告訴や告発の場合、刑法172条で虚偽告訴等罪というのを用意しています。
刑法172条
人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、3月以上10年以下の懲役に処する。

 これは虚偽の告訴によって、被告訴者の人権を侵害するのは当然だし、一方でその人権侵害を国が起こす危険も生じさせるわけですから、そりゃいけないだろ、ということで刑事罰になるわけです。
 しかしこれ、条文読んで分かるんですが、意外に要件厳しいんですね。
 まず虚偽とはなにか、という問題がありますが、虚偽とは、処分の原因となる事実が客観的事実に反することを言います。
 このように虚偽を限定すると、例えばマスコミで騒がれているような醜聞の場合、、この要件ってないに等しくなるんですよね。こういう報道を虚偽と思って告発する人はいないでしょうから。実際政治家に対する告発とかなんて、だいたいマスコミ報道を受けてるケースがほとんどですから。
 しかも目的が処分を受けさせる目的だったとしても、真実が少しでもあればセーフになるわけです。例えば本来なら民事的な解決で十分可能なのに、過度に刑罰を求めて告発するケースとか。これは過失罪とかで見られますが、日本人の法意識として問題のある部分といえるでしょう。

 まあこのように、告訴・告発は意外に悪質な事例というのも散見されるので、それを受け入れる側の検察もかなり慎重に取り扱っているようです。
検察講義案24ページ
告訴(告発)事件では、往々にして民事紛争の解決に捜査を利用しようとするものもあるから、その取扱いには特に注意し、軽々に当事者の一方に利用されることのないようにしなければならない。

 「検察講義案」というのは、司法修習のときの検察官の授業を受けるときに使う教材です。そういう教材にこんなことが書かれていることを考えても、検察の告訴・告発に対する考え方は慎重なんだろうなあ…って思います。本来は。
 一方で、告訴・告発があることによって、捜査機関が強気に捜査に出ることができる、という見方もできるのかもしれません。実際そういう事案もありますし。
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