学園都市第二世代物語 > おまけ


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「とんでもないことになっちゃったわね……」

「うん……」

あたしは母と並んで歩いている。

そういえば、ここ学園都市で母と一緒に街を歩くって、もしかして初めて、かもしれない。

 

                                      ぐるるるるるる……

 

「え?」

「……」

「そうか、もうお昼だもんね。相変わらず正確だねぇw 何か食べよっか?」

「うーん、がっちり食べたいかなぁ」

「そうね……利子、昔あたしがよく行ってたお店行こうか?」

「うん! 行ってみたい」

あたしたちはタクシーを止め、その「お店」に向かった。

 

 

そこは、センター駅にほど近い、でもちょっと裏通りに入ったところにあるこぢんまりとしたお店だった。

「こ・ん・に・ち・わ~!」

”母さん、歳考えなさい”って、とたしなめたくなるようなテンションで母がドアを開ける。

「おぉー、いらっしゃい!」

「あら~、懐かしい人がまた」

「こんにちは!」

昔は結構イケメンであったであろうご主人と、ちょっと年が離れてるような?奥さん、

そして、中学生であろう息子さん?が母の挨拶に答える。

 

ワンテンポ遅れて、奥から

「さーてんさんじゃないですかぁ!!」

という声がかかる。

「おぉー、誰かと思えば、う・い・は・る~!」

「は・な・ぞ・の・ですってばぁ~!」

この漫才、1年前と変わってないなぁ……

「初春、あんた、大変だったねー、ネットにもテレビにも出ちゃってさぁ? 歳までバレちゃうしね?」

「うう、せっかく忘れようとしてるのに……ひどいですよぅ、佐天さ~ん……」

「おお、ゴメンゴメン、冗談にならなかったね、許してよね、ういはる?」

「る・い・こ、そこらへんで止めときなよ、可愛そうでしょ? 目出度い話じゃなかったんだからさー」

「そ、そうですよぅ、あたし、臭いメシ、食べるハメになっちゃったんですからねっ!」

「へー……ね、ねぇ、初春さぁ、ホントに臭かった?それ?」

「まさかー、フツーでしたよ? だいたい臭かったら食べられないじゃないですかー」

「……あのさ、食いものの店で、メシが臭いだの臭くないだのってちょっと勘弁してくれないかな?

てか、るいこ、そのお嬢さん? 早く紹介してよ? あたし、おなか空いてぶっ倒れますよって顔してるよ?」

 

さすが、ママさんだね、ようやくあたしの出番が来たよ……おなか減った、ああ、良いにおいだー!

「初めまして、娘の利子です!」

あたしはこのお店、初見参だから挨拶をする。

「本橋です。宜しくね? いやぁ~しかしあの美女からまたまたこんな美少女が産まれるとは」

「相変わらずですね、マスター。まこちん、ちょっと注意しなさいよ?」

「アハハ、こいつはもう諦めてるわよ。息子にはこういう男になって欲しくないから今はこっちに注意してるね」

「お客さんの前で何言ってんだよ、カンベンしてくれよな、手伝うのやめるぞ?」

「いいわよ? そのかわりお小遣い減額だけどね?」

「くっ、それとこれは話が違うだろ?」

はぁ……羨ましいかな、こういう家族の姿見ちゃうと……

「そうそう、あたしは真子(まこ)、あなたのお母さんと中学の時の同級生。あら、ごめんなさいね、

利子ちゃん?お客さん立たせっぱなしだったわ。どうぞそちらの奥へ。狭くてごめんなさいね?

ほら、健一、おしぼりとお水! すいませんねぇ、この気の利かないのが息子の健一(けんいち)で

今中学2年生ってとこ」

「へいへい、オレはどうせ気が利かない中2ですよーだ」

 

そうか、健一くんか……。あたしは何の気なしに彼を目で追っていた。結構忙しい。

テーブルを拭き、おしぼりと水の入ったグラスをお盆に載せ、あたしたちのところへ持ってきて

それからメニューを置き、元へ戻ると中で何やらごそごそと……

「あら、利子ちゃん、健一君が気に入った?」

花園さんが爆弾を投げ込んできた。

「な、何ですかいきなり!?」 

……前にもなんかこういうのあったなぁ、あたし、弄られやすいのかしら?

「あら、利子ちゃんたらずーっと目で追いかけてましたよ? そうか、女子高だと男の子珍しいよね?」

 

花園さんが、赤ちゃんと一緒に移ってきた。

「あたしの子も男の子で~す! 名前は勇太でーす! えへへ、一人ではちょっとここ使えなかったけど、

佐天さんたちがいるなら良いかなって……」

「マンマ」

と赤ちゃんがしゃべる。

「カワイイ~!」

「でしょう? ほ~ら、勇太? このおばちゃんピタピタしてやりなさい、ママのスカートをめくるヘンなおばちゃんを

やっつけるんだー! 行け~!」

「う・い・は・る? 久しぶりに会った無二の親友を息子に紹介する挨拶にしてはちょっと過激過ぎないかなぁ?」

「ちょ……」

 

え? 母さんそんなコトしてたの・・?

確かに寝坊すると、母さんはあたしのふとんをまくり上げてたけど……。

う、そういえばあたしも麻琴のスカートまくったことがあったよね……?

 

「そりゃ、涙子はしょっちゅうやってたもんねーw 柵川中学の名物だったもん」

「ちょっとまこちん、なんて事いうのよ?」

「そうですよ、寮の前に始まって、駅にバス停、学校の中。あたしの純潔は佐天さんに汚されっぱなしだったんです

からねっ!」

は………母さん、あの、ものすごーく旗色悪いよ?

マスターはニヤニヤ笑ってるし、健一君はあけすけなおばさん軍団になすすべもなし、と……

(あー、やってられねぇ)って顔であたしに助けを求めるような目で……

よっしゃ、このリコねーちゃんにまかせとけ!

 

「すいません、この『本日のパスタ』は何ですか?」

「いっけなーい、何も注文してなかったわね、あたしたち。ごめんなさいね?」

「今日はカルボナーラなんだけど。おいしいよ?」

「じゃ、あたしそれにします」

「サラダ、ランチだからついてるけれど、大丈夫よね?」

「頂きます!」

「いいねぇ、なんでも食べる子、おばちゃん大好き。育ち盛りはそうでなくっちゃ、ね?」

「まこちん、ヘンにおだてるの止めて? この子底なしだから」

「ちょっと母さん、それは年頃の娘に言う言葉じゃないわよ!」

 

あたしはそう叫んだ瞬間、とってもいやな予感がした。

 

                      くうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぎゅるぎゅるぎゅる………

                   
                                        orz


             ――― 天使がおか持ちを握りしめて飛んでいった ――― 


                                      うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………

 

 

健一君が突っ伏してる。

声を殺して笑ってる。

そりゃ笑うよね、

あ~あ、笑われちゃったよ、

あたし……花も恥じらう女子高生なのに。

「大盛りサービスしといたげるね♪」

おばさん、有り難う。嬉しいけれど、嬉しくない……不幸だ。

 

「涙子もお嬢さんと学園都市来るの初めてじゃない?」

真子おばさんが聞いてくる。

「んー、最初から一緒ってのはそうね、この子が小さかった頃を除くと……初めてかも」

「去年とおととし来てませんでしたっけ?」

ああ、花園さん、それ、余計です!

「一緒には来てないから、ノーカウント。そうよね、利子?」

「え、じゃ来てたんだ? もう、涙子ったら……来たら寄っていってよねー?」

「あはは、いやぁ時間があったらもちろん今日みたいに寄っていくんだけど、たまたま2回とも

予定が詰まっててね」

「ま、あんたも忙しいひとだから。無理強い出来ないけど。

むーちゃんとアケミは出てっちゃったからさぁ、あの時の三人組で残ってるの、あたしだけだから」

「えー、あー、コホン。どなたかお忘れになってらっしゃいませんかしら?」

「あはは、そうね、飾利、あんたがいてくれたわよね」

「ひどーい、佐天さん、あたしに利子ちゃんのチェック押しつけたくせに、忘れてたんですか??」

はい? 何それ? えっ?

「え? ちょっと母さん、あたしのチェックって何よ?」

「あんたがあたしに黙って学園都市に出入りしないように、利子が入国したら知らせるように初春に頼んでたのよ。

あたしも知らなかったけれど、麦野さんもそのチェックが入るようになってたらしいんだけどさ……

初春、ゴメン、ここまで!」

母があわてて止めた。麦野さんのことはあんまり、ねぇ。

「はー、じゃあたしが中二の時、マコと一緒に入った事は」

「当然直ぐ初春から連絡あったわよ、夜中の1時にね」

「ひどいですよ、あたし、あの時ホント鼓膜が破れるかと思っちゃいましたよ、いきなり怒鳴るんですもん」

「あはは、ゴメンゴメン。でもさーレセプションでしこたま飲んでゴキゲンでさ、シャワー浴びてさぁて寝るかって時に

電話じゃない? 何事か、って身構えるってばさー」

「はいはい、おまちどうさま! カルボナーラ大盛ね! 」

 

………なんですか、これ?


みんな、静かになった。

あたしの目の前には、エアーズロックのようなパスタの山が静かに湯気を上げて鎮座していた。

「ちょ……」
「利子ちゃん……」

ほほう、おもしろい。佐天利子、この勝負受けた!!

「いっただきまーすっ!!」

 

 

 

「また来てねー」

「まこちん、またねー」

「おー、あんたもがんばれなー」

「利子ちゃーん、ヒマだったらバイトにきてな! うちの息子も待ってるからさ!」

「ば、馬鹿オヤジ、変なこというんじゃねーよ!」

「馬鹿だな、あの子がここでバイトしてみろ? 目当ての客で毎日満員御礼だぞ?」

「ちょっと、あたしの大事な友達の一人娘で何良からぬ事企んでんのよ?」

 

あたしは黙って手を振るしかなかった。

なぜなら、口を開けたらパスタが逆流しかねなかったからだ。

「ったく、あんたってホント食い意地張ってるんだから……残せばいいでしょ?」

笑いながら母が文句を言う。

あの~「ご飯を残してはいけません!」ってあたしを教育したのはどこの誰でしたっけか……?

「ま、しっかりしてね? あんたが不作法すると、あたしのしつけが出来てない、って麦野さんに思われちゃうからね!

あたしに恥かかせないでよ? お願いだからね」

(はいはい、わかりましたってばさー)

「そうそう、あんたを身をもって庇ってくれたひと、えっと……」

「絹旗さんよ?」 うっぷ、気持ち悪い! やっぱりしゃべるの、ダメかも。

「そうそう、その方にも御礼を言わなければね。どこにいらっしゃるんだったっけ?」

「アンチスキル総合病院だって言ってた」 き、きつい!

「それから、白井さんにも挨拶しておかなきゃね。あんたの騒ぎに巻き込まれて、とんでもないことになっちゃったんだから」

(そうだっけ……漣さんとはうまくいってるのかな……)

「まぁ、でもおかげで、息子さんとの関係も少し良くなったって上条さんも言ってたし、それは良かったこと、かもね」

(そうなんだ……災い転じて福となす、ってことなのかな)

あたしはふと、母の手を取った。暖かい。

「ちょ、ちょっとあんた……」

母は少し驚いたけれど、すぐにあたしの手を握り返してきた。

「ま、たまには、いいかもね」

母のにこやかな笑顔。

「いつまでも子供なんだから。……あたしなんかより、素敵な彼氏の手を握って歩くこと考えなさいよ?」

 ぶは! お母さん! なんてことを!!

「あはは、でも今日だけは母さんと歩いてみよっか?」

「うん」

 


青く、高い秋の空。

母、佐天涙子と娘、佐天利子は学園都市の道を二人並んで歩いていった。
 

  

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