学園都市第二世代物語 > 23


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23 「栄えあるレベル5、第一号、そして」

 

漣孝太郎は、あてもなく、何を考えるでもなく、ふらふらと歩いていた。

(利子ちゃんを……なんてことを……オレは……オレは……くそっ、でも、母さんを、母さんを守るには仕方なかったじゃないか!)

(いや、だからといって、何の関係もない利子ちゃんを、オレは……、麻琴に会わせる顔がないじゃないか……

違う、それより麦野さんを裏切って、もしかしたら、あの人のホントの娘かもしれない利子ちゃんを……

ああ! オレは、風紀委員<ジャッジメント>たる、オレが、なんて事を!)

 

髪をかきむしりながらブツブツつぶやく漣を、すれ違う学生、子供、そして大人達でさえも、関わり合いを避けようとしてよけて通り過ぎて行くだけだった。

 

いつの間にか、彼は多摩川にかかる橋に出ていた。

学園都市のビル群を眺め、視線を下へ落とす。

多摩川の清らかな流れが見える。

しばらく彼はそのまま流れを見入っていた……

 

 

「ああーっ遅刻しちゃうかもーって、ミサカはちょっびっとだけスピードを出し過ぎてみる!」

「ッたく、お前が化粧に時間掛けすぎるからだろうがよォ」

「むぅ、お肌の曲がり角を余裕でクリアしたミサカにそう言う残酷なことをいうわけなのね? そうなのね?」

「あ~やかましい、少し黙ってろ」

「お得意様限定バーゲンセールに遅れたらアウトなのよっ! ってミサカはクルマの運転をしないアナタに文句をつけてみる!」

「チッ、わーったよ、わかりましたよ。……オラァ、前、ブレーキ踏んでるっての!! 前見ろ、前!!!!」」

多摩川を渡る橋は渋滞していたところだった。彼らの車は急ブレーキで危うく追突を免れた。

「ッたく、これだから女の運転はおっかねェんだよなァ……」

ゆるゆると彼らの車は進んで行く。

突然、ミサカ未来 (みく) が叫んだ。

「……やめて!!」

「アン? いきなり何だァ?」

「今、人が橋にいたんだけど!」

「そりゃいることもあるだろが」

「いや、雰囲気がヘンだったのよう、ってミサカは理由を説明しているヒマはないからっ!」

そういうとミサカ未来はクルマを止め、いきなりドアを開けクルマを降り走り出した。

「打ち止めェ!! 対向車が走ってるのにやべェだろうがァァァァ!! 」

鈴科教授は怒鳴り、これまたクルマから降りる。杖を突き突き、ミサカ未来を追う。

後のクルマのドライバーが 「こんなところでクルマ止めるんじゃねェよ!」 と怒鳴る。

「チッ、うぜェんだよ、クソッタレが」

ホントにこれで大学の教授か、と思うような言葉を吐いて、鈴科教授はドライバーを睨み付ける。

「ひえーっ!」

急加速してそのクルマは逃げて行く。

 

「あ、あの人だよってミサカは男子学生らしき人を指さしてみる!」

ミサカ未来が叫ぶ。

「ケッ、飛び込んで死ぬとでも? そんなヤツなんざァさっさと消えちまえば」

鈴科教授の嘲りは最後まで続かなかった。

その学生らしき人間が橋から飛び降りたのだった。

「キャーッ!!」

「クソッタレ、ホントに落ちやがった!」

チョーカーのスイッチを 「能力全開」 に入れた鈴科教授は、一方通行<アクセラレータ>に変身した。

 

 

多摩川の河原に止まっているミサカ未来のクルマ。

そこに3人はいた。

「オゥ、気が付いたかクソガキ?」

「あ、あなたは?」

「ミサカ未来 (みく) だよって名乗ってみる。アナタはなんて言うのかな?」

「………」

「テメェ、助けてもらって何様のつもりだァ?」

「誰も、助けて欲しいなんて……」

「アン? ならここで死ぬかァ? クソッタレ、お望み通り愉快なオブジェにしてやンよ?」

「いいんです、ボクは、卑怯者だ……死んだ方がましだ……」

「冗談でもそんなこと言っちゃいけないのよ? 死神が取り憑くから」

「いンや、既に取り憑いてるようだなァ、このクソガキには」

鈴科教授とミサカ未来が顔を見合わせる。

 

そこへいきなり、ミサカネットワークに緊急信が入った。

【ついに】ヘンタイ百合タイーホ!!【やったか?】

1 以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします ID:Misaka19090

お姉様<オリジナル>を悩ます変態百合女がアンチスキルに任意同行を求められました、とミサカは冷静に報告します!

 

2 以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします ID:Misaka20001

19090号、あなた、どこにいるの?

 

3 以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします ID:Misaka19090

ミサカはお姉様<オリジナル>の影として、第三学区の風紀委員会<ジャッジメントステーツ>統括総合本部にいます! 何故かマスコミが手際良く来ているのが不思議です、とミサカは疑念を差し挟みます。

 

「ちょっとミサカはテレビをつけてみる!!」

ミサカ未来が叫んで、コンソールのナビスイッチを弄くった。

たちまちフロントガラスの色が変わり、巨大なスクリーンに早変わりした。

スピーカーから、アナウンサーの声が流れ出る。

「風紀委員<ジャッジメント>の不祥事が相次いでいます。

先ほど、風紀委員会<ジャッジメントステーツ>総合統括本部に勤務する白井黒子 (しらい くろこ)、38歳が、個人情報不正操作の疑いでアンチスキルに任意同行を求められ、あ、只今入りました続報です、同女が逮捕されました。

訂正して繰り返します、風紀委員会<ジャッジメントステーツ>総合統括本部に勤務する白井黒子38歳は、個人情報不正操作の疑いで只今緊急逮捕されました。

これで、同事件についての逮捕者は、午前中に逮捕された風紀委員会(ジャッジメントステーツ)サイバーパトロールに勤務していた花園飾利 (はなぞの かざり) 38歳に続いて2人目です。

本来、学園都市の治安維持を図る組織である風紀委員会<ジャッジメントステーツ>の職員による不祥事は、各方面に多大な衝撃を与えています……」

「母さん!!! ……あのくそババァ、うそつきやがったな!! くそぉ、騙された!! うわぁぁぁぁ!!!!」

いきなり、男子学生、

 ――― 漣孝太郎 ――― 

が叫び、鈴科教授とミサカ未来がぎょっとして漣を見つめる。

「くそおっ! あのババァ、絶対許さねぇ!!」

だが、迸る激情が激しすぎ、漣はテレポート出来ない。

「くそっ、どうして、どうして、こういう時に限って!!」

「オマエ、あの女の息子か?」

「だったら何なんだ!」

「わめくなクソガキ! オマエが一人で騒いでもどうにもならねェだろが」

「ちょっと気になる言葉があったんだけど、『騙された』 ってどういうことなのかな? 

わたしが想像するとねぇ、あの人、お母さんは逮捕されるはずじゃなかった、

そしてあなたはその事をその 『ババア』から聞かされていた、なのにあなたのお母様は逮捕された、

そういうことで良いのね?」

理路整然とミサカ未来が漣孝太郎に問いただす。

「……」

「私たちは、風紀委員<ジャッジメント>でも、アンチスキルでもないわ。でも、不正をするひとは嫌いだし、黙って見過ごすことも好きじゃないの。

良かったら少し、お話ししてくれるかな?」

 

少しの間沈黙していた漣が、ぽつり、ぽつりと話し始めた。

「……ボクは、漣孝太郎……、風紀委員<ジャッジメント>。母親は、さっき逮捕された、白井黒子。

……ある日オマエの母親の命はわたしの一言でどうにでもなる、って言われて、無視していたら、仲間が行方不明になって……そして、彼女も騒動鎮圧の時に大けがを負わされて……それで、仕方なくあのババァの言うとおり、ボクは、ボクは……」

「殺っちまった、のか?」

「アナタに聞いてないでしょ!」

「そんなことするくらいなら、死んでたよ!!! でも、同じだよ……ボクは、誘拐したんだ」

「誰?」

「友達だよ……彼女の親友だ……」

「そう……脅されていた、とはいえ、立派な犯罪を犯しちゃったのね、あなた。

じゃ、その罪を償わなければいけないわね?」

「……はい」

「場所は?」

「第十八学区、TK精神病理学研究所、能力開発分析センター、第2実験エリア……でした」

「誰を連れて行ったのかな?」

「……」

 

一瞬、漣は躊躇した。

しかし、彼は、ミサカ未来の目をみて、正直に告白した。

 

「さてん……佐天、利子(さてん としこ)さんです……。学園都市教育大付属高校女子部1年の」

「オイオイオイオイオイ、どこかで聞いたことがある名前だなァ、えェ?」

「そうね、誰かさんが格好つけて 『オレが守ってやンよ』 とか言ってた気がするわねー?」

「ケッ、いきなりのお姫様危機一発ですってかァ? イイねイイねェ最ッ高だぜェ、打ち止め<ラストオーダー>、

行くぞ! クソガキ、メソメソしてるんじゃねェぞ、オマエがヘタ打った分は、オマエ自身でケリつけろ!」

「……、は、はい!」

3人が乗り込み、ミサカ未来はクルマを第十八学区へ走らせる。  

 

 

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「AIMコントローラー、セット完了しました」

「AIMジャマー、全て撤去。全身スキャンの結果ですが、埋め込まれているものはありませんでした」

「非常用キャパシティダウナー、異常なし」

「生体反応データ、異常ありません。脳波異常なし、心電図異常なし。血圧、呼吸数、異常なし」

「生命維持装置異常なし、順調です」

そこは、とある研究施設のコントロールルーム。

捕らえられた佐天利子(さてん としこ)の状態を再確認する、注意呼称が飛び交っていた。

 

 

「結果が出たのか?」

執務室で背中を向けた金髪女性が質問を投げかける。

「は、はい!」

部長研究員の酒巻が直立不動で答える。

「DNA鑑定の結果です。レベル5 垣根帝督並びにレベル5 麦野沈利の子供である確立は99.9999%です」

「そう…………ご苦労さま」女性が答える。

「報告は以上です。木原会長、他に何かありますでしょうか?」

「いや、ない。下がって良い」

 「はい!」

酒巻部長研究員は部屋を出て行く。

 

 

木原会長、テレスティーナ=木原=ライフラインは口を少しゆがめて「ふん」と小さく笑った。

「麦野、御坂……か。よく16年も隠してきたものね……子供の年齢をサバ読みするとは考えなかったわ。

迂闊だったわ……。見つからないはずよね、よくやった、と誉めてあげなきゃいけないわね。

でも、これでcomplete。

DNA解析データも手に入った。今となってはあんまり意味無いけど、気休めにはなるかしらね。

……

さて、それじゃぁ利子(りこ)ちゃんの能力を全部解析しましょうか、レベル6たるその素質を」

             

 

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「ありがと。よくわかったわ。それじゃ、あたしは娘のところに行く。

……あたしがどうこう言う筋合いじゃないだろうけど、あなた、もう一度全部忘れたほうが、いいえ、忘れるべきだわ。

……じゃぁ、さよなら」

背を向け、部屋から出て行こうとした麦野沈利に、絹旗最愛が恐る恐る声を掛けた。

「あ、あの、麦野、あたしも、付いていっていい?」

「……あたしの邪魔したら、許さないからね」

絹旗を振り返らずに、麦野は答え、そのまま部屋を出た。

「あ、待って、待ってよ、麦野!」

あわてながらも、絹旗は部屋に残る心理定規<メジャーハート>にぴょこんと頭を下げ、そして再び麦野を追いかけて消えた。

 

その仕草がおかしかったので、心理定規<メジャーハート>はふっと僅かに笑みを浮かべたが、直ぐに無表情に戻った。

(いいな……仲間がいて……)

(自分の子を守る義務……か、羨ましいよね、自分の血を分けた子がいるなんて……)

(わたしには、もう、何も残ってない、誰もいない……)

(帝督……あたし、寂しい……どうして、あなた、死んじゃったのよ……悔しいよ、バカ)

(全部忘れろって……全部失っちゃったわよ、あはは、情けないね……)

 

フラフラと立ち上がった心理定規<メジャーハート>は窓の方へ歩いて行く。

 

(なにが『俺の未元物質<ダークマター>に、その常識は通用しねえ』よ、死んじゃったら無意味じゃないのよ、バカっ!)

 

窓から外を眺める。

 

(あのバカ、横っ面はり倒してやらなきゃ)

 

薄く笑った彼女は、窓を開けた……。

                
 

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「……で、君は佐天さんを部屋まで送り届けたわけだ?」

アンチスキルが風紀委員<ジャッジメント>飛燕龍太に事情を聞いている。

「そうですが、その後直ぐにボクはセンター駅の誘導に出てしまったので、そこから後は知らないんですよ」

飛燕が困惑の表情もそのままに答えている。

 

不安そうな大里香織、

興奮している青木桜子、

必死に飛燕の顔色を読む斉藤美子、

アンチスキルのクルマに張り付き、記録を取る(盗る?)前島ゆかり、

椅子に座って考え込む遠藤冴子、

がいるここは冥土帰し<ヘヴンキャンセラー>の病院。

 

佐天利子がいつまで経っても戻ってこないので、受付を通じて面会謝絶のB-203へいるはずの彼女に降りてくるよう伝言を頼んだのだった。

しかし、部屋にいなかった、ということでやむなく、呼び出しページングをかけてもらったのだが、彼女は戻ってこない。

仕方ないので、玄関から携帯をかけてみたが、

「おかけになった番号は、現在電波の届かない……」 の案内が流れるだけ。

ここに至って、ついに遠藤冴子がアンチスキルに「佐天利子が行方不明になった」と連絡を取ったのだった。

 

遠藤冴子は必死に考えていた。目には、病院のB棟が写っている。

……ふいに、3階から人間が降ってきた。

1人、2人。

いや、もう1人。しかし、この人間は大きな荷物をぶら下げて、垂直な壁を何事もなかったように早足で降りてきた。

(ふーん、忍者っているんだー)

いずれも普通の服ではない。映画やサバイバルゲームで見たことがある戦闘服を着ている。

3人とも頭には大きなゴーグルを被っている。

最後の一人がぶら下げてきた荷物をばらし、全員に区分けした。その結果、3人全員が全く同じ格好になった。

1人が合図した直後、3人はあっという間に見えなくなってしまった。

ポケーっと見ていた遠藤冴子は、しばらくして我に返り、

「ねぇねぇ、さくら……今ね、」

と言いかけて絶句した。

 

「救急セットは準備したわね?」

「3セット持ち出しました。使わなければ良いのですが、お姉様<オリジナル>」

 

目の前を、全く同じ背格好の、

先ほど見たものと全く同じ戦闘服を着込んだ、

全く同じ顔をした二人が早足で駆け抜けていったのだった。

一人は、さっきの3人がしていたのと同じような、大きなゴーグルを頭につけていたけれど。

 

(今の、誰かに似てたわよね? えっとー……)

遠藤冴子は必死に思い出そうとしていた。

 

 

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「もしもし、18番?」

アンチスキルの事情聴取を終えた飛燕龍太が、スカウターで話をしている。

「あら、37番、珍しいわね、いまどこ?」

何事なの? という声で話す相手は、麦野の養女(むすめ)、麦野志津恵だった。

「話はあと! あのね、誘拐事件なんだよっお姉ちゃん!! しかも、それ、佐天姉ちゃんの娘さんなんだよっ!」

「ええっ? うそっ!? それって、もしかして佐天利子ちゃんじゃないの?? 

その子、わたしの学校の子なのよ!!??  そ、それで?」

「お姉ちゃんの力がいるんだ! 過去探索<イベントリバース>なら、彼女の行方がわかるんじゃないか?」

「そ、そうね! 出来るかもしれないわ! わたし、第八学区だけど、あなた直ぐ来れる?」

「わかった! 直ぐ着くさ。どこで待ち合わせる?」

「モノレールの、第八学区南駅前、ミニマートがいいわ! あたし、5分で行くから!」

「オッケー、頼んだよ!」

音声通話が切れた。

(な、なんてことなの! 母さんは知ってるんだろうか? 今は仕事中……だろうか?)

麦野志津恵はブルゾンをひっかけ、携帯端末をひっつかむとスニーカーを履くのももどかしく、家を飛び出した。

 

 

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執務室にたたずむテレスティーナ=木原=ライフライン。

「全ての準備が整いました! 被験者の状態は極めて良好です」

イヤホンマイクセットに酒巻部長の報告が入る。

 

(18年経って、ようやくテスト、か。長かったな……

計測機器の性能は大幅に進歩し、薬も性能と安全性が向上した。結果的に良かったのか、悪かったのか……)

彼女の頭を、刑務所でのこと、新たなるレベル6、「原石」創造計画の立案・実施に至るまでの苦労、そしてあえなく消えてしまった、レベル5同士による「第二世代」の期待の子供たちのことがよぎる。

受精後、細胞分裂が順調に進まず死んでしまった受精卵が数個。

無事育ち、期待がかけられたものの、不注意で感染症にかかり不遇の死を遂げた男の子、2人。

そして、2歳を迎えようとしていた矢先、あろうことか 「母親」 である麦野沈利によって無惨に殺されてしまった双子の女の子。

そして、どちらかといえば、押さえとして扱われていた、「母親」麦野沈利に育てさせていた女の子、「麦野利子」 。

彼女が唯一の、レベル5同士の掛け合わせによる「人造原石」となったのであった。

しかし、その子も死亡。

テレスティーヌは、よもや麦野が自分の子を、生き残った3人とも殺すとは想像していなかった。

その知らせを受けたとき、滅多に落ち込まない彼女も、がっくりと落胆した。

(だから、最初の案の通り、第三位を使えば良かったものを、理事会の差し金さえなければ……)

だが、彼女も伊達に歳を食っていた訳ではない。

念のため麦野には監視を付け、また偽装の可能性も考え、置き去り<チャイルドエラー>や、当時二歳前後の子供たちのデータを全て洗い出し、捜索を行ったのであった。

しかし、麦野利子らしき子供は遂に発見できなかった。

レベル5の子供達は、その後に僅かだが今なお新たに誕生してきてはいる。

だが、何故かその両親はいずれも部外者であり、学園都市出身者同士の夫婦からは未だに誕生していない。

つまり、新たなレベル5のメンバーは、例え年齢は少年少女であってもやはり「第一世代」なのだ。

彼らの第二世代はまた15年、20年という時間を待たねばならない。

(そんな時間は、わたしにはもう残されていない……)

……

(さぁて、麦野利子ちゃん、あなたの能力、全部見せてもらうわよ? 良い夢を、ね?)

「テスト開始!」

 

 

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「37番、ちょっと止まって!」

「うわおおっとぉ!!」

テレポートしようとした37番こと、飛燕龍太は演算を非常停止した。

「お姉ちゃん、勘弁してよ! 変なところで止められると、俺も姉ちゃんも死んじゃうよ!!!」

泣きそうな顔で、彼はお姉ちゃん<18番> の麦野志津恵にくってかかる。

「ご、ごめんね。でもここで行って帰ってきてるのよ! 方向が変わってる!」

「どういう事なんだよ?」

「37番ね、ちょっとこの発電機の上に上がれるかしら?」

志津恵が聳える風力発電機を見上げる。

「高いところに行きたいの?」

少し興奮が収まった飛燕が尋ねる。

「……あそこの、作業通路がいいかもね」

高く聳える塔に設けられている、作業通路を志津恵が指さす。

「よし!」

 

――― 二人は狭い通路に立っていた ――― 

 

「うわ、狭い!!」

「ちょっと、変なところ触らないで、バカ!」

「ご、ごめん! 風に煽られちゃったからさ、狙った訳じゃないよ!」

飛燕龍太の手は、麦野志津恵のお尻にタッチしていたのだった。

「狙ってやってたら落っことしてやるわよ!」

「……あのさ、お姉ちゃんさぁ、そんなことより、佐天さんはいったいどうしたってんだよ?」

「ちょっと待って………佐天さんは、向こうに行った後、再びここへ戻ってきた……この交差点を左折、直進、あそこの入り口から学園高速に入った」

「え……なんだよ、陽動作戦か? 回りくどいことするなぁ……とにかくじゃぁ、高速入り口まで行こう!」

「あ、待って、ごめんね。その前に母さんにもう一度かけさせて。ダメだったらメールにするから」

麦野志津恵は携帯端末を弄くるが、やはり 「母」 麦野沈利は電話に出ない。

「ダメか……、ああ、やっぱり音声・文字同時通信機能付きにすべきだったなぁ」

ため息をついた彼女はカチカチカチと目にも留まらぬ早さでタイピングして行く。

「終わった!ごめん、龍太、行こう!」

「遅いよぅ!」

麦野志津恵が言うと、飛燕龍太は手を取り、

 

――― 二人の姿は、通路から消えた ―――
                

 

 

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あたしは、物陰に隠れて、テロリストとアンチスキル・ジャッジメントとの戦いを見ていた。

麻琴が、一人のジャッジメントと組んで戦っていた。

相方の空気使い<エアロハンド>の能力で飛ばされてきたテロリストに、麻琴が電撃を浴びせて気絶させた。

(わぁっ、さっすが、マコ! カッコイイよっ! すごいすごい!)

あたしは戦闘中だというのに興奮して、麻琴の奮戦ぶりを見ていた。

 

テロリストの一人が、麻琴たちに向かって何かを投げつけた。

麻琴の相方はそれをエアロハンドで吹き飛ばしたが、それはビルに激突して爆発した。

コンクリの破片が飛び散り、大きなものが不規則にバウンドして、思いもかけない方向から麻琴に突っ込んだ!

 

………彼女は、風に煽られる木の葉のように宙を舞い……地面に叩きつけられた。 


         ――― 麻琴っ!! ―――


「マコーっ!!」

あたしは悲鳴を上げて麻琴に走り寄る。

「マコ、しっかりして、マコっ!」

……今まで、こんな酷い人間の姿を見たことがない。

助かりそうもない重傷だった。

右目はつぶれ、頭からは大量の血が流れている。

口からも血が垂れ、右腕はあらぬ方向に曲がり、裂けた傷口からは骨が見えている。

破片が突き刺さっている服は血だらけだ。

「げふっ」 と麻琴が血を吐いた。

「マコっ! マコ!! マコったら! だ、誰かっ! 誰か来て!!」

あたしは泣き叫ぶが、誰も気が付いてくれない。助けて、誰か!!!!

「リ……コ……?」

麻琴がかすかな声であたしを呼んだ。

「手を……にぎって……」

やめて、麻琴、しゃべらないで! だめ!

あたしは既に冷たい麻琴の手を思い切り握った。死ぬんじゃない、死んだらダメ! 麻琴!

(だめ、だ)

冷静な『あたし』がつぶやいた。

「ケーキ、また、食べに……」

麻琴の頭が、ぐらりと落ちた。

 

あ……… あ、あ ………、あああ……… 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

次の瞬間、世界が白く、飛んだ。

 

 

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「AIM拡散力場、最大値を計測しました」

「よし、一旦休息させろ。演算クリアだ。AIMコントローラを安静位置に」

佐天利子のAIM拡散力場の活動状況を示すグラフィックが、急激に縮小して行く。

「さっきのピーク状態でどれくらいだ?」

「およそ7~8割と言うところかと思われます」

「あれでまだ8割か。既に破壊力では優にレベル5に匹敵するな……彼女はまだレベル3なのだろう?」

「それは書庫<バンク>のデータがおかしいんじゃないですかね?」

「そもそもいつのデータなんだ?」

「……今年の初春ですね……、2月24日の、高校の二次試験でのものです」

「それはおかしい。もう9月なのに、一度も更新されていないことになる」

そこへ1人の研究員が首をひねりつつやってくる。

「部長、異常データが出ました。……一瞬ですが、全く異なるAIM拡散力場が発現しています」

「なに? おい、もう少し詳しく!」

「ハイ、こちらを。……佐天利子の身柄確保時点でのAIM拡散力場パターンは、一昨年前に登録されたものと

基本的に同じで、特に異常はありませんでした。これが、彼女の波形です。……しかし、テスト開始15分22秒に」

研究員が酒巻部長研究員にモニターを指し示す。

「このような、全く違う波形のAIM拡散力場が……0.72秒ですが発現しています」

「多重能力、か?」

「……わかりません、ちょっと短すぎて……」

「その拡散力場のデータは取れているな?」

「はい。ですが短すぎて、チェック項目としては不十分かと。ノイズと区別できない可能性もあります」

「かまわん。時間はある。もし多重能力で、それが二番目のAIM拡散力場なら何回か出て来るだろうから、それを集積しよう。

おい! 各員、15分後にテスト再開する。各人休憩を取れ。10分前にはここへ戻れ!」

「「「「わかりました」」」」

 

 

---------------------------------------
                
「会長!」

「どうした?」

「予想通り、能力開発分析センター第2実験エリアに侵入者です」

「アハハ、本当に来たか、かわいい連中だ」

「第2実験エリアに来たのは、予想通り先ほどのテレポーターですが、もう一人、AIMストーカーによればレベル5です!」

「御坂か?」

「その事についてですが、外から侵入してきている別のグループがおりまして、こちらにもレベル5がいます! 

AIMストーカーのデータではこちらが超電磁砲<レールガン>及びそのクローンのようです」

「二人のレベル5か。片方は麦野か?」

「いえ、原子崩し<メルトダウナー>ではないようです」
                    
(まさか……、第一位? 第七位? どっちもありえんが……?)

「酒巻、テスト再開だ!」

テレスティーナは指示を出す。


再び、AIMコントローラーが作動を始める。

 

 

--------------

気が付くと、

あたしだけが、

たった一人、

そこに

立っていた。


あたしのまわりには、

「何もない」

風景が広がっていた。

「そ、そんな……」

あたしは幽霊の如く歩き、さっきまでバスがいた「はず」のところへたどりついた。

やっぱり、何も、なかった。

「さくら……?」

あどけない顔で笑うさくら、

「世界一のOLになれるわよ」 

自信たっぷりだったゆかりん、

まん丸な目がとっても可愛い、アタマの切れるさえちゃん、

自分の能力が嫌いで、いつも静かな、ミコちゃん、

地獄耳<ロンガウレス>の湯川先輩、

みんなどこへ、行ったの……?

『だから、言ったのに』

冷静なあたしが、ぽつりと言った。

-------------

「出た! 出ました!」

研究員が叫ぶ。

-------------

(あたしが、殺したのね…… あたしが、みんなを消しちゃったのね?)

 

――― あなたは、自分を制御できない、とんでもないばけものになる ―――

 

母の声がよみがえる。

お母さん、ごめんなさい! 

あたし、ばけものになってしまった……、もう、だめ……

「う、うっ、お、おかぁぁぁぁぁぁぁぁさぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 

佐天利子の絶望の叫びが、残酷なほどに澄んだ学園都市の青空に響き渡った。

 

 

----------------------------------

「むぎの、今、いいかな?」

「あら、滝壺? 手短に」

滝壺の名前が出たことで、うつらうつらしていた絹旗最愛がぱっと目を覚ます。

「むぎのの娘さんのAIM拡散力場を確認したの。断続的に出てるけれど、位置は変わっていない。

問題はないかしら?」

「ありがと、大ありなのよ。助かる。ちょっと待って、自分の位置をまず特定するから」

麦野沈利は車を止める。

絹旗は期待を込めた顔で麦野と滝壺(浜面だが)の会話を聞いている。

「滝壺、いいわ。位置を教えて?」

「むぎののところから、北に向いて78度11分、水平距離は7268m。いい?」

「ちょっと待ってね……7,8,1,1,……7,2,6,8と……出た。TKLスポーツセンター? 

滝壺? もう一度聞くけれど今のあたしの位置から、北に向いて78度11分、水平距離7268mでいいのよね?」

(心理定規<メジャーハート>が教えてくれた場所と違う……でも、滝壺に間違いはない)

「そう。 お嬢さん、また危ない目にあってるの?」

「そうらしい。あたしの養女 (むすめ) からも同じ内容のメールが入ってた。取り返すわよ、絶対に」

「気をつけてね、むぎの。あたしはそんなむぎのを応援してる」

「ああ、ありがとう。また変化があったら連絡頂戴ね。じゃ 「麦野、待って、電話貸して!!」 あ、ちょっと待って?」

ああ、そうか、ほら、と言う感じで麦野がスカウターを絹旗に渡し、自分は目的地のTKLスポーツセンターを

クルマのナビで呼び出し、目的地とすべくセットを始めた。

 

「もしもしっ、た、滝壺さんなの? あたし、絹旗ですっ!! 無事なんですねっ?」

(きぬはた? きぬはたなのね! あ、あなた無事だったのね!!)

「うぅ、ち、超、無事、ですよ……無事に、決まってるじゃないですか……良かった……」

 

スカウターを抱きしめるように持ち、泣き出してしまった絹旗を優しい目で見た麦野は、クルマを再スタートさせる。

 

………今の彼女の顔には、再び捕らわれた娘を絶対に取り返すという強い意思が、阿修羅の如くはっきりと現れていた。

 

 

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漣と鈴科教授は、TK精神病理学研究所能力開発分析センターの第2実験エリア、佐天利子を連れてきた場所にいた。

「ンでクソガキ、お姫様はどこにいるンだってェ?」

「は、はい。ここで彼女は気絶させられて運ばれたはずです。どこかにいると思うんですが……」

「チッ、クソの役にもたたねェってかァ……」

その瞬間、強烈なエネルギーが鈴科教授、いや、一方通行<アクセラレータ>を襲った。

が。

        ――― ズドォォォォォム ―――

 

そのエネルギー弾は一方通行<アクセラレータ>から反射され、エネルギー発射システムに逆進しそれを破壊した。

「……ッたく、もうちっとマシな出迎えを考えろッてンだ、くっだらねェ……」

「す、すげぇ……」

漣はへたりこんでいる。

「アン? どうしたってんですかァ、オシッコちびっちゃったンですかァ? 

甘ったれてんじゃねェぞ、クソガキ、おらァ、立て!」

「は、ハイ!」

そこへ、一人の戦闘服を着込んだ女性が飛び込んでくる。

「今の爆発は? あっ!!!」

彼を見た瞬間、彼女は金縛りにあったように立ちすくみ、ガスマシンガンを構えた手が下に落ちる。

「よぅ、久しぶり……だなァ、模造いや妹達<シスターズ>さんよォ」

「あ、あなた、は……一方、通行<アクセラ、レータ>……」

そこへ、今度はゴーグルをつけていない女性が飛び込んでくる。

「麻美、どうかした!? って…………あ、アンタ!」

上条美琴、だった。

「「「10032号!」」」

茫然としているミサカ麻美(元検体番号10032号)のまわりに、美琴に続いて飛び込んできたミサカ美子(元検体番号10039号)、ミサカ琴江(元検体番号13577号)、ミサカ琴子(元検体番号19090号)の3人が、彼女を守るかのように立ちはだかる。

「美子、銃を下ろしなさい! とりあえず今は敵じゃないんだから」

上条美琴は先頭に立っているミサカ美子(元検体番号10039号)のガス・マシンガンに手をかけ、銃口を下へ強制的に向ける。

「なんで、アンタがここにいるのよ? ……って、そこにいるのは、もしかして、漣クン?」

「チッ、お姫様の代わりに見つけたのは三下おねェさま軍団ですってかァ、調子狂っちまうぜオイ」

「は、はい。漣、です」

「はぁ……なんでアンタとキミがここにいるのかってねぇ……」

「そりゃあオイ、こっちのセリフだっつーの。学園都市理事会メンバーが無断侵入たァ、ちょいとよろしくねェんじゃねェかァ?」

「アンタが心配しなくっても大丈夫だわよ、私にはいろいろと特権ってもんがあるのよ。詳しくは言えないけどね。

で、そう言うアンタこそどうなのよ?」

「あン? それはこのクソガキが風紀委員<ジャッジメント>特殊任務委員とかいう御大層な身分だからなァ、ちッとばかしおこぼれに与らしてもらってるってとこだ」

そこへ突然、スピーカーから声が流れる。

「おしゃべり中にすまないね」

次の瞬間、上条美琴と妹達<シスターズ>の姿はふっと消えてしまった。

「!」

「! 座標移動<ムーヴポイント>か?」

「君ら二人はやはり無理だったわね。まぁ良いわ。君たちのお探しの女の子は既にここにはいないわ。

従って、ここをぶち壊すのは出来れば止めて欲しいものだけれど?」

テレスティーナ=木原=ライフラインの姿が浮かび出る。

「ここにはいない?」

「アハハハハ、お馬鹿さんたちが押しかけてくるのは百も承知。

漣? おまえがわたしを信用しなかったと同じく、わたしもお前を信用なんかしてなかったわ。

そこでだまって見てなさい。ハハハ」

テレスティーナの高笑いが反響して響く。

「クソババァ、上条さんたちをどこにやった!?」

漣が拳骨を握りしめて怒鳴る。

「あはは、安心しなさいな。丁重におもてなしせねばならないし、それに超電磁砲<レールガン>には積もる話もあるの。

邪魔が入らないところにお越し頂いたわ。冗談抜きで良い部屋よ? 

君らは自由だから出来れば帰って欲しいんだけれど?」

「く……このクソババァ、出てこい、ぶん殴ってやる!」

「おお、怖い。ひとつ教えておくわ。ババァは殴るものじゃなくて、労るべきものよ? じゃぁね」

立体ホログラムのテレスティーナはかき消えた。

 

 

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「AIM拡散力場が激しく揺れ動いています」

「さっきのはその後は出てこないな……」

「どうしましょう? 続けますか?」

「様子を見よう。……続けろ」

 

---------

『利子ちゃん? わたし、やってみようか?』

「え……?」

『わたし、まだ能力を半分も使っていないの。少し、イメージ出来るんだけれど、もし、それがホントなら、お友だちを助けられるかもしれない』

-------------

 

「出ました! 第二のAIM拡散力場です! 今度は長いです!!」

「データ収集はやってるな!?」

「はい!」

「……彼女は二重人格……なのか?」

「……違います……ね。見て下さい。第二のAIM拡散力場が出ている間、元のAIM拡散力場は消えてますよ!」

「お……そうだな」

「さっきのは、極めて短時間だったので、元のAIM拡散力場が消えているのに気づかなかったんじゃないでしょうか?

あ、そこの君、すまん、さっきの実験の際の、彼女、佐天利子のオリジナルのAIM拡散力場の動き『だけ』をみてくれ、タイムコントロールは……誤差もあるだろうから開始14分50秒くらいから15分30秒あたりまでだ。至急頼む」

「はい」

「君の言うとおりなら、多重能力<デュアルスキル>ではなく、多才能力<マルチスキル>か」

「レベル5同士から産まれた子でも、やはり多重能力<デュアルスキル>というのは無理なんですかねぇ」

「理論上否定されているからな。やはり正しいのか」
                                       
                          
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「お願い、みんな、助かるなら、やってみてよ、お願い! あたし、あたしが……みんなを」

『うん。やってみる。でもそのためには、わたしがあなたから独立する必要があるの』

「え? どういうこと?」

『立場を入れ替えなければダメ。……あなたの能力は私の能力そのものなの。

今まで、利子(としこ)ちゃんは、わたしの能力を借りていたようなもの。

でも、わたしの能力はもっと先がある……みたいなの。でもそれを使えるのは、たぶん、わたし自身だけ』

「そ、そうだったんだ……」

『わたしがあなたになる、ということは佐天利子が消え、麦野利子が現れることになるの。

それは非常に危険なことでもあるの。

わたしの力は、あなたのパーソナルリアリティの元でコントロールされてきた。良きにせよ悪しきにせよ、ね。

でも、立場が変われば、もはやあなたのコントロールは及ばなくなる。

そして、それは記憶され、最悪の場合、わたしの能力をあなたは押さえきれなくなるかもしれない。』

「そう……でも、でもわたしはあなたが伊豆で暴走した時は押さえ込めたよ? だから、きっと大丈夫だよ!!

それよりも、早くみんなを助けて欲しいの!!」

『わかったわ……じゃ、まず最初に、この煩わしいコントローラを!』

いきなり、わたしの意識は消えた。

 

 

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「打ち止めェ、オレだ、オマエどこにいる?」

鈴科教授から一方通行<アクセラレータ>へと戻った彼は、ミサカ未来こと打ち止め<ラストオーダー>へ連絡していた。

(今、第十五各区でお買い物中ってミサカは答えてみる?)

「良い身分だなァ、オイ。店の名前は? クソガキをこれからオマエのところへ迎えにやる! 

さっさと店の名前を言え!」

(ミシェル・ムートンだよって、アナタわかるのかしら? なーに、荷物持ちに来てくれるの?)

「……てめェの頭ン中はお花畑ですかァ? おい、クソガキ、ミシェル・ムートンって店、わかるか? 十五学区だ?」

「検索してます……出た。……場所、把握しました」

「ちと待ってろ、打ち止め。……それでだ、オマエ、打ち止めを連れて、長点上機のオレの研究室に行け。

そこに、佐天利子と麦野利子のAIM拡散力場の固有波形データが取ってある。

それを使えば、オマエのAIMストーカーでも彼女の居場所がわかるはずだ。

時間が惜しい、クソガキ、先に行け! 場所がわかったらオレに連絡しろ。

追いかけるからよォ、わかったな?」

「は、はいっ!」

漣がテレポートして姿を消す。

「さてと、捕らわれのお姫様をまた追いかけますかねェ、クソッタレの第三位が……妹達<シスターズ>まで連れてきやがって。

まぁ、アイツらだけでも十分出てこれるだろうけどなァ」

 

                                 

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上条美琴と妹達<シスターズ>は、モニタールームにいた。

ミサカ麻美<元検体番号10032号>は上条美琴にしがみついて震えている。

(無理ないわね……やっぱり直接顔見て、声を聞いたら、言葉をかけられたら、そりゃ怖いよね……今でも)

美琴は、ぶるぶると震え、はぁはぁと荒い息を吐く麻美をしっかりと抱きしめていた。

かつて、「絶対能力進化<レベル6シフト>計画」の実験台として死ぬことが目的であった妹達<シスターズ>の一人、一方通行<アクセラレータ>によって死の淵にまで追いつめられた最後の一人、そしてそこから只一人生き残った10032号ことミサカ麻美は、その後数々の試練を乗り越え、いくつかの事件を経て20余年を生き抜いてきた。

感情が乏しかったと言われる妹達<シスターズ>であるが、20年という月日は立派に彼女たちを一人の人間に育ててきたのだった。

「「お姉様<オリジナル>、ここはどこでしょう?」」

ミサカ琴子<元検体番号19090号>とミサカ琴江<元検体番号13577号>がハモりながら疑問を口にする。

「ようこそ、観客席へ」

そこには、冷たい微笑みを浮かべたテレスティーナ=木原=ライフラインが立っていた。

反射的に妹達<シスターズ>の二人がガスマシンガンを構える。

「待ちなさい! それ、立体画像! 立体ホログラムよ!」

上条美琴が叫ぶ。

「さすが、レベル5、超電磁砲<レールガン>、御坂いや上条美琴だったわね。お久しぶりね? 

そう四半世紀ぶりになるのかしら」

「アンタもご無事なようで。まさかシャバに出てきてるとは思っても見なかったわよ」

かすかに美琴の髪が逆立つ。

「お止めなさいな、ここで電撃を飛ばしても、わたしには何も起きないわよ? モニターをぶち壊すだけ。

そしたらせっかくのイベントをあなたたちは見られなくなるけれど?」

「どういうことよ?」

「ふふ、見ていればわかるわよ?」

二人の(一人は立体ホログラムだが)やりとりにミサカ美子(元検体番号10039号)が割り込む。

「私たちをここへ飛ばしたのは、貴女の能力ですか? とミサカは確認します」

「そうよ?」

立体ホログラムのテレスティーナが、当然と言う顔をする。

「あら、アンタ、能力者だったんだ?」

美琴が少し驚いた声で突っ込む。

「ふふ、そうよ? わたしが以前、超電磁砲<レールガン>を撃ったこと、忘れてはいないわよね?」

「! ……で、でもあれは、私の能力を分析して、作り上げた只のエネルギー……」

美琴は言葉に詰まった。只の人工的な破壊エネルギーだったのかどうか、その証拠はないことに気が付いたからだった。

「あなたが、能力者だったら、どうしてキャパシティダウンに耐えられたのよ!?」

「ふふ、そーんなこと? いいこと? キャパシティダウナーは、わ・た・し・が作ったのよ? 

自分用に対策をしないとでも?

……わたしと闘ったあなただから、特別に良いことを教えてあげましょうか。

何故、木原幻生が、『絶対能力進化<レベル6シフト>計画』の最初の検体にわたしを用いたかわかる? 

何故、レベル5の第六位が空白だったかわかる?」

「!!」

美琴の顔に驚きの色が浮かぶ。

「そう。わたしは、学園都市最初のレベル5、栄えある第1号。そして、元第六位」
 

 

 

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*作者注)投稿原文に間違いが二項目ありましたので、ここでは修正をかけています。

まず、元コマ番895で、MNW内で白井黒子の逮捕を告げる妹達<シスターズ>の番号が10090になっているのですが、これは19090の間違いです。

次に、コマ番896で、TVニュース内で白井黒子と花園飾利の年齢を各々39歳と書いているのですが、どちらも38歳が正しいです。女性の年齢を多く間違えるのは非常にマズイですね。失礼致しました。 

*タイトル、前後ページへのリンク作成、改行及び美琴の一人称の修正等を致しました(LX:2014/2/23)

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