上条「誰を助けりゃいいんだよ……」 > 15


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飛行時間は三時間だった。

日本からロシアの端まで。
流石は学園都市製。新幹線のぞみが大阪へと走り抜ける間に、こっちはボルシチとマトリョシカの国へ一直線である。

今更驚かないどころか、ちょっと遅いんじゃないかと思ったくらいだ。
機内の人間に負担が掛からないよう、風斬が速度の設定に手加減をしてくれたのかもしれない。

それでもショチトルは目を白黒させていたが。


周囲に何も無い、広い雪原を選んで戦闘機は着陸した。
ハッチを開けて外へ出ると、オレンジがかった空が夕方である事を教えてくれる。

「さて、ロシアって言っても広いけど、エツァリがどの辺にいるのか分かるのか?」

話しながら上条が手を貸してやると、ショチトルは素直に彼の手を取って飛行機から降りた。

「通信術式は何度も試しているのだが……」
「だめか。携帯は?」
「同じだ。何度かけても繋がらない」

となると、寒い大地でいきなり手詰まりだ。

「……」
「……」
「取りあえず、今日の宿を探そうか……」

寒い大地に足跡を描きながら、二人はとぼとぼと歩き出した。



足元にエリザリーナが落ちていて踏みそうになった。



「うわあああぁぁぁああああ!?」
「人だ。生きてるぞ」

仰天し、彼女を踏み潰しかけていた足を避けて転倒する上条をよそに、
ショチトルは行き倒れている女性の傍へ跪いて、冷静に脈を測っている。

「それ、エリザリーナだ」
「エリザリーナ? あの独立国同盟の? ああ、駄目だ、脈が今にも途切れそうだ。手遅れかも……」
「普段からそんな感じだから諦めるのはまだ早いぞ」

エリザリーナの顔色は蒼白だった。
がりがりに痩せている。
目は落ち窪んでいるし、息も細い。

つまりいつも通りだ。

安心した。

「エリザリーナ? 意識はありますかー?」

上条が声を掛けてみたが、彼女は起きる気配が無い。

「誰かに襲われたのか?」

周囲を警戒して、ショチトルがきょろきょろと左右へ目をやる。しかし上条は否定した。

「単なる行き倒れだと思う」
「何故?」
「そこに買い物籠が」

指された方向に目を向けるショチトル。

確かに買い物籠らしきものが半分雪に埋まっていた。
ネギが突き出ている。
長ネギが。
まごうことなき買い物籠である。


「……ネギが凍ってる」
「つまり買い物帰りに倒れたんだろうな。ということは、歩ける距離に街があるだろうから運んでやろうか」
「大丈夫なのか?」
「すごく駄目だと思う」

威厳的な意味で。


上条がエリザリーナを担ぎ、ショチトルが買い物籠を預かって、二人は再び歩き出した。

遠くに街の灯のような光が見える。
取り敢えずそこまで辿り着けば人がいるはずだ。

寒さにめげないよう気を紛らわすため、少年と少女は道中ぽつりぽつりと会話をする。

「エリザリーナがいるということは、ここは同盟国の中なのか?」
「ちょっとネギ買うのに国境越えたりしないだろうから、そうなんだろうな」
「エツァリがいるのはロシア国内のはずだから……少しずれてしまったのか」
「そう落ち込むなよ。距離的にはぐっと近づいたはずなんだし……よいしょ」

エリザリーナがずり落ちて来た。

「それはそうだがな ……よいしょ」

ネギが傾いて来た。


ちらほらと見えていた街の光がはっきりそれと分かるようになるまで、一時間以上歩き続けなければならなかった。
学園都市製なら余裕で日本とロシアを往復している時間である。
そう考えると徒歩というのは不便だ。
それとも機会が便利過ぎるのか。

「しかも人間一人背負ってるし」

異様に軽いのは助かるけどな、と付け足す上条の横で、

「凍っているからネギが腐る心配が無いというのだけが救いだな」

ショチトルはネギとちょっと仲良くなったようだ。

「持ち主まで凍らなくて本当によかったよ……ん?」

そこへ、カツ、と音を立て、靴が石畳を踏んだ。
舗装された道。
人の暮らしている証だ。
見渡すと、周囲が急に街らしくなっていた。

「着いた……か」
「まずは病院だな」

ところで。と、軽過ぎる女性を背負い直しながら、上条はショチトルへ振り返る。

「……ショチトル、ロシア語は?」
「……英語なら少しは……」

ゲッソリした国の救世主を背負った状態でうろついて、あらぬ誤解を生まないかどうかが心配である。


エリザリーナは目覚めてくれない。
ここまで歩いて来る途中に心配になって何度も脈を測ったが、一回も死んでいたことはなかった。
しかし起きない。
命に別状はなさそうだが、起きない。

仕方がないので、上条は彼女を背負ったまま日の暮れ掛けた街を徘徊する。

すぐさま屈強な大男達に囲まれる羽目になった。


「彼等は、別の場所にいるはずのエリザリーナを我々が攫ってここまで運んだと思っているらしい」

大男達が時折英語も混ぜて詰問してきたため、
上条には何がなんだか分からなくても隣の少女には少し事情が掴めたようだ。

「エリザリーナはここからあの雪原に行ったんじゃないのか?」
「思ったのだが」

縛られながら、ショチトルは言った。

「うん?」
「エリザリーナは、わざわざ一時間以上雪の中を歩かなければならないような場所へ買い物に行ったのか?」
「……あ」

同じく縛られながら、上条は間抜けな声を出す。

「街の灯が見えたから取り敢えずここまで来たが、もしかして」

エリザリーナを見つけた地点からすぐ後ろを振り返ったら、すぐ近くに別の街があったのではなかろうか。

沈黙。
ガチムチの男達が何かこちらへ怒鳴っているのにも関わらず、
上条にはその場の空気がやけに静かに感じられた。

「それは……攫ったことになるかもな」
「やってしまったな」

よりにもよって、奇跡の救世主を。

芋虫状態にされた上条とショチトルは、乱暴に担ぎ上げられて薄暗い牢へ放り込まれた。


■■■■救助リスト(抜粋)■■■■

===エリザリーナ独立国同盟===
   エリザリーナ       【行き倒れ】

===学園都市===

御坂勢力
   御坂美琴         【誘拐:全身タイツ(ロシア成教?)】
   妹達(学園都市組)     【解決済】
   妹達(10033-16000)    【解決済:一方通行】
   妹達(16001-20000)    【委託:一方通行】
   白井黒子         【誘拐:全身タイツ】
   初春飾利         【誘拐:全身タイツ】
   佐天涙子         【誘拐:全身タイツ】
   エツァリ         【誘拐:全身タイツ】
    ショチトル       【解決済(着衣)】


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